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別添 防護柵の設置基準
第1章 総則
1―1 目的
本基準は、防護柵の設置の適正を期するための一般的技術基準を定めることを目的とする。
1―2 防護柵の定義
本基準において「防護柵」とは、主として進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道等に逸脱するのを防ぐとともに、車両乗員の傷害および車両の破損を最小限にとどめて、車両を正常な進行方向に復元させることを目的とし、副次的に運転者の視線を誘導し、また、歩行者および自転車(以下、「歩行者等」という。)の転落もしくはみだりな横断を抑制するなどの目的をそなえた施設をいう。
防護柵は、車両を対象とする車両用防護柵と歩行者等を対象とする歩行者自転車用柵に区分する。
第2章 車両用防護柵
2―1 設置区間
下記各号のいずれかに該当する区間または箇所(以下「区間」という。)においては、道路および交通の状況に応じて原則として、車両用防護柵を設置するものとする。
(1) 主として車両の路外(路側を含む。以下「路外」という。)への逸脱による乗員の人的被害の防止を目的として路側に車両用防護柵を設置する区間
1) 盛土、崖、擁壁、橋梁、高架などの区間で路外の危険度が高く必要と認められる区間
2) 海、湖、川、沼地、水路などに近接する区間で必要と認められる区間
3) 橋梁、高架、トンネルなどへの進入部または車道に近接する構造物などに関連し特に必要と認められる区間
(2) 主として車両の路外などへの逸脱による第三者への人的被害(以下「二次被害」という。)の防止を目的として車両用防護柵を設置する区間
1) 主として車両の路外への逸脱による二次被害の防止を目的として路側に車両用防護柵を設置する区間
1) 道路が鉄道もしくは軌道(併用軌道を除く。以下「鉄道等」という。)、他の道路などに立体交差または近接する区間で車両が路外に逸脱した場合に鉄道等、他道路などに進入するおそれのある区間
2) 分離帯を有する道路において、主として車両の対向車線への逸脱による二次被害の防止を目的として分離帯に車両用防護柵を設置する区間
1) 高速自動車国道、自動車専用道路
2) 走行速度の高い区間で縦断勾配または線形条件が厳しく対向車線への車両の逸脱による事故を防止するため特に必要と認められる区間
3) 主として車両の歩道、自転車道、自転車歩行車道(以下「歩道等」という。)への逸脱による二次被害の防止を目的として、歩道等と車道との境界(以下「歩車道境界」という。)に車両用防護柵を設置する区間(防護柵により歩道等を新設する場合を含む。)
1) 走行速度が高い区間などで沿道人家などへの車両の飛び込みによる重大な事故を防止するため特に必要と認められる区間
2) 走行速度が高い区間などで歩行者等の危険度が高くその保護のため必要と認められる区間
(3) その他の理由で必要な区間
1) 事故が多発する道路、または多発するおそれのある道路で防護柵の設置によりその効果があると認められる区間
2) 幅員、線形等道路および交通の状況に応じて必要と認められる区間
3) 気象条件により特に必要と認められる区間
2―2 種別
1 種別の設定
車両用防護柵は、強度(車両が衝突したときに突破されない衝撃度の大きさ)および設置場所に応じて、表―二・一のように種別を設定する。
表―2.1 種別の設定
2 性能
車両用防護柵は、種別に応じて、下記の各号に示す性能を有するものでなければならない。その際、衝突条件Aおよび衝突条件Bは、表―二・二に示す条件をいう。
表―2.2 衝突条件
(1) 車両の逸脱防止性能
1) 強度性能
衝突条件Aによる衝突に対して、防護柵が突破されない強度を有すること。
2) 変形性能
衝突条件Aによる衝突に対して、たわみ性防護柵にあっては、車両の最大進入行程が設置場所に応じ表―二・三の値を満足すること。剛性防護柵にあっては、主たる部材に塑性変形が生じないこと。
ここで、たわみ性防護柵および剛性防護柵とは防護柵の設計方法により下記に示す種類の防護柵をいう。
1) たわみ性防護柵
防護柵を構成する主たる部材の弾性および塑性変形を見込んで設計する防護柵
2) 剛性防護柵
防護柵を構成する主たる部材の弾性限界内での変形を見込んで設計する防護柵
表―2.3 たわみ性防護柵の車両の最大進入行程
(2) 乗員の安全性能
衝突条件Bによる衝突に対して、車両の受ける加速度が種別および種類に応じ表―二・四の値を満足すること。
表―2.4 車両の受ける加速度
(3) 車両の誘導性能
衝突条件Aおよび衝突条件Bでの衝突のいずれの場合においても以下の条件を満足すること。
1) 車両は、防護柵衝突後に横転などを生じないこと。
2) 防護柵衝突後の離脱速度は、衝突速度の六割以上であること。
3) 防護柵衝突後の離脱角度は、衝突速度の六割以下であること。
なお、離脱速度および離脱角度は、図―二・一に示すものである。
![]() 図―2.1 離脱速度、離脱角度
(4) 構成部材の飛散防止性能
衝突条件Aおよび衝突条件Bでの衝突のいずれの場合においても、車両衝突時に構成部材が大きく飛散しないこと。
3 構造および材料
(1) 防護柵高さ
車両用防護柵の路面から防護柵上端までの高さは、原則として、六〇cm以上一〇〇cm以下とする。
所要の性能を満たすためにやむを得ず一〇〇cmを超える高さとする場合は、車両衝突時における乗員頭部の安全性を確保できる構造としなければならない。
(2) 歩車道境界用車両用防護柵の形状
歩車道境界用車両用防護柵(種別Cp、Bp、Ap、SCpおよびSBp)は、ボルトなどの突起物、部材の継ぎ目などにより歩行者等に危害を及ぼすことのない形状とするなど歩行者等に配慮した形状を有しなければならない。
(3) 材料
車両用防護柵に用いる材料は、十分な強度を持ち、耐久性に優れ維持管理が容易なものを用いるものとする。
(4) 防錆・防食処理
車両用防護柵に用いる金属材料などのうち、錆または腐食が生じる材料は、JIS規格または同等以上の効果を有する方法により防錆・防食処理を施すものとする。特に環境が厳しく錆または腐食が生じやすい場所に設置する場合は、さらに防錆・防食効果を高めた処理を施すものとする。
また、錆・腐食などが生じる材料のうち、防錆・防食に関する処理がJIS規格に示されていない材料を用いる場合は、当該材料に適した防錆・防食処理の方法および効果が検証されているものを使用するものとする。
2―3 種別の適用
(1) 設置場所
車両用防護柵は、路側に設置する場合は路側用車両用防護柵(種別C、B、A、SC、SB、SAおよびSS)を、分離帯に設置する場合は分離帯用車両用防護柵(種別Cm、Bm、Am、SCm、SBm、SAmおよびSSm)を、また、歩車道境界に設置する場合は歩車道境界用車両用防護柵(種別Cp、Bp、Ap、SCpおよびSBp)を用いるものとする。
ただし、分離帯に設置する場合で施設帯の幅員に余裕のある場合または施設帯に構造物などが存在し分離帯用車両防護柵の設置が困難な場合は分離帯用車両用防護柵にかえて路側用車両用防護柵を用いることができる。
(2) 適用区間
車両用防護柵は、道路の区分、設計速度および設置する区間に応じて、原則として、表―二・五に示す種別を適用するものとする。
表―2.5 種別の適用
(注) 設計速度40km/h以下の道路では、C、Cm、Cpを使用することができる。
ここで、重大な被害が発生するおそれのある区間とは、大都市近郊鉄道・地方幹線鉄道との交差近接区間、高速自動車国道・自動車専用道路などとの交差近接区間、分離帯に防護柵を設置する区間で走行速度が特に高くかつ交通量が多い区間、その他重大な二次被害の発生するおそれのある区間、または、乗員の人的被害の防止上、路外の危険度が極めて高い区間をいう。
なお、走行速度や線形条件などにより特に衝撃度が高くなりやすい区間においては表―二・五に定める種別の一段階上またはそれ以上の種別を適用することができる。
2―4 設置方法
車両用防護柵を設置する際は、道路および交通の状況を十分考慮して、車両用防護柵の種類および形式を選定のうえ、防護柵の機能を発揮できるように設置するものとする。
(1) 種類および形式の選定
1) 種類の選定
車両用防護柵は原則としてたわみ性防護柵を選定するものとする。ただし、橋梁・高架などの構造物上に設置する場合、幅員の狭い分離帯など防護柵の変形を許容できない区間などに設置する場合においては、必要に応じて剛性防護柵を選定することができる。
2) 形式の選定
車両用防護柵の形式選定に当たっては、性能、経済性、維持修繕、施工の条件、分離帯の幅員、視線誘導、視認性の確保、走行上の安心感、快適展望性、周辺環境との調和などに十分留意してその形式を選定するものとする。
なお、車両用防護柵の形式としては、表―二・六に示すものなどがある。
表―2.6 車両用防護柵の形式
3) 短い構造物区間への対応
土工区間に短い橋梁などの構造物がある場合においては、原則として土工区間の車両用防護柵と同一の形式を選定するものとする。
ただし、異なる形式の防護柵を設置する必要のある場合はこの限りではない。
(2) 高さ
車両用防護柵を設置する際は、設置する車両用防護柵所定の設置基準面から上端までの高さが確保されるよう、設置するものとする。
(3) 基礎
土工区間に車両用防護柵を設置する際は、設置する地盤の形状、土質条件などを十分に照査したうえで、また、橋梁、高架などの構造物上に車両用防護柵を設置する際は、設置する構造物の耐力を十分に照査したうえで設置するものとする。
(4) 設置延長
車両用防護柵は、防護柵の転倒、滑動などが生じないような延長を確保するものとする。また、たわみ性防護柵にあっては、2―1設置区間の各号に該当する区間の前後に原則として各々二〇m程度延長して設置するものとする。
(5) 設置余裕幅
たわみ性防護柵を設置する場合は、路側および歩車道境界に設置するものにあっては防護柵の前面から路外方向に、分離帯に設置するものにあっては防護柵の対向車線に対する面から対向車線方向に、原則として車両の最大進入行程に応じた余裕幅が確保できるよう、設置するものとする。
(6) 連続設置
道路および交通の状況が同一である区間内に設置する車両用防護柵は、原則として連続して設置するものとする。
(7) 分離帯への設置
分離帯に車両用防護柵を設置する場合には、原則として分離帯の中央に設置するものとする。ただし、分離帯に勾配があるため防護柵の高さが確保できなくなる場合などはこの限りではない。
(8) 端部処理など
1) 端部処理
車両用防護柵は、端部への車両の衝突防止または衝突時の緩衝性の向上に配慮して設置するものとする。このため、防護柵の進入側端部は、できるだけ路外方向に曲げるなどの処理を行うものとする。また、防護柵の端部は分離帯開口部、取り付け道路との交差部などの道路構造との関連を考慮して、設置するものとする。ただし、路外の状況などによりやむを得ない場合は、車両衝突の危険性が低い位置に防護柵の端部を設けるなど適切な処理を行うものとする。
2) 端部のすりつけ
異なる種別、種類または形状の車両用防護柵を隣接して設置する場合は、原則として防護柵の車両を誘導する面を連続させるものとする。
3) 高速道路などの分岐部
高速道路などの分岐部に車両用防護柵を設置する場合は、道路および交通の状況を十分考慮し、必要に応じ、視線誘導施設、障害物表示灯などの注意喚起施設または他の緩衝材を併設することなどにより、衝突防止または緩衝性の向上を図るものとする。
(9) 合流部などでの視認性確保
道路の合流部または交差部などに車両用防護柵を設置する場合は、運転者が道路および交通の状況を適切に確認できるよう、視線の妨げとならない設置を行うものとする。
(10) 積雪地域における対応
積雪地域において車両用防護柵を設置する場合は、必要に応じて積雪による荷重を考慮して設置するものとする。
(11) 色彩
車両用防護柵の色彩は、視線を誘導する機能を確保するため、白を標準とする。
ただし、他の手段により視線誘導が図られる場合はこの限りでなく、良好な景観形成に配慮するなど適切な色彩とすることができる。
第3章 歩行者自転車用柵
3―1 設置区間
下記各号のいずれかに該当する区間においては、道路および交通の状況を踏まえ、必要に応じ歩行者自転車用柵を設置するものとする。
(1) 歩行者等の転落防止を目的として路側または歩車道境界に歩行者自転車用柵を設置する区間
1) 歩道等、自転車専用道路、自転車歩行者専用道路および歩行者専用道路の路外が危険な区間などで歩行者等の転落を防止するため必要と認められる区間
(2) 歩行者等の横断防止などを目的として歩車道境界に歩行者自転車用柵を設置する区間
1) 歩行者等の道路の横断が禁止されている区間で必要と認められる区間
2) 歩行者等の横断歩道以外の場所での横断防止が特に必要と認められる区間
3) 都市内の道路などにおいて、走行速度が低く、単に歩道等と車道とを区別することのみにより歩行者等の安全を確保することが期待できる区間のうち、特に必要と認められる区間
なお、横断防止などを目的として設置する柵は、景観などを考慮し、植樹帯の設置など他の方法を検討したうえで、必要と認められる場合について設置するものとする。
3―2 種別
1 種別の設定
歩行者自転車用柵は、表―三・一に示す設計強度に応じて、以下の種別に区分する。
表―3.1 種別毎の設計強度
2 性能
歩行者自転車用柵は、表―三・一に示す種別に応じた設計荷重に対して塑性変形しないものでなければならない。
3 構造および材料
(1) 防護柵高さ
歩行者等の転落防止を目的として設置する柵の路面から柵面の上端までの高さは一一〇cmを標準とする。
歩行者等の横断防止などを目的として設置する柵の路面から柵面の上端までの高さは七〇〜八〇cmを標準とする。
(2) 形状
歩行者自転車用柵(種別PおよびSP)は、ボルトなどの突起物、部材の継ぎ目などにより歩行者等に危害を及ぼすことのない形状とするなど、歩行者等に配慮した形状を有しなければならない。
また、転落防止を目的として設置する柵の桟間隔は、歩行者等が容易にすり抜けられないものとする。
(3) 材料
歩行者自転車用柵に用いる材料は、十分な強度を持ち、耐久性に優れ維持管理が容易なものを用いるものとする。
(4) 防錆・防食処理
歩行者自転車用柵に用いる金属材料などのうち、錆または腐食が生じる材料に対する防錆・防食処理は、車両用防護柵の防錆・防食処理に準ずるものとする。
(5) 車両用防護柵の兼用
車両用防護柵は上記各号を満足することにより、歩行者自転車用柵として兼用することができる。
3―3 種別の適用
歩行者自転車用柵は、原則として種別Pを適用するものとし、歩行者等の滞留が予想される区間および橋梁、高架の区間に設置される転倒防止を目的とした柵は、集団による荷重を想定し、種別SPを適用するものとする。
3―4 設置方法
歩行者自転車用柵を設置する際は、道路および交通の状況を十分考慮して、防護柵機能を発揮できるように設置するものとする。
(1) 高さ
歩行者自転車用柵を設置する際は、設置する柵所定の路面から柵面の上端までの高さが確保されるよう、設置するものとする。
(2) 基礎
土工区間に歩行者自転車用柵を設置する場合は、設置する地盤の形状、土質条件などを十分に照査したうえで、また、橋梁、高架などの構造物上に歩行者自転車用柵を設置する場合は、設置する構造物の耐力を十分に照査したうえで、設置するものとする。
(3) 柵間のすり抜け防止
転落防止を目的として同一種別の歩行者自転車用柵を設置する場合は、原則として連続して設置するものとする。
異なる種別の柵を設置する必要がある場合は、柵と柵の間から歩行者等が容易にすり抜けないよう、柵相互の間隔に留意して設置するものとする。
(4) 合流部などでの視認性確保
道路の合流部または交差部などに歩行者自転車用柵を設置する場合は、運転者が道路および交通の状況を適切に確認できるよう、視線の妨げとならない設置を行うものとする。
(5) 色彩
歩行者自転車用柵の色彩は、良好な景観形成に配慮した適切な色彩とするものとする。
(6) 積雪地域における対応
積雪地域における歩行者自転車用柵を設置する場合は、必要に応じて積雪による荷重を考慮して設置するものとする。
第4章 共通事項
4―1 施工
1 施工
防護柵の施工にあたっては、交通の安全および他の構造物への影響に留意し、安全かつ確実に行わなければならない。
2 表示
防護柵には、刻印などにより種別、設置年月、道路管理者名などを表示するものとする。
4―2 維持管理
1 点検
日常の道路パトロールにおいて、防護柵の外観を巡視し、防護柵の異常の有無を確かめるため、定期的な点検を実施する。
この際、車両衝突時に塑性変形が生じない剛性防護柵は、車両衝突の繰り返しなどによる強度の低下が明確になりにくいため、適宜十分な目視点検を行うものとする。
また豪雨、地震などの後には道路の点検とあわせて防護柵の点検を実施するものとする。
この場合特に留意すべき点は次のとおりである。
1) たわみ性防護柵
1) 支柱と水平材との固定状況
2) 支柱の沈下、傾斜、わん曲状況、支柱定着部の状況
3) 汚染の程度および塗装の状況
4) ガードレール、ガードパイプおよび橋梁用ビーム型防護柵などの水平材の変形および破損状況
5) ボックスビームのビーム継手部およびパドルの破損状況
6) ケーブルのたわみの程度
2) 剛性防護柵
1) 壁面のクラックや欠落状況
3) 路肩、法面など
1) 路肩および法面などの状況
2) 排水施設の状況
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