建設省河流発第一号
平成五年三月一七日

北海道開発局建設部長、各地方建設局河川部長、各都道府県土木担当部長あて

建設省河川局治水課流域治水調整官通達


河川管理施設等応急対策基準の取扱いについて

標記については、「河川工作物関連応急対策事業の推進について」(平成五年三月一七日付け建設省河治発第一九号建設省河川局治水課長)の通達により、河川管理施設等応急対策基準が追加されたところであるが、別紙により取り扱うこととしたので、すでに対策済みの施設も含め、すべての河川管理施設等の点検を行い、全体計画を策定し、その結果に基づいて計画的に適切な対策を講じられたい。
なお、本基準は、現時点で予測される応急的な対策基準を示したものであり、今後、技術の進歩並びに被災経験による新たな知見によって、応急的な対策を実施することが必要と考えられる場合があり、また、一度対策を実施した施設が年月を経ることによって、再度弱点化することも考えられ、これらの点に鑑み、応急対策基準並びに事業箇所を五ケ年毎に見直すことを予定している。



別紙 河川管理施設等応急対策基準補足説明
・印は追加項目
対策基準
補足説明
1 応急対策を実施する河川管理施設等は、次の河川の区間に設置されている施設とする。

直轄管理区間(河川法施行令第2条第7号の区間を含む)及び知事管理区間(河川法施行令第2条第7号の区間を除く)で、河道の整備されている一連の区間。
(1) 「直轄管理区間(河川法施行令第2条第7号の区間を含む)直轄施行区間のうち下記に該当する区間とする。)

a 堤内地盤高から高さが0.6m以上の有堤区間すべて
b 堀込み河道にあっては、河岸の洗掘崩壊により家屋等流失被害が予想される区間

(2) 「知事管理区間(河川法施行令第2条第7号の区間を除く)おおむね時間雨量強度30mmもしくは確率年1/3程度以上の降雨を対象として整備されている区間のうち下記に該当する区間

a 堤内地盤高から高さが0.6m以上の有堤区間すべて
b 堀込み河道にあっては、河岸の洗掘崩壊により家屋等流失被害が予想される区間

2 河川管理施設等別の応急対策基準は、次のとおりとする。

(1) 床止め及び堰

 

イ 護床工が十分でないために床止め又は、堰の上下流の河川管理施設に支障を及ぼす恐れがある場合には、護床工を追加して設けるものとするものとする。

実施する範囲は、洪水時の洗掘、流失の実態を調査し、その範囲までを実施する。

ロ 取付擁壁が設けられていないものは、床止め又は、堰上流の低水路の法面と床止め、又は堰の天端との交点より出ない位置で水叩きの範囲に、原則としてコンクリート擁壁を設けるものとする。ただし、現在の取付擁壁が落下水の影響に対して十分な強度を有する場合は、この限りでない。

擁壁にすることにより堤防断面を犯す場合には、自立式構造とし止水矢板を設ける等、堤防の安全性を十分配慮した構造とする。

ハ 取付護岸は、床止め又は堰に接する河岸又は堤防に設ける場合は、上流側は床止め又は堰の上流端から10メートル又は護床工の上流端から5メートルのうちいずれか長い方から、下流側は水叩きの下流端から15メートル又は護床工の下流端から5メートルのうちいずれか長い方までの区間以上に設けるものとする。
ニ ハに掲げるもののほか、河川の流水の変化に対し保護する必要がある河岸又は堤防には、当該河川の状況に応じて適当な区間に護岸を設けるものとする。
ホ 護岸の高さは、低水路の岸にあっては低水路の岸の高さとし、河岸(低水路の岸を除く)又は、堤防にあっては計画高水位までとするものとする。ただし、洪水時の河川の流水の変化が著しい場合又は高潮区間にあっては、堤防の高さとするものとする。また、計画高水位が現在堤防高を上回る場合は、堤防高までとする。
ヘ 水叩き又は護床工の範囲をはずれる取付護岸には、根固工を設けるものとする。

(1) 複断面河道の場合で、トの規定で高水敷保護工を設ける場合には、本堤及び河岸の高水護岸についても取付護岸の長さの規定に合わせ設けるものとする。
(2) 改修計画で計画されている護岸以上の強度を有する工種とし、低水護岸については、裏からの洗掘をうけないよう十分考慮した構造とする。

ト 床止め又は堰付近の高水敷には、必要な範囲に高水敷保護工を設けるものとする。

(1) 取付護岸にそって設ける高水敷保護工の幅は、10メートルを標準とし、高水敷保護工を設けない範囲が堤防法尻より15メートル以内のときは、堤防法尻まで連続して高水敷保護工を設けるものとする。

なお、高落差(1メートル以上)の固定堰及び水衝部の床止め又は堰については、洪水の変化を考慮した幅とする。

(2) 高水敷保護工の長さは、概ね取付護岸の長さとし、屈撓性のある構造とする。

チ 堰のゲートが確実に開閉しないものは、確実に開閉するよう措置するものとする。

・開閉装置の機種、操作体制、洪水特性等により、ゲートが開閉不能となる場合の開閉装置の取り替え、ローラーゲートにおけるローラーの直接回転確認が出来るようにするための戸当り部分の小改造等を実施する。

(2) 水門及び樋門

イ (1)〜ハの規定は、水門(閘門を含む以下同じ)が横断する河川又は水路の取付護岸について準用する。この場合において、同項中「床止め又は堰」とあるのは「水門」と、「上流側」とあるのは「当該水門が横断する河川又は水路の上流側」と、「下流側」とあるのは「当該水門が横断する河川又は水路の下流側」と読み替えるものとする。

 

ロ 水門及び樋門(樋管を含む以下同じ)が横断する河岸又は堤防に設ける護岸は、当該水門及び樋門の上流側及び下流側のそれぞれ10メートル以上の区間に設けるものとし、その高さは、計画高水位までとする。ただし、小規模な樋門で地形の状況等により、その必要がないと認められる場合にはこの限りでない。

小規模な樋門、樋管であって、地形の状況等によりその必要がないと認められる場合は、10メートル以下の適当な長さで護岸を設けることができる。

ハ 堤防法尻から15メートル以内の堤外区間にあたる水路については、必要に応じ、水路護岸、高水敷保護工及び高水護岸を設けるものとする。
ニ 管理橋が必要な樋門であって管理橋が設置されていないものについては、管理橋を設置するものとする。
ホ 樋門のゲートの操作台が低く出水時の操作が困難なものは、操作台を嵩上げするものとする。

堤外水路が堤防に平行する場合であって、堤防法尻から水路の深さの2倍以内の堤外区間にある水路については、高水敷に高水敷保護工を、又堤防には高水護岸を設けるものとする。
上流一連区間の現況流下能力に対応した高水位以下の管理橋についてのみ架け替えるものとする。

ヘ ゲートは、確実に開閉する構造に改造するものとする。

(1) 門扉を改造する場合は原則として鉄扉とする。
(2) 木扉については、現況が堅固なものは改造しないものとする。

・(3) 開閉装置の機種、操作体制、洪水特性等により、ゲートが開閉不能となる場合の開閉装置の取り替え、ローラーゲートにおけるローラーの直接回転確認が出来るよう戸当り部分の小改造等を実施する。
・ト 水門及び樋門周辺の不等沈下に起因して堤体に空洞化が発生し、又は恐れがある場合に堤体の修復をするものとする。
・函体周辺のグラウト及び施工上一体の函体補強等とする。
・チ 施工の古い小口径樋管の函体等のクラックにより堤体土砂が吸い出されることに起因して堤体に空洞化が発生し、又は恐れがある場合に、堤体の修復をするものとする。
・函体周辺のグラウト及び施工上一体の函体補強等とする。
・リ 遮水構造が十分でないために函体下部の土砂の流動と洗掘による土砂の吸い出しを発生させる恐れのある場合には、遮水矢板を追加して設けるものとする。

(3) 橋梁

イ 橋梁の取付護岸の長さは、橋の上流端及び下流端から上流及び下流にそれぞれ次の式によって得られる値(30m以上となる場合は30m)の長さの区間以上に設けるものとする。

L=1/2(20+0.005Q)

L:取付護岸の長さ(m)
Q:計画流量(m3/s)

ただし、計画流量が、2,000m3/s未満の河川においては、10メートル以上とする。

ロ 橋梁の取付護岸の長さは、計画高水位以上とする。ただし、洪水時の河川の流水の変化が著しい場合又は高潮区間においては、堤防の高さとする。

(4) その他

イ (1)、(2)、(3)に定める以外の河川管理施設等についても、当該施設等が接続する他の河川管理施設に対し、洪水、高潮時に支障を及ぼす恐れがある場合には、以上の基準に準じて適切な改善措置を講ずるものとする。

・実施する範囲は、洪水時の水位差、基礎地盤の土質等を調査し、必要浸透路長の範囲とする。


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