かかる不適正な事態の発生に対しては、建設大臣から当該事業主体に対し、補助金の全部又は一部の交付決定の取消し及びその返還命令の措置が講じられるとともに、住宅局長から当該道府県の知事に対して厳重注意を行ったところである。
ついては、かかる事態を重ねて生ずることのないよう、平成五年一一月一九日付けで公営住宅等家賃対策補助金交付要綱(昭和五五年一二月二〇日付け建設省住建発第一三二号、建設省住整発第六四号住宅局長通達。以下「要綱」という。)が改正され、家賃限度額算出表等に記載すべき内容等がより明確にされたところであるので、貴職管下の事業主体においても改正後の要綱の周知徹底を図るとともに、左記事項に留意の上、補助金交付申請書の審査体制の整備を図り、標記補助金の適正な執行に遺憾のないよう措置されたい。
1 家賃限度額の算出における工事費について
(1) 補助基本額の算入内訳について
要綱別記様式第2の別添資料「家賃限度額算出表」中の「補助基本額」又は「無利子貸付基本額」に算入される工事費は、公営住宅法(昭和二六年法律第一九三号。以下「法」という。)第七条第四項及び第八条第五項の規定に基づき毎年度建設大臣が定める標準工事費(特例加算額及び特定工事費を含む。)により算定される補助基本額(附帯事務費を含む。以下同じ)又は無利子貸付基本額(附帯事務費を含む。以下同じ。)であり、工事費総額(総支払額)ではないので留意すること。
(2) 特定工事費の戸数按分について
ア 初年度に特定工事を実施した場合の取扱い
数年度にわたり順次管理開始する場合には、種別ごとに、当該特定工事に係る全体戸数に対する当該年度の管理開始戸数で按分した特定工事費相当額を補助基本額又は無利子貸付基本額(以下F補助基本額等」という。)に算入すること。
なお、種別に管理開始戸数のない年度に対して特定工事費相当額を按分し、補助基本額等に算入することは適正ではないので留意すること。
イ 次年度以降に特定工事を実施した場合の取扱い
実施された特定工事に係る公営住宅等の一部が既に管理開始され、家賃対策補助金の交付を受けている場合には、当該住宅に係る家賃限度額の算出においては当該特定工事費相当額を補助基本額等に算入せず、特定工事を実施した年度以降に管理開始される当該特定工事に係る残りの住宅の家賃対策補助金の算定において、その合計戸数で按分した特定工事費相当額を補助基本額等に算入すること。
ウ 最終年度に特定工事を実施した場合の取扱い
特定工事を実施した年度の住宅の家賃対策補助金の算定において、特定工事費相当額を補助基本額等に算入すること。
なお、特定工事は、特定計画で定められた対象団地(棟)の住宅建設全体に必要な測量試験等の工事を実施するものであり、数年度にわたり管理開始する場合には、種別ごとに全体戸数で按分した特定工事費相当額を当該管理開始される住宅の補助基本額等に算入して家賃限度額を算出するのが原則である。ただし、補助基本額等に当該特定工事費相当額を加算するために、当該住宅に係る家賃対策補助金の家賃限度額を、特定工事の実施年度ごとに見直すことは、補助金の交付申請事務を煩雑化するとともに申請事務量を増大させるばかりでなく、補助金額の誤算を招く恐れのあることから、当該特定工事に係る住宅のうち既に管理開始しているものがある場合には、特定工事を実施した年度以降に管理開始する住宅の戸数で按分して家賃限度額を算出すること。
(3) 補助額について
要綱別記様式第2の別添資料「家賃限度額算出表」中の「補助額」には、国庫補助金のみならず、都道府県による補助金も加えること。
(法第一二条第一項を参照)
また、家賃対策補助金を交付申請する公営住宅について、公営住宅建設事業に対する新産業都市等事業補助率差額に係る国庫補助金の交付を受け又は交付申請中である場合には、その額を国庫補助金として「補助額」に加え、公営住宅建設事業に対する新産業都市等事業追加貸付金を受理し又は貸付けの申請中である場合には、その額を「無利子貸付額」に加えること。
(4) 要綱主体負担額について
要綱別記様式第2の別添資料「家賃限度額算出表」中の「事業主体負担額」は、同表中の「補助基本額」と「無利子貸付基本額」の合計額から、「補助額」と「無利子貸付額」の合計額を控除した額であり、事業主体の負担額そのものではないこと。
(5) 公営住宅等の住宅規模(住戸専用面積)が相当に異なる住宅が併設されている場合の工事費について
今後、公営住宅等の住宅規模(住戸専用面積)が相当に異なる住宅が併設されている場合は、工事費を住宅規模(住戸専用面積)により按分して用いること。
2 家賃限度額の算出における土地取得造成費について
(1) 補助基本額について
要綱別記様式第2の別添資料「家賃限度額算出表」中の「補助基本額」は、公営住宅法施行令(昭和二六年政令第二四〇号。以下「政令」という。)第四条第五号の表の上欄各項に定める区分に応じ、それぞれ中欄及び下欄各項に定める額により算出するが、公営住宅家賃収入補助金の土地取得造成費の標準価額を限度として用いること。
ア 公営住宅等を建設するために新規に買収取得した場合においては、公営住宅家賃収入補助金交付要領別記様式第3の表中D欄「補助対象土地取得造成費」を基に算出すること。
イ 同一団地で、単年度に土地を買収取得し、数年度にまたがって公営住宅等が管理開始される場合は、土地取得造成費を管理開始ごとに戸数按分して用いること。
(2) 公営住宅等の住宅規模(住戸専用面積)が相当に異なる住宅が併設されている場合の土地取得造成費について
今後、新規の土地を買収し取得した場合を含め、公営住宅等の住宅規模(住戸専用面積)が相当に異なる住宅が併設されている場合は、土地取得造成費を住宅規模(住戸車用面積)により按分して用いること。この場合、異なる住宅規模(住戸専用面積)の土地取得造成費の総計について、公営住宅家賃収入補助金の土地取得造成費の標準価額(改良住宅にあっては用地取得造成に係る補助基本額又は無利子貸付基本額)を限度とすること。
(3) 家賃収入補助額について
要綱別記様式第2の別添資料「家賃限度額算出表」中の「家賃収入補助額」は、公営住宅家賃収入補助金交付要領第3第一項に規定する補助対象率を一とした場合の年間家賃収入補助金を用いること。同交付要領別記様式第3の表中F欄「家賃収入補助基本額」を基に算出すること。
3 補助基準額について
要綱第4「建替後入居住宅に係る補助基準額の算定」の規定を適用することができる場合は、当該建替事業が要綱第3第六号に規定する次の(1)から(3)に掲げる事業の一に該当する場合であること。したがって、公営住宅等の任意の建替事業で、次の(1)から(3)に掲げる事業のいずれにも該当しない場合においては、新規に建設した場合の補助基準額を適用すること。
(1) 法第二条第一一号に掲げる公営住宅建替事業(法定建替事業)
(2) 建替促進計画(公共賃貸住宅総合再生事業実施要領(平成二年六月七日付建設省住建発第六九号住宅局長通達)第2第六号)、再生マスタープラン(同要領第2第七号)又は再生プロジェクト推進計画(同要領第2第八号)で建設大臣の承認を受けたものに基づく公営住宅、公団賃貸住宅又は公社賃貸住宅の建替事業
(3) 改良住宅等建替事業制度要綱(平成三年四月一一日付け建設省住整発第四二号)第2第一号に規定する改良住宅等建替事業
4 補助対象除外戸数について
要綱第八第二項の規定により補助対象戸数から除外する公営住宅等の戸数は、毎年一〇月一日(以下「基準日」という。)現在における同項第一号に規定する空家住宅及び同項第二号に規定する収入超過者が入居している公営住宅等の戸数とすること。
なお、収入超過者が入居している公営住宅等の戸数には、次に掲げる者が入居している戸数を含めるものとする。
(1) 事業主体が入居申込者に入居資格のないことを知りつつ、又は事業主体の重大な瑕疵により入居資格のない者に対して入居決定をした場合(以下「不適正入居」という。)の入居者
(2) 形式上正式な手続きで入居した者で、入居後、入居申込み時点における虚偽申告等不正の方法による入居である事実が判明した場合(以下「不正入居」という。)の入居者
5 空家住宅の戸数把握について
空家住宅は、新築空家、既存空家、政策空家等の空家の種類を問わず、基準日(毎年一〇月一日)現在において入居者のない住宅をいい、その戸数の把握に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 空家の期間は、前入居者が退去した日(通常この日までが家賃の徴収対象となる。)の翌日から、次の入居者との入居契約による入居可能日(次の入居者が実際に入居したか否かにかかわらず、通常この日が家賃徴収の始期となる。)の前日までをいい、基準日(毎年一〇月一日)がこの期間内にあるときは、空家住宅として扱うこと。
(2) 今後、入居者に対して期限を定めて明渡しを請求し、その期間経過後に入居の取消しをした場合は、入居者が退去しない場合でも、当該住宅を空家住宅として扱うこと。
(3) 入居者に対して家賃を免除している場合で、その旨が明らかでかつ客観的にも空家でないことが明らかである場合のほかは、空家住宅として扱うこと。
(4) 今後、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二三八条の四第四項に基づく目的外使用許可を得て公営住宅以外の目的に使用している住宅は、空家住宅扱いすること。
6 収入超過者入居住宅の戸数把握について
要綱第8第二項第二号に規定する収入超過者が入居している公営住宅等の戸数の把握に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 基準日(毎年一〇月一日)現在において公営住宅等に引き続き三年以上入居している者については、すべて収入調査を行って収入超過者を把握すること。
なお、基準日以前の日で戸数を算定している事業主体にあっては、毎年一〇月一日現在における収入超過者に係る公営住宅等の戸数を再度調査し、当該戸数をもって収入超過者入居戸数とすること。
(2) 事業主体が基準日において収入超過者である者に対する割増賃料の賦課を免除している場合においても、当該収入超過者が入居している住宅については、収入超過者入居戸数として取扱うこと。
(3) 収入過者の判定に係る収入の算定は、入居者及び同居親族について、法第二三条の二の規定の積極的な活用、入居者からの公的証明書の提出、税務当局との連携による職権調査等により正確に行う。
7 不適正入居及び不正入居の防止と戸数の把握について
不適正入居及び不正入居の防止と戸数の把握に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 不適正入居の防止については、「公営住宅の入居審査等の適正な実施について」(昭和五八年一二月一七日付け建設省住建発第二六九号・建設省住総発第一四七号住宅局長通達)のとおり、公営住宅の入居者の選考は、法第一七条及びこれに基づく政令に規定する入居者資格のある者のみに対して迅速、正確かつ公正に実施すべきものであり、そもそも入居者資格のない者を選考の対象として入居決定することは、公営住宅制度の根本にかかわる問題であり、法令等に違反するものであるので絶対に許されないこと。
(2) 不適正入居者が入居している住宅については、入居後において入居資格に適合したとしても当該者が退去するまでの間は、家賃対策補助金の対象戸数から免除すること。
(3) 不正入居者が入居している住宅については、その事実が判明した日以後その者が退去するまでの間は、家賃対策補助金の対象戸数から除外すること。
(4) 不適正入居者及び不正入居者については、別途名簿を作成し把握漏れのないようにすること。
8 基準日以降の管理開始に係る収入超過者入居戸数について
基準日以降の管理開始に伴って入居した者のうち、法第一六条第一項の規定により特定入居した者で、入居時点で法第二一条の二第一項又は改良住宅等管理要領第七第一項に規定する収入超過者である場合は、当該収入超過者が入居している戸数を家賃対策補助金の対象戸数から除外すること。
9 補助金申請事務体制の充実について
家賃対策補助金の申請において、空家住宅等の戸数の把握誤り等が見受けられることから、補助金の算定に当たっては次の事項に留意するとともに、審査体制の充実及び強化に努めること。
(1) 空家住宅戸数及び収入超過者入居戸数等の把握事務を含む家賃対策補助金に係る申請事務のマニュアルを作成し、審査事務担当者が異動しても適切な引継ぎが行われるよう措置すること。
(2) 計算の誤り等を防止するため、補助金の算定に当たっては電子計算機の導入等による事務処理の合理化を図るとともに、複数の担当者による確認を行うこと。
(3) 家賃対策補助金の申請時期が国の会計年度の末期であるため、申請事務の担当部局において、他の補助事業等の完了に伴う諸手続きと家賃対策補助金の申請事務が重複することにより過重な業務とならないよう事務体制の見直しを行うとともに、申請事務を計画的に行うよう措置すること。
(4) 補助金担当部局と収入調査部局とが異なる事業主体においては、両部局間で十分な連絡をとり、入居者の収入及び家族構成等の状況並びに入居者資格の適用状況を的確に把握するように努めること。
10 都道府県における審査体制の整備及び管下市町村に対する指導監督の強化について
家賃対策補助金の適正な執行については、かねてから都道府県及び各事業主体担当者に対して、担当者研修会等で指導してきたところであり、指定都市以外の市町村に係る補助金の交付申請書については、都道府県担当部局においてその受理及び内容の審査を行ってきたところであるが、一部の事業主体においては公営住宅等家賃対策補助金の算定において不適正な事例が見受けられることから、次に事項に留意するとともに、審査体制の充実等に努めること。
(1) 家貸対策補助金の交付申請書の審査においては、補助対象戸数の算定に誤りがないかどうか、また家賃限度額の算出に用いる補助基本額の算出内訳に誤りがないかどうかを充分に審査し、必要に応じて適宜算出内訳を確認するための書類を添付させること。また、審査事務の迅速化及び合理化を図るため、あらかじめ審査項目及び審査方法等について整理しておくこと。
(2) 建設担当部局と申請書の審査担当部局との連絡を緊密にし、市町村事業主体における公営住宅等の建設事業の決算状況及び特定工事等の実施状況等を充分に把握し、的確な審査に努めること。
(3) 実賃対策補助金の適正な執行を図るため、申請事務担当者に対して定期的に研修会等を開催し、家賃対策補助金制度の趣旨の徹底及び強化に努めること。
(4) 管下事業主体に対して補助金の申請が適正に行われているかどうかについて、定期的な現地監査を実施し、家賃対策補助金制度について申請事務担当者の啓発を図ること。