建設省道企発第一〇六号
昭和四三年一二月七日

北海道開発局建設部長・各地方建設局道路部長・各都道府県土木部長・各指定市土木局長・日本道路公団担当部長・首都高速道路公団担当部長・阪神高速道路公団担当部長あて

道路局企画課長通達


道路トンネルにおける非常用施設(警報装置)の標準仕様について


道路トンネルにおける非常用施設の標準仕様については、先に建設省道企発第五四号(昭和四二年八月四日付)により通知したが、今般、別冊のとおり、道路トンネルにおける非常用施設(警報装置)について改訂することとしたので、今後はこれを標準として整備されたく通知する。
なお、今回の改訂に抵触しない項目については従前のとおり実施されたい。

おって、貴管下市町村にもこの旨周知徹底されたい。
(都道府県土木部長あてのみ)
注: 前回の仕様(建設省道企発第五四号)のうち、今回の改訂により、削除される項目は下記のとおりである。

I 二・二―一〜二―三

四・四―一・四―二

II 一〜四(全項)



別冊

道路トンネルにおける非常用施設の標準仕様書(警報装置)

1 一般事項
1―1 本仕様書はトンネル警報装置(押ボタン操作により可視、可聴警報を発し運転者に道路トンネル内の事故発生を知らせるための装置)について適用するものとする。

(解説) この仕様書は建設省の直轄事業で実施するトンネルの非常用施設(警報装置)について規定したものであるが、日本道路公団、都道府県等が実施する際にもこれを準用するものとする。

1―2 本装置は本仕様書の定めによるほかは、電気設備に関する技術規準、専用設備端末機器の技術規準、その他関係法令の規定に適合したものでなければならない。
1―3 本仕様書と特記仕様書の記載に相違があるときは特記仕様書が優先するものとする。
1―4 本装置に使用する材料はJIS、EIAJ、JEC等に規格の定めがあるものは規格合格品を使用しなければならない。
2 外周条件
2―1 周囲温度−10℃〜+40℃で異状を生じないものでなければならない。

(解説) 周囲温度は一般的な値を定めたものであって、寒冷地にあっては適宜最低温度を決定する。特に低温になる場合は保温等を考慮しなければならない。

2―2 屋外に設置する機器類については、JIS・C―0920に規定する防雨形とし、トンネル内に設置する機器類については防噴流計とする。また屋外に設置するものについては瞬間最大風速60m/secに耐えるものでなければならない。

(解説) JIS・C―0920によると

・防雨形とは鉛直角から60の範囲の降雨によって有害な影響のないもの。
・防噴流形とはいかなる方向からの水の直接噴流をうけても有害な影響のないもの。

と規定されている。

トンネル内部に設置する機器については常時漏水にさらされている場合、清掃のため噴流を使用する場合が考えられるので、防噴流形をとることとした。
屋外に設置する機器は雨の方向、量、風の強さ、継続時間などによって影響をうけるが、JISの当規定による試験方法は毎分数mm〜数10mmの雨量相当と実測されており、一般的にはJIS規定の防雨形で十分であると考えられる。

3 機器仕様

3―1 警報装置の構成

3―1―1 警報装置は押ボタン発信機、受信機、標示部、警報音発生部とこれらの動作を集中制御する制御部および電源部から構成するものとする。
3―1―2 警報装置は押ボタン発信機の押ボタンを押すことによりトンネル坑口付近に設置された標示部および警報音発生部を動作させ、同時に道路管理者あるいはその他情報の伝達処理に便利な箇所に設置した受信機にも可視、可聴信号を発するものとする。

(解説) 受信機を必要に応じ道路管理者以外にも置くことができるとしたのは、道路管理者が遠隔の場合、もよりの道路モニター、ドライブイン、ガソリンスタンドなど昼夜間とも直ちに情況が確認でき道路管理者へ通報できるものに委託しておくことが有利な場合を考えたためである。
3―2 警報装置各部の構造

3―2―1 押ボタン発信機はトンネル内において火災その他の事故発生時に当事者または発見者が保護板を指先で破り、押ボタンを押す構造で、自治省令第9号(昭和39年4月15日付)に規定するP型発信機に準ずる外観でボタンは自動復帰型とし、接点は密封型など耐蝕性のすぐれた構造のものとする。また点検のため蓋は簡単にあけることができるものとする。表面上部中央に「非常警報装置」の文字板を付けなければならない。

(解説) 自治省令第9号に規定するP型発信機は自己保持型押ボタンスイッチ、開放型接点を持っているが、取り扱いの簡易とトンネル内の湿気、ちりなどを考慮して自動復帰型押ボタンスイッチ、密封型接点を使用することとした。

外観は一般に見なれた形が好ましいのでP型に準ずることとしたものである。

3―2―2 押ボタン発信機の上方に円形赤色の表示灯を設けるものとする。原則として、表示灯ランプの定格は28V5Wとし、供給電圧は24Vとする。ランプの定格電圧での寿命は1,000時間以上、効率は5lm/W以上とする。

(解説) 寿命1,000時間のランプを定格電圧で使用すると連続点灯で約1.5カ月で交換の必要がある。しかし寿命は電圧の約13乗に逆比例するから定格電圧28Vのランプを24Vで使用すると寿命は約750%となり、1,000時間のものは7,500時間となる。一方光束は電圧の約3.5乗に比例するので、この場合は定格の約60%に減ずるが、本来このランプは照明用でなく、設置場所の表示用であるから、明るさよりも保守の便を考えて定格電圧28Vのものを24Vで使用することとしたものである。

3―2―3 受信機は押ボタン発信機からの信号を受信し可視、可聴の信号を発するもので可聴信号のみの切断電鍵をもつ構造とする。また、押ボタン発信機を備え、電話等の通報により受信機側からも警報動作が行なえるようにするものとする。

(解説) 押ボタン発信機を押さずに直接道路管理者などに電話または口頭で通報される場合を予想して標示部ならびに警報音発生部を動作させるために受信機にも押ボタンを備えるようにしたものである。

3―2―4 標示部は標示盤と点滅灯から構成される。標示盤は高さ1,000mm、横2,000mmとし「トンネル内事故発生」の文字を赤色で表示するもので、原則として内照式であって点灯時以外は文字が明瞭に見えないものとし、文字の大きさなどは図面に示すとおりとする。直射日光の当るおそれのある場合はルーバーを付さなければならない。

標示盤上部には赤色点滅灯をつけ、警報時には点滅させる。点滅灯は60W以上の白熱電球とし、原則として1分間45回の点滅をさせるものとする。

(解説) 60km/hで走行する車の運転者が標示盤を発見してのち、内容を判読、判読し、制動動作を起し車が完全に停止するまでの距離は道路情況が最悪の場合で、約110mになる。一方、本仕様書にもとづいた供試体を用いて確認距離を走行実験により測定した結果によると、110mで確認するために必要な文字の高さは500mmという報告がある。

なお、一般の内部照明式道路標識においては字の高さは450mm程度が多く使われている。したがって主要な文字の大きさは高さ500mm、幅350mmとし「トンネル内」の文字については高さ170mm、幅160mmとした。
また標示盤を利用して「トンネル内作業中」など、その他必要な標示ができるようにすることはさしつかえないが、非常時には必ず「トンネル内事故発生」の標示が行なえるようにしておかなければならない。

3―2―5 警報音発生部はサイレンを使用し、音源から20mの位置で90ホン以上120ホン以下とする。警報音は1分ないし5分の間のあらかじめ設定する任意の時間で自動停止するものとする。

(解説) 高速走行中の自動車運転者の周囲の騒音は実験値によると閉窓時最大80ホン程度であり、また外部騒音の窓による遮音効果は25dbであった。約700c/sec程度の警報音を会話音(約55ホン)程度の大きさに聞こえさせるために窓外に発生させる音量をフレッチャー(FIetcher)のデータから求めると、自動車騒音80ホンに対する遮へい効果(他の音があると、ある音を聞く能力が減ずること)が35dbであるから35+25+55=115ホンの音量を認知させるべき位置の窓外に発生させればよいことになる。

道路運送車両の保安基準によるパトロールカーのサイレンは前方20mの位置で90ホン以上120ホン以下と規定されており、実用上はこの程度のものでさしつかえない。音量は距離の自乗に逆比例するので、サイレン近くにある人家または自動車にとっては最大可覚値を超えることになり、不快感を与えることになる。したがって、できるだけ短時間に中止させる方がよいので、60km/hで走行中の1km先の自動車がトンネルに到着するのに要する時間としての1分間を吹鳴の最少時間として、状況に応じ5分まで延長できるようにし、その後自動的に停止させることに規定した。

3―2―6 制御部は本装置を集中制御するものでトンネル坑口付近に設置し、制御回路、標示部回路、警報音回路、動作後のリセット回路等、本装置に必要なすべての回路およびこれらに供給する電源部を屋外防雨形金属製箱に収容したもので施錠できる構造とする。

(解説) 標示盤はトンネル坑口に1面づつ計2面付くことになるがトンネル延長が短いときは1坑口の制御部から2面の標示盤に対して電源供給が可能であるが、長いときは電線路の電圧降下を考えると経済的に不利になる。このような場合には両坑口にそれぞれ電源部を置いた方が有利となるので副制御部を設置してもよい。ここで副制御部とは制御部からの警報信号をうけて標示部などを動作させるための電源部を含めた装置である。

3―2―7 電源部は商用電源を受電し浮動充電方式により直流を供給するものとする。直流の電圧は原則として24Vとし電池容量は商用電源停電の場合、10分間以上警報動作が可能な容量とする。

(解説) 電源電圧を原則として直流の24Vにしたのは商用電源の停止に対処するのに負荷設備の容量が小さい場合には交流でこれを確保するより、電池を使用して直流方式にした方が設備の維持管理が簡単であり確実性も高い。また電圧を24Vとしたのはトンネル延長1,000m以下のものが多く、この場合、線路容量から考えて電源を両坑口に配置すればトンネル内負荷(押ボタン表示ランプ)だけとなるので施工上さほど問題ないと考えられる。特に長いトンネルの場合には換気設備等が要求され、これの電源確保のために別途交流による無停電装置等が設置される場合もあるのでこれは例外とした。

電池容量は商用配電系統の一般的な故障停電時間を考慮してそれぞれ地域の停電時間等実情にあわせ経済的に定めるべきであるが最低10分間以上は警報動作を行なうことが必要と考えられる。

3―2―8 制御部と受信機の間の制御、監視信号は交流信号に変換して送出する。レベルは送信端で−10dbm、周波数偏差は0.1%以下とする。

(解説) 制御部と受信機の距離は一般には数km以上となるが、約10km以上の場合は制御信号は交流に変換して送出しなければならない。また、これ以下でも交流に変換することにより確実性がます。したがって、距離が数百mなど極端に短い場合は例外として一般には交流に変換することとしたものである。本装置では最小限、監視1項目、制御1項目必要であるが、交流信号に変換することによって必要な場合は項目数をますこともできる。

また電々公社の専用線を使用する場合は専用設備端末機器の技術規準に関する規則(公社公示第29号S38.6.20)によることが必要であるが、これによれば送信レベルは−10dbmに決められている。

3―3 警報装置の点検のため次の回路をもたなければならない。

(イ) 制御部を開扉して制御部から動作、復帰の試験が行なえること。
(ロ) 制御部を開扉することにより、押ボタン発信機からの信号は標示部を動作させず、疑似回路を動作させるように切り換えられること。
(ハ) 幹線路断線のときは受信機に可視可聴の障害表示をすること。

(解説) 幹線路とは制御部から押ボタン発信機および受信機への電線路である。疑似回路とは標示部の実際動作を疑似させるもので点検の際トンネル内の押ボタン発信機を押したときは警報を発しないようにした。標示部の動作は制御部内の押ボタンを押すことにより行なう。


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