住建発第六九号
平成二年六月七日

建設省住宅局長通達



公共賃貸住宅の建替の円滑な実施について

公共賃貸住宅の建て替えに当たって、住宅需要等に対応した公共賃貸住宅及び他の公的住宅等の供給を行うとともに入居者の適切な住み替えの促進及び定住の確保を図るため、一体的な再生の計画に基づいて推進することとし、新たに別紙のとおり「公共賃貸住宅総合再生事業実施要領」を定めたので、貴管下事業主体に対しても本制度の周知徹底を図るとともに、その取扱いについて、遺憾なきをきされたく通知する。
また、公共賃貸住宅総合再生事業の実施において必要な公営住宅の建て替え又は用途の廃止については、公営住宅法第二三条の五第一項又は第二四条第三項に基づく所定の手続により、建設大臣の承認を必要とするものであることを申し添える。
なお、「公共賃貸住宅団地の建て替えの円滑な実施について」(平成元年五月二九日付け住建発第六八号は廃止する。



別紙

公共賃貸住宅総合再生事業実施要領

第1 目的

この要領は、公共賃貸住宅の総合的かつ計画的な建替の実施について必要な事項を定めることにより、老朽化した公共賃貸住宅を更新しつつ、その敷地を有効に活用し、住宅需要等に対応した公共賃貸住宅等の建設を行うとともに、入居者の適切な住み替えの促進及び定住の確保を図ることを目的とする。

第2 定義

この要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 公共賃貸住宅

地方公共団体、地方住宅供給公社又は住宅・都市整備公団が管理する住宅をいう。

二 他の公的住宅

住宅建設計画法(昭和四一年法律第一〇〇号)第三条に定義する「公的資金による住宅」のうち、公共賃貸住宅を除く住宅をいう。

三 公共賃貸住宅等

公共賃貸住宅、他の公的住宅、公共施設及びその他居住者の利便に供する施設をいう。

四 再生事業

この要領に基づき行われる公共賃貸住宅の建て替え及びこれに伴って行われる公共賃貸住宅等の建設を行う事業をいい、これらに附帯する事業を含むものとする。

五 再生団地

再生事業が行われる公共賃貸住宅団地をいう。

六 再生マスタープラン策定事業

この要領に基づき、第3に規定する区域において行われる再生事業に係る総合的な計画(以下「再生マスタープラン」という。)を策定する事業をいう。

七 再生プロジェクト推進計画策定事業

この要領に基づき、第5に規定する区域において行われる再生事業の事業実施に係る計画(以下「再生プロジェクト推進計画」という。)を策定する事業をいう。

八 建替団地計画策定事業

この要領に基づき、第9に規定する団地において行われる再生事業の計画(以下「建替団地計画」という。)を策定する事業及びそれに附帯する事業をいう。

九 地方公共団体等

再生事業を行う地方公共団体、地方住宅供給公社又は住宅・都市整備公団をいう。

第3 再生マスタープランの策定区域

再生マスタープランの策定区域は、原則として一の市町村(特別区を含む。以下同じ。)の区域内とする。ただし、二以上の市町村にまたがる区域で広域的に策定することが合理的である場合又は市町村の一部の区域に公共賃貸住宅が集中的に存する場合にあってはこの限りでない。

第4 再生マスタープランの策定
1 地方公共団体の長は、第3の策定区域において再生マスタープランの承認を受けようとするときは、別表1に掲げる図書を添えて建設大臣に申請しなければならない。この場合において、市町村長にあっては都道府県知事を経由して申請を行い、都道府県知事はこれに意見を付して建設大臣に進達するものとする。
2 再生マスタープランは次に掲げる事項について定めるものとする。

一 策定区域の範囲
二 再生団地の位置、区域及び面積
三 再生事業の基本方針
四 再生団地の土地利用計画
五 再生事業の計画期間

3 再生マスタープランは次に掲げる基準に適合しなければならない。

一 地域の住宅需要等に対応した公共賃貸住宅等の建設が促進されることにより、居住環境の整備及び居住者の利便の増進に資するものであること。
二 地域の市街地の状況等に照して、適切な土地利用が図られるものであること。
三 一定の計画期間内に効率的に実施される計画であること。

4 第一項の規定は、再生マスタープランを策定した地方公共団体の長が、次に掲げる変更を行おうとする場合に準用する。

一 再生団地の位置、区域又は面積の変更で、変更に係る部分の面積が承認を受けた面積の一〇分の二以上のもの
二 土地利用計画の変更で、各用途別に変更に係る部分の面積が承認を受けた面積の一〇分の二以上のもの
三 再生事業の基本方針の変更
四 再生事業の計画期間の変更で二年を超えるもの

第5 再生プロジェクト推進計画の策定区域

再生プロジェクト推進計画の策定区域は次に掲げる要件に該当するものでなければならない。
一 当該区域が次のイ又はロに該当するものであること。

イ 原則として、一五〇戸以上の公営住宅が存している一団地の区域
ロ 公営住宅団地を含む相互に近接した複数の公共賃貸住宅団地の存する区域

二 団地内に存する公営住宅の大部分が公営住宅法(昭和二六年法律第一九三号)第二四条第一項に規定する耐用年限のおおむね二分の一以上を計画期間内に経過し、又は公営住宅としての機能が災害その他の事由により相当程度低下していること。

第6 再生プロジェクト推進計画の策定
1 地方公共団体の長は、第5の策定区域において再生プロジェクト推進計画の承認を受けようとするときは、別表2に掲げる図書を添えて建設大臣に申請しなければならない。この場合において、市町村長にあっては都道府県知事を経由して申請を行い、都道府県知事はこれに意見を付して建設大臣に進達するものとする。
2 再生プロジェクト推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 再生団地の位置、区域及び面積
二 再生団地における学共賃貸住宅等の建設及び整備に関する計画
三 再生事業の実施によって除却される住宅の居住者のために、新規に取得する敷地(以下「代替用地」という。)において行う公共賃貸住宅等の建設計画
四 再生事業により除却すべき公共賃貸住宅の種類及び構造別の戸数、位置及び除却年度
五 再生事業により除却すべき公共賃貸住宅の敷地に関する処分方針(代替用地を取得する場合においてはその内容を含む。)
六 計画期間

3 再生プロジェクト推進計画は、次に掲げる基準に適合しなければならない。

一 再生マスタープランの策定されている市町村の区域内においては、当該再生マスタープランとの調和が保たれているものであること。
二 新たに建設すべき公共賃貸住宅等の敷地の位置、区域及び面積並びに種類別及び構造別戸数並びに配置が再生団地の現況及び公共賃貸住宅等の需要に照して適切なものであること。
三 原則として、新たに建設すべき公営住宅の戸数が、除却すべき公営住宅の戸数に、その構造及び階数に応じ公営住宅法第二三条の四第三号の規定する政令で定める数値を乗じて得た戸数の合計以上であること。ただし、特別な事情がある場合においてはこの限りでない。
四 除却すべき公共賃貸住宅の敷地の処分が合理的かつ適切なものであること。

4 第一項の規定は、再生プロジェクト推進計画を策定した地方公共団体の長が、次に掲げる変更を行おうとする場合に準用する。

一 公共賃貸住宅及び他の公的住宅等の敷地の区域又は面積の変更で、変更に係る部分の面積が承認を受けた面積の一〇分の二以上のもの
二 新たに建設すべき公共賃貸住宅及び他の公的住宅の戸数の変更で、種類別に変更に係る戸数が承認を受けた戸数の一〇分の二以上のもの
三 除却すべき公共賃貸住宅の戸数の変更で、変更に係る戸数が承認を受けた戸数の一〇分の二以上のもの
四 除却すべき公共賃貸住宅の除却年度の変更で二年を超えるもの
五 除却すべき公共賃貸住宅の敷地の処分の方法に係る重要な変更

第7 除却された公共賃貸住宅の敷地の処分と基金の設置
1 再生事業の施行に伴い、除却すべき公共賃貸住宅の敷地の処分については、再生プロジェクト推進計画に基づき、原則として交換により行うものとする。ただし、交換による処分を直ちに行うことが困難な場合その他特別な事情が存する場合においては、この限りではない。
2 前項ただし書により除却すべき土地を譲渡する場合においては、時価を基準として地方公共団体等が定める適正な価格で、地方公共団体等が再生プロジェクト推進計画で定められた者に対し行うものとする。
3 第一項に規定する処分により得た譲渡対価等の利益のうち地方公共団体におけるものは、代替用地の取得等を目的として、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二四一条に基づく基金に積み立てるものとする。
第8 再生マスタープラン又は再生プロジェクト推進計画の策定に関する協議

地方公共団体の長は、再生マスタープラン又は再生プロジェクト推進計画の策定に際し、当該計画に係る他の公共賃貸住宅等の整備を行う主体と協議するものとする。

第9 建替団地計画の策定区域

建替団地計画の策定区域は次に掲げる各号の一に該当するものでなければならない。
一 公営住宅法(昭和二六年法律第一九三号)第二条第一一号に定める公営住宅建替事業を行い、又は行うことが確実と認められる団地であること。
二 再生マスタープラン又は再生プロジェクト推進計画において再生団地として建設大臣が承認した公共賃貸住宅団地であること。

第10 建替団地計画の策定
1 地方公共団体等の長は、第9の策定区域において、建替団地計画を策定することができる。
2 建替団地計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 団地の位置、区域及び面積
二 団地における公共賃貸住宅等の建設及び整備に関する計画
三 その他必要と認められる事項

第11 再生事業の実施
1 再生事業の実施における公営住宅の建替は、公営住宅法第二三条の三に規定する公営住宅建替事業により行われるよう努めるものとする。
2 地方公共団体等は、再生マスタープラン、再生プロジェクト推進計画又は建替団地計画に即して再生事業を実施するとともに、再生事業に係る他の公共賃貸住宅等の整備を行う主体に対し、その整備が当該計画に即して実施されるよう必要な要請を行わなければならない。
第12 国の補助
1 国は、次に掲げる事業に係る経費について、予算の範囲内において、別に定めるところにより補助することができる。

一 地方公共団体が行う再生マスタープラン策定事業
二 地方公共団体が行う再生プロジェクト推進計画策定事業
三 地方公共団体等が行う建替団地計画策定事業
四 地方公共団体等が再生事業に伴い入居者に対し移転に要する費用を助成する事業
五 地方公共団体等が再生事業に伴い入居者に対し仮住居として民間住宅を借上げるために要する費用を助成する事業

2 前項の国の補助は、地方住宅供給公社が事業の主体である場合は、地方公共団体が当該地方住宅供給公社に補助する額について、別に定めるところにより、当該地方公共団体に対し補助するものとする。
第13 建設大臣の指導監督

建設大臣は、再生事業の実施及び基金の運用について、地方公共団体等に対して必要に応じ報告書の提出を求め、必要な指示を行うことができる。

第14 運営

公共賃貸住宅団地総合再生事業の運営は、この要綱に定めるところによるほか、「公営住宅建設事業等推進事業費補助金交付要綱」に定めるところにより行われなければならない。

附 則

1 この要領は、平成二年六月七日から適用する。
2 この要領の適用の際、現に施行中の大規模公営住宅団地再生プロジェクト実施要領(昭和六一年四月五日付け住建発第六一号。以下「大規模再生プロジェクト実施要領」という。)の規定による大規模再生プロジェクト基本計画及び大規模再生プロジェクト事業計画は、原則として、各々この要領の規定による再生マスタープラン及び再生プロジェクト推進計画とみなす。
3 この要領の適用の際、現に施行中の公共賃貸住宅総合再生事業実施要領(平成二年五月二九日付け住建発第六八号。以下「旧要領」という。)の規定による公共賃貸住宅団地総合再生基本計画及び公共賃貸住宅団地総合再生事業計画は、原則として、各々この要領の規定による再生マスタープラン及び再生プロジェクト推進計画とみなす。
4 大規模再生プロジェクト再生実施要領及び旧要領の規定により行われた手続、処分その他の行為は、原則として、この要領の相当規定により公共賃貸住宅総合再生事業に関して行われた手続、処分その他の行為とみなす。


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport