最近災害復旧事業の二重採択の事例を生じていることは洵に遺憾であるが、この不当事例の発生を防止するため、重複して採択するおそれのある施設に関して今回建設、農林両省は別紙のような覚書を取り定め、今後の査定においてはこれに準拠して実施することとなったから了知されたい。
ついては貴県におかれても災害復旧事業の申請に当っては、この覚書の趣旨に基き、荀も二重に申請することのないよう内部調整を密にするとともに貴管下の各公共団体及び関係機関に対しても即刻この旨を徹底されるよう御取り計らい願いたい。
一 関係部長の証明書は申請目論見書(査定調書)に添付し、協議の調わないものがあるときは、目論見書の当該工事の上欄に△印を附して、証明書に△印は協議不調を示す旨を記しておくこと。
二 覚書四の標識杭については左記によること。
1 頭部の色別 建設省 県工事 青、市町村工事 赤
農林省 農地局関係 黒
林野庁 林地荒廃防止施設 白
林野庁 林道 緑
2 記入事項 所属年災、申請番号、工事延長、起終点の別
災害復旧事業の二重採択防止に関する覚書
建設、農林両省は災害復旧事業の国費の重複支出を防止するため、災害復旧事業の査定に際しては、左記事項を厳守するものとする。
記
一 建設、農林両省は、左の各号に掲げる施設については、当該各号に定めるところに従い、査定するものとすること。
1 用水取入堰と河川護岸
(1) 用水取入堰の元付工は、原形の井堰を基準として上流側は井堰上流から一〇メートル(但し、取入口が井堰上流端から上流一〇メートル以上にある場合は取入口)まで、下流側は水叩(保護工を除く)先端から一五メートルまでとし、河川護岸工は、右部分を控除するものとする。
(2) 河川護岸の法線を後退して復旧する場合において必要な井堰、取入暗渠、橋梁及びサイフォンの継足等の工事については、これらの施設が被災していないときは河川工事の附帯工事とし、これらの施設が被災しているときは、それぞれこれらの施設の工事とする。
2 井堰と床止
床止で井堰の効用を兼ねるものについては、治水上必要な限度までの工事は床止工とし、その他の工事は井堰工とする。この場合において井堰工は、床止工の決定後これと照合して決定するものとする。
3 堤防護岸等と堤塘
河川の堤防護岸に関する工事のうち、治水上の影響が軽微なもので農地又は農業用施設と関連して施行する必要があるものは、堤塘工事とする。
4 市町村道と農道又は林道
市町村道と農道又は林道とが重複する部分の道路工事は、市町村道の工事とする。
5 河川と農道又は林道
(1) 河川の堤防であって農道又は林道を兼用しているものについては、治水上必要な限度までを河川工事とし、その他の工事は農道工事又は林道工事とする。
(2) 河川に農道橋又は林道橋が架設されている場合における河川の護岸については、橋台として必要な部分の工事は農道工事又は林道工事とし、その他の部分の工事は河川工事とする。
(3) 河川の護岸を農道又は林道が併用している場合においては、農道又は林道のみを保護する目的の護岸は農道工事又は林道工事とし、その他の工事は河川工事とする。
6 砂防堰堤と林道
被災した砂防堰堤の復旧位置が変ることによつて林道が埋没する場合における林道の工事は、林道が被災していないときは砂防堰堤工事の附帯工事とし、林道が被災しているときは原形の復旧までは林道工事、その他必要を生じた増加工事は砂防堰堤工事の附帯工事とする。
7 河川、砂防設備及び道路と林地荒廃防止施設
(1) 河川工事又は道路工事に直接関係のある山留施設の工事は、当該河川工事又は道路工事に含め、その他の山留施設の工事は林地荒廃防止施設の工事とする。
(2) 渓流部分における工事については、昭和四年一二月六日発土第八五号地方長官宛内務、農林両次官依命通牒「砂防事務ト荒廃地復旧及開墾地復旧事務ノ取扱ノ件」によるものとする。
(3) (1)及び(2)により所管を定め難い場合、工法の関連上必要のある場合又は大規模な地辷り地帯における場合は、特に協議の上決定するものとする。
二 一に掲げる施設その他二重申請のおそれある施設については、申請に先立ち予め申請者側の関係部課において協議調整させ協議が調つたものには関係部長の証明書を添付させるものとする。但し、協議が調わない箇所については、申請目論見書(査定調書)にその表示をさせるものとする。
三 前項但書に該当する箇所については、採択を保留し協議が調つた後に決定するものとする。
四 申請箇所には両省の所管を色別した標識杭を現地に必らず打たせるものとする。
五 建設省河川局長、農林省農地局長及び林野庁長官は、この覚書及びその実施に関する細目につき、連名で各都道府県知事に通知するものとする。
昭和三〇年七月二三日
建設省河川局長 米田正文
農林省農地局長 渡部伍良
林野庁長官 柴田栄