最近の調査(昭和二六年一〇月三日付住発第四八五号「公営住宅の管理状況の調査について」)によれば、昭和二六年一〇月末日における公営住宅の家賃の滞納戸数三万八千余、滞納額約四千六百万円、公営住宅の不正入居(無断転貸及び使用権の譲渡)は約千五百件に及んでいる現状であり、これをそのまま放置することは、公営住宅管理上重大問題であり、将来収拾し得ない状態に至ることも予想されるので、貴都道府県においても管下事業主体に対して、左記措置を講ずることにより家賃滞納と不正入居者の一掃を図るよう指導を徹底されたい。
1 滞納家賃の処理について
(1) 強制徴収励行の指示
滞納家賃の徴収については、既に(住発第四八五号「公営住宅管理状況調査について」及び住発第五九八号「公営住宅家賃の強制徴収について」)適切な処置を要望したのでその成果は相当見るべきものがあると思料するが更に強制徴収の積極的実行を勧告すること。
(2) 分割弁済のための借地借家調停の申立
(1)により直ちに強制徴収することが適当でないと認められる滞納者については事業主体に民事調停法に基づく借地借家調停の申立をさせ滞納家賃の分割弁済等の措置を講じさせること。
なお、調停条項には調停条項違反の場合には公営住宅を明け渡す条件を附すること。(調停調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を有し(民事調停法第一六条)、従って裁判上の確定判決と同一効力を生ずる(民事訴訟法第二〇三条)ので、調停事項違反の場合には、直ちに公営住宅明渡の強制執行が可能である。)
(3) 公営住宅明渡の訴訟の提起
家賃三月分以上の滞納者で前(1)号及び(2)号によることが困難な者(強制徴収不能又は調停に応じない者その他)で悪質な入居者に対しては、公営住宅法第二二条に基づき相当な期間(大体二、三月程度)を定めて明渡を求め、期間内に明渡をしない場合には、住宅明渡の訴を提起させること。
(4) 家賃の減免等の措置
前各号によることが適当でない事情にある者については、法第一二条第三項の規定に基づく家賃の減免等の措置をとること。
2 不正入居者に対する処置について
(1) 法施行前において許可を受けないで転貸、使用権の譲渡等により不正入居をした者のうち悪質と認められない者で、法令に定める入居資格があり且つ、選考基準に従って入居させることが適当であると認められる者については、特に入居の許可を与える措置を講ずることとし、その他の者については、期間を定めて明渡を請求し、これに応じない場合には住宅明渡の訴を提起させること。
(2) 若し不正入居者が刑法第一三〇条の犯罪を構成すると認められる場合には、実情を調査して告発させること。