建設省住管発第二号
平成五年七月三〇日

建設事務次官から各都道府県知事あて

通知


特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律の施行について


特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成五年法律第五二号。以下「法」という。)は平成五年五月二一日に、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行令(平成五年政令第二五五号)は平成五年七月二三日に、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則(平成五年建設省令第一六号)は平成五年七月三〇日に、それぞれ公布され、いずれも平成五年七月三〇日から施行された。
法の施行に当たっては、左記事項に御留意の上、法令に基づく制度の的確かつ円滑な運用に特段の御配慮をお願いする。
なお、貴管下関係市町村に対しても、この旨周知徹底方お願いする。

一 法制定の趣旨

我が国の住宅事情は、量的には一応充足し、質的にも着実に向上しているものの、一人当たりの住宅床面積が欧米先進諸国に比較して約二〜三割下回るなど質的水準は依然不十分な状況にある。このため、国においては、住宅の質の向上を住宅政策の基本目標とし、公共投資基本計画において平成一二年に住宅一戸当たりの平均床面積をおおむね一〇〇m2にすることを目指すこととし、これを踏まえて策定した第六期住宅建設五箇年計画において平成七年度に住宅一戸当たりの平均床面積を約九五m2とすることを目標として掲げ、持家対策及び借家対策の的確な推進に努めているところである。
こうした中で、持家については、平均規模が約一一七m2となるなど着実に質的改善が進んでいるのに対し、借家については、平均規模は約四四m2と持家の約三分の一にとどまり、大都市地域を中心に最低居住水準未満世帯が多数残されるなど居住水準の改善が著しく立ち後れている。特に、世帯人員が三〜五人の標準的な中堅層については、これらの世帯が必要とする優良な賃貸住宅のストックが著しく不足している状況にあり、その改善が強く要請されている。
法は、このような状況に対処するために、新たに土地の取得を必要とせずに賃貸住宅を供給することができる民間の土地所有者等による優良な賃貸住宅の供給を促進するための措置を講ずることにより、優良な賃貸住宅の供給の拡大を図り、国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的として制定されたものである。
法の積極的な活用により、中堅所得者等の居住の用に供する優良な賃貸住宅の供給を促進し借家世帯の居住水準の向上を図ることにより、年収五倍を目安とした住宅取得対策と併せて、我が国内政序上の最も重要な課題の一つである住生活の充実が図られるよう努められたい。

二 供給計画の認定

(一) 供給計画の認定は、法第三条各号の基準に適合する住宅について必ず行わなければならないものではなく、基準に該当する住宅について、都道府県知事が、地域の住宅事情を勘案し、優良な賃貸住宅の供給を促進する必要があると認める場合に行うことができるものであること。このため、都道府県知事は供給計画の認定に当たっては、関係市町村との連携の下に、地域の住宅事情を的確に把握し、適切に住宅供給が行われるよう努めること。
(二) 特定優良賃貸住宅の入居者に関しては、その所得が五〇〜八〇%の範囲内で都道府県知事が定める基準に該当する者を入居させることができることとされているので、地域における所得の状況、中堅所得者等の居住の実態、賃貸住宅に対する需要等を勘案して、中堅所得者等の居住水準の改善が図られるよう適切な基準の設定を行うこと。
(三) 特定優良賃貸住宅の規模等については、建設に対する助成等を通じ、地域の住宅事情に応じ、より規模の大きい優良な住宅が供給されるよう認定事業者の指導に努めること。
(四) 特定優良賃貸住宅の入居者の選定については、特定優良賃貸住宅の供給に対し手厚い公的助成が行われることにかんがみ、入居者の選定が公正に行われるよう認定事業者に対する指導を徹底すること。
(五) 法は、民間の土地所有者等による優良な賃貸住宅の供給を基本とするものであることから、説明会の開催等により、制度の趣旨及び内容、認定基準その他認定の方針等について周知徹底に努めること。
(六) 供給計画の認定は、都道府県知事が行うものであるが、特定優良賃貸住宅の供給は市町村の住宅政策と密接な関係を有するものであること、認定を受けた計画に基づく住宅の建設に対する補助、家賃の減額のための補助は関係市町村においても行うことができることとされていること等から、認定基準その他認定の方針、毎年度における特定優良賃貸住宅の供給の方針等については、関係市町村と十分に調整し、相互に連携して適切な住宅供給が行われるよう配慮すること。

三 特定優良賃貸住宅の管理等

(一) 特定優良賃貸住宅については、認定基準を満たす優良な住宅が建設されるだけでなく、その管理が適正に行われることが重要であること。

このため、供給計画に定められた管理期間においては、供給計画に従い住宅の管理が適正に行われるよう、適宜認定事業者に対し報告を求め、必要な助言、指導等を行うとともに、認定事業者が供給計画に従って住宅の建設及び管理を行っていないと認めるときは、改善命令を行う等所要の措置を講じること。
なお、特定優良賃貸住宅の管理に関しては、関係市町村においても適切な指導が行われるよう連絡を密にすること。

(二) 特定優良賃貸住宅の管理に関しては、その管理が適正に行われるよう国において認定事業者が特定優良賃貸住宅の管理を行うに当たって配慮すべき事項を定めることとされており、認定事業者に対する指導に当たっては、当該配慮すべき事項を勘案して適切な指導及び助言に努めること。

四 特定優良賃貸住宅に係る助成措置

(一) 特定優良賃貸住宅の建設に要する費用の補助等については、地方公共団体において、地域の住宅事情に応じ、規模、構造、設備等に関し優良な住宅の供給が図られるよう的確な助成の実施に努めること。
(二) 特定優良賃貸住宅の家賃の減額に要する費用の補助については、入居を希望する者が円滑に優良な賃貸住宅に入居することができるよう住宅が供給される初期段階において逓減的に行うこと。

なお、入居者の初年度の負担額については、入居者の所得、住宅の立地、規模等を勘案し、併せて、他の賃貸住宅の家賃とのバランス等にも配慮し、補助を行う地方公共団体において適切に設定すること。

(三) 特定優良賃貸住宅の建設に要する費用の補助等及び家賃の減額に要する費用の補助は、都道府県及び市町村のいずれにおいても行い得ることとされているものであり、住宅事情の改善のため適切な助成が行われるよう関係市町村と十分に連絡及び調整を行うこと。

五 地方公共団体による賃貸住宅の供給

(一) 法は、民間の土地所有者等による賃貸住宅の供給を基本として優良な賃貸住宅の供給を行おうとするものであるが、地方公共団体は、優良な賃貸住宅が不足し、かつ、民間の土地所有者等によるその供給が十分には期待し得ない場合においては、住宅需要を勘案しつつ優良な賃貸住宅の供給を図るよう努めること。
(二) 地方公共団体による賃貸住宅の建設及び管理の基準については、中堅所得者等に対する優良な賃貸住宅の供給の促進という法の目的を踏まえつつ、地域の実情に応じた優良な賃貸住宅の供給が行われるよう適切な設定に努めること。

六 その他

地域特別賃貸住宅制度要綱(昭和六一年四月五日建設省住建発第九七号)は廃止する。
なお、同要綱の規定により、現に建設され、又は管理されている地域特別賃貸住宅については、なお従前の例による。ただし、同要綱の規定による建設費等補助及び家賃対策補助の適用については、建設省住宅局長が定めるところによる。

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