既に御承知の通り、改正道路法及び同法の附属法令は一二月五日から施行されることになったので、左記事項に御留意の上新法の施行に遺憾なきを期せられるとともに、速かに関係事項を貴管下道路管理者に徹底方取計われ、その新制度に基く道路行政の運営に遺憾のないよう格別の御配慮を煩わしたい。
1 路線の指定及び認定について
(1) 一級国道の路線は、一級国道の指定に関する政令(昭和二七年政令第四七七号)により指定されたが、二級国道の路線も近く指定される予定である。
なお国道で一級国道に指定されなかったものの措置については別途一二月三日付発道第四八号建設事務次官通牒で通達されたのでそれを参照されたい。
(2) 市町村道については区域外の路線の認定が法第九条の規定により認められているが、この場合においては当該路線を認定した市町村長又は当該道路の道路管理者が路線の認定、変更及び廃止、区域の決定及び変更並びに供用の開始及び廃止の公示を行うと同時に当該路線の存する市町村長も亦これを行うことが適当と考えられるので、当該路線を認定した市町村長又は当該道路の道路管理者は関係市町村長に通知し、関係市町村長は、通知を受けた場合においては法第九条及び法第一八条の規定に準じて公示を行うこととされたい。
2 道路管理者
(1) 法第一七条第二項の規定に基き指定市以外の市の長又は指定市以外の市に二級国道又は都道府県道を管理させるのは、都市計画事業の遂行上当該市長又は市に於て一貫して道路行政を行うことが便利であり、且つ、当該市又は市の長に充分管理能力がある場合に限られたい。なおこれら管理の特例に関し協議を行う場合においては、あらかじめ、建設大臣に連絡されたい。
(2) 新法の趣旨に鑑み、路線の指定、認定又は変更があった場合は、遅滞なく道路の区域の決定を行うべきであり、従来のように、路線の認定後相当期間を経ても区域決定を行わないというようなことのないようにせられたい。(法第一八条、法第九一条)
(3) 境界地の道路については法第一九条の規定により関係道路管理者が、兼用工作物については法第二〇条の規定により道路管理者と他の工作物の管理者とが協議してこの管理方法を定めることができることになっている。従って、本来の道路管理者以外の道路管理者又は他の工作物の管理者が道路の占用料又は法第五八条から法第六二条までの規定に基く負担金の徴収権限を代行することもあり得るのであるが(施行令第五条)、此の場合に於て注意すべきことは、
(イ) 徴収された占用料又は負担金は、これらの徴収した者即ち徴収権限を代行した者の収入となる。
(ロ) 徴収権限を代行しても占用料の額及び徴収方法、受益者負担金の徴収を受ける者の範囲及びその徴収方法、並びに督促手数料及び延滞金等については、境界銭の道路の場合には本来の道路管理者の、兼用工作物の場合には道路管理者の側に於て定める条例の規定に従うべきものである。(法第三九条、法第六一条、法第七三条)
という二点である。仮にA県とB県との境界にかゝる橋を、両県協議の結果A県に於て管理することになった場合には、A県はB県の区域内に係る部分についての占用料を徴収し自らの収入とすることができるのであるが、この場合に於て、占用料の額並びに徴収方法については、B県の条例の定めるところに従わなければならない。
(4) 道路台帳については追って省令を制定する予定であるが、それまでは従来通りの取扱とされたい。(法第二八条)
(5) 有料の橋又は渡船施設については、新法においては、都道府県又は市町村である道路管理者が行うもののみが認められ、私人が経営するものは認められないことになったが、経過措置として従来私人が行っていたものについては特にその許可に附せられた期間内はこれを継続することを許している。当該期間が経過した後、なおこれを継続する必要がある場合においては、道路管理者において引継の措置を講ぜられたい。(法第三五条施行法第六条)
3 道路の構造
(1) 法第三〇条に基く道路の構造に関する政令は、追って制定される予定であり、それまでは従前の例によられたい。
(2) 道路と鉄道と立体交さをしなくてもよい場合については法第三一条、施行令第三五条に規定されたのであるが、その具体的事例について鉄道側と意見の一致をみない場合においては本省に連絡されたい。なお踏切道の取扱については、法第三二条の許可に替え法第二〇条及び法第三一条の規定により道路管理者と国又は地方鉄道業者との協議によって処理し得る旨、別途運輸建設両事務次官通牒で指示される予定であるから念のため。
4 道路の占用
(1) 新法においては道路の占用物件について特に詳細に亘って法定されたのであるが、その趣旨に鑑み、道路の公物性について充分留意の上、適切なる運営を図られたい。(法第三二条、施行令第七条)
(2) 施行令において占用の許可基準が定められたのであるが、これ以外に道路行政運営上の必要に基き詳細な基準を法定する必要がある場合においては、道路管理者たる地方公共団体の長が地方自治法第一五条の規定に基く規則をもって指定されたい。(規則で制定しうる根拠は、法第三二条の規定に基く道路の占用に関する許可権は法第九七条の規定により地方公共団体の長が行使しうるものであることが明らかにされていることに基く。(施行令第九条―同令第一七条)
(3) 国等の行う事業の道路の占用、占用料の徴収、負担金の徴収等については、その基準を政令で定めることになっているが、この政令が出る迄の間に於て各道路管理者が独自の立場において従来の方法に著しい変更を加えることは、他に影響を及ぼし混乱を惹起する虞があるので、可及的にこれを避けられ、止むを得ない場合には、その措置につきあらかじめ本省に連絡されたい。(この政令の制定までには相当期間を要する見込)(法第三五条、法第三九条、法第八六条、施行令第一九条)
(4) 法第三九条第二項の規定による全国にわたる事業及び法第三五条に規定する事業に関する占用料の基準は追って制定する予定であるので、前項に準じて措置されたい。
(5) 占用の許可期間は、法第三六条で規定する水道、電気等の事業のための道路の占用については一〇年、その他の占用については三年と定められ、尚、従来の占用許可についても、この期間をこえて期間が定められているものについてはこの期間内とされたので、施行令で定める基準に異る従来の占用については逐次期間満了の際に新基準に合致するよう措置せられたい。(施行令第九条、附則第三項)
(6) 道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のない物件を占用物件にとりつけるのは占用の変更であり、そのとりつけが当該占用の目的に附随して行われる場合には、施行令第八条第二号の規定により、道路管理者に道路占用変更の許可を受けないでよいことゝなっている。一方法第四一条に規定する添加は道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある物件を占用物件にとりつける場合でありこれは常に新たな占用物件とみなされることに注意されたい。(法第四一条、施行令第八条)
(7) 水管、下水通管、ガス管、電柱等の占用期間を更新する場合においては、事業の公益性に鑑み、手続をできる限り簡易にせられたい。(施行令第九条)
5 道路の保全
(1) 法第四二条第二項に基く道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他の事項については、追って政令で制定されるが、当分の間従前の例によられたい。(法第四二条)
(2) 沿道区域指定の基準に関する条例を制定するに当っては、道路の実情とその附近の土地の状況を斟酌して、道路を保全し道路交通を安全ならしめるに必要な程度に限るものとし、例えば屈曲部中心半径が特に小さい場合、並木又は密生した樹木が道路の傍にある場合、高擁壁の場合、道路に隣接して採石場等危険地域である場合、積雪地域で特に除電用地の必要がある場合等について具体的基準を定められたい。(法第四四条)
(3) 法第四五条に規定する道路標識については、概ね現在と同じ内容のものが定められる予定である。(法第四五条)
(4) 法第四七条への規定に基く車両の通行に関する措置についての政令は追って制定される予定である。(法第四七条)
6 国庫負担及び国庫補助
(1) 一級国道又は二級国道の新設、又は改築によって著しく利益を受ける他の都道府県に課する分担金の基準に関する政令は追って制定される予定である。(法第五〇条第二項、法第五一条第二項)
(2) 受益者負担金条例の制定に当っては、左の考え方を基準とされることが妥当と考えられる。
一 道路に関する工事の種類は適切に区分すること。即ち例えば改築については歩道の新設、幅員の拡張、路面の舗装、木橋より永久橋への架換、平面交さの除却等に区分すること。
二 受益者の範囲については、例えば沿道の土地の所有者又は使用者(地上権者、永小作権者、賃借権者)現在その管理について協議の定めのない兼用工作物の管理者、鉄道の平面交叉を除却する場合の相手方(日本国有鉄道、地方鉄道業者)及び当該道路を通行する車両の所有者等とすること。
三 負担金額を定める場合は左の二要素を考慮すること。
(イ) 受益額の範囲内であること。
1 受益額は沿道土地の所有者等に対しては道路に関する工事のため特別に著しい受益増加がない限り、一般に当該工事執行前の土地の価格と執行後の価格の差額を基準とすべきであること。
2 車両所有者に対しては道路の改良修繕により運転経費の節約額、稼働率の向上等を勘案し、バスに関する建設、国鉄協定を参考として、基準を定めること。
3 平面交さの除却に関し費用負担の協定のないものにあっては、現行の内務、鉄道両省協定を参考として基準を定めること。
(ロ) 工事費の一部であること。
従来各県で制定されていた受益者負担金徴収規則を調査してみると受益者負担金は平均して工事費の三分の一から五分の一までの範囲としているからこの点を参考とすること。
(3) 法第七〇条の規定による損失補償の場合において、その損失の具体的範囲の決定に当っては、工事費の割合等を考慮し、慎重に検討の上決定せられたい。(法第七〇条)
(4) 従来の道路損傷負担金制度は、新法においてはその根拠規定を失ったので、新法施行後においては、従来の道路損傷負担金の徴収の対象となっていたものの一部については、法第六一条の規定による受益者負担金の規定の適用により徴収できる場合もあると考えられるが、その要件が両者においては異っているので注意されたい。
新法施行の日までに調定した損害負担金は、新法施行後においても徴収できる。(法第六一条、施行法第八条)
7 監督
(1) 法第七六条及び法第七七条の規定に基く報告及び調査に関する省令は近く規定の見込である。
(2) 道路監理員制度は、新法において道路法の適切な実施を図るために認められた制度であるから、吏員のうちから事務に精通している者を選定し、その運用に遺憾なきを期せられたい。(法第七一条)
8 その他
(1) 道路附属物に関する政令はその必要を生じたときに制定する考えである。(法第二条二)
(2) 許可等に附する条件
許可、認可又は、承認の条件が法第八七条第二項に規定する不当な義務を課するものであるかどうかは個々の具体的な場合について判断されるべきもので、一概に規律することはできない。例えば道路の占用の許可は、道路本来の目的からは好ましくないことを特に許可するものでありその趣旨は道路の目的とする公益性を妨げない限度において一般通行という本来の目的以外の道路の使用を受忍しようとするものである以上道路管理者において占用を許可した為に費用の支出を余儀なくされる事態は極力避けるべきものである。
附帯工事に要する費用につき原因者負担の原則を規定する法第五九条において「占用許可に附した条件に特別の定がある場合」を特に除外しているのもこの考え方の現れであって、当該占用許可の条件の内容によっては道路管理者において道路に関する工事に伴う占用物件の移転、改築又は除却に要する費用を負担しない場合のあることを予想しているわけである。これを要するに占用の許可に際しこれら移転等の費用の全額を道路占用者に負担させるという条件を附しても必ずしも不当な義務を課するものとは云えないのである。
(3) 国有地を道路の敷地とする場合においては、従来は国有財産の所管換の手続によっていたが、新法においては一級国道及び二級国道の場合においては従来通り、その他の場合においては、国有財産の払下又は貸付の手続を要することとなるがその具体的方法については、別途通達する予定である。
(4) 重複して道路の路線が認定された場合にはその重複する部分の管理については、法第一一条の規定によることになるが、この場合において、道路敷地の所有権は当初の道路管理者に帰属したままで差支えないことに留意されたい。