河砂発第五〇号
昭和五七年九月一日

地方建設局河川部長・北海道開発局建設部長・沖縄総合事務局開発建設部長・各都道府県土木担当部長あて

河川局砂防部長通達


総合的な土石流対策の推進について

標記については、昭和五七年八月一〇日付け建設省河砂発第四五号をもって建設事務次官から通達されたが、なお左記に留意のうえその実施に遺憾なきを期せられたい。
(なお、関係市町村にもこの旨を周知徹底されたい。)

1 土石流危険渓流の定義について

「土石流危険渓流」とは、昭和五三年八月四日付け建設省河砂発第四六号による土石流危険渓流および危険区域調査等により、土石流の発生の危険性があり、五戸以上の人家(五戸以下でも官公署・学校・病院・駅・旅館・発電所等のある場合を含む)に被害を生ずるおそれがあることとされた渓流をいうものであること。

2 砂防指定地の指定及び砂防工事の推進について

(1) 土石流危険渓流については積極的に砂防指定地の指定を行うこととしているので他事業の関係部局と協議のうえ、昭和四二年五月六日付け建設省河砂発第五〇号により、調書等を作成し提出するものとする。
(2) 土石流に対処するための工事については、昭和五七年度を初年度とする第六次治水事業五箇年計画において重点事項としてあげているので、特に土石流が発生するおそれの高い渓流、保全対象となる人家又は公共的な施設(以下「保全対象人家等」という。)の多い渓流について重点的に砂防工事を推進するよう努めるものとする。

3 土石流危険渓流の周知について

(1) 関係市町村に提供する土石流危険渓流に関する資料は別紙1を標準として作成するものとする。
(2) 市町村が関係住民に提供する土石流危険渓流に関する資料は、別紙2を標準として作成するよう指導するものとする。
(3) 市町村が土石流危険渓流である旨を現地に表示する場合は、別紙3「表示の実施に関する方針」によることとするよう指導するものとし、都道府県の砂防担当部局は、土石流危険渓流の表示等をしようとする市町村に対して表示に要する費用等につき財政上の援助を行なうように努めるものとする。

4 警戒避難体制の確立について

(1) 土石流危険渓流周辺における警戒避難体制の整備を早急に図るため、次の事項を行うよう関係市町村を指導するものとする。

(ア) 関係住民において警戒又は避難を行うべき基準(以下「警戒避難基準」という。)の設定
(イ) 予報、警報及び避難命令の発令及び伝達方法の周知
(ウ) 適切な避難方法の周知
(エ) 適切な避難場所の選定及び周知
(オ) その他警戒避難のために必要な事項

(2) 警戒避難基準は原則として、土石流危険渓流ごとに設定するよう指導するものとする。
(3) 警戒避難基準は、原則として雨量によって設定するものとし、過去の土石流災害発生時の雨量、近隣の道路の通行規制基準としての雨量、急傾斜地等に関する警戒避難の基準雨量、研究機関の成果等を参考に渓流周辺の崩壊等の状況を考慮して地方建設局(北海道開発局及び沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)及び都道府県の関係部局、その他関係機関と協議して決定するように指導するものとする。

なお、警戒避難基準には過去の災害例等から、停電器機の故障等最悪条件下においても次に掲げるような場合には住民が自発的に警戒避難を行うべき旨を定めるよう指導するものとする。
(ア) 立木の裂ける音が聞こえる場合や、巨礫の流れが聞こえる場合
(イ) 渓流の流水が急激に濁りだした場合や、流木等がまざりはじめた場合
(ウ) 降雨が続いているにもかかわらず渓流の水位が急激に減少しはじめた場合(上流に崩壊が発生し、流れが止められている危険があるため)
(エ) 渓流の水位が降雨量の減少にもかかわらず低下しない場合
(オ) 渓流の付近の斜面において落石や斜面の崩壊が生じはじめた場合やその兆候が出はじめた場合

(4) 予報、警報及び避難命令は迅速かつ正確に地元住民に伝達されるようにするほか、地元住民自らが異常気象時に的確に判断できるような体制をとるように指導するものとする。
(5) 避難方法については、土石流危険渓流に直角の方向に避難する等安全な方法を地元住民に周知するよう指導するものとする。
(6) 避難場所は、次の点を考慮して選定するよう指導するものとする。

(ア) 土石流、がけ崩れ、地すべり等によって被害を受けるおそれのない場所であること。
(イ) 保全対象人家等からできる限り近距離にあること。

(7) 警戒避難体制の整備については、水防、消防、警察、道路管理者等と協議し、適切な警戒避難措置がとられるように指導するものとする。

5 住宅の移転の促進について

住宅の移転の促進については、防災集団移転促進事業、がけ地近接危険住宅移転事業等の制度の活用により行うよう市町村を指導するものとし、都道府県の砂防担当部局は住宅担当部局等と十分協議するものとする。

6 情報の収集・伝達、防災意識の普及及び防災活動の実施について

(1) 土石流に関する情報、日常の防災活動、降雨時の対応等についての地域住民への周知については、パンフレット、広報誌、講演会等の積極的な活用を図るよう指導するものとする。
(2) 市町村及び地元住民が土石流危険渓流の状況を必要に応じて巡視し、異常な状況の早期発見に努めるよう指導するとともに、関係機関と協力して、土石流災害に対する総合的な防災訓練を実施するよう努めるものとする。

7 総合土石流対策推進連絡会について

(1) 土石流危険渓流の周知、警戒避難体制の確立等を効率的・総合的に実施するため、都道府県の砂防担当部局は、地方建設局及び都道府県の関係部局その他関係機関よりなる総合土石流対策推進連絡会を設置するものとする。
(2) 総合土石流対策推進連絡会の運営に関しては別紙5の標準要領を参考とされたい。

8 その他

土石流により五戸未満の人家に被害を生じるおそれのある渓流及び新たに家屋の建築されることが予想される渓流についても必要があれば次官通達及び本通達に準じて、土石流災害の防止に努めるものとする。


別紙1
<別添資料>



別紙2
<別添資料>



別紙3

表示の実施に関する方針

1 土石流危険渓流である旨の表示(以下「表示」という。)をしようとする時は、あらかじめ次の措置を講じておくよう市町村を指導するものとする。

(1) 市町村防災会議にはかって地域防災計画に、当該市町村の区域に係る土石流危険渓流を掲載する。
(2) 地域防災計画に掲載した土石流危険渓流に関する情報を関係住民に提供できるようにしておく。

2 表示の実施については、土石流が発生する危険度、保全対象人家等の位置及び戸数、公共公益施設の位置、過去に発生した土石流の状況、関係住民の意向等を総合的に考慮し決定するよう指導するものとする。
3 表示は、別紙4の例を標準とする標識の設置により行うものとし、その位置は、土石流により被害を受けるおそれのある区域、保全対象人家等が密集している区域、人目につきやすい場所等を考慮し総合土石流対策推進連絡会の議を経て定めるよう指導するものとする。
4 当該渓流における土石流に対処するための砂防工事の進捗、流域の状況の変化等によつて土石流による災害のおそれがなくなった場合には、総合土石流対策推進連絡会の議を経て表示の解除を行なうよう指導するものとする。
5 表示をしようとする場合は、市町村はあらかじめ、地域住民の避難とあわせて一般通行車両の迂回、通行の禁止等も含めた警戒避難体制を確立しておくものとする。
6 地方建設局及び都道府県の砂防担当部局は、市町村が表示しようとする渓流に対して、砂防指定地の指定、砂防工事の実施の促進に努めるものとする。



別紙4

注)

1 白地
2 赤枠
3 文字は「危険」のみ赤、他は黒



別紙5

○○都道府県総合土石流対策推進連絡会運営要領

(目的)

第一条 この要領は、総合的な土石流対策の円滑な実施を図るため、○○都道府県総合土石流対策推進連絡会(以下「連絡会」という。)の組織及び運営について必要な事項を定めることを目的とする。

(所掌事務)

第二条 連絡会は、各都道府県におかれ、次の事項について連絡し調整をはかる。

一 土石流危険渓流である旨の表示の実施及び解除に関する事項
二 警戒避難体制の確立に関し必要な事項
三 その他必要な事項
(組織)

第三条 連絡会の委員は次のとおりとする。

一 当該都道府県の砂防担当部局の長
二 ○○地方建設局(北海道開発局、沖縄総合事務局)の砂防担当部局の長
三 当該都道府県の警察、消防、水防、道路等の関係部局の長
四 ○○地方建設局(北海道開発局、沖縄総合事務局)の道路担当部局の長
五 その他、地域の実情に応じ必要な者
(会長)

第四条 会長は都道府県の砂防担当部局の長をもつて充てる。
2 会長は連絡会を代表する。
3 会長に事故があるときは会長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。

(会議)

第五条 連絡会は、会長が招集する。
2 市町村長は、会長に対し連絡会の招集を要求することができる。

(幹事)

第六条 連絡会に連絡会の事務を処理するため幹事若干名を置く。
2 幹事は第三条各号に掲げる者にはかつて関係行政機関等の職員のうちから会長が任命する。

(庶務)

第七条 連絡会の庶務は都道府県砂防担当課において処理する。

(その他)

第八条 この要領に定めるもののほか、連絡会の運営に関し必要な事項は、会長が連絡会にはかつて定める。


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