幹線道路の沿道の整備に関する法律等の一部を改正する法律(平成八年法律第四八号)は平成八年五月二四日に、幹線道路の沿道の整備に関する法律施行令等の一部を改正する政令(平成八年政令第三〇八号)及び幹線道路の沿道の整備に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成八年建設省令第一五号)は同年一〇月二五日に、それぞれ公布され、いずれも同年一一月一〇日から施行された。
1 法改正の趣旨
近年におけるモータリゼーションの急速な発達、急激な都市化の進展等に伴い、都市部の幹線道路を中心に、道路交通騒音対策が大きな課題となっており、これまでにも自動車単体に対する騒音規制、バイパス整備や交通規制等の交通流対策、遮音壁や環境施設帯の設置等の道路構造対策、緩衝建築物の建築や住宅の防音対策等の沿道対策など、様々な対策を講じてきたところであるが、道路交通騒音の著しい道路が数多く残されている等、道路交通騒音の実態は依然として厳しい状況にある。
さらに、平成七年七月には、国道四三号及び阪神高速道路の騒音等の訴訟に係る最高裁判所判決が出され、本件道路の環境対策について、「なお十分な効果を上げているとまではいえない」として、道路管理者の暇疵責任が認められたところである。
このような道路交通騒音をめぐる厳しい環境にかんがみ、従来にも増して、道路交通騒音によって生ずる障害の防止に取り組むことが必要となっているが、道路交通騒音対策は、ひとり道路管理者のみで対応できるものではなく、交通規制等の交通流対策や沿道におけるまちづくりと一体となった総合的な施策の充実を図る必要がある。
このような状況を踏まえ、道路交通騒音を減少させるために道路管理者と都道府県公安委員会が連携して道路構造対策、交通流対策等の施策を計画的に講じる制度を創設し、幹線道路の沿道において、まちづくりと一体となってより良い沿道環境の整備を図るための沿道整備計画制度を拡充するとともに、防音工事、緩衝建築物の建築等の沿道の整備の支援措置を拡充し、あわせて幹線道路の沿道にふさわしいまちづくりを推進する公益法人の活用のための支援措置を創設すること等を内容として、幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五五年法律第三四号。以下「法」という。)等の改正を行ったものである。
2 沿道整備道路の指定について
道路管理者がより積極的に法に基づく施策を実施するためには、その前提として沿道整備道路の指定が必要とされることから、道路管理者は沿道整備道路の指定を要請できることとするともに、市町村が沿道地区計画や沿道整備権利移転等促進計画を定め、沿道整備道路にふさわしい適正かつ合理的な土地利用の促進を図るためには、その前提として沿道整備道路の指定が必要とされることから、市町村は沿道整備道路の指定を要請できることとしたこと。
3 道路交通騒音減少計画について
道路交通騒音により生ずる障害の防止のためには、道路交通騒音の減少に大きな効果がある道路構造対策と交通流対策に重点的に取り組む必要がある。一方、道路管理者の実施する道路構造対策等の施策と、都道府県公安委員会の実施する交通規制等の施策とは、互いに連携して初めて効果的となるものが多い。
このため、沿道整備道路として指定された道路について、道路管理者と都道府県公安委員会が協議により道路交通騒音減少計画を策定し、これに基づいてそれぞれが必要な措置を講ずるものとしたこと。
4 沿道整備協議会について
(1) 道路交通騒音により生ずる障害の防止をより効果的に推進するためには、都道府県知事、都道府県公安委員会、関係市町村、道路管理者の四者の施策のみならず、さらに総合的な施策を実施することが必要であることから、沿道整備協議会に国の地方行政機関を加えることができることとしたこと。
(2) 沿道整備協議会の機能を強化し、より活性化させるとともに、各行政機関による協議会の決定に従った施策の実施を確保するため、協議会の構成員に協議が調った事項についての尊重義務を課すこととしたこと。
5 沿道整備計画制度の拡充について
(1) 今回の改正により、従来の沿道整備計画を沿道地区計画とし、地域の実情に応じて、沿道地区計画の区域及び沿道の整備に関する方針を、具体的な土地利用の計画である沿道地区整備計画に先行して定めることを可能としたことにより、幹線道路の沿道の適正かつ合理的な土地利用の促進について、より柔軟な対応が可能となったこと。
(2) 良好な都市環境の形成に配慮しつつ緩衝建築物の建築を誘導することは、道路交通騒音により生ずる障害の防止と適正かつ合理的な土地利用の促進に資するものであることから、沿道地区整備計画の区域内において特に必要であると認められるときは、建築物の容積の適正配分を行うことを可能としたこと。
(3) 地域住民のまちづくりに対する気運の高まりや沿道整備の熟度を的確に把握しながら沿道地区整備計画の円滑な策定に資するため、沿道地区計画において沿道の整備に関する方針のみが策定されている区域内の土地所有者等が協定を締結し、沿道地区整備計画を定めるべきことを市町村に対し要請できることとしたこと。
(4) なお、「幹線道路の沿道の整備に関する法律の施行について」(昭和五六年一二月一八日付け建設省道環発第六号、建設事務次官通達)については、前文、第三、第四及び第五中「沿道整備計画」を「沿道地区計画」に読み替えるものとする。
6 沿道整備権利移転等促進計画について
沿道整備権利移転等促進計画は、沿道地区計画の区域内において、散在的かつ自発的に発生する所有権等の移転の動きをとらえて新しい土地所有者等が主体的に緩衝建築物の建築、土地利用の整序、オープンスペースの確保等幹線道路の沿道にふさわしい土地利用を図ることを促進するため、沿道地区計画の実現手法の一つとして、市町村の定める計画に基づいて一体的に土地に関する権利の移転等を行う制度として創設したものであり、今後、幹線道路の沿道の整備の促進のために本制度の活用に努めること。
7 沿道整備推進機溝について
(1) 幹線道路の沿道の整備をより積極的に進めていくために、地域住民の中に入って利害関係や要望を調整し各整備主体間の連携・調整を図るとともに、自ら積極的に事業を行える主体として、民法(明治二九年法律第八九号)の公益法人で次の業務を行うものを市町村長が指定することにより沿道整備推進機構と位置づけることができることとしたので、必要に応じて指定を行うこと。
1) 幹線道路の沿道の整備に関する事業を行う者に対する情報提供、助言その他の援助
2) 緩衝建築物の建築、又は建築への参加
3) 道路交通騒音により生ずる障害の防止又は軽減と沿道地区計画の区域の計画的な整備を図るため有効に利用する土地(公共・公用施設用地、市街地開発事業等の用地、緩衝建築物用地、これらの代替地)の取得、管理及び譲渡
等
(2) 市町村が、沿道地区計画の区域の土地を買い入れる沿道整備推進機構に対して無利子資金を貸し付ける事業を行うときは、国が当該市町村に対して無利子資金を貸し付けることができることとしたので、本制度の活用を図ること。
8 沿道整備促進のための施策について
幹線道路の沿道にふさわしい土地利用への転換等に資する土地の買入れの推進、背後地に対する遮音機能を有する建築物の建築の促進及び建築物の防音構造化の促進を図る観点から、沿道地区計画の区域内の土地を買い入れる市町村に対する国からの無利子資金の貸付け並びに道路管理者による緩衝建築物の建築費等の負担及び防音工事の助成の制度の拡充を行ったので、これらの措置の活用を図ること。また、新たに、防音工事を行うことが法令(条例を含む。)に基づく規制によりできない場合又は費用に照らして不適当と認められる場合は、住宅の移転・除却に要する費用を道路管理者が助成できることとしたので、本制度の活用を図ること。
9 都市再開発法の一部改正について
今回の都市再開発法の一部改正は、市街地再開発事業が、公共施設を整備し、緩衝空地としてのオープンスペースを創出しつつ、緩衝建築物の建設等を通じて生活環境を一体的に整備改善することを可能とするものであることにかんがみ、沿道のまちづくりと一体となった総合的な道路交通騒音対策の推進に当たり、高度利用地区と同等の建築規制が行われている地区計画及び沿道地区計画の区域を施行区域等に追加したものであり、本改正の趣旨を適切に活かしつつ、地域の実情に応じ、市街地再開発事業の一層の活用に努めること。
10 道路法、高速自動車国道法及び道路整備特別措置法の一部改正について
近年、特に複断面の道路において、道路交通騒音により生ずる障害を防止するために設ける施設等について、一方の道路管理者の管理する道路の施設が他の道路管理者の管理する道路の管理のための効用を有する場合が増加していることにかんがみ、関係の道路管理者同士の協議を促進し、もって、道路交通騒音による障害の防止等を推進するため、今回、法の改正に併せて、道路法(昭和二七年法律第一八〇号)、高速自動車国道法(昭和三二年法律第七九号)及び道路整備特別措置法(昭和三一年法律第七号)の一部を改正して、共用管理施設及び共用高速自動車国道管理施設の管理の方法及び費用の分担についての二以上の道路管理者間で行われる協議の規定等を整備したところであるので、今後、共用管理施設等の管理の適正化のために本制度の活用に努めること。