住指発第一七〇号
昭和四四年五月二一日

建設省住宅局建築指導課長から各都道府県建築主務部(局)長あて

通達


旅館ホテルの違反対策の強化について


火災による事故防止対策の強化については、さきに昭和四三年四月五日付け建設省住指発第七〇号住宅局長通達及びこれに基づく建築指導課長通達で指示したところであるが、今回、最近の火災事例にかんがみ、関係省庁で構成している旅館ホテル防火安全対策連絡協議会において協議した結果にもとづいて、旅館、ホテルの違反を重点的に是正させることとしたので、確認、完了検査、定期検査等の行政指導体制を一層強化するとともに、関係行政機関との連絡を密接に保ち、悪質な違反者に対する告発手続を積極的に推進されたい。
また、とくに既存不適格の旅館ホテルについては建築基準法第一〇条の規定の適用を積極的に行ない、災害の未然の防止に努められたい。
なお、別添のとおり、消防庁及び警察庁からも同趣旨の通達が出されているので、参考までに添付する。



(別添参考)

旅館ホテルの火災事故防止に関する警察措置の強化について

(昭和四四年四月一八日)
(警察庁丙勤発第一一号・警察庁丙防発第一一号・警察庁丙安発第八号)
(警察庁保安部長から警視総監・各管区警察局長・各都道府県警察本部長・各方面本部長あて)
昨秋の有馬温泉火災事故を契機として同年一一月九日関係省庁(消防、建設、厚生、運輸、労働、文部)をもつて「旅館ホテル防火安全対策連絡協議会」を構成し、宿泊施設の防火安全対策上改善すべき事項について検討がなされてきたところであるが、過般、磐梯、熱海温泉において多数の死傷者を出した火災事故が発生したことにかんがみ、あらためてその対策について検討することとなり、当庁においても去る二月一四日同協議会に加わり、旅館ホテルにおける防火安全上とるべき措置および関係省庁間におけるこれが総合的な運用について協議した結果、警察においては、とりあえず、次の措置をとることとしたので、その実施について遺憾なきを期されたい。
なお、このことについては別添一のとおり、消防庁から各都道府県あて通達されているので参考とされたい。
おつて、参議院災害対策特別委員会においては、本年二月二六日別添二のとおり「旅館等の火災による事故防止に関する決議」を行ない、当庁長官あて送付してきたので、その趣旨を了知されたい。
一 関係法令違反取締りの強化

消防庁および建設省においては、旅館、ホテルに対する立入点検を強化し、点検の結果認められた消防法および建築基準法に違反する欠陥については、その改善を確実に行なわせることとし、そのため必要があるときは、措置命令または告発の手続きをとることとしているので、消防、建設機関から告発を受理したときは、積極的に捜査をすすめ、事件処理にあたること。
なお、一般警察活動を通じて前記法令違反を発見した場合には、関係機関に通報して行政措置の発動を積極的に促すよう配意すること。

二 風俗営業と旅館業との兼業許可の取扱い

風俗営業と旅館業との兼業の許可にあたつては、兼業の許可申請を受理した場合、風俗営業等取締法施行条例に定める許可基準に照らし、許可の対象となる見込みがあるときは、すみやかに所轄消防機関に許可申請を受理した旨通報し、当該消防機関から消防法令に定める消防設備等の設置についての査察結果に関する別記様式の通知書による通知があるまで当該申請にかかる兼業の許可は保留すること。

三 一般警察活動の強化

旅館、ホテルの火災を予防し、または火災が発生した場合の人命の損害を最小限に止めるため、平素から次の一般警察活動を強化すること。
(1) 巡回連絡、防犯、防災座談会、旅館業者の会合等の機会を利用して、施設の管理者等に対し、火災の防止、火災発生時の措置、宿泊者に対する警報の伝達、避難誘導の方法等について一般的な注意を喚起するようにすること。
(2) 火災発生時における現場活動を効果的に行ない得るよう管轄区域内のホテル、旅館の建築物構造、避難場所等の実態をあらかじめは握しておくとともに、現場活動に必要な装備、資器材を点検、整備しておくこと。
(3) 火災情報の相互連絡、火災現場における諸活動の連携、負傷者の迅速的確な救護活動等につき消防、医療等関係機関との連絡を密にしておくこと。



様式
<別添資料>



〔別添一〕

旅館ホテル防火安全対策について

(昭和四四年四月二三日)
(消防予第一〇九号)
(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
標記については、昭和四四年一月一一日付消防予第五号をもつて通知したところであるが、「旅館ホテル防火安全対策連絡協議会」において、さらに協議を重ねた結果、下記の事項について結論を得たので通知する。
なお、管下市町村に対してもこの旨御指導、御連絡願いたい。
一 防火安全性についての消防機関の意見に関する事項

去る二月五日に発生した磐梯熱海温泉の火災をはじめ、最近ひん発した旅館、トルコ風呂等の火災にかんがみて、防火上の見地から、この際旅館ホテルのみならず興行場、いわゆるトルコ風呂・サウナ風呂等及び風俗営業に対する規制を強化するため、当該営業の許可に際して、当該用途に供する営業施設が消防法令に違反していない旨の意見を述べることとなつたが、その要領は次のとおりである。
(1) 興行場法(昭和二三年法律第一三七号)第一条第二項に規定する興行場営業及び公衆浴場法(昭和二三年法律第一三九号)第一条第二項に規定する浴場業でいわゆるトルコ風呂・サウナ風呂等熱気又は蒸気を利用するものの用に供する施設が消防法令で義務づけられている消防用設備等を設置していない場合は、当該営業の許可を差し控えるよう厚生省と協議が整つたので、所轄保健所からの通報に基づき、当該施設の査察をすみやかに実施し、その結果を別記様式により所轄保健所を経由して都道府県知事又は指定都市の長あて通知するものとする。
(2) 風俗営業等取締法(昭和二三年法律第一二二号)第一条に規定する風俗営業の営業用の家屋等が、旅館業の施設であつて消防法令で義務づけられている消防用設備等を設置していない場合は、当該営業許可を差し控えるよう警察庁と協議が整つたので、所轄警察署からの通報に基づき、当該施設の査察をすみやかに実施し、その結果を別記様式により所轄警察署を経由して都道府県公安委員会あて通知するものとする。
(3) 旅館ホテル内にあるものについては、消防機関の査察の結果の判断は、当該用途に供する部分のみならず旅館ホテル全体について行なうものとする。
(4) 査察の結果、当該営業施設が消防法令に違反している場合は、まず一応電話等によりその旨を所轄保健所又は警察署に通報し、その後当該違反事実が解消されたときに別記様式による通知を行なうことが便宜な措置と考える。先に決定した旅館業等の許可の場合においても同様とする。
(5) 当該営業許可後消防法令に違反することとなつた場合等は、昭和四四年一月一一日付消防予第五号に定める例によるものとする。
(6) 上記(2)については昭和四四年五月一日から、(1)については遅くとも昭和四四年六月一日から実施するものとする。

二 消防法令違反防火対象物に対する告発の処理に関する事項

査察の結果、消防法令に違反することとなつた場合は、必要に応じて措置命令、告発等の措置をちゆうちよなくとるよう通達(昭和四三年一一月四日付消防予第二四九号)したところであるが、このうち告発の措置については、警察機関がこれを受理したときは、積極的に捜査をすすめ、事件の処理にあたることとなつたので承知されたい。

三 地方段階における防火安全対策の協議のための組織の設置

旅館ホテル防火安全対策をさらに具体的に推進し、徹底するため、国と同様の連絡調整の場を既に持つているところもあるが、未設置のところもその設置を図るよう配慮されたい。

四 上記一及び二について、警察庁からは別添のとおり、厚生省からは別途通達がなされるので参考とされたい。



別記様式
<別添資料>



〔別添二〕

ホテル・旅館等の火災による事故防止に関する決議

(昭和四四年二月二六日)
(参議院災害対策特別委員会)
近時、温泉地等に頻発する火災が、多数の人命を損傷している実情に鑑み、政府は、人命尊重の基本に立つて、次の諸点につき法的措置ならびに行政指導を強化すべきである。
一 ホテル・旅館等について、興行場、劇場、演芸場等を併存する場合においては、厳に宿泊部分を分離するとともに、防火施設及び設備の規制を強化し、かつ、避難施設、器具の整備を図ること。
二 特殊建築物における内装制限の基準を引き上げ、ことに有毒ガス発生のおそれのある建築材料の使用の規制をすること。
三 ホテル・旅館等の経営者は、常に宿泊者の安全に留意し、旅行者の自覚を喚起するとともに、避難方法の明示とその周知徹底及び従業員の誘導訓練の強化を図り、火災発生時の避難誘導に万全を期すること。
四 消防関係者は、ホテル・旅館等に対し、厳格な査察を実施し、改善等の措置が適切に行なわれているか否かを常に確認するよう配慮すること。
五 煙についての科学的調査研究については、関係各省の緊密な連けいのもとに推進すること。

右決議する。


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