63構改A第一三九号、建設省河政発第一三号
昭和六三年二月九日

農林水産省構造改善局長、建設省河川局長



農用地開発公団法の一部を改正する法律案に関する覚書

農用地開発公団法の一部を改正する法律案の国会提出に際し、建設省と農林水産省は、左記のとおり了解する。

1 今回の法改正は、従来建設省が一元的に実施してきた河川行政を多元化するものではない。
2 改正後の農用地整備公団法(以下「法」という。)第一九条第一項第一号イ及びロの事業を必ず併せて行うものである。
3 法第一九条第一項第一号ロに規定する農用地の保全又は利用上必要な施設の新設又は改良として行う農地防災ダム及び防災ため池事業については、従前のこれらの事業に関する両省間の覚書、確認事項その他これらに類するものの適用がある。
4 法第一九条第一項第一号及び第四号の業務として行う新規事業で一級若しくは二級河川(以下「河川」という。)又は準用河川の流量に影響を与えるものを計画する場合には、農林水産省は、あらかじめ建設省と十分協議を行うものとする。
5 法第一九条第一項第一号の業務として排水施設の整備を行う場合には、次によるものとする。

(1) 河川から河川の流水を河川又は海へ排水する形態のものは、行わないものとする。ただし、事例毎に河川管理者との協議が成立したものについては、この限りでない。この場合において、当該排水施設に係る工事は、河川法第二〇条に基づく工事として行うものとする。
(2) 受益地は、農用地のみとする。
(3) 現況河道疎通能力、工事実施基本計画等に定められた計画高水量を勘案し、当該排水施設の完了時点での河道疎通能力を超えるような計画は行わないこととする。
(4) 農林水産省は、上記(1)〜(3)の内容について通達で関係機関に示すこととし、建設省に関係事項を協議するものとする。

6 法第一九条第一項第一号ロの政令において、河川(準用河川を含む。)の流水を占用するための施設が公団の事業の対象とならないことを明定する。
7 河川(準用河川を含む。)の流水を占用する権利は、法第一九条第一項第二号の水の使用に関する権利の交換分合の適用の対象とはならないものであり、同号に基づき公団が河川(準用河川を含む。)の流水を占用する権利の交換分合を行うことはできないものであることを確認する。また、このことを、公団に通知し、かつ、地方農政局、北海道開発局、沖縄総合事務局、地方公共団体及び土地改良区に対し、通達をもって指導する。
8 7の通知及び通達の内容については、あらかじめ十分な時間的余裕をもって建設省に協議する。
9 法第一九条第一項第四号の「地形、地質……必要な」という規定は、国等が土地改良法に基づき実施する農業用用排水施設の新設、改良の事業と公団が実施する農業用用排水施設の新設、改良の事業との区別のために設けられたものであり、従来国等が実施してきた農業用用排水施設の新設、改良の事業に新たな事業を追加することを意図して設けられたものではない。
10 法第一九条第一項第四号の業務として行う事業のうち排水事業については、従来国営かんがい排水事業のうちで実施されてきた内水排除事業(集水路の新設、改修を含む。)に相当する事業(以下「四号排水事業」という。)に限るものとし、その実施に当たっては、次によるものとする。

(1) 四号排水事業は、農用地のたん水排除を主な目的とする排水施設の新設、改良の事業であり、河川行政として行うべき防災、国土保全という目的を有するものではなく、したがって、河川(準用河川を含む。)に係る事業(河川(準用河川を含む。)への排水に必要な樋門及び排水機場を除く。)を行わないものとする。なお、ここでいう、農用地のたん水排除以外の従たる目的とは、耕作等に伴う農用地の排水をいうものである。
(2) 四号排水事業における農用地である受益地の面積に対する集水面積の割合は、おおむね一・五未満とする。
(3) 現況河道疎通能力、工事実施基本計画等に定められた計画高水量を勘案し、当該排水施設の完了時点での河道疎通能力を超えるような計画は行わないこととする。
(4) 農林水産省は、前記(1)〜(3)の内容について通達で関係機関に示すこととし、建設省に関係事項を協議するものとする。

11 法第一九条第一項第四号の業務として行う事業は、当分の間、石狩川下流の左岸地域における内水排除事業及び沖縄県宮古島における農業用用水施設としての地下ダム建設事業に限るものとし、これらの事業以外の事業を新たに行おうとするときは、農林水産省は、事前に十分建設省に協議する。
12 法第一九条第一項第四号の政令の制定又は改正に当たって、河川(準用河川を含む。)の流水を占用するための施設で同項第五号において譲渡の対象となるものが同項第四号の業務の対象とならないことを政令上措置する。
13 農林水産省は、法第二四条の二及び第二四条の三に規定する農用地保全事業実施計画及びその変更を認可する場合、第二四条の四に規定する管理規程(河川(準用河川を含む。)の流量に影響を及ぼす施設に係るものに限る。)及びその変更を認可する場合並びに第二五条に規定する災害復旧事業計画(管理中であって改良工事を伴う事業に係るものに限る。)を認可する場合には、あらかじめ計画概要図(二五、〇〇〇分の一)等の他、農用地保全事業実施計画に関しては、本覚書の事項が十分確認できる書類等必要な書類を添付して、建設省と十分協議するものとする。
14 農林水産省は、法第二四条の二第一項又は第四項、法第二四条の三第一項又は第三項及び法第二五条第一項又は第四項の規定により関係都道府県知事又は関係市町村長が協議しようとする場合(法第二五条第一項又は第四項にあっては、管理中であって改良工事を伴う事業の場合に限る。)においては、都道府県及び市町村段階において、農林担当部局と土木担当部局とが協議調整を行うよう農林担当部局を通達をもって指導するとともに、その内容を速やかに建設省に連絡するものとする。
15 法第一九条第一項第二号等に規定する農業用施設とは、土地改良施設、農産物集出荷施設、農産物処理加工施設、農産物貯蔵施設等農業経営の合理化のために必要な施設をいうものとする。
16 法第一九条第一項第四号の政令においては、事業を実施する必要がある地域及び事業の内容を定めることとし、事業地域が特定しうる規定とする。
17 農林水産省は、公団が河川(準用河川を含む。)に係る土地又は施設を国に譲渡するときは無償とする旨を、法第二六条第一項に規定する業務方法書に明記させるものとする。
18 法第二四条の二第二項及び第三項、第二四条の三第二項並びに第二五条第二項及び第三項の農林水産省令の制定・改廃に際しては、農林水産省は、事前に十分な時間的余裕をもって建設省に協議する。
19

(1) 法附則第二〇条第一項及び第二一条第一項の規定により貸付けを受ける土地改良事業及び公団の業務において、農業用用排水施設等の他目的利用を図る場合には、次によるものとする。

1) かんがい用水として許可された水の目的外使用は行わないものとする。
2) かんがい面積の減少等により、かんがいのための必要水量が減少した場合、水利権の変更申請等適切な手続きをとるものとする。

(2) このことを公団に通知し、かつ、土地改良区等に対し通達をもって指導するものとする。
(3) (2)の通知及び通達の内容については、あらかじめ十分な時間的余裕をもって建設省に協議するものとする。

20 農林水産省は、公団が法第一九条第一項の業務を行うに際しては、河川(準用河川を含む。)への影響について十分配慮する旨指導するものとする。

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