住指発第五五一号
昭和四五年一二月一四日

建設省住宅局長から都道府県知事あて

通達


建築監視員制度について


建築基準法の一部を改正する法律によつて新たに設けられた建築監視員の制度は、今回の法改正の主要な目的の一つである違反建築の絶滅のために創設されたものである。
現在、大きな問題となつている違反建築に対して有効適切な措置を講ずるためには、現場の巡回監視を常時行ない、必要があるときには、その場で違反建築物の使用の禁止、工事の施工の停止等を命ずる権限を有する建築監視員を十分に活用する必要がある。
貴職におかれては、従来から違反建築の防止について種々配慮されているところではあるが、違反建築の現状にかんがみ建築監視員制度の効果的な活用が望まれるので、建築監視員の充実のために必要な人員及び予算の確保等について特段の配慮をされたい。
なお、建築監視員制度の運用については、後日詳細に通知する予定であるが、その骨子は、左記のとおりであるのでとりあえず通知する。
おつて、貴職から管下関係の特定行政庁に対して、この趣旨を周知徹底されるようお願いする。

一 建築監視員の執務指針

(1) 計画的に建築現場の巡視を行なうことにより、違反建築の絶滅を期すること。
(2) 違反建築物を早期に発見し、有効な是正措置を講ずること。

なお、標識の設置を迅速かつ適切に行なうこと。

(3) 違反建築物の実態及び処理状況について上司に対し的確な報告を行なうとともに、是正措置等に関し積極的に意見を具申すること。
(4) 建築監視員は、業務遂行に当たつては厳正毅然たる態度で関係者に臨むことはもちろんであるが、重大な権限と責任を有するものであることを認識し、いやしくも公権力の乱用にわたらないよう十分自戒すること。

二 建築監視員の任命

建築監視員は、建築基準法施工令第一四条の規定に該当する者のうちから任命することになるが、任命に当つては、その権限と任務の重要性を考慮して慎重な人選により選任するものとし、相当数は、極力建築監視員の職務に専念することができる者を任命すること。
なお、これに関連して現在においても都道府県、市町村とも建築基準法施行担当職員はきわめて不足している実情であるので、配置換え、新規採用等による職員の確保を行ない組織の強化及び充実についても十分配慮すること。

三 建築監視員の配置

(1) 特定行政庁の実情に応じ極力専任の建築監視員を配置するのが望ましいが、とりあえず新年度に至るまでの間は、兼務による運営もやむを得ないこと。
(2) 人口の集中及び建築確認件数の増加等諸般の実状を勘案して任命するものとし、一般的には本庁においては、少なくとも二名以上、土木事務所等の出先機関においては原則として一名以上を専任の建築監視員とすること。
(3) 建築主事には、原則として建築監視員の職務を兼務させること。

四 巡回等の実態

(1) 建築監視員は、管内の建築活動等の実情に応じて年間の総合的な巡視計画を作成し、定期的なパトロールを行なうとともに特定地区を対象とするいつせいパトロールを年間数回行なうこと。

なお、当面は、無確認建築物の摘発を最重点の目標とすること。

(2) 関係部局、関係行政機関、地域住民等による通報、陳情等を積極的に活用し、巡回、監視の協力体制の確立を図ること。

五 その他

(1) 建築監視員には、権限と任務にてらしその職務上の身分を明らかにすることが、規律の保持及び違反者の自覚を促すうえに望ましいと考えられるので、執務に当つては、制服を着用させるなど適切な措置を講ずること。

なお、建設省においても制服の型式等に要する予算措置を検討中である。

(2) 建築監視員の現場巡回等を迅速かつ能率的に行なうため、相当数の軽自動車等の配置について措置すること。
(3) 建築監視員の業務の特性にかんがみ待遇、手当等についても格別の考慮を煩わしたい。

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