国河災第一九号
平成一三年六月二七日

各地方整備局長、北海道開発局長、沖縄総合事務局長、水資源開発公団総裁あて

河川局長通知


出水対策について


出水期における災害の防止のための措置については、平成一三年六月二〇日付け国河災第一八―二号「出水期における防災対策について」(国土交通事務次官通達)で通達されたところであるが、河川局所管施設の管理等については、更に下記事項に留意の上、遺漏のないよう取り計られたい。
また、水防法の一部を改正する法律(平成一三年法律第四六号)が六月六日に公布され、七月三日より施行されることとなったところであるが、今回の改正においては、新たに洪水予報河川の拡充、浸水想定区域の指定・公表、浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難を確保するための措置等が盛り込まれたところである。
今後、水防法(昭和二四年法律第一九三号)の施行に当たっては、改正の趣旨を踏まえ、適切な運用に努められるとともに、都道府県及び市町村に対しても積極的に支援を行い、もって水防行政の運営に万全を期せられるようお願いしたい。
なお、本件については、別紙のとおり都道府県知事あてお願いしたので、併せて通知する。

1 河川、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域等の現状の把握と危険箇所の補強等について

(1) 河川、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域等の巡視を一層厳重に行い、損傷している箇所、漏水のおそれのある箇所、流木、土砂等の堆積している箇所等出水、高潮等に対して危険と思われる箇所について、速やかに補強工事その他の適切な措置を講ずること。特に、昨年の集中豪雨や高潮による災害等最近の災害に係る被災箇所については、警戒を厳重にすることはもとより、所要の対策を講じ、再度災害を発生させないよう努めること。
(2) 河川又は海岸に設置されている堰、水門、樋門、閘門、陸閘等の工作物については、次の諸事項の点検及び整備を行い、危険と思われる箇所について、速やかに補強工事その他の適切な措置を講ずるとともに、出水時及び平常時における操作人員の配置計画、操作要領の確認をすること。特に、出水時における排水ポンプ場の操作については、運転調整等の必要な措置を講ずるよう、操作要領の点検等を行うこと。

また、砂防設備、地すべり防止施設等についても点検及び整備を行い、危険と思われる箇所について、同様の措置を講ずること。
さらに、昨年の集中豪雨による災害、地震・火山噴火等による土砂災害等最近の災害に係る被災箇所については、警戒を厳重にすることはもとより、所要の対策を講じ、再度災害、二次的な土砂災害を発生させないよう努めること。
なお、降雨等の気象関係情報等の通報連絡体制についても確認をすること。
このほか、許可工作物については、管理者に点検及び整備を十分行わせるとともに、管理者の立会いを求めて点検の結果を確認する等適切な指導監督を行うこと。
ア 堰、水門、床止め等について

(ア) ゲートの開閉状況
(イ) 警報施設の作動状況
(ウ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(エ) 下流側の河床洗掘の状況
(オ) 高水敷保護工の維持状況
(カ) 施設周辺の堤防の空洞化の状況

イ 樋門、閘門、陸閘等について

(ア) ゲートの開閉状況
(イ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(ウ) 下流側の河床洗掘の状況
(エ) 施設周辺の堤防の空洞化の状況

ウ 揚水機場、排水機場等について

(ア) ポンプの作動状況
(イ) 吸水槽、吐出水槽、除塵機等の維持状況
(ウ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(エ) 下流側の河床洗掘の状況

(3) 土石流危険渓流及び地すべり危険箇所については、災害が発生した場合に人命等の被害が極めて甚大となるおそれがあることから、警戒避難が速やかに行われるよう、関係機関に対し迅速かつ的確に情報を提供し、災害の発生防止に努めるとともに、地域住民からの土砂災害に関する情報窓口となる「土砂災害一一〇番」の設置や、「土砂災害危険区域図」の作成・公表、「ダイレクトメール」の送付等による危険箇所等の周知を図ること。

また、近年いわゆる災害弱者が土砂災害により被災する事例が多発している状況にかんがみ、災害弱者関連施設管理者等に危険箇所等の周知を徹底し、警戒避難体制の確立に努めること。

(4) 砂利採取等により河状が洪水の流下に悪影響を与えるおそれのある場合は、速やかに正常な状態になるよう整備すること。
(5) 貯木、係船等河川敷及び海岸の占用物件で出水時に被害の発生原因となるおそれのあるものについては、関係者に対し、その撤去、係留、固定等の措置を講ずるようあらかじめ十分指導すること。
(6) 出水時においては、工作物周辺の箇所、工事施工中の箇所等危険が予想される箇所について、あらかじめ重要度に応じて定められた巡視の回数、巡視の際の点検項目等に基づき巡視を行い、異常箇所の早期発見に努めること。

また、出水後においては、速やかに河川管理施設、海岸保全施設、砂防設備、地すべり防止施設及び許可工作物の被災状況等について十分に巡視・点検を行い、重大被害箇所の復旧を急ぐとともに、危険が予想される場合においては、危険である旨の周知を図る等適切な措置を講ずること。
なお、異常な状況を発見したときは、当該異常箇所及びその付近における出水時の状況(出水の時間的な経過、堤内地の滞水の状況、氾濫の状況等)並びに出水時及び出水後における措置状況を記録しておくこと。

2 ダムの管理について

(1) 洪水調節の目的を含むダムについては、操作の万全を期するため、次の諸事項を留意すること。

ア 管理施設の点検及び整備を十分に行うとともに、気象及び水象に関する観測及び情報の収集を的確に行うこと。
イ 予備放流を行うこととされているダムについては、十分な時間的な余裕をもってこれを開始し、必要な容量を確保すること。
ウ ダムの機能、操作方法及び警報に関する通知等が関係する地域に十分周知徹底されるよう、あらかじめ必要な措置を講じておくこと。
エ ダムの操作状況等の通報についてあらかじめ通報系統を確立しておくとともに、関係機関との打合せを十分行っておくこと。
オ あらかじめ下流河川の状況を把握し、ダムからの放流との関係について十分把握をしておくこと。
カ ダムからの放流は、努めて下流に急激な水位の変動を生じさせないよう適切に行うこと。特に、出水初期における放流の急激な増加を避けること。
キ ダムからの放流を開始する場合のみならず、放流中においても、必要に応じ、迅速かつ適切に情報の伝達及び警報を行うこと。
ク ダム貯水池内の浮遊物件等については、洪水時に下流に被害をもたらすことのないよう、あらかじめ適切な措置を講じておくこと。
ケ 常にダム貯水池周辺の巡視を行い、地すべり等のある区域については、速やかに必要な補強工事その他の適切な措置を講ずること。
コ 堆砂の進んでいるダムにおいては、貯水池末端付近における水位上昇による被害の発生の有無等を調査し、必要があるときは適切な措置を講ずること。
サ 地域の防災活動等に資するため、流入量、放流量等の情報を適宜関係機関に提供すること。
シ 管理業務を適正に行うため、職員の適切な配置に努めること。

(2) その他のダムについても、特に利水専用ダムについては、河川法の本旨に基づき管理の適正を期するため、関係者において(1)に掲げる事項に留意するよう指導に努めるとともに、河川法第五二条の規定による河川管理者の指示を適切かつ有効に行い得るよう、緊急時にダムの設置者が講ずべき具体的措置についてあらかじめ検討しておくこと。

また、河川管理者に対するダムの操作状況等の通報を迅速かつ的確に行うよう指導すること。

3 地下空間の浸水対策について

地下鉄、地下街、ビルの地下施設等の地下空間の浸水被害は、地上での水害とは異なり、電気施設の停電や、地下空間の天井まで冠水による人的被害の発生等、大きな被害を受ける恐れがあることから、地元公共団体、地下空間管理者等と連携して以下の対策を講ずること。
(1) 地下空間での豪雨及び洪水に対する危険性の事前周知、啓発
(2) 洪水時の地下空間の管理者への洪水情報等の的確かつ迅速な伝達
(3) 避難体制の整備
(4) 地下施設への流入防止等浸水被害軽減対策の促進

4 出水期間中の工事の施工について

河川、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域等に設置する工作物に関する工事で、堤防の開削等災害の誘因となるおそれのあるものや、土石流の発生のおそれのある渓流など出水期において工事関係者が災害を受けるおそれのある箇所におけるものの施工は、出水期間中は極力避けることとし、工事期間が長期にわたるもの等出水期間中に施工することが特にやむを得ないものについては、その施工に際しては工事施工箇所周辺も含めて適切な防災措置を講ずるよう、十分に指導監督を行うこと。

5 工事の手戻りの防止等について

(1) 工事中の施設については、出水による手戻りの防止対策を十分考慮するとともに、あらかじめ出来高の確認を行う等工事費の精算に支障を来さないよう資料を整備しておくこと。
(2) 出水に際して工事用建設機械及び材料の流失損壊を生じないよう、これらの管理に十分留意し、施工業者にその旨周知徹底すること。

6 水防に関する措置について

(1) 水防に関しては、関係都道府県及び関係水防管理団体と密接な連携を保ち、出水に際して遺憾のないよう、水防業務の責任体制及び迅速かつ的確な情報の連絡方法について、あらかじめ十分協議しておくこと。
(2) 出水に際して、水防に対する一般住民の協力が得られるよう、あらゆる機会を利用して水防に関する基本的考え方の普及に努めるとともに、指定水防管理団体に対し、水防協議会の組織の確立、水防計画の作成、水防訓練の実施等について十分な指導を行うよう努めること。

7 地域住民への防災情報の提供及び災害情報等の伝達の迅速化について

(1) 災害時における被害軽減のためには、応急活動や、警戒避難等に必要な防災情報を常日頃から地域住民へ提供することが必要である。

このため、市町村に協力して洪水や土砂災害を想定し、事前に避難地、避難路の位置、避難の心得等を具体的に示したハザードマップの配布等による、防災情報の提供に努められたい。

(2) 災害対策の迅速かつ的確な実施を図るため、災害発生時の被害状況報告はもとより、災害の発生が予想される場合にも、防災エキスパート等の協力を得ながら、気象状況、出水状況等を速やかに本省に連絡するよう措置すること。

また、住民等に対する河川情報等の伝達体制の充実を図るため、テレビ放送を始めとする情報メディアやインターネット等の有効活用に努めること。


<参考>

出水対策について

(平成一三年六月二七日)
(国河災発第一九号)
(各都道府県知事あて河川局長通知)
出水期における災害の防止のための措置については、平成一三年六月二〇日付け国河災第一八―二号の「出水期における防災対策について」(国土交通事務次官通達)で通知されたところであるが、河川局所管施設の管理等については、更に下記事項に留意の上、遺漏のないよう取り計られるとともに、貴管下市町村及び水防管理団体についてもこれらの趣旨を徹底するようお願いしたい。
また、水防法の一部を改正する法律(平成一三年法律第四六号)が六月六日に公布され、七月三日より施行されることとなったところであるが、今回の改正においては、新たに洪水予報河川の拡充、浸水想定区域の指定・公表、浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難を確保するための措置等が盛り込まれたところである。
今後、水防法(昭和二四年法律第一九三号)の施行に当たっては、改正の趣旨を踏まえ、適切な運用に努められたい。
なお、指定区間内の一級河川については、関係地方整備局長(北海道にあっては、北海道開発局長)と密接な連携を保ち、その管理に遺漏のないよう、特段の配慮を願いたい。
1 河川、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域等の現状の把握と危険箇所の補強等について

(1) 河川、湖沼、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域等の巡視を一層厳重に行い、損傷している箇所、漏水のおそれのある箇所、流木、土砂等の堆積している箇所等出水、高潮等に対して危険と思われる箇所について、速やかに補強工事その他の適切な措置を講ずるよう願いたい。特に、平成一二年度の繰越しにより継続して実施している災害復旧工事については、極力工事の促進に努めるとともに、未復旧の被災箇所が原因となって新たな災害が発生することのないよう、所要の対策を講ずるよう願いたい。

さらに、昨年の集中豪雨による災害、地震・火山噴火等による土砂災害等最近の災害に係る被災箇所については、再度災害、二次的な土砂災害を発生させないよう警戒を厳重にすることはもとより、所要の対策を講ずるよう願いたい。

(2) 河川又は海岸に設置されている堰、水門、樋門、閘門、陸閘等の工作物については、次の諸事項の点検及び整備を行い、危険と思われる箇所について、速やかに補強工事その他の適切な措置を講ずるとともに、出水時及び平常時における操作人員の配置計画、操作要領の確認を行うよう願いたい。

特に、出水時における排水ポンプ場の操作については、運転調整等の必要な措置を講ずるよう、操作要領の点検等を行うよう願いたい。
また、砂防設備、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設等についても点検及び整備を行い、危険と思われる箇所について、同様の措置を講ずるよう願いたい。
なお、降雨等の気象関係情報等の通報連絡体制についても確認を行うよう願いたい。
このほか、許可工作物については、管理者に点検及び整備を十分行わせるとともに、管理者の立会いを求めて点検の結果を確認する等適切な指導監督を行うよう願いたい。
ア 堰、水門、床止め等について

(ア) ゲートの開閉状況
(イ) 警報施設の作動状況
(ウ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(エ) 下流側の河床洗掘の状況
(オ) 高水敷保護工の維持状況
(カ) 施設周辺の堤防の空洞化の状況

イ 樋門、閘門、陸閘等について

(ア) ゲートの開閉状況
(イ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(ウ) 下流側の河床洗掘の状況
(エ) 施設周辺の堤防の空洞化の状況

ウ 揚水機場、排水機場等について

(ア) ポンプの作動状況
(イ) 吸水槽、吐出水槽、除塵機等の維持状況
(ウ) 取付護岸(根固めを含む。)の維持状況
(エ) 下流側の河床洗掘の状況

(3) 砂利採取等により河状が洪水の流下に悪影響を与えるおそれのある場合は、速やかに正常な状態になるよう整備するよう願いたい。
(4) 貯木、係船等河川敷及び海岸の占用物件で出水時に被害の発生原因となるおそれのあるものについては、関係者に対し、その撤去、係留、固定等の措置を講ずるようあらかじめ十分指導するよう願いたい。
(5) 出水時においては、工作物周辺の箇所、工事施工中の箇所等危険が予想される箇所について、異常箇所の早期発見のため、あらかじめ重要度に応じて定められた巡視の回数、巡視の際の点検項目等に基づき巡視を行うよう願いたい。

また、出水後においては、速やかに河川管理施設、海岸保全施設、砂防設備、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設及び許可工作物の被災状況等について十分に巡視・点検を行い、重大被害箇所の復旧を急ぐとともに、危険が予想される場合においては、危険である旨の周知を図る等適切な措置を講ずるよう願いたい。
なお、異常な状況を発見したときは、当該異常箇所及びその付近における出水時の状況(出水の時間的な経過、堤内地の滞水の状況、氾濫の状況等)並びに出水時及び出水後における措置状況を記録するよう願いたい。

2 水防体制の強化について

(1) 人員及び水防資機材の動員計画について

ア 出水に際して迅速かつ効果的に人員及び水防資機材を動員することができるよう、関係諸機関相互間において十分情報交換をするよう願いたい。
イ 水防資機材、通信機材及び応急工事用の機械の点検整備を十分行い、緊急事態を備えるとともに、危険度の高い地域においては、避難用船艇、救命具、移動用排水ポンプ等の整備するよう願いたい。
ウ 水防倉庫を点検し、備蓄資材を確認するとともに、予備資材の備蓄に努め、必要に応じて迅速に輸送し得るようあらかじめ関係機関と十分協議するよう願いたい。
エ 災害発生等の非常事態に備え、人命救助、情報の収集、緊急連絡等が迅速に行えるよう、あらかじめ関係機関と十分打合せを行うよう願いたい。

(2) 水防に関する基本的考え方の普及徹底について

出水に際して、水防に対する一般住民の協力が得られるよう、あらゆる機会を利用して水防に関する基本的考え方を普及徹底するよう願いたい。

(3) 水防訓練の実施について

水防団及び消防機関のみの水防訓練にとどまらず、住民の防災知識及び災害に対する心構えを確立する意味において、関係諸機関と協力し、多くの住民の参加による実態に即した総合的な訓練を実施するよう願いたい。

(4) 予報、警報の迅速かつ的確な発令、伝達について

ア 水防上必要な雨量、水位、波高等に関する各種観測施設の点検及び整備を行い、迅速かつ的確な予報、警報の実施を期するよう願いたい。
イ 水防警報を実施する河川、海岸等の指定については、十分に検討し、その適切な指定に努めるよう願いたい。
ウ 洪水予報及び水防警報の発令、伝達及び周知に遺憾のないよう関係機関と緊密な連絡を保ち、必要な施設の整備を行うとともに、あらかじめ予報、警報の受領及び伝達に関する責任を明確にしておくよう願いたい。
エ 災害時における通信機能の低下や混乱に備え、無線電話機、携帯ラジオ等の整備等通信情報システムの多様化を図るよう願いたい。

(5) 適切な避難立ち退きについて

局地的集中豪雨等における急激な出水、異常高潮等のおそれがある地域においては、常時それらの状況を監視するとともに、緊急時の避難対策についてあらかじめ地元関係諸機関とも十分連絡して、迅速かつ的確な情報連絡の確保と避難の場所及び経路の周知徹底を図り、その対策に遺憾のないよう措置するよう願いたい。

(6) 水防協議会の組織の確立及び水防計画の作成

洪水時における水防活動を円滑に行うため、指定水防管理団体に対して水防協議会の組織の確立及び水防計画の作成の徹底を図るよう願いたい。

(7) 重要水防箇所の周知等について

出水に際して水防上特に注意を要する重要水防箇所の周知及び水防に必要な情報の提供を水防管理団体に対して行うとともに、出水期前等において合同で河川巡視を実施し、協力体制の強化に努めるよう願いたい。

3 土石流危険渓流、地すべり危険箇所及び急傾斜地崩壊危険箇所における対策について

(1) 土石流、地すべり及びがけ崩れの発生のおそれのある地域については、異常な状況の早期発見のため、地域住民や砂防ボランティアと連携して、特に巡視を厳重に行うよう願いたい。
(2) 土石流危険渓流、地すべり危険箇所及び急傾斜地崩壊危険箇所については、災害が発生した場合に人命等の被害が極めて甚大となるおそれがあることから、警戒避難が速やかに行われるよう、関係機関に対し迅速かつ的確に情報を提供し、災害の発生防止に努めるとともに、地域住民からの土砂災害に関する情報窓口となる「土砂災害一一〇番」の設置や、「土砂災害危険区域図」の作成・公表、「ダイレクトメール」の送付等による危険箇所等の周知を図るよう願いたい。

また、近年いわゆる災害弱者が土砂災害により被災する事例が多発している状況にかんがみ、災害弱者関連施設管理者等に危険箇所等の周知を徹底し、警戒避難体制を確立するよう願いたい。

(3) 土石流危険渓流、地すべり危険箇所及び急傾斜地崩壊危険箇所については、危険地区ごとの警戒避難基準の設定、当該地区に係る集落ごとの雨量計、雨量表示板の設置等の措置を推進するよう願いたい。

4 ダムの管理について

(1) 洪水調節の目的を含むダムについては、操作の万全を期するため、次の諸事項に留意するよう願いたい。

ア 管理施設の点検及び整備を十分に行うとともに、気象及び水象に関する観測及び情報の収集を的確に行うよう願いたい。
イ 予備放流を行うこととされているダムについては、十分な時間的な余裕をもってこれを開始し、必要な容量を確保するよう願いたい。
ウ ダムの機能、操作方法及び警報に関する通知等が関係する地域に十分周知徹底されるよう、あらかじめ必要な措置を講じておくよう願いたい。
エ ダムの操作状況等の通報についてあらかじめ通報系統を確立しておくとともに、関係機関との打合せを十分行っておくよう願いたい。
オ あらかじめ下流河川の状況を把握し、ダムからの放流との関係について十分把握をしておくよう願いたい。
カ ダムからの放流は、努めて下流に急激な水位の変動を生じさせないよう適切に行うこと。特に、出水初期における放流の急激な増加を避けるよう願いたい。
キ ダムからの放流を開始する場合のみならず、放流中においても、必要に応じ、迅速かつ適切に情報の伝達及び警報を行うよう願いたい。
ク ダム貯水池内の浮遊物件等については、洪水時に下流に被害をもたらすことのないよう、あらかじめ適切な措置を講じておくよう願いたい。
ケ 常にダム貯水池周辺の巡視を行い、地すべり等のある区域については、速やかに必要な補強工事その他の適切な措置を講ずるよう願いたい。
コ 堆砂の進んでいるダムにおいては、貯水池末端付近における水位上昇による被害の発生の有無等を調査し、必要があるときは適切な措置を講ずるよう願いたい。
サ 地域の防災活動等に資するため、流入量、放流量等の情報を適宜関係機関に提供するよう願いたい。
シ 管理業務を適正に行うため、職員の適切な配置に努めるよう願いたい。

(2) その他のダムについても、特に利水専用ダムについては、河川法の本旨に基づき管理の適正を期するため、関係者において(1)に掲げる事項に留意するよう指導に努めるとともに、河川法第五二条の規定による河川管理者の指示を適切かつ有効に行い得るよう、緊急時にダムの設置者が講ずべき具体的措置についてあらかじめ検討しておくよう願いたい。

また、河川管理者に対するダムの操作状況等の通報を迅速かつ的確に行うよう指導するよう願いたい。

5 地下空間の浸水対策について

地下鉄、地下街、ビルの地下施設等の地下空間の浸水被害は、地上での水害とは異なり、電気施設の停電や、地下空間の天井まで冠水により人的被害の発生等、大きな被害を受ける恐れがあることから、地元公共団体、地下空間管理者等と連携して以下の対策を講ずるよう願いたい。
(1) 地下空間での豪雨及び洪水に対する危険性の事前周知、啓発
(2) 洪水時の地下空間の管理者への洪水情報等の的確かつ迅速な伝達
(3) 避難体制の整備
(4) 地下施設への流入防止等浸水被害軽減対策の促進

6 出水期間中の工事の施工について

河川、海岸、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域等に設置する工作物に関する工事で、堤防の開削等災害の誘因となるおそれのあるものや、土石流の発生のおそれのある渓流など出水期において工事関係者が災害を受けるおそれのある箇所におけるものの施工は、出水期間中は極力避けることとし、工事期間が長期にわたるもの等出水期間中に施工することが特にやむを得ないものについては、その施工に際しては工事施工箇所周辺も含めて適切な防災措置を講ずるよう、十分に指導監督を行うよう願いたい。

7 工事の手戻りの防止等について

(1) 工事中の施設については、出水による手戻りの防止対策を十分考慮するとともに、あらかじめ出来高の確認を行う等工事費の精算に支障を来さないよう資料を整備しておくよう願いたい。
(2) 出水に際して工事用建設機械及び材料の流失損壊を生じないよう、これらの管理に十分留意し、施工業者にその旨周知徹底するよう願いたい。

8 地域住民への防災情報の提供及び災害情報等の伝達の迅速化について

(1) 災害時における被害軽減のためには、応急活動や、警戒避難等に必要な防災情報を常日頃から地域住民へ提供することが必要である。

このため、市町村に協力して洪水や土砂災害を想定し、事前に避難地、避難路の位置、避難の心得等を具体的に示したハザードマップの配布等による、防災情報の提供に努めるよう願いたい。

(2) 災害対策の迅速かつ的確な実施を図るため、災害発生時の被害状況報告はもとより、災害の発生が予想される場合にも、防災エキスパート等の協力を得ながら、気象状況、出水状況等を速やかに本省に連絡するよう措置するよう願いたい。

また、住民等に対する河川情報等の伝達体制の充実を図るため、テレビ放送を始めとする情報メディアの有効活用に努めるよう願いたい。


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