住総発第一二三号
昭和四四年六月三〇日

各都道府県知事あて

建設省住宅局長通達


公営住宅の管理の適正化について

公営住宅の管理については、かねてから格段のご努力をお願いしているところであるが、今回公営住宅法の一部改正により、公営住宅本来の性格にかんがみ高額所得者に対する明渡請求の制度が制定されたので、将来高額所得者に対する明渡請求制度を厳正に実施するためにも今後事業主体において一層姿勢を正し、左記事項に十分留意のうえ管理の適正化に遺憾のないようにされたい。
なお、管下事業主体に対しても、この旨周知徹底を図られるとともに、適切な指導監督を行なうよう努められたい。
おって、昭和二八年一一月二八日付け住発第一一四二号(公営住宅の管理に関する報告書の提出について)、昭和三四年九月七日付け住発第二六九号(公営住宅法第一二条による家賃の決定報告について)及び昭和三四年一〇月八日付け住発第二九五号(公営住宅法第一三条第三項による家賃変更の承認申請について)の通達は廃止する。

1 管理体制の強化について

公営住宅の管理戸数の増大に伴い、管理事務も複雑多様化しているので、このような状況に即応できるように事業主体の管理体制を整備すること。すなわち、適正な管理を行なうため、必要な組織の充実及び人員の強化を図るとともに、これに必要な経費について特段の配慮をされたいこと。

2 管理の状況の点検について

公営住宅の管理が適正に行なわれているかどうかその実態を把握するため昭和四四年度中に管下全事業主体について総点検を行ない、是正の必要があれば、すみやかに是正させること。総点検はおおむね次の事項について行なうものとし、この結果について総点検完了後すみやかに報告すること。
(1) 戸数 建設年度別、種類別、構造別に建設、処分及び管理台帳登載戸数と実際管理戸数の照合確認
(2) 家賃等の収支の状況 家賃、割増賃料、敷金運用利益金、公営住宅譲渡対価等の収入と管理事務費、修繕費、環境整備費等の支出の状況
(3) 滞納、減免等の実施状況 減免等の規定に関する条例の整備状況、家賃及び割増賃料の滞納及びその整理状況並びに減免又は徴収猶予の状況
(4) 入居者の状況 管理台帳に登載されている入居者及び同居人以外の不正入居者の有無及びあった場合にこれに対する措置
(5) 収入の把握の状況 入居者又は収入超過者の決定の際における、収入調査の方法及び収入把握の状況
(6) 修繕の実施状況 修繕の適正な実施の有無
(7) 入居者の保管状況 増築件数及び無断増築等の保管義務違反件数とこれに対する措置
なお、昭和四五年度以降総点検の結果に基づき毎年度重点事項を定めて定期的に実地検査を行ない、適正な管理が行なわれるよう十分指導監督に努めるとともに、この結果についても検査完了後すみやかに報告すること。

3 入居者の収入の的確な把握について

入居者の選考、割増賃料の適正な徴収支は高額所得者に対する明渡請求に際し、収入の的確な把握が基本となるので、定期的に入居者に収入報告を励行させるよう努めるとともに、国又は市町村の税務当局と連絡を緊密にし、資料の入手等に支障のないよう努めること。

4 家賃の適正化について

(1) 家賃の不均衡是正を積極的に行なうこと。

建設年度の相違によって既設の公営住宅相互間に著しい家賃の不均衡を生じているので、入居者の家賃負担の衡平を期し、かつ、建設年度の古い公営住宅の維持、修繕を的確に行なうため、別紙1「家賃の不均衡是正措置の実施要領」により、不均衡是正を早急に行なうこと。
なお、今後は、おおむね三年ごとに検討し、物価変動等に応じて家賃の変更を行ない、家賃を常に適正な額に維持すること。

(2) 家賃の滞納の解消を図ること。

家賃の徴収状況は、おおむね良好であるが、一部の事業主体にはかなりの滞納を生じている事態も見受けられるので、家賃の滞納を解消するように努めるとともに、必要に応じ適切な法的措置を講ずること。

(3) 特に収入の低い者等に対し減免等の措置を適切に講ずること。

生活保護世帯等の収入の著しく低い世帯その他特別の事情のある世帯に対しては、積極的に家賃の減免又は徴収の猶予の措置を講ずること。
なお、敷金についても、生活保護世帯又はこれに準ずるような世帯に対しては、積極的に減免措置を講ずるように努めること。

5 公営住宅の適正な入居事務の執行について

(1) 公営住宅の入居者の選考その他入居関係事務については、法の定めに従い適正に執行すること。無断転貸、入居権の譲渡等不正入居は厳に防止するよう努めるとともに、不正入居を発見した場合には、すみやかに法的措置その他適切な是正措置を講ずること。
(2) 入居者の選考にあたっては、住宅困窮状況をできるだけ選考に反映させる措置を講ずるように努めること。特に入居申込者の少ない事業主体においては、抽せんによらず、住宅困窮者の登録制度等の採用を検討すること。

なお、空家の入居者の選考については、公営住宅の入居申込回数の多い者を優先する等の方法を積極的に採用すること。

6 公営住宅の維持保全について

(1) 公営住宅を常に適正な状態に維持するため、事業主体は、計画的に修繕を実施するとともに、入居者からの正当な修繕の要求に対しては、すみやかに応じられるよう努めること。
(2) 入居者に対しては、保管義務を遵守するよう指導するとともに、無断増改築、無断用途変更等の保管義務違反を発見したときは、すみやかに是正させるよう適切な措置を講ずること。増改築、模様替等については、規模、構造、設計等に関する統一した基準を設けて承認するようにされたいこと。
(3) 管理戸数の増大及び管理職員の不足により適正な管理の実施が困難な事業主体は、能率的な管理を行なうため維持修繕等の管理を委託する方策について検討すること。

7 経理の明確化について

公営住宅に関する収入及び支出は、一般会計で経理されている事業主体が多く、このため家賃に含まれる修繕費相当額が、修繕費として計上されているかどうか、譲渡対価の使途等が必ずしも明確でなく、また敷金についても、歳入歳出外現金として他の現金と一括経理していること等により、運用状況及び利益金の使途が明確ではない事業主体も一部に見受けられるので、公営住宅に関する特別会計の設置を検討し、公営住宅に関する経理の明確化に努めること。

8 報告について

(1) 事業主体の長は、公営住宅法の規定により、家賃、敷金、入居者の具備すべき条件及び入居者の選考方法の決定又は変更並びに管理条例の制定又は改廃については、一月以内に報告すべきこととなっているので、これを厳守すること。

なお、家賃の決定又は変更の報告は、別紙2「家賃の決定又は変更報告について」によること。

(2) 公営住宅の管理上必要と認められる次の事項については、別記様式により毎年六月末日までに管下事業主体分もあわせとりまとめのうえ、報告すること。

イ 管理戸数

別記様式第1号 建設年度別公営住宅管理戸数調
別記様式第1号の2 公営住宅管理状況調(都道府県営分)
別記様式第1号の3 建設年度別特定目的公営住宅管理戸数調

ロ 入居事務

別記様式第2号 公営住宅入居事務取扱状況報告

ハ 空家発生状況

別記様式第3 収入超過者のあっせん及び空家発生状況

ニ 家賃及び割増賃料

別記様式第4号 公営住宅家賃等の収支の状況
別記様式第5号 公営住宅家賃徴収状況
別記様式第6号 公営住宅割増賃料徴収状況


別紙1
家賃の不均衡是正措置実施要領

公営住宅の家賃は、建設年度の相違等により、同種同等の既設住宅相互間で、あるいは第一種住宅と第二種住宅との間においても、著しい不均衡を示しているので、左記により、公営住宅の家賃の不均衡を是正するものとする。


1 不均衡是正の目的

公営住宅入居者の家賃負担の衡平を図るため不均衡是正を行なうものとする。

2 不均衡是正の対象

昭和三八年度以前に建設された住宅を対象とすること。

3 家賃変更の基準

(1) 家賃の変更は、原則として、法第一三条第三項に規定する月割額を限度として決定することとし、この場合、昭和三九年度建設の同種、同等、同構造の住宅の実際の家賃との均衡を考慮すること。

なお、地代に相当する額の算定の基礎となる固定資産税評価額相当額は、家賃変更をしようとする年度の価額を用いること。

(2) 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律により交付金額に相当する金額を家賃に加算しようとする場合には(1)による家賃の変更額に交付金相当額を附加すること。

4 家賃変更による調整

(1) 家賃の変更により、家賃の支払が著しく困難となるおそれのあるような低額所得者に対しては、当分の間家賃の減額を行なう等の措置を講ずること。
(2) 応急簡易住宅、既存建物転用住宅等で住宅の機能の低下が著しいと認められる住宅については、必要に応じ当該住宅の建替えを促進すべきものであるが、それまでの間は、その家賃変更額に考慮を加える等弾力的な措置を講ずること。

5 実施の時期

家賃の不均衡是正は、原則として、昭和四五年度内に行なうこと。ただし家賃の上昇が著しい場合には、入居者の家賃負担能力等を考慮して一時に値上げすることをさけ、二〜三年に分けて行なっても差支えない。

6 不均衡是正による家賃増収分の使途

不均衡是正による家賃増収分は、主として、住宅の維持、修繕その他管理の費用に充て管理の一層の適正化を図ること。
なお、大都市地域等地価の著しい上昇により新たに建設する公営住宅の家賃の限度額が相当高くなる地域においては、当該公営住宅の家賃の引下げの財源に充てることは差支えない。

7 住民及び入居者に対する措置

不均衡是正の実施に当たっては、一般住民に対し、家賃変更の必要性を周知させ世論の喚起を図るとともに、入居者に対しては、説明会を開催し、家賃収支の状況、増収となる家賃収入の使途等を示し、家賃変更の必要性を周知徹底させ、いたずらに混乱を招かないよう十分措置すること。



別紙2

公営住宅の家賃の決定又は変更報告について

公営住宅法(以下「法」という。)第一二条による家賃の決定又は法第一三条第一項による家賃(敷金を含む。)の変更に係る法第一九条の報告については、公営住宅法の一部改正に伴い、別紙第1、及び第2のとおり改めることとしたので、これにより遅滞なく報告するものとする。
なお、この通達施行の日現在において既になされた報告については、従前の様式によって差支えないものとする。



様式 〔略〕


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