

住備発第四一号
平成一〇年四月八日
高齢者向け優良賃貸住宅整備基準
高齢者向け優良賃貸住宅制度要綱(平成一〇年四月八日付け建設省住備発第三九号)第四第二号に規定する整備基準は、次のとおりとする。
第一章 総則
(健全な地域社会の形成等)
第一条 賃貸住宅は、その周辺の地域を含めた健全な地域社会の形成に資するように考慮して整備しなければならない。
(良好な居住環境の確保)
第二条 賃貸住宅は、安全、衛生、美観等を考慮し、かつ、入居者等にとって便利で快適なものとなるように整備しなければならない。
第二章 敷地の基準
(位置の選定)
第三条 賃貸住宅の敷地(以下「敷地」という。)の位置は、災害の発生のおそれが多い土地及び公害等により居住環境が著しく阻害されるおそれがある土地をできる限り避け、かつ、日用品の購買、医療機関等の利用その他入居者の日常生活の利便を考慮して選定しなければならない。
(敷地の安全等)
第四条 敷地が地盤の軟弱な土地、がけ崩れ又は出水のおそれがある土地その他これらに類する土地であるときは、当該敷地に地盤の改良、擁壁の設置等安全上必要な措置が講じられていなければならない。
2 敷地には、雨水及び汚水を有効に排出し、又は処理するために必要な施設が設けられていなければならない。
第三章 住棟及び住戸専用部分の基準
第一節 通則
(住棟の基準)
第五条 住棟その他の建築物は、敷地内及びその周辺の地域の良好な居住環境を確保するために必要な日照、通風、採光、開放性及びプライバシーの確保、災害の防止、騒音等による居住環境の阻害の防止等を考慮した配置でなければならない。
(住宅の規格、規模、構造、建て方等)
第六条 賃貸住宅は、居住室並びに台所、水洗便所、収納スペース、洗面所及び浴室を有し、独立した生活を営むことができるものでなければならない。
2 賃貸住宅は、一戸当たりの床面積(バルコニー及び共同住宅にあっては共用部分の床面積を除く。)が二五平方メートル以上で人数に応じた適切な規模でなければならない。
3 賃貸住宅は、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則(平成五年建設省令第一六号)に規定する耐火構造の住宅又は準耐火構造の住宅でなければならない。
4 賃貸住宅の建て方は、長屋建て又は共同建てでなければならない。
5 賃貸住宅には、防火、避難、防犯、断熱及び遮音のための適切な措置が講じられていなければならない。
(段差)
第七条 住戸内の床は、原則として段差のない構造のものでなければならない。ただし、玄関の出入口及び上がりかまち、浴室出入口、バルコニー等への出入口及び日常生活における移動経路上にない居室の一角に設ける畳コーナー等にあっては、この限りではない。
(手すり)
第八条 住戸内階段は、少なくとも片側には手すりを設置したもので、設置しない側には将来設置できるようにしたものでなければならない。
2 階段の手すりは、廊下等の手すりと連続している場合を除き、できる限り端部を二〇センチメートル以上水平にのばしたものでなければならない。
3 浴室は、浴槽出入りのための手すりを設置したものであるとともに、できる限り浴室出入のための手すりを設置したものでなければならない。
4 玄関は、靴等の着脱のために上がりかまち部に手すりを設置したものでなければならない。
5 便所は、立ち座り、姿勢保持のための手すりを設置したものでなければならない。
6 脱衣室は、衣服の着脱等のための手すり等を設けたものでなければならない。
7 居間・食事室、寝室等及び廊下等には、手すりを設けたもの又は設置できるようにしたものでなければならない。
8 廊下、階段、洗面所、居間・食事室及び寝室等の移動のために設ける手すりの設置高さは、床仕上面(階段の場合は段鼻)から七五センチメートルを標準とする。
9 手すりは、使用しやすい形状及び材質で、適切な位置に設置されたものでなければならない。
10 水平手すりの端部は、できる限り壁側又は下側に曲げたものでなければならない。
(住戸内廊下等の通路・出入口の幅員)
第九条 通路の有効幅員は、七八センチメートル(柱等の箇所にあっては七五センチメートル)以上でなければならない。
2 出入口の有効幅員(開き戸においては、建具の厚み、引き戸では引き残しを除いた幅員)は、七五センチメートル以上(浴室の出入口にあっては六五センチメートル以上、やむを得ない場合は六〇センチメートル以上とする。)でなければならない。
3 廊下の屈曲部及び廊下から直進できない出入口に接する廊下は、できる限り介助用車いすの回転が可能な空間を設けたものでなければならない。
(床・壁の仕上げ)
第一〇条 床は、滑りにくい仕上げとしたものであるとともに、転倒した場合の衝撃をやわらげるよう仕上げの材質等に配慮したものでなければならない。特に浴室については、十分に配慮したものとする。
2 階段の踏面の仕上げは粗面又は滑り止めを設けたものでなければならない。
3 壁の出隅部は、できる限り、面とりを行う等形状・仕上げに配慮したものでなければならない。
(建具)
第一一条 建具は、開閉がしやすく、安全に配慮したものとする。また、建具の把手、引き手及び錠は使いやすい形状のものとし、適切な位置に取付けたものでなければならない。
2 玄関ドアが開き戸形式の場合、急激な開閉を防ぐため、ドアクローザーを設置等したものでなければならない。
3 浴室及び便所の建具の錠は、外からの解錠が可能なものでなければならない。
4 出入口ドア等にガラスを入れる場合は、安全ガラスを用いるか又は桟付建具として一枚あたりのガラス面を小さくしたものでなければならない。
(設備)
第一二条 住戸内の給水給湯設備、電気設備、ガス設備は、安全性に配慮するとともに、操作が容易なものでなければならない。
2 水栓金具は、レバー式等操作しやすい形状のものであるとともに、湯温調整が安全に行えるものでなければならない。
3 電気設備のスイッチ、コンセント等は、使いやすい高さに設置したものであるとともに、できる限りスイッチの操作する部分は大きなものとし、又は明かりをつける等使用の利便に配慮したものでなければならない。
4 住戸内の照明設備は安全上必要な箇所に設置するとともに、十分な照度を確保しなければならない。
5 階段の照明は、複数設置等により踏面に影ができないようにするとともに三路スイッチとしたものでなければならない。
6 ガス調理器具は、立消え安全装置付きのものでなければならない。
(緊急通報装置等)
第一三条 便所、浴室及び寝室からの緊急時の通報が可能な装置を設置したものでなければならない。
2 台所にはガス漏れ検知器及び火災警報器を設置したものでなければならない。
(温熱環境)
第一四条 各居室等の温度差をできる限りなくすよう断熱及び換気に配慮するとともに、便所、洗面所、脱衣所、居間・食事室及び寝室には暖房設備を設けるか又は暖房機器を設置できるようにするほか、地域の気候に応じて、居間・食事室及び寝室には冷房設備を設けられるようにしたものでなければならない。
(収納スペース)
第一五条 日常使用する収納スペースは、適切な量を確保したものであるほか、無理のない姿勢で出し入れできる位置に設けたものでなければならない。
第二節 住戸内各部
(玄関)
第一六条 玄関は、できる限りベンチ等を設置できる空間を確保したものでなければならない。
2 玄関の出入口においては、くつずりと玄関外側の高低差は二センチメートル以下、くつずりと玄関土間の高低差は五ミリメートル以下としたものでなければならない。
3 玄関の上がりかまちの段差は一一センチメートル以下でなければならない。ただし、やむを得ない場合は式台を設置したものか、又は設置できる空間を設け、土間と式台との段差及び式台と上がりかまちの段差を各一八センチメートル以下としたものでなければならない。
4 玄関の上がりかまち及び式台は、段差が分かりやすいよう、できる限り材質、色等で変化を持たせたものでなければならない。
(階段)
第一七条 階段の勾配は6/7以下、55センチメートル≦T(踏面、以下同じ)+2R(蹴上げ、以下同じ)≦65センチメートルとしたものでなければならない。ただし、やむを得ない場合は、階段の勾配は22/21以下、55センチメートル≦T+2R≦65センチメートル、T≧19.5センチメートルとしたものであるとともに勾配が四五度を超える場合は両側に手すりを設けたものでなければならない。
2 階段の構造は、最上段の通路等への食い込みや最下段の通路等への突出を避けたものであるとともに、まわり階段等安全上問題があると考えられる形式はできる限り避けたものでなければならない。
3 踏面に滑り止めを設ける場合はできる限り踏面と同一面とし、蹴込み板を設置し、できる限り段鼻を出させないようにするとともに、蹴込みは二センチメートル(やむを得ない場合は三センチメートル)以下とする。
(便所)
第一八条 便所は、できる限り便器側方に介助スペースを確保したもの、もしくは軽微な改造により確保できるものでなければならない。
2 便所の出入口は、緊急時の救助に支障のない構造のものでなければならない。
3 便器は、腰掛け式のものでなければならない。
(洗面所・脱衣室)
第一九条 洗面所は、手洗い等の利便性に配慮したものでなければならない。
2 脱衣室は、衣服の着脱等の安全性等に配慮したものでなければならない。
(浴室)
第二〇条 浴室の広さは、腰掛け台等を設置しても入浴行為に支障のない広さとして、内法で短辺一・四メートル以上かつ広さ二・五平方メートル以上としたものでなければならない。ただし、やむを得ない場合にあっては短辺一・二メートル以上かつ広さ一・八平方メートル以上としたものはこの限りではない。
2 浴室の出入口の段差は、原則として二センチメートル以下の単純段差とし、やむを得ない場合は手すりを設置しつつ、浴室内外の高低差一二センチメートル以下かつまたぎ高さ一八センチメートル以下としたものでなければならない。
3 出入口建具は引戸または折れ戸を原則とし、やむを得ず内開き戸とする場合は、緊急時には外部から取りはずせる構造のものでなければならない。
4 浴槽は、安全性に配慮した形状・寸法とし、縁の高さは原則として三〇センチメートル以上五〇センチメートル以下でなければならない。
(寝室)
第二一条 寝室の広さは、約一二平方メートル以上とし、やむを得ない場合は約一〇平方メートル以上とする。
2 寝室は遮音性能及び避難のしやすさに配慮したものでなければならない。
(バルコニー等)
第二二条 バルコニー、テラス等への出入口の段差は、原則として一八センチメートル以下の単純段差とし、やむを得ない場合は二五センチメートル以下の単純段差か屋内側、屋外側とも一八センチメートル以下のまたぎ段差とし、かつ、手すりを設置できるようにしたものでなければならない。
2 物干し金物の高さは、できる限り高齢者等に配慮したものでなければならない。
第四章 屋外空間及び共用部分の基準
(アプローチ等)
第二三条 通路は幅員を九〇センチメートル以上とし、かつ、部分的に幅の広いところを設けたものであるとともに、高低差が生じる場合にはできる限り傾斜路を設けたものでなければならない。
2 屋外に設ける階段は、R≦16センチメートル及びT≧30センチメートル、やむを得ない場合には、T≧24センチメートル、55センチメートル≦T+2R≦65センチメートルとしたものでなければならない。
3 傾斜路は、できる限り1/12以下の勾配とし、かつ、高低差七五センチメートル毎に一・五メートル以上の踊り場を設けたものでなければならない。
4 住棟出入口付近は、できる限り、自動車が寄りつけるようにしたものであるとともに、駐車スペースを確保したものでなければならない。
(共用階段)
第二四条 共用階段は、階段及び踊り場ともできる限り有効幅員を一二〇センチメートル以上とするとともに、勾配は7/11以下、55センチメートル≦T+2R≦65センチメートル、やむを得ない場合は、T≧24センチメートル、55センチメートル≦T+2R≦65センチメートルとしたものでなければならない(ただし、日常時の昇降はエレベーターによって行われる等の共用階段であって、専ら非常時の避難用として利用されると考えられるものを除く。)。
2 共用階段の構造は、最上段の通路等への食い込み及び最下段の通路等への突出を避けるとともに、できる限り踊り場付き折れ階段又は直階段としたものでなければならない。
3 踏面のノンスリップを設ける場合はできる限り踏面と同一面とし、蹴込み板を設置し、できる限り段鼻を出さないようにするとともに、蹴込み寸法を二センチメートル(やむを得ない場合は三センチメートル)以下とする。
(共用廊下)
第二五条 共用廊下の有効幅員は、できる限り一四〇センチメートル以上とし、部分的に車いすのすれ違いのためのスペースを確保したものでなければならない。
2 共用廊下に面する玄関ドアの共用廊下側には、できる限りアルコーブ(入り込みスペース)を設けたものとしなければならない。
3 共用廊下は段差のない構造でなければならない。
(床の仕上げ及び手すり)
第二六条 アプローチ、住棟出入口、階段、傾斜路及び共用廊下等の床の仕上げは、滑りやつまずきに対する安全性に配慮したものでなければならない。
2 階段及び傾斜路は、少なくとも片側に手すりを設けたものであるとともに、その端部は、できる限り二〇センチメートル以上水平に延ばしたものとしなければならない。
3 共用廊下には、少なくとも片側に手すりを設けたものでなければならない。
4 手すりの設置高さは、床面から七五センチメートルを標準とし、端部はできる限り壁側又は下側に曲げたものでなければならない。
5 手すりは、使用しやすい形状及び材質で、適切な位置に設置されたものでなければならない。
(エレベーター)
第二七条 地上階数六以上の賃貸住宅はエレベーターが設けられていなければならず、地上階数三以上五以下の賃貸住宅は原則としてエレベーターが設けられていなければならない。
2 住棟出入口から一階エレベーターホールへ至る通路に高低差がある場合は、できる限り階段に傾斜路を併設するとともに、それぞれ有効幅員は一二〇センチメートル以上としたものでなければならない。
3 エレベーターホールは、車いすの回転のための空間として、一五〇センチメートル角以上の空間を確保したものであるとともに、エレベーター開口幅は八〇センチメートル以上でなければならない。
4 エレベーターのかごの形状、寸法等、エレベーターの乗り場ボタン及びかご内の操作盤は、車いす利用者に配慮したものでなければならない。
(照明設備)
第二八条 屋外アプローチ及び共用部分の照明設備は、安全性に配慮した十分な照度を確保したものでなければならない。
2 共用階段の照明は、複数設置等により踏面に影ができないようにしたものでなければならない。
(附帯施設)
第二九条 敷地内には、必要な自転車置場、物置、ごみ置場等の附帯施設が設けられていなければならない。
2 前項の附帯施設は、入居者の衛生、利便等及び良好な居住環境の確保に支障が生じないように考慮されたものでなければならない。
第五章 共同施設の基準
(共同施設)
第三〇条 共同施設とは、賃貸住宅の入居者の共同の福祉のために必要な施設をいう。
2 共同施設の位置及び規模は、敷地内の住戸数、敷地の規模及び形状、住棟の配置等に応じて、入居者の利便を確保した適切なものでなければならない。
(公園、広場及び緑地)
第三一条 公園、広場及び緑地の位置及び規模は、良好な居住環境の維持増進に資するように考慮されたものでなければならない。
(通路)
第三二条 敷地内の通路は、敷地の規模及び形状、住棟等の配置並びに周辺の状況を考慮して、日常生活の利便、通行の安全、災害の防止、環境の保全等に支障がないような規模及び構造で合理的に配置されたものでなければならない。
2 通路における階段は、高齢者等の通行の安全に配慮し、必要な補助手すり又は傾斜路が設けられていなければならない。
第六章 既存住宅等の改良を行う場合の特例
(既存住宅等の改良を行う場合の特例)
第三三条 既存の住宅又はこれに類似する居住の用に供する建築物を改良して高齢者向け優良賃貸住宅を整備するもののうち当該住宅の状況を踏まえ、代替の措置を講ずること等により、同等の効果が得られると都道府県知事(住宅・都市整備公団が建設等する賃貸住宅にあっては、建設大臣)が認める場合においては、この基準の規定によらないことができる。
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