発住第一九号
昭和三四年五月二九日

建設事務次官から各都道府県知事あて

通達


建築基準法の一部を改正する法律の公布について


建築基準法の一部を改正する法律は、第三一回国会(通常国会)において成立し、昭和三四年四月二四日法律第一五六号として公布され、公布の日から起算して八月をこえない範囲内において各規定につき政令で定める日から施行されることとなつた。
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的として、昭和二五年に制定されたのであるが、その後社会情勢の変化、技術の進歩等に伴い、種々実情に沿わない面も生じたもので、今回、これに全般的な検討を加え、規定内容の合理化を図つたものであつて、改正の主要な点は、次のとおりである。
一 防火に関する規定の整備強化

建築物の耐火性能に関する構造規定を整備し、もつて特殊建築物及び防火地域、準防火地域内の建築物の構造制限を強化整備するとともに、特殊建築物及び最近増加の傾向にある地下建築物、無窓建築物等に対する避難、消化及び内装仕上げについて必要な技術的基準を政令で定めることとした。

二 道路に関する規定の整備

道路指定及び道路幅員に関して規制を緩和できる途を開いた。

三 用途地域に関する規定の整備

用途地域内における建築制限に関して工場施設の進歩に応じ、新たな業態のものを追加し、公害の少ないものを削るとともに、特別用途地区の一層の活用を図るため、従来の条例による制限附加のみならず新たに条例による制限緩和の途も開いた。また、従来この種の制限は建築行為のみを対象としていたが、用途地域、地区等の指定の目的から必要と認められる建築物の敷地、構造及び建築設備に関する制限をも条例で定めることができることとした。

四 建築物の高さと空地に関する規定の整備

過少宅地が多い等土地の状況によりやむを得ない場合においては、建築面積の敷地面積に対する割合について、地区を定めて、その地区内ではこれを緩和できるものとした。建築物の高さに関する制限についても都市計画上その安全、防火、衛生上支障がないと認められる場合には緩和できるようにした。

五 違反是正措置の強化

違反することが明らかである工事中の建築物について緊急の措置が必要な場合には、事前通知、公開による聴問等の手続を経ないで直ちに工事中止命令を出し得るようにし、あわせて義務者の不明な場合の措置を明確にした。

六 手続等に関する規定の整備

確認申請手数料の最高額を物価変動に応じて引上げ、また、昇降機等の建築設備及び飛行塔、ウオーターシユートその他の遊技施設についても確認の手続を要することとした。その他特殊建築物及び昇降機等の建築設備の維持保全に関して必要な定期報告、定期検査の制度を確立した。
今回の改正の要旨は以上のとおりであるが、従来の法施行の状況には必ずしも十分でない面もあるので、新たな制度による事務量の増加も考慮し、今回の法改正を機として、機構、要員、予算等の整備拡充につとめ、法の施行の万全を期する体制を確立するよう特段の後配慮を煩わしたく、命により通達する。


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