治山治水緊急措置法(昭和三五年法律第二一号)第三条に規定する治水事業一〇箇年計画の実施に伴い、国が直轄で施行する治水事業及び特定多目的ダム建設工事に関する経理並びに都道府県知事が施行する治水事業に係る負担金又は補助金の交付等に関する政府の経理を明確にするため、治水特別会計を設置することとし、このため治水特別会計法が制定され、同法は昭和三五年法律第四〇号として、同法施行令は昭和三五年政令第七〇号として、ともに昭和三五年三月三一日に公布施行され、昭和三五年度予算から適用されることになったので、本特別会計の経理については、特に左記事項に留意の上万遺憾のないよう取り扱われたい。
なお、地方公共団体の負担金の納付の特例に関する法律施行令の一部を改正し、昭和三五年度から特別会計で施行される直轄事業に係る地方負担金の納付については、従来の地方債証券(公付公債)による納付制度を改め現金で納付することになる予定である。従って、本特別会計で実施する直轄事業の地方公共団体負担金も現金で収納し、当該年度の事業費の財源に充てられることとなるので、当該負担金の納付については特段のご配慮を願いたい。
1 治水特別会計で経理する範囲
都道府県知事が施行する事業のうち本特別会計で経理するものの範囲は、治山治水緊急措置法第二条第二項第一号から第三号までに掲げる事業(同条第三項の規定に該当するものを除く。)に係る負担金又は補助金の交付に関する経理であること。従って、海岸保全事業、河川等災害復旧事業、河川等災害関連事業及び地盤変動対策事業、鉱害復旧事業等同条第三項に規定する事業に係る負担金又は補助金の交付に関する経理は、従来どおり一般会計で行なうものであること。
2 治水特別会計の管理
この特別会計は、建設大臣が管理するものであること。
3 治水特別会計の経理の原則
(1) この特別会計の歳入歳出並びに資産負債は、すべて治水勘定及び特定多目的ダム建設工事勘定に区分して経理するものであること。
(2) 都道府県知事が施行する前記1の事業に係る負担金又は補助金の交付に関する経理は、すべて治水勘定で行なうものであること。
(3) この特別会計の歳出を支出するには、支出負担行為計画及び支払計画の示達によるほか支払元受高(各勘定ごとの当該年度の収納済歳入額)を超えて支出することができないものであること。
4 予算の執行
(1) 歳入事務
イ 直轄事業に係る地方負担金の収納は、当該事業の施行計画及び実施状況に応じて収納するものであること。なお、地方負担金については、地方財政法第一七条の二の規定によりあらかじめ通知するとともに、別途当該事業に係る地方負担金の収納予定期別等を通知するので、都道府県は、当該期限までに納付できるように所要の措置を講ずべきものであること。
ロ 前号の歳入事務は、建設本省(歳入徴収官建設大臣官房会計課長)で行なうものであること。
ハ この特別会計の歳出に係る負担金又は補助金の返還金等の歳入事務は、従前どおり、建設本省の歳入徴収官が行なうものであること。
(2) 歳出事務
この特別会計の歳出予算の経理は、3に掲げる経理原則によるほか、次の各号により行なうものであること。
イ 支払計画の示達は、支出官から提出される支払計画示達要求書(別に定める様式建設大臣官房会計課長あて)により行なわれるものであること。
ロ 支払元受高は、支出官から提出される支払元受高転換要求書(別紙様式第一)により当該支出官の歳出金の支出権限の範囲として別紙様式第二により通知されるものであること。
なお、支払元受高転換要求書は、補助事業の進捗状況及び資金計画等を十分検討の上調製せるものとし、計画のそごにより工事の施行に支障を来たし、或いは支出見込みのない遊休資金(支払元受高残額)を多額に保有することのないよう特に留意すること。
ハ 支払元受高の転換要求は毎月前期分後期分の二回にわけて提出するものとし、その提出期日は、前期分を当該月の前月の二五日まで後期分を当該月の一〇日までとする。
なお、期日までに提出のないものについては、次期分に繰り延べることがあるので特に期限を厳守すること。
ニ 本特別会計において支払上の現金に余裕がある場合は特別会計法第一九条の規定により資金運用部に予託しなければならないので、支払元受高において多額の遊休資金がかなり長期(一箇月以上)にわたり保有することになる場合は、その余裕期間、及び金額等について検討の上河川局長に報告し、指示を受けること。
なお、前期資金運用部預託に関する事務は、建設本省(資金運用部預託金担当者河川局長)が行なうものであること。
ホ 負担金又は補助金支払いのため、支出官事務規程第七条の規定により支出官の振り出す小切手に附記すべき事項は、年度、所管、会計名等のほか「部局等」に代え「勘定名(治水勘定)」を附記するものであること。
ヘ 支出官が予算決算及び会計令第六四条の規定により、提出する支出済報告書は、勘定区分(治水勘定)に従い、項目に区分して作製し、毎月分を翌月一五日までに建設大臣(((正))建設大臣官房会計課長、((副))河川局長)に提出すること。
(3) 帳簿
イ この特別会計の支出官は、次の帳簿を備え整理しなければならないものであること。
(イ) 支出簿(予算決算及び会計令第一三三条)
(ロ) 支出負担行為差引簿(予算決算及び会計令第一三四条)
(ハ) 支払元受高差引簿(会計規則及特別会計規則ノ規定ニ依リ調製スルコトヲ要スル帳簿ノ様式及記入方法並書類ノ様式ニ関スル省令(大正一一年大蔵省令第二〇号))
ロ 前期のうち支払元受高差引簿の整理については、支払元受高の転換を受けたとき、歳出予算を支出するとき及び支出済になった金額を歳出の金額に戻入するときは、その都度登記するものであること。
5 経過的措置事項
(1) この特別会計で経理する負担金又は補助金のうち、昭和三四年度以前の年度の一般会計予算に係る負担金又は補助金で昭和三五年度に繰越しとなったものの経理は、従来どおり一般会計で行なうものであること。
(2) 旧特定多目的ダム建設工事特別会計(以下「旧ダム特別会計」という。)の昭和三四年度以前の年度の予算に係るものでその施行が昭和三五年度に繰延べとなったものについては、昭和三五年度以降この特別会計で施行するものであること。
ただし、この場合、当該繰延べとなった工事に係る地方負担金の納付は、従来どおり地方債証券で納付することができることとなる予定であること。
(3) 旧ダム特別会計に属する資産負債はこの特別会計の特定多目的ダム建設工事勘定(以下「ダム勘定」という。)に帰属することとなるので、旧ダム特別会計の昭和三四年度以前の地方負担金に係る地方債証券の昭和三五年度以降の償還金及びその利息は、この特別会計のダム勘定の歳入に収納することとなるものであること。
6 その他
国の受託工事に関する経理は、従来、国の歳入歳出外の取扱いによっていたが、この特別会計の設置に伴い、この特別会計で施行される直轄事業に密接な関連のある国の受託工事その他治水上必要と認められる国の受託工事に関する経理は、すべてこの特別会計で行なうこととなったので、都道府県において当該工事を委託しようとするときは、地方建設局と十分協議の上、資金計画等について工事の施行に支障のないよう措置するものであること。
なお、この特別会計法の施行に関し、別紙のとおり地方建設局長及び北海道開発局長あて通達したので参考とされたい。