発住第三七号
昭和二七年五月一四日

各都道府県知事あて

建設事務次官通達


建築行政の推進について


建築行政本来の使命は広く建築に関する積極的な指導助長にあるべきであり、法令の規定に基く取締行政のみに偏してはならないのであつて、建築行政が、戦後、保安任務を主眼とする警察行政部門から、都市計画、住宅営繕等を含む建築行政部門へ移されたことは、この趣旨に基くものである。
この基盤に立つて建築行政も、戦後の統制経済の下にあつては、その運営に種々の困難を伴つたが、わが国経済の回復と共に、これらの困難の多くは順次解消し、恒久的建築復興が漸く軌道に乗らんとする今日においては、その積極的推進が期待される。
建築行政の運営に当つては、都市建築物のみならず広く農山漁村住宅等をも含めた建築物の、質の向上を計ると共に、都市においては、建築物が都市構成の重要な因子である点に鑑み、将来長年月に亘る都市構成の動向を明察し、都市計画その他の建設関係部門との総合的な計画のもとにこれを指導し、特に耐火建築物の普及については、強力且つ適切な指導を行われたい。
又、これがためには、関係職員の不断の研さん、努力を要することは言をまたないが、更に、建築士会その他の関係団体の協力を得て万全を期すると共に、社会一般に対しても建築行政に対する理解と協力を得るよう啓発宣伝に努め、要すれば、これに必要な予算措置をも講ずる等、特段の御配慮をお願いする。
なお、参考までに、建築の指導助長にあたつて考慮すべき具体的事項を列記すれば左記の通りである。

一 都市建築物の環境又は形態整備に関する事項

(一) 建築基準法の規定による地域、地区の指定されていない都市の区域については、これらの地域地区の指定を推進すること

地域、地区の制度は、建築基準法の規定に基く指定、規正によつてその目的を達するものであるからこれが指定のための現況調査その他の事務には都市計画関係職員のみならず建築行政関係職員にも充分の関心をもたせ、積極的に協力せしめる必要がある。

(二) 道路の位置指定、土地区画整理、共同建築、一団地の住宅経営等を指導助長して宅地の計画的な環境整備を計ること。

都市、特に郊外部において、これらの指導を怠る場合は将来再び、土地区画整理、道路改良或は不良住宅地区改良のため、更に経費と労力を注ぎこまねばならなくなるので、土地の発展の状況を見透して適切な指導促進を行う必要がある。

(三) 耐火建築を促進すると共に、市街地、特に準防火地域内に残存する不燃材料で葺かれたいない建築物の屋根の改修を指導助長すること。

準防火地域内の、これらの建築物の現況を調査し、年次計画を樹て、改修を計り、該当建築物について、資金の融通又は斡旋の方法を講じて、これが早期完成を図る必要がある。

(四) 公園、広場、主要街路、都市部の街角等に面する建築物に対しては、建築協会制度の活用、共同建築の推進等により、宅地の有効利用、都市建築物の形態の整備を計ること。

我国の都市は、過少宅地が多く、小規模な建築物が何らの統一もなく建ちならぶことによつて都市の形態及び環境、土地の利用が著しく阻害されて居るので、恒久的復興建築物、特に耐火構造建築物の建築に際しては、これらの指導助長を積極的に行う必要がある。

二 個々の建築物の質の向上に関する事項

(一) 建築物の災害防止対策を推進すること。

特に、木造の学校、病院、劇場、映画館等の特殊建築物については、定期的にその構造設備等の保守状況について報告を徴し、又は係員をして臨検せしめ、必要ある場合は災害防止について適当な指導、勧告を行う等、災害を未然に防止するよう努める必要がある。

(二) 農山漁村住宅の改善を計ること。

農山漁村住宅には、慣習的に不合理な平面計画、構造、設備が、そのまま行われてきているが、之を技術的、経済的に検討し、可能な改善を指導助長することは、農山漁村の生活文化の向上のために必要である。

(三) 建築工事費の合理的低減を研究指導すること。

建築物の質の向上を図るためには、半面に於て経済的負担の軽減を計ることが重大な要素である。
これがためには、平面計画の工夫による建築規模の低減、構造、材料、施行法等の合理化による建築単価の節減を計ることについての指導が必要である。
なお、併せて特殊工法、郷土材料の活用についての調査研究も望ましい。

三 建築関係団体の協力並びに一般の指導、啓発に関する事項

(一) 建築士会、建設業協会等の建築関係団体とは、常に密接な連けいを保ち建築行政の推進について理解と協力を得ること。

建築士、建設業者等の団体の自主的な事業活動は勿論、各会員それぞれの業務活動を通じて、建築行政の推進に協力を得ることは最も効果的なことである。

(二) 建築主並びに一般社会の建築及び建築行政に対する理解、協力の増進を計ること。

建築物の質が、社会的、経済的、文化的生活に及ぼす影響については、未だ、一般社会の認識は不充分であり、従つて建築行政に対する一般の認識と協力も少いことはまことに遺憾であつて一般社会の理解と協力を得るには、あらゆる機会を利用し、又、機会を設けて、有効な方法を以て指導、宣伝に努めることも必要であるが、更に、建築行政担当者の日常事務の適否が、一般社会の理解と協力を得る上に重大な影響を及ぼすことに鑑み、建築行政の日常事務の実績を常時充分に評価反省する必要がある。

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