住発第六二九号
昭和二五年一〇月三一日

建設省住宅局長から各都道府県知事あて

通達


建築基準法の施行に伴う指示事項について


建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)の施行については、別に建設次官から通達したが、その通達の細目は左記の通りである。
一 条例の制定について

(イ) 法及び法に基く政令の委任による条例を制定する場合には、委任の諸条項について充分検討し、法の精神を活かすよう留意すること。
(ロ) 法及び法に基く政令中「地方公共団体の条例で定める」とあるのは、法律上は都道府県、市町村どちらで定めてもよいのであるが、いずれの条例によるかは、その規定する内容が専ら一市町村の特殊事情に基くものであるか、又は都道府県全体に関するものであるかによつて判定すべきものであつて、この観点から法第五二条第三項〔現行法第四九条第二項〕並に令第三〇条第一項及び第二項の規定による条例は市町村条例を原則とし、その他で「地方公共団体の条例で定め」とあるのは、一応都道府県条例で規定するのが妥当と思われる。この場合、条例を制定する地方公共団体と特定行政庁とは直接の関係はない。

二 要確認区域の指定について

法第六条第一項第四号の区域の指定は、原則として町、少くとも市街地建築物法適用区域指定標準(昭和二四年九月一六日住発第五四七号知事宛住宅局長通牒)に該当する町村に指定するように関係町村と協議すること。この場合指定区域は、町村の区域の一部についてでも差支えない。

三 建築主事について

(イ) 建築主事は、各所管区域ごとに一名に限つて任命するのを原則とする。但し、その所管区域は、特定建築物(法第六条第一項第一号から第三号までの建築物)とその他の建築物(同第四号の建築物)に分けて定めることができる。なお、建築主事に事故がある場合にその所掌事務を代行し得る予備の建築主事をおくものとする。
(ロ) 従つて通常の場合、建築主事の配置は、本庁に一名(建築主務課長一名又は主任係長で特定建築物の確認事務をつかさどる者)及び各駐在地に各一名(その他の建築物の確認事務をつかさどる者)となる。
(ハ) 本庁に於ける確認事務が多い場合には、更に地区別又は建築物の種類別に分けて、数名の建築主事に分担させてもよい。
(ニ) 特定建築物の確認事務をつかさどる建築主事は、建築士法第二条に規定する一級建築士相当の知識、技能を有する者を任命するようにする。
(ホ) 建築主事の資格検定実施の期日は、未定であるが、本年中に行う予定である。

四 確認事務について

(イ) 法第六条第一項の規定による確認は、確認申請書に明示された事項で判定することができる事項に限つて行うものとし、なるべく現場における検査に重点をおいて、書類上の手続は簡易化するに努めること。
(ロ) 他の関係法令に適合するかどうかの判定も、建築主事の確認事務に含まれるが、それぞれの主務庁の解釈との間に、不一致を生じないように、あらかじめ取扱につき打合せすると共に、でき得るかぎり手続の一元化を図るように努めること。

五 建築審査会の設置

建築審査会は、法施行と同時に発足できるよう委員を任命し、且つ、条例を制定すること。本会は、特定行政庁又は建築主事の処分に対する異議の裁定等を行う機関であるから、設置の趣旨を活かし、且つ、公正を期するため、委員に当該地方公共団体の吏員を任命することはなるべく避けること。他の地方公共団体の吏員を任命することは差支えない。

六 法令の周知普及について

一般都(道府県)民、建築関係者に対して、講演会、講習会その他適切な行事を計画実施して、法の周知普及を図られたい。

七 市町村に対する指導

(イ) 関係市町村に対しては、法の趣旨を徹底させると共に、市町村において法の施行を希望する場合は、建築主事の配置、建築審査会委員の選定その他について法の完全な施行が望まれるように指導、援助をすること。
(ロ) 市町村における建築主事及びその他の職員の配置の最低基準について一例を示すと次の如くである。

◎人口一〇万程度の市における人員配置最低基準(確認申請件数年一、〇〇〇件―一、二〇〇件とした場合)
1 建築主事(一級建築士程度)――確認事務及び総括 一名
2 事務吏員――庶務、建築審査会関係事務 二名
3 技術吏員――(一級又は二級建築士程度)確認事務の補助、現場検査その他 三名
4 雇――書類の受付、発送等 二名

計 八名

八 府県の要員確保

法を施行する市町村に建築主事その他の職員を割譲する場合でも、その市町村に対する助言、指導監督に要する職員、右以外の区域における確認事務及び指導に要する職員、その他建築審査会、建築統計事務等に要する職員の確保に支障のないようにすること。


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