建河発第五七六号
昭和三二年一〇月二四日

各地方建設局長あて

河川局長通達


特定多目的ダム法の施行について

標記については、本日建設省発河第九八号をもつて事務次官から通達されたが、なお、左記事項に御留意の上、特定多目的ダム法の施行について遺憾なきを期せられたい。

1 基本計画について

(1) 基本計画の原案の作成時期

基本計画の原案は、貴局において作成し、実施計画調査期間(河川総合開発調査の実施後直ちに事業費を要求しようとする場合においては、当該河川総合開発調査期間)の最終年度の一〇月末日までに本省に提出すること。

(2) 基本計画の原案の作成要領

基本計画の原案は、別紙一の様式に準じて作成し、これには別紙二の「基本計画添付図面作成要領」に基き作成した図面並びに工事費内訳書及び負担割合算出書を添付すること。
なお、原案の作成に当つては、関係者の地方支分部局及び関係都道府県と密接な連絡をとること。

(3) 実施計画調査の要領

実施計画調査の実施については、別途通達するところによること。

2 妥当投資額の算定について

(1) 利子率、減価償却率等

特定多目的ダム法施行令(以下「令」という。)第六条に規定する建設大臣が関係行政機関の長と協議して定める利子率、減価償却率及び建設利息の率のうち、利子率及び減価償却率については、「電源開発促進法第六条第二項の規定による費用の負担の方法及び割合の基準に関する政令及び府令の施行に際し関係省庁の申合せ事項」(以下「申合せ事項」という。)に定める例によるものとし、建設利息の率については、身替り建設費及び妥当投資額の算出方法に関する総理府令(昭和二八年総理府令第三一号)第四条第二項に定める例によること。

(2) 基準時、標準純益率等

特定多目的ダム法施行規則(以下「規則」という。)第四条第二項の規定により建設大臣が関係行政機関の長と協議して定める基準時、標準純益率、山元発電単価の算出方法、常時換算出力及び換算電力量の計算方法並びに単価水量当りの水の価格の算出方法については、次に掲げるところによること。
イ 基準時については、申合せ事項における諸数値の算定時点である昭和二九年九月とする予定である。
ロ 標準純益率、山元発電単価の算出方法並びに常時換算出力及び換算電力量の計算方法については、申合せ事項に定める例による。
ハ 水道及び工業用水道の単位水量当りの水の価格の算出方法については、いまだ関係省庁の間で定まつたものがないので、その算出をする必要がある場合には、近傍類似の水道又は工業用水道の水の価格、水の供給を受ける者の要望する価格、身替り方式による最低価格等を調査の上、あらかじめ、十分本省と連絡をとられたい。

3 ダム使用権の設定の申請をしようとする者に対する措置について

基本計画において定めるダム使用権の設定予定者は、ダム使用権の設定の申請をした者であることを要し、また、ダム使用権の設定の申請をしようとする者は、規則第七条第二項の規定により詳細な関係書類及び図面を提出しなければならないので、当該ダム使用権の設定の申請をしようとする者に対しては、一の(1)の調査期間において、当該関係書類に関する調査を行い当該関係書類及び図面を作成するように指導されたいこと。

4 補償について

多目的ダムの建設は、従来行われてきた共同施行方式と異なり、建設大臣がその責任において一元的に施行するものであるから、補償についても、二元的にならぬように十分留意されたいこと。

5 建設に要する費用の精算について

多目的ダムの建設を完了したときは、令第九条第二項の規定によりダム使用権の設定予定者の納付した負担金の精算を行うことになるが、当該負担金の精算については、建設費として支出された費用についての精算のみならず、当該建設費による購入又は取得に係る残存物件(建物、機械、物品等)等についての精算を含むものであるので、これらの精算については、別途通達するところにより行うこと。

6 操作規則について

(1) 操作規則の基本となる事項

操作規則は、基本計画と密接な関係があるので、基本計画の原案を提出する場合には、操作規則の基本となる事項を定めて同時に提出すること。

(2) 操作規則の原案の作成時期

操作規則は、本湛水(ダム本体及びゲートの工事の完了後基本計画において定められた水位まで流水を貯留することをいう。)を開始する時までに定めておく必要があるが、これには各省協議等に相当日時を要するので、おそくとも本湛水を開始しようとする一年前に原案を作成して本省に提出すること。

(3) 操作規則の原案の様式

操作規則の原案の様式については、別途通達するところによること。

7 湛水する場合の措置について

湛水を開始しようとする場合においては、当該湛水が、本湛水であるときは湛水計画書を、当該湛水が中間湛水(ダム本体及びゲートの工事の完了前に流水を貯留することをいう。)又は試験湛水(ダム本体及びゲートの工事の完了前若しくは後に試験のため一時的に流水を貯留することをいう。)であるときは湛水計画書及び「工事中のダム操作要領」を本省に提出して承認を受けること。


別紙1

○○ダムの建設に関する基本計画(案)

1 建設の目的

(1) 洪水調節

○○ダムの建設される地点における計画洪水流量毎秒○○○立方メートルのうち、毎秒○○○立方メートルの洪水調節を行い、下流○○川の○○地先の計画高水流量毎秒○○○立方メートルを毎秒○○○立方メートルに低減させる。

(2) かんがい

>○○川沿岸の○○○ヘクタールの農地に対するかんがい用水の補給を行う。このうち○○○ヘクタールの農地に対するかんがい用水の補給は、専用の施設を新設して行う。

(3) 発電

○○ダムの建設に伴つて新設される○○発電所及び○○発電所において、それぞれ最大出力○○○○キロワツト及び○○○○キロワツトの発電を行い、下流○○発電所及び○○発電所における電力量の増加を図る。

2 位置及び名称

(1) 位置

○○川水系○○川 右岸 ○○県○○郡○○村○○

(左岸○○県○○郡○○村○○)

(2) 名称

○○ダム

3 規模及び型式

(1) 規模

堤高(基礎岩盤から最高水位までをいう。)○○○メートル

(2) 型式

○○式○○○○○ダム

4 貯留量、取水量及び放流量並びに貯留量の用途別配分に関する事項

(1) 貯留量

イ 総貯留量

最高水位は、標高○○○メートルとし、総貯留量は、○○,○○○,○○○立方メートルとする。

ロ 有効貯留量

最低水位は、標高○○○メートルとし、有効貯留量は総貯留量のうち、標高○○○メートルから標高○○○メートルまでの有効水深○○メートルの貯留量○○,○○○,○○○立方メートルとする。

(2) 取水量及び放流量並びに貯留量の用途別配分

イ 洪水調節

洪水期(毎年○月○日から○月○日までの間をいう。)においては、洪水調節を行う場合を除き、水位を標高○○○メートル以下に制限するものとする。洪水調節は、予備放流により標高○○○メートルを限度として水位を低下させ、当該水位から標高○○○メートルまでの容量最大○○,○○○,○○○立方メートルを利用して行うものとする。
なお、洪水期以外においても、洪水調節は予備放流により行うことができるものとする。

ロ かんがい

かんがい期(毎年○月○日から○月○日までの間をいう。)においては、かんがい用水補給のために、○○地点における流量が、下記の流量にみたないときは、当該流量を確保するに必要な水量を○○ダムから放流するものとする。
○月○日から○月○日まで、毎秒○.○立方メートル(うち、特定かんがい用水の必要量に相当するもの○○立方メートル)
○月○日から○月○日まで、毎秒○.○立方メートル(うち、特定かんがい用水の必要量に相当するもの○○立方メートル)
以下同様 〃 〃
かんがいのための有効貯留量は、標高○○○メートル以上の○○,○○○,○○○立方メートルとし、かんがい期においては、かんがいのために水位を低下させる場合を除き、水位を下記の基準水位以上に保つものとする。
○月○日 標高 ○○○メートル
○月○日 標高 ○○○メートル
以下同様

ハ 発電

○○発電所の取水量は毎秒○○立方メートル以内、○○発電所の取水量は毎秒○○立方メートル以内とし、必要に応じ○○調整池において○○発電所からの放流量を逆調整するものとする。発電のための有効貯留量は、標高○○○メートルから標高○○○メートルまでの○○,○○○,○○○立方メートルとする。ただし、発電は、イに規定する洪水調節及びロに規定するかんがいに支障を与えない範囲において行うものとする。

5 ダム使用権の設定予定者

○○○(発電)

6 建設に要する費用及びその負担に関する事項

(1) 建設に要する費用の概算額

○,○○○,○○○,○○○円

(2) 建設に要する費用の負担者及び負担額

イ 河川法第27条の規定に基く国並びに○○県及び○○県の負担額

建設に要する費用に1,000分の○○○を乗じた額とする。
なお、県の負担額について○○県と○○県とが分担する割合は○○県1,000分の○○○,○○県1,000分の○○○とする。

ロ 特定多目的ダム法第7条第1項の規定に基く○○の負担額

建設に要する費用に1,000分の○○○を乗じた額とする。

ハ 特定多目的ダム法第9条第1項の規定に基く○○の負担額

建設に要する費用に1,000分の○○○を乗じた額とする。

ニ 特定多目的ダム法第10条第1項の規定に基く○○の負担額

イに規定する国並びに○○県及び○○県の負担額のうち、建設に要する費用に1,000分の○○○を乗じた額の10分の1の額



別紙2

基本計画の添付図書作成要領

1 流域一覧図

縮尺(1/200,000)地理調査所地勢図使用のこと。

記入事項

集水区域……赤色
下流増発電所水路……黒色
貯水池……青色
洪水氾濫区域……褐色
ダム……朱色
かんがい給水区域……緑色
発電所及び水路……朱色
上水道給水区域……赤色
 
工業用水道給水区域…黄色

2 計画概要図

縮尺(1/50,000)地理調査所地形図使用のこと。

記入事項

ダム……朱色
貯水池……青色
発電所及び水路……朱色
この他1に記載した事項を適宜記入すること。

3 ダム構造図

 
 
 
ダム平面図 縮尺(1/1,000)
下流平面図 〃(1/1,000)
標準断面図(溢流部及び非溢流部を図示すること。) 〃(1/500)
 
 
 
 
 

以上の図面を1枚の用紙にまとめること。

4 貯水池容量配分図

最高水位(洪水調節満水位を記入すること。)
常時満水位
洪水期制限水位
農業確保水位(最高のものを記入すること。)
水道確保水位(最高のものを記入すること。)
最低水位
以上の事項を1枚の図面にまとめること。

5 洪水調節説明図書

洪水調節図(流入量、放流量、貯水位、ゲート開度等を記入すること。)
流量配分図(ダム築造前のものを( )内に併記すること。)
以上の図面を1枚の用紙にまとめること。
洪水調節計画説明書

下流改修工事の計画洪水流量及び進捗状況、本計画の計画洪水流量(発生年月日及び連続雨量を記入すること。)、洪水調節の方法、経済効果等について簡単な説明を加えること。

6 かんがい計画説明図書

かんがい用水給水区域図(縮尺(1/50,000)2の計画概要図に記入してもよいこと。)

専用施設計画概要図(新設の場合のみ必要であること。)

頭首工及び主要幹線水路の平面図、縦断面図、標準断面図等を適宜な縮尺で1枚にまとめたものであること。

計画説明書

受益面積、期間別用水量、ダムからの放流又は取水の方法、経済効果、専用施設の工事費内訳等について説明を加えること。

7 発電計画説明図書

専用施設計画概要図

取水口及び水路の平面図、縦断図及び標準断面図並びに調圧水槽、鉄管路、発電所、放水路、取水堰堤等の説明図を適宜な縮尺で1枚にまとめたものであること。

計画説明書

最大、常時、常時尖頭、渇水期平均、渇水期尖頭等につき、発電力、使用水量及び有効落差の一覧表を作成するとともに、月別平均発生電力量、同換算電力量、下流増電力量、同換算電力量、専用工事費内訳等を明記し、発電計画の説明を加えること。

8 上水道及び工業用水道説明図書

給水区域図(縮尺(1/50,000)2の計画概要図に記入してもよいこと。)
専用施設計画概要図
頭首工及び主要幹線水路の平面図、縦断図及び標準断面図並びに主要構造物等の説明図を適宜な縮尺で1枚にまとめたものであること。

計画説明書

上水道については、給水入口、給水量(m3/S、m3/D)、専用工事費内訳等を、工業用水道については、給水面積、主要工場名、給水量(m3/S、m3/D)、専用工事費内訳等を明記し、ダムからの放流又は取水の方法、経済効果等について説明を加えること。

(註)

1 添付図書1式フアイルに左とぢとし、1部提出すること。
2 フアイルの大きさは、縦30cm、横23cmのものを標準とすること。
3 図面の大きさは、特に指定しないが、折畳み寸法は、縦29cm、横20cm(綴込の部分の長さを含むこと。)とし、右下隅に番号及び図面名を下記要領により記入し、折り畳んだ際に表となるよう作成すること。



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