

建設省住街発第八〇号
昭和四七年一〇月二五日
住宅局長通達
用途地域等の決定と建築行政について
昭和四五年法律第一〇九号による改正後の建築基準法に係る用途地域等の決定基準については、昭和四七年四月二八日付け建設省都計発第四二号をもって都市局長より通達されているところである。これに基づいて貴管内においても新しい用途地域等が決定されることとなるが、貴職におかれては、この決定に当たって次の諸点に留意し、都市計画と建築規制との調和を図るよう努められたい。
1 都市計画行政と建築行政との調整
用途地域等の決定に当たっては、次の事項について配慮し、都市計画行政と建築行政との緊密な連絡調整を図ること。
(1) 用途地域等の都市計画は、主として建築基準法による建築物の規制によって具体化されるものであるので、それに対応した建築行政の執行体制の整備拡充を図り、両行政の実効が十分得られるよう努めること。
(2) 市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針に基づく土地利用の計画(以下「土地利用の計画」という。)をふまえつつ、土地利用の現状と動向を勘案した適切な規制内容とすること。また、市街地再開発事業、住宅地区改良事業その他これらに類する市街地の面的整備事業の実施の計画のある区域については、当該事業の計画を十分配慮した規制内容とすること。
(3) 中高層建築物による日照阻害、自動車交通又は中小工場による騒音振動等主として近隣社会的な居住環境の悪化に対処するため、次の事項について配慮し、きめ細かな建築規制を行なうよう努めること。
(イ) 性格の著しく異なる地域等が隣接し、都市生活上又は都市機能上の障害を生ずるおそれがある場合は、これらの地域等の間に緩衝的な規制内容の地域等を設定すること。
(ロ) 特定の用途の建築物が集積している地域、零細な敷地の多い地域等について、当該地域の実情に即して、特別用途地区、高度地区その他の地区を積極的に設定し、これらの地区に係る条例等の整備を図ること。
(ハ) 用途地域等のそれぞれの区域の規模及び形状については、地域として十分なまとまりとすること及び不整形とならないことが望ましいが、土地利用の現状と動向及び土地利用の計画を勘案し、必要に応じて弾力的に定めること。
(4) 用途地域等が決定された場合に既存不適格建築物となるものについては、あらかじめできるだけ具体的な取扱い方針をたてておくよう努めること。この場合、環境上好ましくない工場等については、その移転を促進するよう配慮すること。
(5) 用途地域等の区域を定めるための土地の境界を道路の境界からの一定距離をもって定めることについては、現地において境界を確知することが難しいこと等建築行政上の問題が多いので、可能なかぎり地形地物等により境界を定めること。
2 特別用途地区条例の整備
(1) 特別用途地区条例(以下「条例」という。)による用途規制は、地域の特殊性に応じて特別の目的をもって用途地域による用途規制を補完し、当該地域に適したきめ細かな用途規制を行なうものであるから、必要に応じて積極的に活用すること。また、条例の制定に当たっては、次の各項について配慮すること。
(イ) 当該条例の適用が予定されている区域(以下「対象区域」という。)について、土地利用の現状と動向を十分把握するとともに、土地利用の計画を勘案し、目標とすべき用途構成及び環境の水準又は商業、工業若しくはその他の業務の利便性をあらかじめ定め、条例制定の目的を明確化すること。
(ロ) 条例の規定によって建築基準法第四八条の規定に基づく制限に新たな制限を附加する場合においては、当該条例による制限の附加が、当該地区において目標として定めた環境の水準又は商業、工業若しくはその他の業務の利便性を確保するために必要かつ適切な範囲のものであり、かつ、たとえば住宅が相当立地している準工業地域において特定の業種の工場の立地を禁止すること、特定の業種の工業の集積している工業系地域において当該業種の利便を害するおそれのある用途の建築物を制限すること等対象区域に定められている用途地域の目的に背離しない範囲のものであること。また、条例によって新たに制限されることとなる用途の建築物については、当該条例において建築基準法第四八条の規定に基づく許可制度と同様の制度により制限緩和の途を開いておくこと。
(ハ) 条例の規定によって建築基準法第四八条第一項から第六項までの一の規定による制限を緩和する場合においては、当該条例による制限の緩和が、地域の特殊性からやむを得ないものであり、かつ、たとえば別荘地のような第二種住居専用地域において寮、保養所、旅館等の立地を認めること、地場産業の集積している住居地域において一定規模以下の工場の立地を認めること等対象地域に定められている用途地域の目的に背離しない範囲のものであること。
(ニ) 前項の場合においては、建築基準法第五〇条の規定を活用し、当該条例によって緩和される用途に供される建築物に対して、その敷地、構造又は建築設備について新たな制限を附加し、用途の制限緩和に伴なう環境悪化又は利便性の低下を防止すること。
(ホ) 建築基準法第四八条第七項及び第八項の規定については、原則として条例による緩和は行なわないこと。
(2) 都市計画において特別用途地区の決定を行なう場合、特別用途地区の設定の予定されている区域内の土地所有者その他の関係者に対し、当該区域に適用されるべき条例の内容をあらかじめ周知させる必要があるので、条例は、特別用途地区の決定に先立って制定すること。
(3) 特別用途地区の都市計画が市町村によって決定されること及び特別用途地区内の建築規制は地域の実情に即したきめ細かなものとする必要があることにかんがみ、条例は原則として市町村において定めること。ただし、二以上の市町村において共通の規制を行なうことが必要な場合は、都道府県において条例を定めること。
(4) 建築主事を置く市町村以外の市町村において条例を制定する場合には、当該市町村において条例の施行に伴い必要となる建築審査会に代わる諮問機関及び執行体制を整備する必要があるので、都道府県はこの点について十分な指導を行なうこと。また、これらの整備が難しい市町村については、都道府県が当該市町村と協議し、これに代わって条例を定めること。
3 例外許可制度の運用方針の整備
建築基準法における例外許可の規定は、同法の公正かつ円滑な施行の確保を図るためのものであり、その適正な運用に努める必要がある。特に、用途規制及び形態規制に係る例外許可については、土地利用の計画に即した適切な運用を行なう必要があるので、用途地域等の決定に当たって次の各項に従い、これらの許可の運用方針を整備するよう努めること。
(イ) 建築基準法第四八条第一項から第八項までの規定に基づく許可に当たっては、許可対象建築物について都市全体から見た場合の立地の妥当性及び近隣の環境条件又は利便性への影響を検討することが必要である。前者に関しては、第一種住居専用地域における病院、主要道路沿線の住居地域における自動車修理工場、環境を著しく害するおそれのない工場の立地する工業専用地域における職員寮等特定の区域における特定の用途の建築物について、許可に際して考慮すべき事項をあらかじめ検討し、許可基準を定めること。また、後者に関しては、地域の実情に応じて騒音、振動等の環境条件に関する基準を定めること。
(ロ) 建築基準法第五二条第三項第三号、第五五条第一項第三号又は第五六条第三項の規定に係る許可制限(総合設計)については、昭和四六年九月一日付け建設省住街発第四八号(住宅局長通達)「総合設計に係る許可準則について」の趣旨に従い、この制度を活用して敷地内の広場、通路等の公共的空地を積極的かつ計画的に確保するよう指導すること。また、これらの許可による各制限の緩和の程度については、右記通達中の「総合設計許可準則」をもとに周囲の公共施設の整備状況、周辺の土地利用形態等に応じた基準を定めること。
4 建築行政の執行体制の整備
用途地域等に関する諸規制の適正かつ円滑な執行を確保し、都市計画の目標を実現するためには、建築行政の執行体制を一段と整備拡充する必要があるので、今回の用途地域等の決定を機会に、必要な人員及び予算の確保、建築審査会事務局の強化等組織の整備を図ること。
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