建設省住整発第二七号
平成五年四月一日

各都道府県知事あて

建設省住宅局長通達


街なみ環境整備事業制度について

今般、住宅が密集し、かつ、生活道路等の地区施設が未整備であること、住宅等が良好な美観を有していないこと等により住環境の整備改善を必要とする区域(以下「対象区域」という。)において、ゆとりとうるおいのある住宅地区の形成を図るため、「地区住環境総合整備事業制度」及び「街なみ整備促進事業制度」を統合、拡充し、新たに別紙のとおり「街なみ環境整備事業制度要綱」を定め、平成五年四月一日から実施することとしたので、左記に留意の上その取扱いに遺憾なきを期するとともに、本制度の積極的活用を図られたい。
本制度が、対象区域における住環境の整備改善を促進する重要な施策の一つであることにかんがみ、貴管下市町村(特別区を含む。以下同じ。)に対して本制度の周知徹底を図り、また、事業主体である市町村に対しては必要に応じて財政上及び技術上の援助を与える等、本制度が十分活用されるよう格段の配慮方お願いする。
なお、「地区住環境総合整備事業制度要綱について」(昭和六一年五月二四日付け建設省住整発第三六号)及び「街なみ整備促進事業制度要綱について」(昭和六三年四月七日付け建設省住整発第四一号)は廃止する。

一 地域の特性を活かした街なみ整備

本事業は、ゆとりとうるおいのある住宅地区の形成を図ることを目的としているので、その地域の地形、気候風土等地域固有の状況を十分に踏まえ、地区住民の発意と創意を尊重し、地域の特性を活かした街なみの整備を図ること。

二 景観形成の促進

条例等により景観形成を図るべき区域の対象区域への追加、修景施設整備費の補助対象への追加等、本事業においては、景観形成のための措置の充実を図っているところであり、景観担当部局と連携を取りつつ、その積極的活用に努めること。

三 街づくり意識の啓発

本事業は、「街づくり協定」の締結、それに基づく住宅の建て替え等を促進するものであるため、地区住民の街づくりに対する意識の高揚を図ることが重要である。したがって、地区住民の街づくり体制の組織化、組織の維持運営及び地区住民による地区施設の日常の維持管理等に対する各種援助を行うなど、街づくり意識の啓発に努めること。

四 建築指導部局との連携

本事業は、「街づくり協定」を締結し、それに基づく住宅の建て替え等を促進するなど建築行政と密接な関係を有しているので、建築指導部局と連携して、事業の着実な進ちょくを図ること。
また、地区住環境総合整備事業の区域要件を緩和したので、各市町村の細街路整備助成との連携のもと、接道不良住宅密集地区の細街路整備の推進に努めること。

五 実施中の地区住環境総合整備事業及び街なみ整備促進事業の取扱いについて

従来の地区住環境総合整備事業及び街なみ整備促進事業を実施中の地区については、引き続き街なみ環境整備事業として実施するとともに、地区防災施設、生活環境施設の整備、空家住宅等の除却、修景施設の整備等に要する費用を補助対象に追加したので、本事業の創設の趣旨に鑑み、その一層の推進に努めること。


別紙

街なみ環境整備事業制度要綱

第1 目的

この要綱は、住宅が密集し、かつ、生活道路等の地区施設が未整備であること、住宅等が良好な美観を有していないこと等により住環境の整備改善を必要とする区域において、ゆとりとうるおいのある住宅地区の形成のため、地区施設、住宅及び生活環境施設の整備等住環境の整備改善を行う地方公共団体及び土地所有者等に対して国等が必要な助成を行う制度を確立し、もって公共の福祉に寄与することを目的とする。

第2 定義

この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 街なみ環境整備事業 この要綱で定めるところに従って行われる協議会活動助成事業、整備方針策定事業、街なみ整備事業及び街なみ整備助成事業並びにこれらに附帯する事業をいう。
二 事業主体 街なみ環境整備事業を施行する地方公共団体をいう。
三 施行者 街づくり協定を締結する者で、街なみ整備助成事業の対象事業を施行するものをいう。
四 協議会活動助成事業 この要綱で定めるところに従って行われる協議会の活動に対する助成をいう。
五 整備方針策定事業 この要綱で定めるところに従って行われる街なみ環境整備方針の策定をいう。
六 街なみ整備事業 この要綱で定めるところに従って行われる街なみ環境整備事業計画の策定、地区施設等の整備及び空家住宅等の除却をいう。
七 街なみ整備助成事業 この要綱で定めるところに従って行われる街なみ環境整備事業計画に基づき地区住民の行う門、塀等の移設及びこれに伴う分筆登記、共同建替等の共同施設整備並びに修景施設の整備に対する助成をいう。
八 街なみ環境整備促進区域 この要綱に基づいて事業主体が街なみ環境整備方針によって定める土地の区域をいう。
九 街なみ環境整備事業地区 この要綱に基づいて事業主体が街なみ環境整備事業計画によって定める土地の区域をいう。
一〇 地区内権利者等 土地所有者等及び関係地方公共団体、建築士会、コンサルタントその他当該区域の街なみ整備に関し、指導、助言、助成等を行う者をいう。
一一 協議会 地区内権利者等により構成され、区域の良好な街なみの形成方針等に係る検討を行う組織をいう。
一二 街づくり協定 この要綱に基づいて土地所有者等が定める協定をいう。
一三 土地所有者等 土地の所有者及び建物の所有を目的とする地上権又は賃借権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者をいう。
一四 接道不良住宅 その敷地が幅員四メートル以上の道路に接していない住宅をいう。
一五 地区施設 道路、通路、小公園、広場、緑地その他街なみ環境整備促進区域の住環境の整備改善のために必要な施設をいう。
一六 地区防災施設 屋外消火栓、防火水槽その他街なみ環境整備促進区域の防災性の向上のために必要な施設をいう。
一七 生活環境施設 集会所その他地区住民の街なみ形成のための活動拠点又は地区の景観形成のため設置する非営利的施設で、街なみ環境整備促進区域の住民が主として利用するものをいう。
一八 地区施設等 地区施設、地区防災施設及び生活環境施設をいう。
一九 空家住宅等 本事業を実施しようとするときに使用されておらず、かつ、今後も使用される見込みのない住宅及び住宅以外の建築物で、その除却後の跡地が街なみ整備のための計画的利用に供されるもの及び住宅地区改良法施行規則(昭和三五年建設省令第一〇号)別表の二項(ろ)欄に掲げる各評点項目につき同表(は)欄に掲げる評点内容に応ずる同表(に)欄に定める評点を合計した評点が一〇〇を超える住宅及び住宅以外の建築物

第3 事業主体

1 街なみ環境整備事業は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が施行する。
2 都道府県は、市町村が街なみ環境整備事業を施行することが困難な場合その他特別な事情がある場合においては、街なみ環境整備事業を施行することができる。

第4 街なみ環境整備促進区域

街なみ環境整備促進区域は、面積が一ヘクタール以上である土地の区域のうち、次の各号のいずれかに該当するものでなければならない。

一 次に掲げる基準に該当すること。

イ 当該区域内の住宅の戸数(その区域の外周の道路の幅員が四メートル以上である場合には、当該道路に接する住宅の戸数を除く。)に対する接道不良住宅の戸数の割合が七割以上であること。
ロ 当該区域(道路、公園、広場、緑地、鉄道、軌道、下水道、河川及び工場の敷地の用に供されている部分を除く。)の面積に対する当該区域内の住宅の戸数の割合が、原則として一ヘクタール当たり三〇戸以上であること。

二 次に掲げる基準に該当すること。

イ 当該区域内の幅員六メートル以上の道路の延長が、原則として当該区域内の道路総延長の四分の一未満であること。
ロ 当該区域内の公園、広場及び緑地の面積の合計が、原則として当該区域の面積の三パーセント未満であること。

三 地方公共団体の条例等により景観形成を図るべきこととされていること。

第5 街なみ環境整備方針の承認

1 事業主体は、街なみ環境整備方針を定め、建設大臣の承認を受けなければならない。この場合において、市町村がその申請をしようとするときは、都道府県知事を経由しなければならない。
2 前項の規定は、事業主体が街なみ環境整備方針を変更しようとする場合に準用する。ただし、軽微な変更をしようとする場合においては、この限りでない。

第6 街なみ環境整備方針

1 街なみ環境整備方針においては、街なみ環境整備促進区域及び当該街なみ環境整備促進区域の整備に関する基本方針を定めなければならない。
2 街なみ環境整備促進区域の整備に関する基本方針においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 地区施設等の整備に関する基本方針
二 住宅等の整備に関する基本方針
三 街なみ環境整備促進区域の整備予定時期
四 その他当該区域の整備に関して必要な事項

3 街なみ環境整備方針は、街なみ環境整備促進区域内の地区施設等及び住宅等の整備を促進し、その他街なみ環境整備促進区域をゆとりとうるおいのある健全な住宅地区に形成するように定めなければならない。

第7 街なみ環境整備方針の周知等

1 事業主体は、街なみ環境整備方針を定め、又は変更しようとする場合において必要があると認めるときは、あらかじめ、街なみ環境整備促進区域内の居住者及び利害関係を有する者に対して当該方針の案の周知を図り、意見を聴取する等当該方針にこれらの者の意見を反映させるための措置を講ずるものとする。
2 事業主体は、街なみ環境整備方針の承認(変更の承認を含む。)があったときは、速やかに当該方針を周知させる措置をとらなければならない。

第8 街づくり協定の承認

1 街なみ環境整備促進区域内の一団の土地の区域内の土地所有者等は、当該区域の住環境の整備改善を図るため、街づくり協定を定め、事業主体の承認を受けることができる。この場合において、事業主体は、当該協定が第9の規定及び当該区域に係る街なみ環境整備方針に適合するものでなければ、これを承認してはならない。
2 前項の規定は、土地所有者等が街づくり協定を変更しようとする場合に準用する。

第9 街づくり協定

街づくり協定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 協定の目的となっている土地の区域
二 住宅等の整備に関する事項
三 住宅等の維持管理に関する事項
四 地区施設等の維持管理等に関する事項
五 街づくり協定を実施するための組織に関する事項
六 街づくり協定の有効期間
七 その他当該街づくり協定を定めようとする区域の住環境の整備改善に関して必要な事項

第10 街なみ環境整備事業地区

街なみ環境整備事業地区は、街なみ環境整備促進区域内における次に掲げる要件に該当する地区でなければならない。

一 地区の面積が〇・二ヘクタール以上であること。
二 街づくり協定(第8第一項の規定により事業主体の承認を受けたものに限る。以下同じ。)が締結されていること。ただし、地方公共団体が定める条例等により、住宅等の整備又は維持管理に関する事項等が定められている場合には、街づくり協定が締結されているものとみなす。

第11 街なみ環境整備事業計画

1 事業主体は、街なみ環境整備事業計画を定めなければならない。この場合において、当該計画は、街なみ環境整備方針に適合するものでなければならない。
2 街なみ環境整備事業計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 街なみ環境整備事業地区の区域
二 地区施設等の整備に関する事項
三 空家住宅の除却に関する事項
四 地区施設等の整備予定年度
五 住宅等に関する事項その他街なみ環境整備事業地区の整備に関して必要な事項

第12 街なみ環境整備事業計画の周知

事業主体は、街なみ環境整備事業計画を定め、又は変更したときは、速やかに当該計画を街なみ環境整備事業地区内の居住者及び利害関係を有する者に対して周知させる措置をとらなければならない。

第13 街なみ環境整備事業計画に関する協議

事業主体は、街なみ環境整備事業計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、当該街なみ環境整備事業計画の策定又はその変更に関係のある地区施設等の管理者又は管理者となるべき者に協議しなければならない。

第14 地区施設等の整備

事業主体は、街なみ整備事業計画に従って地区施設等の整備を行わなければならない。

第15 地区施設等の管理

事業主体は、街なみ環境整備事業計画に従って整備された地区施設等の管理を地区住民が行う場合には、当該地区施設等の管理が適切に行われるよう、管理者を指導・監督しなければならない。

第16 住宅等の整備の指導

事業主体は、土地所有者等が街づくり協定に適合した住宅等の整備を行うよう指導に努めなければならない。

第17 国の補助

1 国は、事業主体に対して、協議会活動助成事業に要する費用について、予算の範囲内において、その二分の一以内を補助することができる。
2 国は、事業主体に対して、整備方針策定事業に要する費用について、予算の範囲内において、その二分の一以内を補助することができる。
3 国は、事業主体に対して、街なみ整備事業に要する費用について、予算の範囲内において、その二分の一以内を補助することができる。
4 国は、事業主体に対して、事業主体が街なみ整備助成事業として施行者に補助する費用について、予算の範囲内において、当該費用の二分の一以内で、かつ、施行者が行う街なみ整備助成事業の対象事業に要する費用の三分の一以内を補助することができる。

第18 住宅金融公庫等の融資

住宅金融公庫又は沖縄振興開発金融公庫は、法令及びその事業計画の範囲において、住宅等の適正な整備が促進されるよう、街づくり協定に従って住宅等の整備を行う者に対して、必要な資金の貸付けを行うことができる。

第19 地方公共団体の助成

1 都道府県は、街なみ環境整備事業を行う市町村に対して、補助金を交付することができる。
2 都道府県及び市町村は、住宅等の適正な整備が促進されるよう、街づくり協定に従って住宅等の整備を行う者に対して必要な助成を行うことができる。また、都道府県は当該助成を行う市町村に必要な助成を行うことができる。
3 市町村は、第一五に規定する地区施設等の管理を行う地区住民に対し、必要な助成を行うことができる。

第20 監督等

建設大臣は都道府県及び市町村に対し、都道府県知事は市町村及び施行者に対し、この要綱の施行のために必要な限度において、街なみ環境整備事業の適正な施行及び住宅等の適正な整備の促進を図るため、報告若しくは資料の提出を求め、又は必要な勧告、助言若しくは援助を行うことができる。

第21 運営

街なみ環境整備事業の運営は、この要綱に定めるところによるほか、街なみ環境整備事業事務処理要領(平成五年四月一日付け建設省住整発第三九号)及び街なみ環境整備事業費補助金交付要領(平成五年四月一日付け建設省住整発第三八号)の定めるところにより行わなければならない。



附 則

1 この要綱は、平成五年四月一日から適用する。
2 地区住環境総合整備事業制度要綱(昭和六一年五月二四日付け建設省住整発第三六号)及び街なみ整備促進事業制度要綱(昭和六三年四月七日付け建設省住整発第四一号)は廃止する。
3 この要綱の適用の際現に施行中の地区住環境総合整備事業制度要綱の規定による地区住環境総合整備事業及び街なみ整備促進事業制度要綱の規定による街なみ整備促進事業は、この要綱の規定による街なみ環境整備事業とみなす。
4 この要綱の施行の前に、地区住環境総合整備事業制度要綱により地区住環境総合整備事業に関して行った手続その他の行為及び街なみ整備促進事業制度要綱により、街なみ整備促進事業に関して行った手続その他の行為は、それぞれこの要綱の相当規定により街なみ環境整備事業に関して行った手続きその他の行為とみなす。



附 則
改正後の要綱は、平成一〇年 月 日から適用する。



別表
図書の種類
標準的な縮尺
記載事項
位置図
一/五〇〇〇〇
一 街なみ環境整備促進区域(朱線)
二 都市計画区域、都市計画における用途地域、都市計画施設及び主な公共施設
三 原則として、上記表示を一票の図面で行うこと。
区域図
一/一〇〇〇
一 街なみ環境整備促進区域(朱線)
二 整備区域内の地形(高低差二mごとにコンターラインを記入)
三 公共施設、建築物、工作物等の位置、形態、用途及び種類
整備方針図
一/五〇〇
一 地区施設等の用に供すべき土地の規模及び配置
二 地区施設等の種類
三 住宅及び住宅敷地の整備内容
進達書
 
市町村の街なみ環境整備方針の承認申請に関する意見


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