建設省道政発第七一号
昭和四五年七月三〇日

各地方建設局長・北海道開発局長・道路関係三公団の長・各都道府県知事・各指定市長あて

道路局長通達


ガス爆発事故の防止に関する措置について


地下鉄工事等道路の大規模掘削工事に起因するガス爆発事故を防止するため緊急に講ずべき措置(以下「緊急措置」という。)については、去る五月一一日付建設省道政発第三四号をもって通知したところであるが、今般、大阪ガス爆発事故対策連絡本部において、緊急措置に引き続き別添のとおり、ガス爆発の事故防止に関する基本対策(以下「基本対策」という。)が決定されたので、左記事項に留意のうえ、その運用に遺憾なきを期せられたく通知する。
なお、今般の基本対策および本通達の趣旨を各占用者に対し強力に指導するとともに、貴管左道路管理者に対し周知徹底方お取り計らい願いたい。
おって、今般の基本対策は、さきの緊急措置とあわせて実施することにより、事故の絶滅を図るものであるので、念のため申し添える。

1 長期計画の策定と調整について

道路管理者の主催する地方連絡協議会においては、従前どおり協議会開催年度に行なう道路工事と道路占用工事の調整を行なうほか、長期計画に関する調整を行なうこととされたので、各占用者に対し占用工事に関する長期計画の策定と提出を求め、各占用工事計画相互間の調整と道路工事計画との調整を行なうこと。

2 共同溝の建設促進について

1の長期計画の策定により、占用物件が錯そうし、又は錯そうするおそれのある道路及び路面の大規模掘削を伴う占用工事が予定される道路については、共同溝の建設を積極的に行なうものとし、この旨、関係公益事業者の協力が得られるよう努めること。

3 占用物件台帳等の整備について

道路の地下埋設物件の状況を正確に把握しておくことは、道路の管理上極めて重要なことであるので、地下埋設物に関する台帳及び図面の整備されていない道路については、各占用者から地下埋設物の状況に関する図面を徴するとともに、当該路線の性格、交通量、占用物件の状況及び道路工事計画並びに占用工事計画等を勘案のうえ、緊急度の高いものから逐次計画的に整備を図るものとすること。

4 保安確保に関する責任について

ガス事業者の掘削により露出するガス導管の防護基準及び他工事の施行の際露出するガス導管に関しガス事業者自ら行なうべき措置については、去る七月一日別添のとおりガス事業法施行規則の一部改正が行なわれたところであるが、今般の基本対策においては、他工事施行の際におけるガス導管の防護工法の決定はガス事業者の責任において行ない、他工事企業者はその決定された工法に従って施行することとし、ガス事業者と他工事企業者の責任を明確化したものであること。

5 占用許可条件について

前記の措置に伴い、道路の占用許可(更新の許可も含む。)にあたり付すべき条件は、概ね次のとおりである。
(1) ガス事業者に対しては、他工事施行によりガス導管が露出することとなる場合は、基本対策にいう「特定の措置」を施行するほか、当該ガス導管の防護工法をガス事業法施行規則に定められた基準によって決定し、当該工法による施行を他工事企業者に指示するとともに、決定した工法により確実に施行されたか否かの確認を行なうこと。
(2) ガス事業者以外の他工事企業者に対しては、当該工事施行により露出することとなるガス導管の防護工法の決定をガス事業者に依頼するとともに、決定された工法により施行された旨のガス事業者の確認書を道路管理者あて提出すること。

6 既占用許可物件について

既に占用の許可を得ている物件については、各占用者に対し、前記5の許可条件に準じて協議し、施工するよう指導すること。

7 ガス事業者と他工事企業者の協議について

ガス事業者と他工事企業者間のガス導管の保安に関する協議については、両当事者間の協議に関与して協議の促進措置を講ずるとともに、必要に応じ道路管理上の調整を行ない、もって道路占用工事の円滑な施行と事故の防止を図るものとすること。

8 連絡協議会について

昭和三三年六月一二日、事務次官等会議申合事項「地下埋設工事等による道路の掘り返しの規制に関する対策要綱」による連絡協議会については、緊急措置および基本対策決定事項の趣旨にかんがみ、近く事務次官等会議において改正の措置が講じられる予定であること。


別添

ガス爆発事故防止に関する措置について

(昭和四五年七月一五日)
(大阪ガス爆発事故対策連絡本部)
地下鉄工事、地下街建設工事等道路の大規模掘削工事に起因するガス爆発事故を防止するため、去る五月一日緊急に講ずべき措置として別紙の措置を決定したところであるが、この緊急措置の実施とあわせて、事故防止に関する基本的対策として次の措置を講ずるものとする。
1 道路掘削工事に関する長期計画の策定

道路の無秩序な掘り返しを防止し、道路掘削工事に伴う保安を、確保するため、道路管理者の主催する地方連絡協議会において、道路工事計画等との整合性を考慮した道路掘削工事に関する長期計画を策定するものとし、この計画に基づき、関係者の緊密な連絡の下に各種道路掘削工事の具体的な施行時期、施行方法等についての合理的な調整を行なうものとする。

2 共同溝の建設促進

共同溝は、ガス導管等地下埋設物の維持管理を容易にするのみならず、将来の地下埋設物の増加にも道路掘削を行なうことなく対処することを可能とするものであり、都市保安上極めて望ましいものであるため、国の助成によりその建設を積極的に促進するものとする。とくに再開発途上の都心部のように計画的な街づくりが行なわれ、これに随伴して公共施設(電力、電信電話、都市ガス等)の計画的敷設が要請される地区の道路については、共同溝整備道路として指定し、道路下諸埋設物の秩序ある収容を図るものとする。

3 工法の安全化の推進

地下鉄工事等における工事施工箇所の地質、地形等を勘案して適当である場合にはシールド工法の採用を図るものとする。このため、今後さらにシールド工法の適用範囲の拡大を図るため、国においてもその研究開発を早急に進めるものとする。

4 ガス漏えい検知器、ガス漏えい自動警報器等の開発および実用化

ガスの漏えいがあった場合、これを鋭敏に検知し、自動的に警報するとともに、直ちにガスを遮断できるようにしておくことは極めて重要であるため、現在利用可能な機器については、この利用を一層推進するとともに、国において、地下鉄工事現場等において効果的に作動するガス漏えい検知器、これと連動する自動警報器等とその配置システムの開発を早急に進め、その実用化を図るものとする。

5 地下埋設物台帳等の整備

地下埋設物の埋設状況を正確かつ確実に把握しておくため、道路管理者は、ガス事業者等の地下埋設物管理者の作成する地下埋設物に関する図面等をもとに、綜合的な地下埋設物に関する台帳および図面を整理するものとする。

6 占用許可関係法令等の再検討

地下埋設物に関する保安確保のため、地下埋設物の位置、深さ、構造、材質、埋設物相互の関係等について再検討を行ない、関係法令通達等の改正を行なうものとする。

7 作業管理体制の整備等

地下鉄工事等に際してのガス導管の損傷を防止するため、当該作業の指揮にあたる作業主任者の行なうべき措置事項について法令に明記するとともに、安全管理者の機能を一層強化するものとする。
また、掘削機械、杭打機、溶接機等の使用に基づく事故を防止するため、これら機械の運転者または取扱者の資格制限、安全教育等について関係法令等の整備を行なうものとする。

8 その他

以上の諸措置を講ずるものとするほか、先の緊急措置のうち
(1) 緊急通報体制については、別に定めるところにより、地下鉄工事等の施行者、ガス事業者、警察および消防機関はガスの漏えいがあった場合、被害を最小限度にくいとめるため、平素から緊密な連携を保ち、通報責任者の指定、通報方法の相互確認、通報用有(無)線機の整備、住民に対する通報の依頼等の措置を講じておくとともに、特にガス爆発の危険性がある場合等には、これら関係者のみならず、市町村長、道路管理者、交通機関、医療機関等に対しても所要の通報を行なうことのできる体制を確立しておくものとする。
(2) 他工事に伴うガス導管の保安確保に関する責任については、次により明確化するものとする。

(イ) ガス事業者の掘削により露出するガス導管に係る保安およびガス事業者以外の者の掘削により露出するガス導管に施される特定の措置(本来のガス導管の維持管理のために必要な押輪、抜出し防止装置、伸縮継手および緊急遮断装置)に係る保安については、現行ガス事業法に基づく改正省令(七月一日、公布・施行)に従いガス事業者がその責任を負うものとする。
(ロ) ガス事業者以外の者の掘削により露出するガス導管に対する防護(上記(イ)に掲げる特定の措置を除く。)については、他工事企業者はガス事業者との協議により、改正された上記省令に準じて行なうものとし、工事施行上の責任は他工事企業者が負い、工法についての責任はガス事業者が負うものとする。このため、関係法令の改正および運用を検討するものとし、その間道路占用の許可の条件を付加する等関係各省においてその実効の確保に万全を期するものとする。

(3) 以上により明確化された事業者の保安確保責任の履行に関しては、関係各省においてその監督体制を一層強化するものとする。


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