事務連絡
昭和五八年六月七日

各地方建設局河川部長、北海道開発局建設部長、都道府県河川主管課長あて

建設省河川局治水課建設専門官・都市河川課建設専門官


河川事業と土地改良事業の調整について


昭和五八年四月一二日付で昭和五八年度を初年度とする第三次土地改良長期計画が閣議決定されるに際し、建設省河川局長と農林水産省構造改善局長は、別紙1の了解事項を取り交して河川事業と土地改良事業の実施等について引続き調整を図ることとしたので、左記事項に留意のうえ適切に対処されたい。
なお、土地改良事業等に関して過去に農林省と取り交した覚書等も添付するので、これらについても再度確認のうえ適切に対処されたい。
おって、貴管下工事事務所等にも周知徹底されるように取り計らわれたい。

1 了解事項の一は、第二次土地改良長期計画が閣議決定されるに際し、建設省河川局長と農林省構造改善局長が取り交した了解事項(別紙2)が第三次土地改良長期計画においても効力を有することを確認したものである。その内容の第一は、ダム、堰、水門、ポンプ等の主要な工作物の設置等に関する許可又は協議の見通しがないまま土地改良事業計画を決定し、これの一部を実施することは、当該事業に手戻りが生じる等土地改良事業の円滑な実施の支障となるとともに河川行政にも重大な支障となるため、これらを生ずることのないよう事前の協議を約束したものであるが、この事前協議にあたっては、土地改良事業の必要性、緊急性に配慮しつつ、河川行政に支障が生じないよう迅速に調整することとされたい。また、協議の窓口となる工事事務所等は協議を受けた時は直ちに本局河川部に報告する等相互の連絡を密にし河川管理者としての一体性の保持と適正な処理を図ることとされたい。第二は、土地改良事業により法河川の改良工事を行う必要が生じた時は事前に河川管理者と協議を行うことを確認したものであるが、土地改良事業主体から河川法第二〇条に基づく河川工事に関する事前の協議があった場合にはすみやかに、治水課又は都市河川課に連絡することとされたい。
2 了解事項の2は、土地改良法施行令の一部を改正する政令(昭和五四年政令第二一二号)の制定に際し建設省河川局長と農林水産省構造改善局長が取り交した覚書(別紙3)を再確認したものである。その内容は、法河川の改修は河川管理者が実施するものであり土地改良事業として実施すべきものではないこと、したがって国営かんがい排水事業と併せ行う農地防災排水事業が法河川に係る場合は当該事業の実施設計に係る予算の要求前に両省間で協議・調整を行うこととしたものであり、地方建設局河川部又は工事事務所等において当該事業に関する情報を得た場合は直ちに治水課又は都市河川課に連絡することとされたい。
3 建設省及び農林水産省において合意に至ったその他の事項等について

(1) 河川事業とこれに関連する土地改良事業及び土地改良関連諸事業の円滑な推進を図るため、建設省河川局と農林水産省構造改善局の担当者は相互に連絡を密にし、理解を深めることを確認しており、貴職においても農林関係部局等と日常的・定期的な情報交換を行う等連絡を密にし相互に理解を深めることとされたい。
(2) 第三次土地改良長期計画の主要課題は汎用田化の促進であり、全国で今後一〇か年に一〇〇万ヘクタールの整備を行う計画であり、これの実施に伴う排水改良は全国的規模で行われることとなり、下流の河川に大きな影響を及ぼすと考えられる。前記1のとおり土地改良事業において水門、ポンプ等を計画する場合には事前に河川管理者と協議を行うこととなっているが、汎用田化に伴う排水改良は下流の河川への影響が大きいと考えられるため計画が固まらない調査・計画の段階から河川管理者と十分連絡調整するよう申し入れており、農林水産省から「下流の河川へ大きな影響を及ぼすことが予想される場合には今後とも河川管理者とあらかじめ十分連絡調整する。」旨の回答を得ている。この場合の「大きな影響」とは、現況河道において新たに洪水のピーク流量が増加することであると解している。
(3) 前記(2)の調整にあたっての視点としては、

イ 排水先の河川の現況流下能力が十分か否か(当該河川の改修計画があれば、排水改良が行われる時点での河川の流下能力が十分か否か)
ロ 排水地点及び排水量が河川の改修計画と整合しているか否か
ハ 従前の排水系統を著しく変えるものか否か

等の事項が考えられ、このうち河川の現況流下能力がない場合の具体的な調整方法としては、

イ ため池の設置等により河川への流出量を従前と同程度とすることはできないか
ロ 土地改良事業により遊水地を設置し、河川への流出増を抑制できないか
ハ 排水網の調整等により河川の流下能力がある地点への排水ができないか
ニ 排水ポンプ設置の段階施工等土地改良事業の進展調整により河川改修との調整ができないか
ホ 河川改修の進捗をより一層図ることにより調整ができないか
ヘ 河道の流下能力を超える洪水が発生するおそれがある時に、洪水の流下に支障が生じないよう排水ポンプを止める等の排水規制を行うことにより調整できないか

等が考えられるが、極力イからニまでの調整方法によるよう努められたい。


(別紙―1)

建設省河計発第二八号
五八構改C第二七四号

土地改良長期計画に関する了解事項

土地改良法(昭和二四年法律第一九五号)第四条の二の規定に基づいて作成される土地改良長期計画の閣議決定に際し、建設省と農林水産省は左記のとおり相互に了解する。

昭和五八年四月一一日

建設省河川局長
農林水産省構造改善局長
1 第二次土地改良長期計画の閣議決定に際し締結された次の了解事項については、第三次土地改良長期計画についても効力を有する。

「土地改良長期計画に関する了解事項」(建設省河計発第二九号、四八構改C第一五一号、昭和四八年四月二五日付け建設省河川局長、農林省構造改善局長了解事項)

2 土地改良法施行令の一部を改正する政令の制定に際し締結された次の覚書を再確認する。

「覚書」(建設省河政発第四三号、五四構改D第五三二号、昭和五四年七月五日付け建設省河川局長、農林水産省構造改善局長覚書)



(別紙―2)

建設省河計発第二九号
四八構改C第一五一号

土地改良長期計画に関する了解事項

土地改良法(昭和二四年法律第一九五号)第四条の二の規定に基づいて作成される土地改良長期計画の閣議決定に際し左記のとおり相互に了解する。

昭和四八年四月二五日

建設省河川局長
農林省構造改善局長
1 土地改良事業計画の作成にあたっては、当該計画に係る土地改良事業の実施について河川法(昭和三九年法律第一六七号)の規定による許可または協議を必要とするもののうち、ダム、堰、水門、ポンプ等の主要な工作物および流水の占用に関するものについては、河川管理者(重要なものについては建設大臣)に協議を行ない、許可または協議の成立の見通しがたった後に、当該土地改良事業計画を決定するものとする。
2 土地改良事業の施行にあたって、河川法第四条および第五条による一級河川および二級河川に係る改良工事を行なう必要が生じたときは、あらかじめ河川管理者に協議するものとする。

また、同法第一〇〇条による準用河川に係る事業の計画および執行の態様については、相互に協議するものとする。

3 土地改良事業に係る防災事業のうち、特に防災ダム建設事業については、水系の主要部分の基本高水のピーク流量、計画高水流量等に影響を及ぼすものは計画しないものとする。なお、防災ダムの計画(計画変更を含む。)にあたっては、あらかじめ河川管理者に協議するものとする。

また、やむを得ず工事中の計画変更によって前記の各項目に影響を及ぼすものとなるものについては、土地改良施設の管理者と協議のうえ、原則として河川管理者において管理するものとする。



(別紙―3)

覚書

建設省河政発第四三号
五四構改D第五三二号
昭和五四年七月五日
建設省河川局長
農林水産省構造改善局長
土地改良法施行令の一部を改正する政令の制定に際し、建設省と農林水産省は、左記のとおり了解する。
1 国営かんがい排水事業と併せ行う農地防災排水事業について

(1) 農林水産省は、土地改良法施行令(昭和二四年政令第二九五号)第四九条第一項第二号の改正に係る事業(国営かんがい排水事業と併せ行う農地防災排水事業。以下「水事業」という。)の実施に際しては、全体実施設計に係る予算の要求前に建設省と十分に協議調整するものとする。
(2) 本事業のうち一級河川又は二級河川として指定されている河川(以下「河川」という。)から河川の流水を河川又は海へ排水する形態のものは、行わないものとする。

ただし、事例毎に河川管理者との協議が成立したものについては、この限りでない。この場合において、農地防災排水事業に係る工事は本事業が専ら洪水時の排水を目的とすることに鑑み、河川法第二〇条に基づく工事として行うものとする。

(3) 本事業の実施に当たっては、(2)に掲げる事項のほか次に掲げる事項を遵守するものとする。

イ 受益地は、農用地のみとする。
ロ 本事業においては、現況河道疎流能力、工事実施基本計画等に定められた計画高水流量を勘案し、本事業の完了時点での河道疎通能力を超えるような計画は行わないこととする。

(4) 本事業に関して両省間で合意した内容について通達で関係機関に示すこととし、建設省に関係事項を協議するものとする。

2 今回の改正に係る事業のうち河川協議を要するもの及び農地防災ダム事業の実施に当たっては、従来両省間で締結された了解事項等に従つて実施するものとする。



別添

(土地改良事業全般)

○土地改良事業に関する農林省との覚書

〔A〕 土地改良長期計画の閣議決定に際しての建設事務次官と農林事務次官との間の覚書(昭和41年3月22日付け建設省発計第13号・41農地C第151号)

〔A〕の記

土地改良長期計画に基づいて実施される各種事業のうちには、道路、河川の整備および管理等建設省の所掌事務と抵触するものが生ずるおそれがあるので、その実施に当っては、両省間で締結された了解事項等に従って調整を行なうとともに道路法(昭和27年法律第180号)第3条に定める道路のうち主として農業生産の用に供されるものおよび河川法(昭和39年法律第167号)第3条に定める河川に関し土地改良事業として所要の事業を行なおうとするときは、その実施等についてあらかじめ関係局長間で協議し、調整に努めるものとする。
なお、高速自動車国道の整備事業に関する土地改良事業等については、特別な配意をするものとする。
〔B〕 土地改良長期計画の閣議決定に際しての建設事務次官と農林事務次官との間の覚書(昭和48年4月25日付け建設省計地発第8号・48構改C第152号)

〔B〕の記

土地改良長期計画に基づいて実施される各種事業のうちには、道路、河川の整備、管理等建設省の所掌事務と抵触するものが生ずるおそれがあるので、その実施に当たっては両者間で締結された了解事項等に従って調整を行なうとともに道路法(昭和27年法律第180号)第3条第4号に定める市町村道に係る主として農業生産の用に供されるものならびに河川法(昭和39年法律第167号)第3条に定める河川および同法第100条の準用河川に関し、土地改良事業として所要の事業を行なおうとするときは、その実施等について、あらかじめ関係局長間で協議し、調整に努めるものとする。
なお、道路法第3条第1号から第3号までに掲げる道路については、土地改良事業の対象としないものとする。
〔C〕 土地改良長期計画の閣議決定に際しての建設省河川局長と農林省構造改善局長との間の覚書(昭和48年4月25日付け建設省河計発第29号・48構改C第151号)

〔C〕の記1

土地改良事業計画の作成にあたっては、当該計画に係る土地改良事業の実施について河川法(昭和39年法律第167号)の規定による許可または協議を必要とするもののうち、ダム、堰、水門、ポンプ等の主要な工作物および流水の占用に関するものについては、河川管理者(重要なものについては建設大臣)に協議を行ない、許可または協議の成立の見通しがたった後に、当該土地改良事業計画を決定するものとする。

〔C〕の記2
 

土地改良事業の施行にあたって、河川法第4条および第5条による1級河川および2級河川に係る改良工事を行なう必要が生じたときは、あらかじめ河川管理者に協議するものとする。
また、同法第100条による準用河川に係る事業の計画および執行の態様については、相互に協議するものとする。
(防災ダム建設事業)

○防災ダム建設事業の実施に関する農林省との了解事項

 
〔A〕 土地改良長期計画の閣議決定に際しての建設省河川局長と農林省農地局長との間の覚書(昭和41年3月22日付け建河発第107号・41農地C第153号)
〔B〕 土地改良長期計画の閣議決定に際しての建設省河川局長と農林省構造改善局長との間の覚書(昭和48年4月25日付け建設省河計発第29号・48構改C第151号)

〔A〕の記2

土地改良事業に係る防災事業のうち、特に防災ダム建設事業について、水系の主要部分の基本高水のピーク流量、計画高水流量等に影響を及ぼすものは計画しないものとする。

 
〔B〕の記3

土地改良事業に係る防災事業のうち、特に防災ダム建設事業については、水系の主要部分の基本高水のピーク流量、計画高水流量等に影響を及ぼすものは計画しないものとする。なお、防災ダムの計画(計画変更を含む。)にあたっては、あらかじめ、河川管理者に協議するものとする。
また、やむを得ず工事中の計画変更によって上記の各項目に影響を及ぼすものとなるものについては、土地改良施設の管理者と協議のうえ、原則として河川管理者において管理するものとする。
(農村総合整備モデル事業)

○農村総合整備モデル事業に関する農林省との覚書

 
〔A〕 農村総合整備モデル事業の発足に際しての建設省河川局長と農林省構造改善局長との間の覚書(昭和48年7月19日付け建設省河計発第57号・48構改A第1120号)

〔A〕の記1

農村総合整備モデル事業(以下「本事業」という。)による河川に関する工事については、土地改良長期計画の閣議決定に際し、昭和48年4月25日付けで取り交わされた建設事務次官と農林事務次官との覚書、および建設省河川局長と農林省構造改善局長との間の了解事項の趣旨に従って実施するものとするが、本事業のうち本事業の農業生産基盤整備事業または、他の農業生産基盤整備事業と関連して一体的整備を必要とする農業集落排水施設の整備に当たっては、次により実施するものとする。
(1) 河川法(昭和39年法律第167号)第4条および第5条に規定する1級河川および2級河川に係る改良工事は、農業集落排水施設の整備の対象としないものとする。ただし、やむをえず1級河川または2級河川につき工事を行なう必要を生じた場合には、河川法上の所要の手続を踏み、あらかじめ事業主体が河川管理者に協議して許可の見通しがたった後に計画するものとする。
(2) 河川法の規定による準用河川に係る農業集落排水施設を計画する場合には、都道府県知事経由の段階において都道府県の河川管理担当部局と農林担当部局との間で、あらかじめ十分協議するものとする。
(農地防災排水事業)

○国営かんがい排水事業と併せ行う農地防災排水事業の実施に関する農林省との了解事項

 
〔A〕 土地改良法施行令の一部を改正する政令の制定に際しての建設省河川局長と農林水産省構造改善局長との間の覚書(昭和54年7月5日付け建設省河政発第43号・54構改D第532号)

〔A〕の記1の(1) 事業実施の事前協議について

(1) 農林水産省は、土地改良法施行令(昭和24年政令第295号)第49条第1項第2号の改正に係る事業(国営かんがい排水事業と併せ行う農地防災排水事業。以下「本事業」という。)の実施に際しては、全体実施設計に係る予算の要求前に建設省と十分に協議調整するものとする。
〔B〕 土地改良法施行令の一部を改正する政令の制定に際しての建設省河川局治水課長と農林省構造改善局計画部事業計画課長・建設部水利課長との間の覚書(昭和54年7月5日付け建設省河治発第51号・54構改D第532号)

〔B〕の記1 〔A〕の記1の(1)について

(1) 全体実施設計に係る予算の要求前に建設省と協議を行うものは、一級河川及び二級河川に係る事業とする。
(2) 協議は、事業計画・排水計画の概要及び基幹排水施設の工事計画の概要により行うものとする。
(3) 本事業の計画変更を行う際も覚書の記の1の(1)の趣旨に沿って建設省と協議を行うものとする。

〔A〕の記1の(2) 事業の内容について

(2) 本事業のうち一級河川又は二級河川として指定されている河川(以下「河川」という。)から河川の流水を河川又は海へ排水する形態のものは、行わないものとする。

ただし、事例毎に河川管理者との協議が成立したものについては、この限りでない。この場合において、農地防災排水事業に係る工事は本事業が専ら洪水時の排水を目的とすることに鑑み、河川法第20条に基づく工事として行うものとする。

〔B〕の記2 〔A〕の記1の(2)について

本事業により設置された施設の管理については、事例毎に河川管理者と協議し、管理協定を締結するものとする。

〔A〕の記1の(3) 事業の実施にあたっての遵守事項について

(3) 本事業の実施に当っては、(2)に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を遵守するものとする。

 

イ 受益地は、農用地のみとする。
ロ 本事業においては、現況河道疎通能力、工事実施基本計画等に定められた計画高水流量を勘案し、本事業の完了時点での河道疎通能力を超えるような計画は行わないこととする。

〔B〕の記3及び記4

〔A〕の記1の(3)にイについて

受益地は農用地のみとするが、不可避的に受益する土地を含むことがあるものとする。

〔A〕の記1の(3)のロについて

(1) 本事業の完了時点での河道疎通能力については、河川改修の進捗の見通し等を考慮して合理的に判断するものとする。
(2) 「工事実施基本計画等」の「等」とは、一級河川直轄区間においては直轄河川改修計画を、一般河川指定区間及び二級河川においては河川改良工事全体計画を云い、応急的なものは含まないものとする。

(注) 本事務連絡は各地方建設局河川部長あてのものであり、北海道開発局建設部長及び各都道府県河川主管課長あては省略してある。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport