住総発第一二二号
昭和四四年六月三〇日

各都道府県知事あて

建設事務次官通達


公営住宅法の一部を改正する法律の施行について


第六一回国会において成立した公営住宅法の一部を改正する法律(昭和四四年法律第四一号)は、昭和四四年六月一〇日公布施行され、これに伴い政令、省令の一部も改正されたが、この施行については、左記事項にご留意のうえ、その運用に遺憾のないよう貴職の特段のご配慮を煩わしたく、命により通達する。
なお、この趣旨を貴管下事業主体にも周知徹底方取り計らわれたい。

1 低額所得者に対する低家賃住宅の供給がなお不足している現状にかんがみ、今後とも公営住宅を大量に供給する必要があるが、今回事業主体の超過負担を解消し、あわせて質の向上を図るために、公営住宅又は共同施設を建設するための土地の取得造成費についての国の援助の方式を補助から地方債による融資に改め、新たに家賃収入補助制度を創設したので、制度の切替えを円滑に行なうとともに、新制度の利点を十分発揮できるよう運用して、公営住宅の建設の促進に努められたい。
2 公営住宅が住宅に困窮する低額所得者のための低家賃住宅であるという公営住宅本来の性格にかんがみ、高額の収入を得るに至った入居者に対してその公営住宅の明渡しを請求できることとしたが、次の点に留意のうえ、その厳正な運用に当たり、管理の適正化に努められたい。

(1) この明渡し請求は、原則として、現に入居している者については、法施行の日から二年を経過した日(昭和四六年六月一〇日)、法施行後入居した者については、入居した日から五年を経過した日以後にすることとなるが、事業主体は、明渡しに至るまでの間においても、あらかじめ、この明渡し請求制度の趣旨、目的、内容等について既入居者及び今後新規に入居する者に十分周知徹底させ、いたずらに不安を招かないようにするとともに、その協力が得られるように努めること。
(2) 明渡しの請求を行なうに当たっては、定年等により近い将来において収入が激減することが明らかであること、入居者が病気にかかっていること等入居者及びその同居親族にかかる特別な事情を十分に斟酌し、入居者の居住の安定性を害することのないよう慎重に行なうこと。
(3) 高額所得者については、その者の入居している公営住宅の明渡しを容易にするよう、あらかじめ、あっせんを希望する住宅の種類、場所、規模、価格、家賃等について十分調査をするとともに、住宅金融公庫、日本住宅公団、地方住宅供給公社等と密接な連絡を保ち、あっせんに十分の配慮をすること。
(4) 高額所得者に対する明渡し請求制度が創設されたが、高額所得者に至らない収入超過者にかかる明渡し努力義務は従来どおりであるので、事業主体においても、これらの者に対し適当な住宅のあっせんに努め、その者の入居している公営住宅の明渡しを容易にするようにすること。

なお、これらの者に対しては、割増賃料の徴収を励行するとともに、未徴収の事業主体においては、割増賃料の徴収を行なうよう努めること。

(5) 公営住宅の性格からして、入居者の収入のは握が基本となるので、収入額の的確なは握に努めて、公営住宅の管理の適正を図るとともに、入居者相互間に不公平な事態が生じないよう特段の努力をすること。

3 市街地にある既設の公営住宅を建て替えて、近代的な高層又は中層の公営住宅を大量に供給し、土地の高度利用と職住近接を図るため、公営住宅建替事業に関する規定を設けたので、次の点に留意のうえ、積極的に公営住宅建替事業を施行するよう努められたい。

(1) 事業主体は、長期の住宅需給の見通しのもとに、管下公営住宅全体について実態調査のうえ、公営住宅の建替えに関する長期的な計画を樹立し、その計画に基づいて個々の公営住宅建替事業を施行すること。
(2) 公営住宅建替事業の円滑な施行を図るためには入居者の事業に対する理解と協力が必要不可欠であると考えられるので、事業主体においては、法律に定められた説明会等の措置を十分講ずることにより、あらかじめ、入居者の納得を得るように努めること。
(3) 建替え後の公営住宅の家賃と従前の公営住宅の家賃とに著しい差があるときは、家計に及ぼす激変緩和のため、一定期間家賃を軽減するように努めること。

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