今般実施された会計実地検査により、一部の事業主体において、入居者資格の無い者を入居者として決定し、また、これらの入居者に係る住戸について公営住宅家賃収入補助金及び公営住宅等家賃対策補助金の交付申請を行う等、法令等に違反する事例が指摘されるに至ったことは極めて遺憾である。
公営住宅法等を厳守し、その趣旨・目的に即し的確な運用を図ることは事業主体の責務であるにもかかわらず、かかる不適正な運用がなされることは制度の根本に触れる問題である。
今後かかる不適正な事態が発生した場合は、補助金等の全部又は一部の交付決定を取り消し、その返還を求める等その事態に応じ厳正な措置を講ずる所存であるので、今後かかる事態が再び発生することのないよう、事業主体において一層姿勢を正すとともに、左記事項に十分留意の上、入居審査等の適正な実施に遺憾のないよう措置されたい。
1 入居者の選考
公営住宅の入居者の選考は、公営住宅法(以下「法」という。)第一七条及びこれに基づく政令に規定する入居者資格のある者のみについて行うものであり、そもそも入居者資格のない者を選考の対象とし入居決定することは、法令に違反するものであるので絶対に許されないこと。
2 入居申込者の収入認定に係る審査の方法
(1) 入居の申込みを迅速、正確かつ公正に審査する等必要がある場合は、多くの事業主体で行われているように、入居者及び法第一七条第一号に規定する親族(以下「同居親族」という。)の前年の所得金額をもって、公営住宅法施行令第一条第三号にいう「過去一年間」の所得金額とみなして実務上取り扱うこともやむを得ないこと。ただし、退職、転職等の理由により、前年の所得金額によることが入居者に不利な取扱いとなり、妥当でない場合は、この限りでないこと。
(2) (1)の前年の所得金額により取り扱う場合には、次の方法により審査を行うこと。
1) 入居の申込みに当たり、入居者及び所得のあることが見込まれる同居親族について、前年の所得金額に係る、市町村長の発行する所得が記載された証明書(所得の種類、扶養親族数、各種の控除が記載されたものが望ましい。以下「所得証明書」という。)を提出させ、これにより収入を認定し入居を決定する。
2) 入居者及び所得のあることが見込まれる同居親族について、市町村長が前年の所得金額に係る所得証明書を発行することができない時期(市町村長がいわゆる課税台帳を調製するまでの時期、一月からおおむね五月頃まで)に募集を行う場合には、次のa、bのいずれかの方法による。
a 入居の申込みに当たり、給与所得者にあっては前年の所得金額に係る給与所得源泉徴収票を、事業所得者等にあっては前年の所得金額に係る確定申告書等所得の収支を記載した明細書(以下「収支明細書」という。)を提出させ、これにより仮に入居の申込みを受け付けるが、市町村長が前年の所得金額に係る所得証明書を発行することができる時期に、入居申込者に当該所得証明書を提出させ、これにより収入を認定し入居を決定する。
b 入居の申込みに当たり、給与所得者にあっては前年の所得金額に係る給与所得源泉徴収票を、事業所得者等にあっては前年の所得金額に係る収支明細書を提出させるとともに、前々年の所得金額に係る所得証明書を提出させ、これを参考にして前年の所得金額を審査した上で、収入を認定し入居を決定する。
3) 前年の所得を申告していない等の理由で、入居者及び所得のあることが見込まれる同居親族について、前年の所得金額に係る所得証明書により収入を認定することができない場合には、本人の申告、勤務先からの報告等その時点において最も効果的な方法により、その者の前年の所得金額を把握する。
(3) (1)の前年の所得金額により取り扱う場合にも、募集、審査及び入居決定を適切な時期に行うこと。
(4) 入居の申込みに当たり、所得証明書、住民票等を提出させ、同居親族の数を正確に把握すること。
3 公営住宅家賃収入補助及び公営住宅等家賃対策補助の申請
(1) 公営住宅に引き続き三年以上入居している者については、すべて収入調査を行って収入超過者を把握すること。
(2) 収入超過者は、公営住宅家賃収入補助及び公営住宅等家賃対策補助の補助対象外であり、このことは、収入超過者から事業主体が割増賃料を徴収しているか否かとは無関係であること。
(3) 収入超過者に係る公営住宅の戸数を算定する基準日は、毎年一〇月一日であり、これ以前の日で戸数を算定している場合は、毎年一〇月一日現在における収入超過者に係る公営住宅の戸数を再度調査し算定すること。
(4) 収入超過者の判定に係る収入の算定は、基準日の属する年の前年の収入により行うこと。
(5) 収入超過者の判定に係る収入の算定は、入居者及び同居親族について、法第二三条の二の規定の積極的な活用により、正確に行うこと。
4 不適正入居についての今後の取扱い
公営住宅の入居者の決定が適正でないものについては、法第二一条の二、第二一条の三等法令の規定による各種対応処置を適切に講ずること。また、これらの入居者に係る公営住宅家賃収入補助金及び公営住宅等家賃対策補助金については昭和五八年度以降、適正でない入居決定に係る入居者が退去するまでは、交付申請を行わないようにすること。