発住第三七号・国消発第八六〇号・乙備発第一四号
昭和三二年七月一五日

各都道府県知事・都道府県公安委員会委員長あて

建設事務次官・国家消防本部長・警察庁次長通達


道路の上空に設ける通路の取扱等について


建築基準法の一部を改正する法律(昭和三二年法律第一〇一号)、建築基準法施行令の一部を改正する政令(昭和三二年政令第九九号)及び道路法施行令の一部を改正する政令(昭和三二年政令第一〇〇号)の施行に伴い、道路の上空に設ける渡り廊下等の通路について別紙のとおり許可基準を定めたが、この基準は、建築基準法第四四条第一項但書の許可、消防法第七条の同意、道路法第三二条第一項又は第三項の許可、道路交通取締法第二六条第一項の許可等をする場合の基準を示したものであるから、左記事項に御留意の上、この許可基準にのっとりこれらの法令の適正な運用を期するとともに、事務の処理に遺憾のないようにされたい。
なお、建築基準法の一部改正により、公共用歩廊を道路内に設ける場合においては、特定行政庁の許可を要することとなったが、これについては、従来どおり、昭和三〇年二月一日付国消発第七三号、建設省発住第五号、警察庁発備第二号通達に示す方針によって取り扱われたい。
おって、貴管下各機関に対しても、この旨御指導御連絡願いたい。

1 許可等に関する事務の連絡及び調整を行うため関係のある道路管理者、特定行政庁、警察署長及び消防長又は消防署長からなる連絡協議会を設けること。
2 各機関は、それぞれ所管事項に関して責任を有するとともに、他の機関の所管事項に関する意見を尊重するものとし、連絡協議会において各機関の意見が一致した場合に限り、許可等をするものとすること。
3 連絡協議会は、許可等の申請があったとき開催するものとするが、必要があるときは、あらかじめ開催し、この許可基準に対する制限の附加等に関する事務の打合せを行い、必要に応じ適宜の方法により周知させること。
4 道路の上空に通路を設けることは、安全上、防火上、衛生上その他都市計画的な見地からいろいろ問題が多いので設置場所、位置等について慎重に検討し、みだりに設置を認めないこと。
5 市町村長(都の特別区の存する区域については知事)は、道路の上空に通路が設けられた場合において必要があると認めるときは、通路とこれを設けた建築物とを一体として消防法第八条の規定によりその所有者等が防火責任者を定め、消防計画を立て、その訓練を行うべき建築物として指定すること。
6 避難のための通路を道路の上空に設けた場合においても、建築基準法施行令の避難階段等の規定は、緩和されるものではないこと。
7 道路の上空に通路が設けられた場合においては、ややもすれば通路内又はその下の道路上にみだりに商品、立看板、自転車等を存置するようになり易いので、このようなことがないように厳重に取締ること。
8 各機関は、道路を縦断する通路その他特殊な通路については、この基準に抵触しないものであっても、当分の間、それぞれ中央機関に連絡の上、その処理を行うこと。


別紙

道路の上空に於ける通路の許可基準

1 通則

(1) 道路の上空に於ける渡り廊下その他の道路(以下「通路」という。)は、建築物内の多数人の避難又は道路の交通の緩和等相等の公共的利便に寄与するものでなければならない。
(2) 通路は、交通、防火、安全、衛生、美観を妨げ、その他周囲の環境を害するおそれのあるものであってはならない。
(3) 通路は、たとえ臨時的であっても売場、店舗、商品置場、事務室等通行又は運搬以外の用途に供してはならない。
(4) 通路は、これを設ける道路に面する建築物の採光を著しく害するものであってはならない。また、通路を設ける建築物の通路の直下にある居室の開口部を採光に有効でないものとした場合においても、当該居室の採光が建築基準法第二八条第一項の規定に適合する場合に限りこれを設けることができる。
(5) 通路は、消防用機械の移動又は操作、救助、注水その他の消防活動を妨げるものであってはならない。
(6) 通路の規模は、常時通行する人数若しくは運搬する物品の数量又は非常の際避難する人数に応じて最小限度とすることとし、その階数は一とし、その幅員は六メートル以下としなければならない。
(7) 通路は、信号機若しくは道路標識の効果を妨げ、又は道路の見透しを妨げ、その他道路の交通の安全を害しないように設けなければならない。
(8) 各機関は、通路を設けようとする場所等の特殊性により、この基準のみによっては、通行上、防火上、安全上、衛生上その他周囲の環境保持上支障があると認めるときは、所要の制限を附加するものとする。
(9) 各機関は、風土の状況、消防機関の種類、建築物の構造等の特殊性により、この基準に定める制限の効果と同等以上の効果をもたらす他の方法がある場合若しくはこの基準の一部を適用する必要がない場合又はこの基準をそのまま適用することによって通行上、防火上、安全上、衛生上その他周囲の環境保持上支障がある場合において、この基準の一部を変更して実施し、又はその一部の適用を除外する必要があると認めるときは、それぞれ中央機関に連絡の上、その処理を行うものとする。

2 通路の設置数及び設置場所

通路の設置数及び設置場所は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
(1) 通路は、同一建築物について一箇とすること。ただし、建築物の用途及び規模によりやむを得ないと認められる場合においては、建築基準法施行令第一三七条第一項第一号又は第三号に該当するもの一箇、同項第二号に該当するもの一箇、計二箇とすることができる。
(2) 通路は、次に掲げる場所に設けないこと。ただし、周囲の状況等により支障がないと認められるときは、(ロ)の水平距離を縮小することができる。

(イ) 道路が交差し、接続し、又は屈曲する場所
(ロ) 通路を設ける建築物の隣地境界線から水平距離一〇メートル以内の場所

3 通路の構造

通路の構造は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
(1) 通路の防火措置は、次に掲げるところによること。ただし、用途及び周囲の状況により支障がないと認められる場合においては、この限りでない。

(イ) 通路を設ける建築物から五メートル以内にある通路の床、柱(通路を設ける建築物の柱で通路を支える柱を含む。)及びはりは耐火構造とすること。
(ロ) 通路と通路を設ける建築物との間には随時開けることができる自動閉鎖の甲種防火戸を設けること。
(ハ) 通路を設ける建築物の外壁の開口部が大きい場合等で、その建築物の火災によって通路による避難に支障がある場合には、その開口部に防火戸を設ける等通路による避難が安全であるように適当な措置を講ずること。
(ニ) 通路には、適当な排煙の措置を講ずること。

(2) 通路の路面からの高さは、電線、電車線等の路面からの高さを考慮し、これらの物件に支障を及ぼさないような高さ(五・五メートル程度以上)とすること。
(3) 通路は、これを支える柱をできる限り道路内に設けない構造とすること。
(4) 通路は、これを設ける建築物の地震時の震動性状に応じて、適当な構造とすること。
(5) 通路の構造計算をする場合、積載荷重は、床、柱、大ばり又は基礎に対して一平方メートルにつき五〇〇キログラム以上とし、水平震度は〇・二以上、鉛直震度は〇・一以上とすること。
(6) 通路の下面には、必要に応じ照明設備を設けること。
(7) 通路には、適当な雨どい及び多雪地にあっては雪止めの設備を設けること。
(8) 通路の外部には、恒久的であると臨時的であるとをとわず、広告物、装飾物その他これらに類するものを添加し、又は不必要な塗装をしないこと。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport