建設省都街発第一〇号・道企発第三三号
平成元年五月一九日

北海道開発局長・沖縄総合事務局長・各地方建設局長・各都道府県知事・各指定市長・日本道路公団総裁・道都高速道路公団理事長・阪神高速道路公団理事長・本州四国連絡橋公団総裁あて

都市局長・道路局長通達


道路トンネル技術基準(一部改正)について

今般、道路トンネル技術基準(昭和四九年一一月二九日、都街発第六三号、道企発第九一号)を別添のとおり改正したので、今後これによられたく通知する。
なお、都道府県知事におかれては、貴管下市町村に対しても周知徹底されたくお願いする。



別添

道路トンネル技術基準

一 総則

一―一 目的
本基準は、道路トンネルの整備に関する一般的技術的基準を定め、その合理的な建設および維持修繕を行うのに資することを目的とする。
一―二 適用の範囲
本基準は、道路法の道路に道路管理者が主として山岳トンネル工法により建設する道路トンネルに適用する。
一―三 用語の定義
本基準における用語の定義は左記各号に定めるとおりとする。

(一) 山岳トンネル工法…地山を掘削したのち、吹付けコンクリート・ロックボルト・鋼アーチ支保工・覆工等により地山を支持してトンネルを建設する工法をいう。
(二) トンネルの付属施設…道路構造令第三四条に示されるトンネルに付属する換気施設、照明施設、非常用施設をいう。
(三) 地山条件…トンネルおよびその周辺地山の地形・地質および湧水に関する条件をいう。
(四) 地山分類…掘削の難易や土圧等の地山挙動を評価できるように、地山を種々の物性により類型化して区分したものをいう。
(五) 支保構造…トンネルを安定に保つために設ける構造物をいい、構成する部材としては支保工・覆工等がある。
(六) 支保工…支保構造部材のうち、一般に掘削時に地山を支持する吹付けコンクリート・ロックボルト・鋼アーチ支保工等をいう。
(七) 覆工…支保構造部材のうち、支保工により地山を支持したのちに、別作業として施工するコンクリート等による内巻き部材をいう。
(八) 掘削方式…掘削の手段によって分類したもので、掘削方式には爆破掘削・機械掘削・人力掘削がある。
(九) 掘削工法…掘削断面の分割方法によって決まる施工方法であり、全断面工法・上部半断面工法・導坑先進工法等がある。
(一〇) 補助工法…トンネルの切羽および天端等の安定のために、通常の設備・人員編成を大幅に変更することなく掘削のサイクルの中で施工する補助的な工法のことをいう。
(一一) 特殊工法…掘削が困難な地山の施工や構造物との近接施工のために、施工設備・人員編成等を新たに準備して行う特殊な工法のことをいう。
(一二) 設計交通容量…道路の計画水準に応じて、当該道路の可能交通容量より求められ、道路を設計する場合に用いる交通量をいう。
(一三) 設計時間交通量…道路の設計の基本となる交通量で、当該道路の計画目標年次における時間当りの交通量をいう。
(一四) 煤煙…換気の対象物質の一つであり、自動車が排出するディーゼル黒煙等からなる浮遊粉塵をいう。
(一五) 設計濃度…換気施設の設計に用いる煤煙あるいは一酸化炭素の目標濃度をいう。
(一六) 所要換気量…換気の対象物質の濃度を設計濃度まで希釈するために必要な新鮮空気量をいう。
(一七) 換気方式…トンネルの換気を行う手段によって分類したもので、縦流式換気、横流式換気等がある。
二 計画・調査

二―一 計画

二―一―一 計画一般
(一) トンネルの計画にあたっては、社会性、経済性を考慮するとともに、トンネル部および前後に接続する道路部を含めて総合的に検討しなければならない。
(二) トンネル構造の計画にあたっては、トンネルの付属施設との関連を考慮しなければならない。
二―一―二 構造規格

トンネルの幅員構成、建築限界、線形などの構造規格は道路構造令の規定によるものとする。

二―一―三 トンネル位置の選定
(一) 調査の結果をもとに、いくつかの比較路線を選定し、比較検討のうえ予定路線を決定するものとする。
(二) 予定路線については、適切な地形図を作成し、調査資料に基づいて、トンネル予定位置の詳細な検討を行わなければならない。

二―二 調査

二―二―一 調査一般

トンネルの建設にあたっては、安全で合理的な計画、設計、施工および維持管理の基礎資料を得るため、トンネルの規模に応じて、建設の段階ごとに、系統的に地形、地質、環境等に関する調査を実施するものとする。

二―二―二 既往資料の収集

地形、地質、気象、災害、環境、土地利用および工事等に関する既往資料を収集するものとする。

二―二―三 地形図の作成

計画・設計の基礎となる地形図の作成は、その目的に応じて、必要な精度を確保できるような縮尺で行わなければならない。

二―二―四 地形・地質調査

地形・地質調査は、地形図、空中写真等の判読結果および既存収集資料をもとに、現地踏査、物理探査、ボーリング等を系統的に実施し、順次精度を高めるように行わなければならない。

二―二―五 気象調査

気象に関する次の事項について、資料の収集、現地調査、観測を適宜行うものとする。

(一) 降雨、降雪 (二) 気温、湿度、水温、地中温度 (三) 風向、風速 (四) 霧 (五) なだれ、吹きだまり、出水
二―二―六 環境調査

トンネルの周辺における環境について、必要な調査を行うものとする。

二―二―七 施工条件調査

工事用道路、工事用設備、土捨場等の計画に必要な調査を行わなければならない。

二―二―八 関係法令等に関する調査

トンネルの計画にあたっては、法的規制と制約およびその対策について必要な調査を行わなければならない。

三 設計

三―一 概説

三―一―一 設計一般
(一) トンネルの設計は、所要の構造規格、安全性および経済性を確保し、道路トンネルの特殊性と供用後の維持などを考慮して行わなければならない。
(二) トンネル構造の設計にあたっては、地山条件、立地条件、トンネルの規模、工期および施工法等を考慮しなければならない。
(三) 施工中、当初の設計が現場の条件に適合しないと認めた場合には、遅滞なく設計の変更を行わなければならない。
三―一―二 地山分類

トンネルの設計・施工にあたっては、地質調査等の結果に技術的判断を加えて地山分類を行わなければならない。
三―二 線形設計

三―二―一 平面線形

トンネルの平面線形は、原則として、直線あるいは大半径の曲線を用いるものとする。

三―二―二 縦断線形
(一) トンネルの縦断勾配は、湧水等の排水を妨げない範囲で、極力小さくするのを原則とする。
(二) 縦断勾配の変化点には、極力大半径の縦断曲線を入れるものとする。
三―二―三 併設トンネルおよび他構造物との間隔

トンネルを二本以上併設する場合、または他の構造物に近接してトンネルを設置する場合には、相互の影響に配慮して設計を行わなければならない。

三―二―四 トンネルに接続する道路の線形等
(一) トンネルに接続する道路の線形は、安全な走行を確保するとともに、トンネルの特性を考慮した平面および縦断線形としなければならない。特に進入側にあっては、十分な距離からトンネル坑口を識別できるよう配慮するものとする。
(二) トンネルとそれに接続する道路との路肩幅員の差は、適切な区間長ですりつけるものとする。

三―三 断面の設計

三―三―一 内空断面
(一) トンネルの内空断面の形状と寸法は、道路構造令に定める所要の建築限界および換気等に必要な断面を包含し、トンネルの安全性と経済性を考慮して定めなければならない。
(二) 同一断面内に、自動車、自転車および歩行者を通行させるトンネルにあっては、特に自転車および歩行者の安全に留意した構造としなければならない。
三―三―二 掘削断面

トンネルの掘削断面は、内空断面、支保構造、掘削工法および地山条件等を考慮して、合理的な形状としなければならない。
三―四 支保構造の設計

三―四―一 支保構造一般

支保構造の設計にあたっては、トンネルの掘削にともなう地山の挙動を的確にとらえ、施工の各段階に応じて支保構造部材を適切に配置し、地山条件に最も適合したものとしなければならない。

三―四―二 支保構造の選定

支保構造は、各支保構造部材の特徴を生かして効果的に組み合わせることを原則とする。

三―四―三 吹付けコンクリート
(一) 吹付けコンクリートの設計は、地山条件および使用目的に適合したものとしなければならない。
(二) 吹付けコンクリートの配合は、付着性が良く、必要な強度特性が得られるようにしなければならない。
三―四―四 ロックボルト
(一) ロックボルトの型式、配置および長さは、地山条件と使用目的に合わせて設計しなければならない。
(二) ロックボルトには、適切な肌落ちの防止対策を検討しなければならない。
三―四―五 鋼アーチ支保工
(一) 鋼アーチ支保工は、その使用目的を明確にし、使用目的に適合した設計としなければならない。
(二) 鋼アーチ支保工の設計にあたっては、その支持地盤の支持力等について検討しなければならない。
三―四―六 覆工
(一) 覆工はその目的、作用荷重に対して合理的な構造でなければならない。
(二) 覆工コンクリートの配合は、耐久性、施工性および強度を考慮して定めなければならない。
(三) ひび割れの発生が予測される場合には、原則としてひび割れ防止対策を設計するものとする。
三―四―七 標準的な支保構造の組合せ

支保構造の事前設計は、地山分類に応じて標準的な組合せを設定するものとする。
三―五 防水工・排水工

三―五―一 防水工・排水工一般
(一) トンネル内への漏水を防ぐため、適切な防水工を設計するものとする。
(二) トンネルの湧水等をすみやかにトンネル外へ排出できるよう、排水工を設計しなければならない。
三―五―二 防水工

湧水が予測される場合には、原則として防水工を設計するものとする。

三―五―三 排水工

トンネルの排水工は、湧水やトンネル洗浄水等が自然流下できる断面および勾配としなければならない。
三―六 坑口部の設計

三―六―一 坑口部の設計

坑口部の設計は、地山条件、立地条件などについて得られた精度の高い調査結果をもとに、斜面の安定、周辺構造物への影響等を考慮して行わなければならない。

三―六―二 坑門の設計

坑門は、地山条件、気象条件、周辺環境、車両の走行性等を考慮して位置、型式等を選定し、設計を行わなければならない。
三―七 その他の構造の設計

三―七―一 内装

内装を行う場合は、その目的を十分考慮し、耐久性、耐蝕性、耐火性、施工性および維持管理の難易を考慮して設計するものとする。

三―七―二 換気ダクト

換気ダクトは、空気力学的に有利で、かつ建設費、維持管理費等を考慮した配置、構造、断面形状および寸法としなければならない。

三―七―三 箱抜き等

消火栓、非常電話ボックス等の諸設備を設置するために、箱抜き等を行う場合には、必要に応じて覆工等の補強を行うものとする。

三―七―四 トンネル拡幅部・交差部
(一) トンネル内に非常駐車帯等の拡幅部を設ける場合には、設置間隔等を考慮し、できるだけ地山条件の良好な位置を選定するとともに、合理的な支保構造、断面形状および寸法としなければならない。
(二) 換気ダクト、連絡坑等との交差部は、形状寸法、地山条件、施工法等を考慮し、必要に応じて支保構造の補強等を行うものとする。また、交差角は極力直角に近いものとすることが望ましい。
三―七―五 地下換気所・立坑および斜坑

地下換気所、立坑および斜坑の計画・設計にあたっては、その目的、地山条件、立地条件、維持管理およびトンネル全体の構成を考慮しなければならない。

三―七―六 トンネル内舗装
(一) トンネル内舗装の設計は、湧水の影響、維持管理の困難さ等を考慮して、十分な耐久性が確保できるように行わなければならない。
(二) トンネル内舗装は、照明効果および維持管理について配慮するものとする。

三―八 矢板工法

三―八―一 適用の範囲

本章は、支保構造部材として矢板類を併用した鋼アーチ支保工を用いる工法(以下「矢板工法」という)に関する一般的な考え方および基準を示すものである。

三―八―二 矢板工法一般

矢板工法を採用するにあたっては、地山条件、各種支保構造部材の特徴等を考慮し、他工法との総合的な比較検討を行わなければならない。

三―八―三 鋼アーチ支保工
(一) 鋼アーチ支保工は、覆工完了までの間、地山荷重を安全に支えられる強度を有するものでなければならない。
(二) 鋼アーチ支保工は、沈下、転倒、ねじれ等を起こさないように支保工相互を強固に連結した設計としなければならない。
(三) 鋼アーチ支保工は、地山を十分支持できるよう地山条件に応じて矢板等の設計を行わなければならない。
三―八―四 覆工

覆工の設計巻厚は、地山条件、覆工材料、施工法等を考慮して決定しなければならない。

三―八―五 裏込め注入

地山条件が不良で、覆工に有害な影響があると推定される場合には、裏込め注入を行わなければならない。

三―八―六 湧水処理工

トンネル内の漏水を防ぐため、適切な湧水処理工を設計しなければならない。

四 施工

四―一 概説

四―一―一 施工一般

トンネルの施工は、設計図書に基づき、工事の安全と円滑な進捗および周辺環境に与える影響に留意して行わなければならない。

四―一―二 設計の変更

施工にあたって、当初の設計が現場の状況に適合しないと認められたときは、遅滞なく設計の変更を行わなければならない。
四―二 施工計画

四―二―一 施工計画

施工にあたっては、設計図書、工事規模、工期、地山条件、立地条件等に適合した施工計画を立てなければならない。

四―二―二 安全管理

施工にあたっては、関係法令等を遵守し、事故、災害の未然防止など安全管理に十分留意しなければならない。

四―二―三 環境保全

施工にあたっては、周辺の環境への影響を考慮し、必要に応じて騒音、振動、水質汚濁等に関する適切な措置をとらなければならない。
四―三 掘削

四―三―一 掘削一般

掘削にあたっては、極力地山を緩めないよう、適切な掘削方式、掘削工法等を選定しなければならない。

四―三―二 掘削方式

掘削方式の選定にあたっては、地山条件、トンネルの規模、立地条件等を十分考慮しなければならない。

四―三―三 掘削工法

掘削工法の選定にあたっては、断面の大きさ、形状、地山条件、立地条件、工期等を十分考慮しなければならない。

四―三―四 爆破掘削

爆破掘削にあたっては、岩質、断面形状、掘削工法およびトンネル周辺の環境への影響等を考慮した爆破計画をたて、地山の緩みを最小にとどめ平滑な掘削面を得るよう施工しなければならない。

四―三―五 機械掘削

機械掘削の採用にあたっては、トンネルの規模、地山条件および立地条件等と適用機械の種類と能力を十分検討しなければならない。

四―三―六 ずり処理

ずり処理の計画にあたっては、掘削工法、勾配、延長等を十分考慮して、全体に均衡のとれた積込み機械、運搬機械、土捨設備等を定めなければならない。

四―三―七 工事中の排水

施工中にトンネル内へ湧出する水は、すみやかに集水してトンネル外へ排出させなければならない。
四―四 支保工

四―四―一 支保工一般
(一) 支保工は、掘削後、すみやかに施工するものとする。
(二) 支保工施工後は、支保工規模の妥当性を確認し、状況に応じて適切な措置を講じなければならない。
四―四―二 吹付けコンクリート
(一) 吹付けコンクリートの配合は、地山条件および施工条件を考慮して、試験吹付けを行い、その効果を確認し定めなければならない。
(二) 吹付け面に湧水のある場合は、コンクリートの付着効果を低下させるので、吹付けに先立ち適切な対策を講じておかなければならない。
(三) 吹付けにあたっては、吹付け効率が低下しないように注意し、吹付け面はできるだけ平滑に仕上げ、鋼アーチ支保工を併用する場合は支保工と吹付けコンクリートが一体となるようにしなければならない。
(四) 吹付け作業中は、適切な防塵対策を講じなければならない。
四―四―三 ロックボルト
(一) ロックボルトは、所定の位置に地山と十分定着するよう打設しなければならない。
(二) ロックボルトには、地山状況に応じ適切な肌落ち防止対策を併用しなければならない。
四―四―四 鋼アーチ支保工
(一) 鋼アーチ支保工は、地山を十分に支持するよう所定の位置に正確に建込まなければならない。
(二) 鋼アーチ支保工の沈下の恐れのある場合には、あらかじめ対策を講じておかなければならない。
四―四―五 変状対策

支保工に変状が生じた場合には、すみやかに適切な対策を講じなければならない。
四―五 覆工

四―五―一 覆工一般

覆工は、その機能および構造を考慮し、支保工施工後、適切な時期および方法により施工しなければならない。

四―五―二 型わくの形式および構造
(一) 型わくの形式は、トンネルの規模、施工方法等を考慮して選定しなければならない。
(二) 型わくの構造は、コンクリート打設中の圧力に耐える強度をもち、据付、取外し、清掃、打設等の作業が能率的に行え、他の作業に支障のないよう配慮したものとしなければならない。
(三) 移動式型わくの規模は、一作業当たりの打設量および機械の打設能力等を考慮して定めなければならない。なお、打設作業、管理等のため、適当な位置に作業窓を設けなければならない。
(四) 組立式型わくは、組立て、取外し、運搬等が容易な構造とする。
四―五―三 型わくの据付
(一) 型わくは、所定の位置に据付け、コンクリート打設中に移動や沈下をおこさないよう固定しなければならない。
(二) つま板は、コンクリート打設中の圧力および締固め機の振動によりこわれたり、モルタル漏れのないよう配慮しなければならない。
四―五―四 コンクリートの現場配合

コンクリートの現場配合は、設計条件を満足し、適切なワーカービリチーを有するものとする。

四―五―五 コンクリートの運搬および打設
(一) コンクリートの運搬、打設にあたっては、材料の分離等により品質が低下しないよう留意しなければならない。
(二) 打設にあたっては、型わくに偏圧がかからないようにするとともに、すみずみまで行きわたるよう締固めなければならない。また、防水シート等のある場合は、これに損傷を与えないよう注意しなければならない。
四―五―六 インバート
(一) インバートコンクリートは、地山の状況、支保構造、施工性等を考慮し、適切な方法で施工しなければならない。
(二) コンクリートの打設にあたっては、掘削面等の清掃を行い、湧水のあるときは排水設備を設けなければならない。
(三) 打設コンクリートは、仕上がり形状に注意して十分締固めるものとする。なお、打設後の載荷は、所要の強度に達するまで行ってはならない。
四―五―七 型わくの取外し
(一) 型わくは、打設したコンクリートが必要な強度に達するまで取外してはならない。
(二) 型わくの取外しにあたっては、コンクリートに損傷を与えないよう、注意して行わなければならない。

四―六 補助工法
補助工法は、地山条件および立地条件等を考慮して、効果的で、かつ経済性、施工性に優れた工法を選定しなければならない。
四―七 防水工・排水工

四―七―一 防水工

防水工は、材料の損傷等により防水効果を損なうことがないよう十分留意して施工しなければならない。

四―七―二 排水工

排水工は、排水機能を損なうことがないよう十分留意して施工しなければならない。
四―八 坑口部の施工
坑口部の施工は、地質等の調査結果ならびに採用する補助工法等の機能および相互の補完関係を十分理解し、施工順序および観測方法を的確に決定して実施しなければならない。
四―九 不良地山の施工

四―九―一 不良地山の施工

不良地山における施工にあたっては、地質および湧水の変化、地山および支保構造部材の挙動に注意し、異常を認めた場合はすみやかに適切な措置を講じなければならない。

四―九―二 特殊工法

不良地山の施工あるいは構造物との近接施工等のため、特殊工法を採用するにあたっては、その目的、効果を十分検討し、施工法を決定しなければならない。
四―一〇 地下換気所・立坑および斜坑

四―一〇―一 地下換気所・立坑および斜坑一般

地下換気所、立坑および斜坑の施工にあたっては、設置の目的、工事規模、地山条件を考慮し、安全対策を特に重視して施工しなければならない。

四―一〇―二 地下換気所等

地下換気所等の施工法は、地山条件、立地条件、断面形状と規模、各種横坑との交差部、工期、施工の安全性等を十分検討のうえ決定しなければならない。

四―一〇―三 立坑
(一) 立坑の施工法は、地山条件、立地条件、立坑規模、トンネル全体の構造、換気施設、工期および施工の安全性等を十分検討のうえ決定しなければならない。
(二) 施工機械は、施工法と立坑の特殊性を考慮して選定するとともに、機械の運行管理を十分に行うことにより、事故防止に努めなければならない。
(三) 覆工方法は、深さ、断面形状、工程、掘削工法等に十分適合した工法を選定し、安全で能率的な施工を行わなければならない。
(四) 湧水は、作業の能率を妨げるばかりでなく、安全性を損なうことが多いので、着工前に地下水位の低下や地山強化等の処理を講ずるなど十分な対策を行なわなければならない。
四―一〇―四 斜坑
(一) 斜坑の施工法は、地山条件、立地条件、斜坑規模、トンネル全体の構造、換気設備、工期および施工の安全性等を検討のうえ決定しなければならない。
(二) 鋼アーチ支保工を使用する場合は、勾配を考慮した建込み角度で施工しなければならない。
(三) 斜坑の湧水は、切羽作業の障害にならないよう処理しなければならない。特に、切羽前方の地下水は地山の状況とともに事前に確認して対策を講じなければならない。

四―一一 施工管理

四―一一―一 施工管理一般

施工にあたっては、目的に適合した合理的なものを工期内に完成するよう、適切な施工管理を行わなければならない。

四―一一―二 工程管理

施工にあたっては、工期および品質管理等の条件を満たす施工計画を策定するとともに、適宜、計画を変更して適正な工程管理を行わなければならない。

四―一一―三 品質管理

トンネル構造物については、その使用材料、出来形等について所定の試験、検査を行うことにより品質の管理をしなければならない。

四―一一―四 観察・計測

施工中は、工事が安全かつ合理的に行えるよう、切羽の観察、計測およびその他の必要な調査を実施し、観察・計測等の結果は、すみやかに設計、施工に反映させなければならない。

四―一一―五 測量
(一) 坑外には施工のために必要な基準点を設置し、必要な精度で基準点間の相互関係を明らかにしなければならない。なお、坑外基準点は、き損、移動のおそれのないように十分保護しておかなければならない。
(二) 坑内測点は、適切な間隔で施工中に移動しないよう堅固に設置し、必要な精度および頻度で坑外基準点からの照査を行わなければならない。

四―一二 矢板工法

四―一二―一 矢板工法一般

矢板工法による施工にあたっては、地山の緩みを極力少なくするよう留意しなければならない。

四―一二―二 掘削工法

掘削工法の選定にあたっては、断面形状、地山条件、立地条件、工期等を十分考慮しなければならない。

四―一二―三 鋼アーチ支保工
(一) 鋼アーチ支保工は、地山を十分に支持するよう所定の位置に正確に建込むとともに、鋼アーチ支保工相互を緊結しなければならない。
(二) 鋼アーチ支保工は、地山を十分に支持できるよう矢板等を設置するとともに、くさびによって地山との間を締めつけなければならない。
四―一二―四 覆工
(一) 覆工が逆巻きの場合、アーチコンクリートと側壁コンクリートの継目は十分密着するように注意して施工しなければならない。
(二) 覆工が逆巻の場合、側壁コンクリートはアーチコンクリートに悪影響を及ぼさないよう、土平掘削後、すみやかに施工しなければならない。
(三) 覆工の施工にあたっては、可能な限り木材等を取り除かなければならない。
四―一二―五 裏込め注入

裏込め注入は、覆工コンクリートが所定の強度に達した後、早期に能率よく効果的な施工を行うとともに、注入に際しては十分な施工管理を行わなければならない。

五 換気

五―一 計画・調査

五―一―一 計画

道路トンネルの換気計画は、トンネル建設の全体計画の一環として綿密に行わなければならない。

五―一―二 調査

換気施設の計画に当たっては、交通、気象、環境及び地形・地物・地質等について調査を行わなければならない。

五―一―三 設計に用いる交通量

換気施設の設計に用いる交通量は、当該トンネルの設計交通容量を用いることを原則とする。ただし、当該道路の設計時間交通量が設計交通容量を大幅に下まわる場合には、交通量として設計時間交通量を用いることができる。

五―一―四 換気の対象物質及び濃度
(一) 換気施設の設計の対象とする有害物質は、煤煙及び一酸化炭素とする。
(二) 換気施設の設計に用いる煤煙及び一酸化炭素の設計濃度は、トンネル内の交通の安全性及び快適性並びに維持管理作業の安全性を確保するために必要な値とするものとし、当該道路の設計速度に応じ、次の表に示す値を標準とする。
 
 
 
 

 
 

 
 

 
 

設計速度
煤煙の設計濃度
(一〇〇m透過率)
一酸化炭素の設計濃度

 

 
八〇km/h以上
五〇%
一〇〇ppm
 
 
六〇km/h以上
四〇%
 
 

 
 

 
 

 

五―一―五 換気施設の必要性の検討

換気施設の必要性は、トンネルの延長、勾配、交通条件、気象条件等を考慮して検討するものとする。

五―一―六 換気方式の選定

換気方式は、その特徴を十分生かし、トンネルの延長、地形・地物・地質、交通条件、気象条件、環境条件等に応じ、有効かつ経済的な方式を選定するものとする。
五―二 設計

五―二―一 設計一般

換気施設の設計は、その各段階に応じ、必要かつ十分な精度で行わなければならない。

五―二―二 換気量

所要換気量は、五―一―四換気の対象物質及び濃度に示す値を確保するよう算定するものとする。

五―二―三 換気風圧

換気機の所要風圧は、対象とする換気系において所要換気量を満足するよう定めるものとする。

五―二―四 換気機

換気機は、使用上の条件に合致し、経済的かつ合理的となるよう設計しなければならない。

五―二―五 換気ダクト

換気ダクトは、空気力学的に合理的であり、かつ、建設費、維持費の両方を勘案して、経済的となるよう設計しなければならない。

五―二―六 換気所

換気所は、機能的な構造とし、位置の選定及び外観は特に維持管理及び環境上の配慮をして設計するものとする。
五―三 製作・施工

五―三―一 換気機の製作

換気機の製作及び据付けに当たっては、設計条件を満足し、完全かつ安全に行わなければならない。

五―三―二 換気ダクトの施工

換気ダクトの施工は、構造、断面形状、寸法、配置等が設計条件に合致するよう行わなければならない。

五―三―三 換気所の施工

換気所の施工は、トンネル本体工事、換気用立坑・斜坑工事等の土木工事及び換気所に収容される諸設備の工程を十分に配慮して行わなければならない。
五―四 運転・制御
換気機の運転・制御は、効果的かつ経済的に行わなければならない。

六 維持・修繕

六―一 概説
トンネルの維持・修繕にあたっては、あらかじめ点検保守要領を定めて実施するものとする。作業にあたっては、関係法規を遵守するとともに通行者および作業員の安全確保に十分配慮しなければならない。
六―二 清掃
トンネルの清掃にあたっては、よごれの程度、交通状況などを考慮し、効果的かつ能率的な清掃計画をたてるものとする。清掃は定期的に実施するのを原則とする。
六―三 路面
路面状況については、巡回点検等により常に注意し、異常が発見された場合には、すみやかに適切な処置を講じなければならない。
六―四 覆工
覆工については、定期的に巡回点検を行い、覆工にクラックや漏水等の異常を認めた場合は、すみやかに適切な処置を講じなければならない。
六―五 受変電および予備発電設備
受変電設備は、トンネル内の各施設に安定した電力を供給できるように保守しなければならない。また、予備発電設備は非常時の停電にさいして、必要電力を供給できるよう整備しておかなければならない。
六―六 換気設備
換気設備は、その関連機器との連動動作を含めて、定期的に点検保守しなければならない。
六―七 監視制御設備
監視制御設備は、各種機能の有機的、効率的な運営が行えるよう定期的に点検保守しなければならない。


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