建設省道政発第三四号
昭和四五年五月一一日

各地方建設局長・北海道開発局長・道路関係三公団の長・各都道府県知事・各指定市長あて

道路局長通達


ガス爆発事故の防止に関する緊急の措置について


さる四月八日大阪市の地下鉄工事現場において発生したガス爆発事故に関し、政府に大阪ガス爆発事故対策連絡本部が設置され、この種事故の再発を防止するための方策について種々検討が行なわれてきたところであるが、今般現に地下鉄工事等道路の大規模掘削工事が施行中であり、または今後施工されることとなる工事について、この種事故の防止に関する緊急措置が別添のとおり決定されたところである。
道路の占用物件の地下埋設工事に起因する事故の防止については、かねてより再三にわたり、その対策を指示し注意を喚起してきたところであるが、今般の同本部決定による緊急措置(以下「緊急措置」という。)については、特に左記事項に留意のうえ、その運用に遺憾なきを期せられたく通知する。
なお、今般の決定はガス爆発事故の防止に関する緊急措置を定めたものであり、その恒久策については、引き続き検討のうえ、結論を得次第改めて指示する予定である。
おって、今般の緊急措置および本通達の趣旨を各占用者に対し強力に指導(各占用者等に対しては、それぞれの所管官庁から決定事項について指示される予定である。)するとともに貴管下各道路管理者にこの旨、周知徹底方お取り計らい願いたい。

1 占用工事の監督体制の強化について

道路の掘削を伴う地下埋設物件の占用工事については、今後ともパトロール等による監督を強化するほか、特に道路の大規模掘削を伴う工事については、工事の各施工段階における写真等の提出を求めて占用許可条件の厳守を確認するとともに、工事が完成した段階におけるしゅん功図の提出を求める等監督の万全を期すること。

2 緊急措置の「大規模掘削工事」について

緊急措置にいう道路の大規模掘削工事とは、地下鉄工事、地下街建設工事のほか、上下水道工事、電信電話または電気の洞道工事その他各種管路の埋設による道路の大規模占用工事であって、当該道路に埋設されているガス導管の移設、切りまわり、懸垂、その他の防護措置を講ずる必要がある工事をいうものであること。なお、道路管理者の行なう道路に関する工事は含まれないものであること。

3 緊急措置の1について

現に施行中または今後施工されることとなる地下鉄工事等については、既に地下鉄企業者等とガス事業者との間にガス導管の保安確保対策について協議を了していることと思料するが、今般改めてその再確認のための協議を行なわせるとともに、緊急措置において指摘された事項について協議を行なうよう定められたものであるので、地下鉄企業者等とガス事業者との協議の確認を行なうこと。

4 緊急措置の2について

ガス導管の移設、切りまわし等の工法の決定については、地下鉄工事等の進捗状況、周辺道路の状況、交通に与える影響、ガス供給系統の態様および移設等に要する費用等、社会的経済的妥当性により判断さるべきものであること。

5 緊急措置の4について

(1) 地下鉄企業者等とガス事業者とのガス導管の防護方法に関する協議および当該協議に基づく工法により施工された工事の実施状況等についてのガス事業者の点検結果を地下鉄企業者等から文書による報告を提出せしめること。
(2) (3)の受防護に関する事項については、今後占用の許可条件として明記するものとする。

6 緊急措置の5について

工事現場の巡回、点検等の保安確保体制の確立強化に関する具体的な基準については、おって同本部の幹事会において決定のうえ通知する予定であるが、それまでの間は、巡回の方法及び点検事項の徹底を期する等の改善を行ない事故防止のため万全の措置をとるよう各占用者を強力に指導すること。

7 緊急措置の7について

(1) 重量車両の通行の禁止または制限については、当該道路および迂回路の交通状況を勘案のうえ、関係公安委員会と協議して決定すること。ただし、当該道路と他の主要な道路との交差部分については、重車両の通行を認めても差し支えないが、この場合においては、当該道路の補強措置を講じさせるものとすること。
(2) 車両制限令による特殊車両のうち、重車両の通行認定を行なわないとともに、違反車両の通行について特段の監視を行なうこと。
(3) 道路法施行令の基準に適合しないガス導管の処置については、直ちに移設または改善を命じ、ガス事業者の負担において処置させるものであること。

8 その他

(1) ガス導管の移設、切りまわしまたは緊急しゃ断装置の設置に必要となる道路占用については、十分な考慮を払うこと。
(2) 「地下埋設工事等による道路の掘り返しの規制に関する対策要綱」(昭和三三年六月一二日の事務次官等会議申合事項)により設置された地方連絡協議会の場を十二分に活用するものとされたので、同協議会の場において、ガス導管を含む地下占用物件に起因する事故の防止対策を協議すること。
(3) 同協議会には、都道府県労働基準局、消防機関の各関係機関も参加するものとされたので(別添の幹事会決定事項参照)一月以内に同協議会を招集し、その協議の結果を本職あて報告すること。
(4) 緊急対策を講ずるに必要な費用については、原因者負担を原則とするものとされたが、原因者の負担すべき費用の額については、占用物件の性格、道路占用料、埋設の位置および深さ、埋設年次および費用の負担方法に関する過去の慣行等により、綜合的に判断し協議のうえ決定さるべきものであること。

なお、緊急対策を講ずるにあたっては、受益する場合があれば、受益に見合う分については、受益者が負担するものとすること。


別添

ガス爆発事故の防止に関する緊急の措置について

(昭和四五年五月一日)
(大阪ガス爆発事故対策連絡本部)
地下鉄工事、地下街建設工事等道路の大規模掘削工事に起因するガス爆発事故を防止するため、現に工事中であるか今後施行されることとなる地下鉄工事等について、関係者に対し、早急に次の対策を講じさせるものとする。
1 ガス導管の保安確保対策の再協議

地下鉄企業者、地下街建設企業者等(以下「地下鉄企業者等」という。)は、ガス事業者に対し、当該地下鉄工事等に伴うガス導管の保安確保対策をあらためて協議するものとする。

2 ガス導管の移設等の実施

前記1の協議に際して地下鉄工事等の進捗状況を勘案して可能な限りガス導管の移設、切りまわしまたはガス供給系統の切替えをガス事業者が行ない、しかるのちに地下鉄企業者等は当該工事に着手し、または当該工事を進行させることとする。

3 緊急しゃ断装置の設置

前記2のガス導管の移設等ができない事情が存するときは、ガス事業者は、可能な限り当該工事工間の入口、出口および当該工事区間の途中にある導管の分岐部に緊急しゃ断用装置(しゃ断用バルブ、水封器等)を設置することとする。

4 ガス導管の防護方法の改善

前記2のガス導管の移設等を行なう場合以外は、従来同様ガス導管の防護を行なう必要があるが、掘削により露出したガス導管の防護方法については、地下鉄企業者等はガス事業者と協議のうえ、次の点に配慮して地下鉄工事等施行者にガス導管の防護を行なわせるものとする。なお、(4)の工事については、ガス事業者に行なわせるものとする。
(1) 今後施行されることとなる地下鉄工事等に伴う吊防護については、自動車等による振動の影響を防止するため、吊防護専用の梁を用いることとし、吊金具はその張力を容易に調整し得る構造のものとすること。
(2) ガス導管の屈曲部等の特殊箇所については、曲げ応力が働かないようにステー等により連結し、固定するとともに、内圧による不均衡な力を均衡させるような措置を講ずること。
(3) 受防護については、土荷重等に対して十分な強度をもつものとし、特に掘削深度が大きい場合等重要な受防護については、鋼または鉄筋コンクリートを主体とする構造のものとすること。
(4) 掘削により露出した導管の継手部には、必ず押し輪をつけることとし、屈曲部等の特殊箇所の継手部については、さらに抜け出し防止装置を施すことにより補強すること。
(5) 掘削により露出した継手部については、白色塗料を塗布する等の措置を講じ、工事現場における作業員の注意を喚起するとともに、あわせて、継手部のずれ、ゆるみ等の発生を発見するための一手段として役立たせるものとすること。

5 ガス導管の監視および通報体制等の確立

(1) 地下鉄企業者等およびガス事業者は、地下鉄工事等に伴うガス導管の保安監視のため、協力して工事現場の巡回、点検等の保安確保体制を確立強化するとともに、警察および消防機関と密接な連携を保ちつつ、緊急処理用機材を常備する等の緊急処理体制を確立強化するものとする。
(2) 地下鉄企業者等は、地下鉄工事等施行者に対し、工事現場と工事現場詰所との間を連絡する通報装置等を設けさせるとともに、ガスの漏えいがあった場合、ガス事業者、警察および消防機関に対するガス漏えい状況についての通報体制と工事現場附近の住民等に対する警報体制を確立させ、かつ、これらについて工事現場等の作業員に周知徹底させるものとする。
(3) ガス事業者は、ガスの漏えいがあった場合の警察および消防機関に対するガス漏えい状況についての通報体制を確立するものとする。

6 協定書の締結等責任体制の明確化

地下鉄企業者等およびガス事業者は、相互に協議して、前記4のガス導管の具体的な防護工法および前記5のガス導管の監視および通報体制等を定め、文書により相互に確認することとし、もって地下鉄工事等に伴うガス導管の保安確保に係る責任体制の明確化を図るものとする。この場合において、地下鉄企業者等は、ガス事業者との合意の内容を文書をもって地下鉄工事等施行者に周知徹底するものとする。

7 その他工事に関し留意すべき事項

(1) 地下鉄企業者等は、準備工事または埋め戻しには十分な工期をとるとともに、工事現場におけるブルドーザー等建設機械の運転操作を慎重に行なうよう地下鉄工事等施行者を十分監督するものとする。
(2) 道路管理者および公安委員会は、地下鉄工事等の工事現場においては、重量車両について可能な限り通行の禁止または制限を行なうものとする。
(3) ガス事業者は、道路法施行令の施行前に埋設されたこと等の理由により、埋設の状況が同令の基準に適合しないガス導管がある場合には、地下鉄工事等による掘削を機会にこれを同令の基準に適合するよう処置するものとする。
地下鉄企業者等およびガス事業者は、以上の対策を講ずるにあたっては、道路管理者の主催する関係者連絡協議会の場を十二分に活用するものとする。
なお、以上の対策を講ずるに必要な費用については、原因者負担を原則とするものとする。



別添

工事現場の点検と安全対策についての連絡協議体制について

(昭和四五年四月一一日)
(大阪ガス爆発事故対策連絡本部幹事会)
1 今回の大阪のガス爆発事故にかんがみ、各省庁では、それぞれの関係工事施行者等に対し、工事現場の安全性の総点検を指示したが、当面、当該点検措置の徹底を期するものとする。
2 なお、第二段階措置として工事現場の安全対策の有効かつ統一的な推進を図るため次の措置を講ずる。

(1) 道路管理者の主催する地方連絡協議会を各府県または主たる市町村ごとに開催し、今回の爆発事故にかんがみた事故防止対策につき関係者の相互協調が得られる措置を講ずる。この場合において都道府県労働基準局、消防機関等関係庁も参加する措置を講ずる。
(2) 地方協議会の前記のような開催に関し建設省より道路管理者へ、各省庁より各関係者へ趣旨の徹底を図るものとする。
(3) ガス事業者、地下鉄事業者、水道事業者、下水事業者、電気事業者等各関係事業者が工事の安全確保のために相互に密接な連絡をとるよう各省庁より指示その他適切な措置をとるものとする。
(4) 道路上および道路に面して工事を行なう建設業者等に対しては、この際あらためて保安上の措置を徹底するよう関係省庁が指導するものとする。


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