建設省河発第一号
平成三年一一月七日

北海道開発局長、沖縄総合事務局長、各地方建設局長、各都道府県知事あて

建設省河川局長通達


魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業の実施について

近年、潤いと安らぎのある真の豊かさを実感できる生活が国民全般から広く求められているところであるが、このためには、安全で自然豊かな地域環境の創出が不可欠である。
このため、治水事業の実施にあたっては、多自然型の川づくり等を進めているが、豊かな水域環境の創出をより積極的に推進するため、別紙のとおり「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業実施要綱」を定め、地域のシンボルとなっている河川等について、堰、床固、ダム、砂防ダム等とその周辺の改良、魚道の設置、改善、魚道流量の確保等を計画的、試行的に行い、全国の河川等のモデルとして魚類の遡上環境の改善を積極的に行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」を実施することとしたので通知する。
貴職におかれては、本要綱の趣旨を踏まえて、安全で豊かな河川環境等の創出を積極的に推進されるようお願いする。
魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業実施要綱
建設省河川局
第一 目的

この要綱は、地域のシンボルとなっている河川・渓流(以下「河川等」という。)について、堰、床固、ダム等の河川を横断する河川管理施設及び許可工作物並びに砂防ダム等(以下「河川横断施設」という。)とその周辺の改良、魚道の設置、改善、魚道流量の確保等を計画的、試行的に行い、全国の河川等のモデルとして魚類の遡上環境の改善を積極的に行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」の実施に関し、基本的事項を定め、豊かな水域環境の創出を推進することを目的とする。

第二 定義

(1) この要綱において「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル河川」(以下「モデル河川」という。)とは、全国の河川等における豊かな水域環境の創出の推進に資するため、全国の河川等のモデルとして、堰、床固、ダム、砂防ダム等の河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置、改善、魚道流量の確保等を計画的、試行的に行うことにより、積極的に魚類の遡上環境の改善を実施すべく河川局長が指定する河川等をいう。
(2) この要綱において「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」(以下「モデル事業」という。)とは、モデル河川において、堰、床固、ダム、砂防ダム等の河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置、改善、魚道流量の確保等を計画的、試行的に行い、積極的に魚類の遡上環境の改善を行う河川、ダム、砂防関係の治水事業をいう。

第三 モデル河川の指定

(1) 北海道開発局長、沖縄総合事務局長、地方建設局長、都道府県知事は、所管する河川について、以下の事項を勘案して、モデル河川とするのに適当な河川等を河川局長に申請することができる。

1) 申請する河川等の水系、河川等の概要
2) 水量、水質、魚類の生息状況、魚類の遡上及び降下状況等の水域環境の概要
3) 魚類を核とした親水活動、観光、漁業等水域環境と地域のかかわり
4) 堰、床固、ダム、砂防ダム等の河川横断施設の設置状況
5) 魚類の遡上環境改善に関する地域の熱意
6) 堰、床固、ダム、砂防ダム等の河川横断施設に関する魚類の遡上及び降下環境の改善の方針
7) モデル事業実施により期待される魚類の遡上及び降下状況改善の見通し

(2) 一の河川等について、所管区域が複数の機関にわたる場合には、関係する北海道開発局長、沖縄総合事務局長、地方建設局長、都道府県知事があわせて申請するものとする。
(3) 河川局長は、申請のあった中から以下の各要件に該当するものについて、モデル河川に指定することができる。

1) 地域のシンボル的河川であること。
2) 魚類を核とした親水活動、観光、漁業等が活発であること。
3) 魚類の遡上環境改善に関する地域の熱意が高いと認められること。
4) モデル事業の実施により、魚類の遡上状況等の大幅な改善が期待できること。
5) 河口から水源地まで一貫したものであること。

第四 実施計画の策定

(1) モデル河川の指定を受けた北海道開発局長、沖縄総合事務局長、地方建設局長、都道府県知事は、指定された河川等についてモデル事業を実施するため、次の内容を定めた魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業実施計画(以下「実施計画」という)を策定するものとする。

1) 河川等、水域環境、河川横断施設及び河川等と地域とのかかわりの概要
2) 魚類の遡上環境改善の基本方針
3) モデル事業の実施計画
4) 実施計画実現のための方策
5) モデル事業実施による魚類の遡上及び降下環境の改善の効果
6) その他魚類の遡上及び降下環境の改善に関する事項

(2) 実施計画の策定にあたっては、必要に応じ魚類に関する専門的知識を有する学識経験者等の指導、助言を得るものとする。

第五 実施計画の認定

(1) 地方建設局長、北海道開発局長、都道府県知事は、実施計画を策定した場合には、河川局長あて実施計画の認定を申請することができるものとする。
(2) 河川局長は、申請された実施計画について、モデル事業の実施にふさわしい内容と認められるものについて認定することができる。
(3) 河川局長が実施計画の認定を行うにあたっては、必要に応じ魚類に関する専門的知識を有する学識経験者等の意見をきくことができる。

第六 モデル事業の実施

(1) 北海道開発局、沖縄総合事務局、地方建設局及び都道府県は、モデル河川に指定された河川等について、認定された実施計画にもとづき河川、ダム、砂防関係の治水事業により、魚類の遡上環境が改善されるよう堰、床固、ダム、砂防ダム等の河川横断施設について、施設とその周辺の改良、魚道の新設、魚道の改善、魚道流量の確保等を計画的、試行的、積極的に実施するものとする。
(2) モデル事業の実施にあたっては、モデル事業の対象となる許可工作物の管理者等の関係者とあらかじめ必要な調整を行ったうえ実施するものとする。

第七 その他

その他この要綱の実施に関し必要な事項は、別途定める。



附 則

本要綱は、平成三年一一月七日から施行する。


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