事務連絡
平成一〇年二月二〇日

各都道府県公営住宅等担当者あて

建設省住宅局住宅総務課・住環境整備室通達


公営住宅法改正に伴う制度移行に際しての地域改善向公営住宅に関する留意事項について


地域改善向公営住宅は、これまで全国で約六万戸を建設し、他の住宅施策とともに、対象地域の物的な生活環境の改善に大きく貢献してきたところである。
その一方で、同和問題の解決に向けた今後の主要な課題は、差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進、就労、産業等の面での較差の是正、人権侵害による被害の救済等の施策に移行するものと考えられるが、それらを支える条件として地域の人々の居住の安定を図るうえで、地域改善向公営住宅の果たす役割は引き続き重要である。
今回、公営住宅法の一部改正により新制度への移行が図られることとなるが、制度移行に際し左記の点に留意のうえ適切な運用に努められたい。
なお、貴管下事業主体に対しても、この旨周知徹底方お願いする。

1 地域改善向公営住宅の今後の位置付けについて

昨年の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部改正により、同法に基づく財政上の特別措置は平成一三年度までとされ、一般対策への円滑な移行を図ることとなったところであるが、住宅施策から同和問題解決の視点が失われるものでないことは、地域改善対策協議会が平成八年五月一七日の意見具申において、「特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が、同和問題の早期解決を目指す取組みの放棄を意味するものでないことは言うまでもない。」と述べているとおりである。
従来から、特定目的公営住宅の一つとして地域改善向公営住宅の供給を行ってきたところであるが、地域住民の居住の安定を図ることは引き続き重要であることから、今後も地域における居住の実態や施策の必要性を的確に把握したうえで、地域改善向公営住宅への優先入居を適切に行われたい。

2 家賃制度について

公営住宅の家賃制度については、公営住宅法の一部改正により、従来の法定限度額方式から、入居者の収入及び公営住宅の立地条件、規模、建設時からの経過年数等に応じて家賃を決定する応能応益方式への移行が図られ、平成一〇年四月一日から既存の公営住宅についても新しい家賃制度が全面的に適用されることとなっており、地域改善向公営住宅を含む特定目的公営住宅の家賃についても、一般の公営住宅と同様の家賃算定方法を採ることとしている。
その際、制度移行に伴う経過的措置として、地域改善向公営住宅等に入居している者の家賃の負担調整措置については、一般向けの公営住宅と比して家賃の上昇幅が相当程度大きくなる場合が多いことから、最長で七年間又は九年間にまで引き延ばすことができるものとされている。その期間の負担調整方法については、新家賃と従前家賃の差額の一定率ずつを毎年度上昇させる方法が標準的であると考えられるが、地域の実情に応じて適切な方法を事業主体の判断により設定することができることとしているので留意されたい。
また、総務庁の平成五年度同和地区実態把握等調査によると、同和関係世帯の家計の状況は全般的に見ると依然として全国平均よりも低位な状況にあるが、応能応益制度により収入の低い世帯には低廉な家賃が設定され、第一分位の中でも特に収入の低い者に対しては減免制度を活用してさらに低廉な家賃設定が可能であること、また、不安定な就労形態にある者の比率が高くなっているが、失職等の事情で突然の収入変動があった場合においても減免制度を活用して負担の軽減を図ることができるものであることから、応能応益制度の導入に併せて一般対策としての減免制度の活用に努められたい。

3 良好な地域社会の形成に配慮した多様な住宅供給について

近年、同和関係世帯の収入分布の多様化が進みつつあると考えられるが、地域改善向公営住宅の周辺において民間住宅等の供給が円滑に行われず、公営住宅入居階層以外の世帯が住宅を選択できる余地が少ない場合もあるものと考えられる。このため、公営住宅以外の公共賃貸住宅等の供給を検討する等、地域の住宅需要に応じて、多様な世代や多様な所得階層の者が交流できる地域社会の形成に配慮した住宅供給を行うよう配慮されたい。
また、最近においては、三〇年近くにおよぶ特別対策による較差是正の成果を踏まえ、地域住民自らが一般対策としての公的制度等を活用して住宅及び住環境の自立的な維持向上に取り組もうとする試みも一部地域で見られるようになった。このような状況を背景に、同和問題の早期解決に向けた住宅政策のあり方として、地域住民の自立促進に重点を置きつつ、分譲住宅の供給の促進等の新たな施策についても検討すべき段階に来ているものと考えられる。今後、新たな施策を検討するに当たって、具体的な手続き等について不明な点がある場合には個別に相談されたい。

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