住総発第五三号
昭和四六年四月五日

各都道府県知事あて

建設省住宅局長通達


公営住宅の管理の適正な執行について


公営住宅の管理については、かねてから格段のご努力をお願いしているところであるが、最近、一部の事業主体において公営住宅の処分、入居者の選考、増改築、修繕等について公営住宅法に違反する行為が見受けられ、その事実が行政監察によって指摘されるに至ったことはまことに遺憾である。公営住宅をその供給の趣旨・目的にそって適正かつ合理的に管理し、法に定める高額所得者に対する明渡請求制度の適用等と相まって効率的に活用することは、新たな公営住宅の建設とともに、住宅政策のうえで重要な意義をもつものであるので、貴職におかれては、左記事項に留意のうえ、今後一層その指導監督を厳にせられるとともに、貴管下事業主体に対しても、この旨十分周知徹底方取り計らわれたい。

1 公営住宅の管理の是正及び強化について

(1) 管理体制の整備強化について

今般指摘のあった公営住宅の管理にかかる不適正事例の発生にかんがみ、また、公営住宅の管理戸数の増大及び管理事務の複雑多様化に即応できるように、事業主体においては、管理にかかる組織の拡充及び人員の増強等管理体制の整備強化をはかるとともに、これに必要な経費について特段の配慮をされたいこと。特に、都道府県においては、市町村の事業主体に対する指導監督を強化するため、専任の指導係を設置する等その指導監督体制を確立されたいこと。

(2) 定期的実地検査の実施について

公営住宅の管理の実態を的確には握し、公営住宅法に違反する行為の是正と防止をはかるため、定期的に実地検査を実施されたいこと。このことについては、昭和四四年六月三〇日付け建設省住総発第一二三号により、昭和四四年度中に実施した総点検の結果に基づき、昭和四五年度以降においても毎年度重点事項を定めて定期的に実地検査を行なうよう指示しているところであるが、都道府県においては、管下全事業主体に対して定期的に実地検査を実施し、指導監督の強化をはかること。
なお、この結果については、検査終了後すみやかに報告すること。

(3) 公営住宅の未承認譲渡について

公営住宅法第二四条の規定による建設大臣の承認を得ず、公営住宅を特定企業の社宅として利用させ又は入居者に譲渡している事例については、公営住宅本来の機能を復元できるものについては、すみやかに必要な措置を講じて復元させること。
なお、復元困難なものについては、法に定める相当の措置をとることとなるので、十分注意すること。

(4) 公営住宅の違法な入居について

入居者の募集、収入額の認定、選考その他入居関係事務の執行については、法の定めに従い適正に執行し、違法な入居は厳に防止するよう努めること。警察官、教員等の優先入居、収入基準に適合しない者の入居、無断転貸、入居権の譲渡等違法な事例については、すみやかに明渡請求等適切な是正措置を講ずること。

(5) 公営住宅の無許可の増改築、模様替等は厳に防止するものとし、すでに無許可で増改築又は模様替等を行なっている者に対しては、事業主体の定めた基準に照して、適合するものについては、特に許可を与えるとともに、その他のものについては、すみやかに原状回復命令、明渡請求等適切な是正措置を講ずること。

なお、公営住宅の用途変更は、住宅としての用途が実質的に失われない範囲において、その一部を他の用途へ併用する場合に、事業主体の長の承認を得て認められるものであり、全部についての用途変更は認められないので、特に注意されたいこと。

(6) 公営住宅の適正な修繕について

公営住宅を常に適正な状態に維持するため、事業主体は、計画的に修繕を実施するとともに、入居者からの正当な修繕の要求に対しては、すみやかに応じられるよう努めること。事業主体において実施すべき修繕を入居者任せにしている事例は、将来における譲渡又は必要費償還請求等の問題を生じることとなるので、事業主体の義務とされている修繕については、確実に事業主体において実施すること。

(7) 住宅監理員の設置について

住宅監理員は、公営住宅法第二三条の規定により、その設置を義務づけられ、事業主体の長がその職員のうちから任命するものであるので、未設置の事業主体においては早急に任命すること。

(8) 管理台帳の整備について

公営住宅の管理の適正化、合理化のためには、管理の実態を的確に反映した管理台帳の整備が基本となるので、昭和三四年九月一七日付け住発第二七四号により通達した「公営住宅管理台帳(改訂)の作成について」に基づき確実に記入し、管理状況の正確な実態をは握しておくこと。

2 公営住宅の入居者選考方法について

公営住宅の入居者の選考については、かねてから住宅困窮度の高い者から入居者を選考するよう指導してきたところであるが、一部事業主体では必ずしもこのことが実行されていない実情である。
各事業主体においては、入居者の選考に関する条例、規則等を整備し、住宅困窮の態様について、地域の実情に応じた基準を設けて、これに基づき困窮度の高い者から入居者を選考することとして、一律抽せんによる選考のみに依存することのないように努めること。
なお、昭和四六年四月一日から母子世帯、老人世帯、心身障害者世帯についての優先入居の取扱いを拡充したので、これら特定目的公営住宅の制度を入居者の選考にあたっては十分活用されたい。

3 家賃の不均衡是正について

公営住宅の家賃の不均衡是正については、昭和四四年六月三〇日付け住総発第一二三号により、昭和四五年度内に実施するよう指示してきたところであり、すでに実施し、又は現在準備中の事業主体も見受けられるが、全体的にはその実施状況は低調である。
建設年度の相違による既設の公営住宅相互間の著しい家賃の不均衡を是正し、入居者の家賃負担の衡平をはかり、かつ、建設年度の古い公営住宅の維持、修繕を的確に行なうため、家賃の是正を行なうことは、公営住宅の適正な管理のために絶対に必要であるので、事業主体においては常時家賃の適正化について検討を加えるとともに不均衡是正を早急に行なうよう努めること。
なお、不均衡是正の実施に当っては、前記通達の別紙1「家賃の不均衡是正措置の実施要領」に準じて処理されたい。

All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport