建設省道利第三号
平成一一年七月二六日

各地方建設局道路部長・北海道開発局建設部長・沖縄総合事務局開発建設部長・道路関係四公団担当部長・各都道府県担当部長・各指定市担当局長あて

道路局路政課道路利用調整室長通知


「行政手続の公正及び透明性の確保に関する調査結果に基づく勧告」について

先般、総務庁より標記の勧告がなされ、行政手続の公正及び透明性の確保のため、各省庁において調査報告書を参照の上適切な改善措置を講じるよう求められた。当該勧告のうち、当課の所掌事務に関する事項等は左記のとおりである(枠内は、標記の勧告からの抜粋である。)ので、貴職においては、別紙記載の総務庁による調査の結果を参考としつつ適切な処理をされたい。
なお、都道府県におかれては、管下道路管理者(地方道路公社を含む。)に対しても、周知願いたい。

1 占用許可に係る審査基準の設定について

道路法第三二条の占用許可に係る審査基準の設定については、

『上級庁である法令所管省庁からの運用通達等に示された基準、方針等を行政庁自らの審査基準とするためには、当該行政庁の審査基準が当該運用通達等と同内容である旨、当該運用通達等のどの箇所が審査基準に該当するかを申請しようとする者に明確に分かるようにしておくことが必要。』

とされているところ、

『審査基準の設定を不要と判断している行政庁の中には、申請者から照会があった場合に法令所管省庁の運用通達等を説明すればよいと考え、あらかじめ当該行政庁の審査基準として設定する必要がないと解しているものや、運用通達等が公表されている場合には、これを踏まえた当該行政庁の審査基準を設定する必要がないと解しているものがある』

と指摘されている(別紙中「1 占用許可に係る審査基準の設定について」参照)
上記の指摘の趣旨を踏まえ、道路管理者自らの審査基準を適正に設定されたい

2 占用許可に係る標準処理期間の設定について

道路法第三二条の占用許可に係る標準処理期間の設定については、

『行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到着するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともにこれを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない』

とされているところ、

『各行政庁において設定・公表されている標準処理期間の内容をみると、次のとおり処理の実態に即したものとなっておらず、設定された標準処理期間が必ずしも申請者にとっての目安とはなっていないとみられるものがある。
1)申請から処分までの間に関与する機関ごとの標準処理期間を設定していないもの』

と指摘され、申請から処分までの間に関与する機関ごとの標準処理期間の設定が求められている(別紙中「2 占用許可に係る標準処理期間の設定について」参照)。
経由機関がある場合には、当該経由機関に要する期間の目安を定め、公にするよう努められたい。
併せて、占用許可の申請がなされた際には、標準処理期間内に処分を行うよう努められたい。

3 監督処分に係る処分基準の設定について

道路法第七一条第二項(道路法第九一条第二項の準用を含む。)における監督処分に係る処分基準の設定については、

『行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについて、その法令の定めに従って判断するための処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないこととされている。また、行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、当該不利益処分の性質に照らし、できる限り具体的なものとしなければならない』

とされているところ、

『法令所管省庁が法令の規定に言い尽くされ処分基準の設定を不要としている事項についても、行政庁によっては、法令所管省庁の運用通達等や独自の判断により処分基準を設定しているものがある事項や、処分基準は設定していないものの、法令所管省庁の運用通達等や行政庁が独自に作成した内規等を不利益処分の判断に際して活用するとしているものがある事項もみられる。これらの事項については、法令所管省庁の運用通達等又は行政庁の内規等に基づき処分基準を設定する余地があると考えられる。』

と指摘されている(別紙中「3 監督処分に係る処分基準の設定について」参照)。
監督処分に係る処分基準の設定は困難であるが、各道路管理者においては、引き続き適正な処分に努められたい。

4 工事施行命令における弁明の機会の付与について

道路法第第二二条第一項に規定する工事原因者に対する工事施行命令等については、

『行政庁は、不利益処分をしようとする場合には、聴聞(許認可等の取消し、名あて人の資格又は地位のはく奪等の場合)又は弁明の機会の付与により、当該不利益処分の名あて人となるべき者について、意見陳述のための手続を執らなければならないこととされている。ただし、公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき等においては、その適用を受けない』

とされているところ、

『意見陳述の手続を執ることを要しない事案がどうか個別に判断を要する不利益処分について、一律に手続不要とみなしているもの』

と指摘されている(別紙中「4 工事施行命令における弁明の機会の付与について」参照)。
道路の復旧は可能な限り速やかに行うことが道路管理上必要であるが、緊急に工事施工命令を行う必要性が乏しいと判断される場合においては、弁明の機会を付与することとされたい。


(別紙)
「行政手続の公正及び透明性の確保に関する調査結果報告書」

(平成11年6月、総務庁行政監察局)より該当部分の抜粋

1 占用許可に係る審査基準の設定について

事例2―(1)―1 審査基準の設定が可能とみられる事項について設定不要とするなど未設定の事例
(法令所管省庁が審査基準の設定指針等を示しており審査基準の設定が可能とみられる事項について、行政庁では法令の規定に判断基準が言い尽くされ審査基準の設定を不要と判断、国の通達等については審査基準として設定する必要がないとみなすなどにより、審査基準を設定していない事例)

(No.17)

法律名
事項名
(根拠条項)
審査基準の設定根拠(指針等)
実地調査機関数
設定状況等
 
事例(設定不要としているもの等)
 
 
 
 
 
 
 
行政庁
未設定理由等
道路法
道路の占用許可(法32―1)
「行政手続法の施行に伴う審査基準等の設定について」(平成6年9月30日付け事務連絡)、「道路関係通達集」(第2章)
国地方支分部局等 7
都道府県 7
市 4
計 18
○設定
(法令の規定以外)
16
A道路管理者
▲法令の規定が審査基準であるが、個別の物件の審査に当たっては占用物件ごとに148種類の通達が定められ、これらの通達に基づき審査を行っていると説明
 
 
 
 
▲内規・通達等に基づくものの未設定
1
 
 
 
道路の占用許可申請事項の変更許可(法32―3)
 
 
 
 
 
 
×その他(実績がないなどにより設定困難等)
1
 
 
2 占用許可に係る標準処理期間の設定について

事例2―(2)―3 申請から処分までの間に関与する機関ごとの標準処理機関未設定の事例

(No.6・7)

事項名
(法律名等)
・道路の占用許可(道路法第32条第1項)
・道路の占用許可申請事項の変更許可(道路法第32条第3項)
行政庁名
A道路管理者、B道路管理者、C道路管理者、D道路管理者、E道路管理者、F道路管理者、G道路管理者、H道路管理者、I道路管理者、J道路管理者
(事例の内容)

道路の占用許可に係る標準処理期間については、法令所管省庁である建設省において、「道路法第24条の承認及び第32条の許可に係る標準処理期間の基準について」(平成6年9月16日付道政発第46号建設省道路局路政課長通知)により「原則として1か月以内(占用の場合は「変更」、「更新」を含む。ただし、占用申請に係る行為が道路法第32条第5項に該当する場合の警察署長への協議の期間は含まない。)」とする目安が示されている。
今回調査した申請の提出機関のある13行政庁においては、おおむね当該指針に沿って標準処理期間を設定しており、このうち3行政庁(東京都、愛知県、香川県)においては経由機関についても設定しているが、他の10行政庁においては経由機関については設定しておらず処理期間の目安が不明確となっている。また、道路の占用許可について地方建設局において調査した9件のうち8件が標準処理期間(1か月)を超過しており、その理由の一つに工事事務所から申達があった段階で既に処理期間が標準処理期間を超過していたとする地方建設局もみられる(C道路管理者)。

 
3 監督処分に係る処分基準の設定について

事例2―(2)―3 法令所管省庁が設定不要としている事項について処分基準の設定等が行われている事例等
(法令所管省庁が法令の規定に判断基準が言い尽くされ処分基準の設定を不要としている事項について、行政庁においては国の通達等に基づき処分基準又はそれに代わる処分の方針等を設定している事例、処分基準は設定していないものの、行政庁において処分を行う場合には国の通達等や独自に作成した内規等を事実上の処分基準として判断に活用するとしている事例等)

(No.20)

法律名
事項名
(根拠条項)
法令所管省庁による処分基準設定要否の提示等
実地調査機関数
設定状況等
 
事例(処分基準を設定しているもの等)
 
 
 
 
 
 
 
行政庁
処分基準の設内容又は処分基準に相当する内規・通達等
道路法
許可等の取消し、工作物除去命令(法71―2)
平成8年度以降の施行状況調査の調査表様式(地方公共団体用)において、法令の規定に言い尽くされ設定不要と整理
国地方支分部局等 5
都道府県 5
市 1
計 11
○設定(法令の規定以外)
2
A道路管理者
○許可等の基準、条件に合致しない場合が不利益処分の対象となるため、道路占用許可等の審査基準と同様の内容を処分基準としていると説明
 
 
 
 
●法令の規定に言い尽くされ設定不要
5
 
 
 
 
 
 
×その他(実績がないなどにより設定困難等)
4
 
 
 
 
 
 
 
 
B道路管理者
○県の「道路の不法占用物件等監督処分要領」を処分基準として設定
 
許可等の取消し、工作物除去命令(道路予定区域内)(法
91―2)
同上
国地方支分部局等 4
都道府県 4
市 1
計 9
○設定(法令の規定以外)
2
A道路管理者
○許可等の基準、条件に合致しない場合が不利益処分の対象となるため、道路占用許可等の審査基準と同様の内容を処分基準としていると説明
 
 
 
 
●法令の規定に言い尽くされ設定不要
3
 
 
 
 
 
 
×その他(実績がないなどにより設定困難等)
4
 
 
 
 
 
 
 
 
B道路管理者
○県の「道路の不法占用物件等監督処分要領」を処分基準として設定
4 工事施行命令における弁明の機会の付与について

事例3―(3)―ア―1 意見陳述の手続が執られていない事例

番号
5
事項名(法律名等)
工事原因者への工事施行命令(道路法第22条第1項)
事例の内容
 
 
 

工事原因者への工事施行命令の実績がある4行政庁における当該不利益処分を行う際の意見陳述の手続についてみると、次表のとおり、公益上、緊急に不利益処分を行う必要がある、処分原因の事実関係は警察により確認されている等としてすべての行政庁において一律に弁明の機会付与を行っていない。
これらの処分の中には、事故発生直後の道路管理者による応急措置が行われたことから、緊急に不利益処分を行う必要性が乏しいとして、相当の期間が経過した後に処分が行われているものもみられる。

 
 
 
行政庁名
 
工事原因者への工事施行命令の状況等
 
A道路管理者
 
・処分実績:75件(平成8年)
・当該処分に際しいずれについても、事故防止の観点から公益上、緊急に不利益処分を行う必要があるとして弁明の機会を付与していない。
・これらの処分のうち20件を抽出し事故発生から処分までに要した期間についてみてみると、1か月以上要しているものが6件あり、このうち1件については4か月以上も要している。
 
B道路管理者
 
・処分実績:37件(平成6年10月以降8年度まで)
・平成8年度18件の取扱いについてみると、処分原因者が引き起こした交通事故等による交通安全施設の損傷に対する工事施行命令であり、事故防止の観点から公益上、緊急に不利益処分を行う必要があるとして弁明の機会を付与していない。
・これらの処分の中には、現地調査を実施してから当該命令書を発行するまでに20日以上要しているものが3件あり、このうち1件は当該命令書による復旧工事完了期限(事故発生から約50日)を過ぎても当該処分原因者が工事を実施しなかったことから、県において工事を実施し、同処分原因者に工事費用負担命令書を発行しているものもある。
 
C道路管理者
 
・処分実績:37件(平成6年10月以降8年度まで)
・当該処分に際しいずれについても弁明の機会を付与していない。
・平成8年度に処分した96件のうち20件を抽出し事故発生から処分までに要した期間についてみると、1か月以上要したものが17件ある。
 
D道路管理者
 
・処分実績:17件(平成6年10月以降8年度まで。処分の提示方法は、6年度と7年度は「道路損壊確認書」(原因者の確認印がある。)、8年度は口頭による。)
・当該処分に際しいずれについても弁明の機会を付与していない。
・この取扱いは、原因者及び処分原因の事実関係は警察により確認されているため、弁明の機会を付与する必要がないと考えていたことによるものである。
 


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