建設省住指発第六六〇号
昭和四八年九月一七日

各都道府県知事あて

住宅局長通知


建築基準法施行令の一部改正について


建築基準法施行令の一部を改正する政令は、昭和四八年八月二三日政令第二四二号として公布され、建築基準法施行令第一三六条の改正規定は公布の日から、その他の改正規定は昭和四九年一月一日から、それぞれ施行されることとなった。
今回の改正は、最近における特殊建築物の火災による被害の実情に照らして防火及び避難に関する基準を整備し、あわせて土地の有効利用を推進するための所要の改正を行ったものである。
改正の内容は左記のとおりであるが、この改正を機会として建築基準法令の一般への周知徹底及び建築行政にかかる機構、定員、予算等の整備充実を図るとともに、定期報告制度の充実に努め、必要に応じ改善勧告又は改善命令を発する等既存建築物の防災性能の向上について特段の御配慮を煩わしたい。
なお、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知させ、改正政令の施行に遺憾のないよう措置されたい。

1 防火区画に用いる防火戸に関する基準の整備

防火建築物の防火区画に用いる防火戸について、今回新たに常時閉鎖式のものを定めた。これは、防火戸が、常時閉じた状態にあることが、火煙をしゃ断するうえで、効果的であると判断したためであるが、開閉がひんぱんに行われる場所で用いられることは、法の趣旨ではない。運用にあたって設計場所の選択、維持管理等については、この趣旨を十分考慮して指導にあたられたい。
常時閉鎖式防火戸以外の防火戸のうち、いわゆるたて穴区画及び異種用途区画に用いる防火戸は、しゃ煙性能を有するもので、かつ、煙感知器と連動して自動的に閉鎖する構造を義務付けて重要な避難経路等の防煙対策を強化した。

2 防火ダンバーに関する基準の整備

防火ダンバーについては、風道からの火煙の伝ぱが、火災の被害を著しく拡大するおそれがあるので、これを防止するため、その材料、しゃ煙性能、作動機構等の構造規定を具体的に定めた。

3 二以上の直通階段を設ける建築物の範囲の拡大

災害時における二方向への避難経路を確保するため直通階段を二以上設けなければならない建築物の範囲を拡大した。すなわち、六階以上の階に居室を有する場合及びキャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバーの用途に供する階については、原則として、二以上の直通階段を設けなければならないこととした。用途による規定についても、病院、診療所に類するものとして児童福祉施設等を加えた。
なお、キャバレー等の用途に供する場合及び六階以上の階に居室を有する場合にあっては、市街地の現状にかんがみ、ただし書を設け一定要件を満たす場合に限り一の直通階段とすることを認めたが、緩和の要件の一つであるバルコニー、屋外通路等の設置については、安全な避難ができるよう配置等について十分考慮して指導にあたられたい。

4 避難階段及び特別避難階段の出入口に設ける防火戸の基準の整備

避難階段及び特別避難階段は、火災時において最も高度な安全性能が要求されるところから、その出入口に設ける防火戸は、常時閉鎖式のもの又はしゃ煙性能を有し、かつ、煙感知器と連動して自動的に閉鎖する構造のもののいずれかとし、防火戸又はその部分が避難の方向に開放できることを要件とした。

5 特殊建築物における内装制限の強化

中高層建築物は、低層建築物に比較して避難上制約があるので、避難に要する時間を確保する必要がある。今回、三階以上の階に居室を有する特殊建築物について、フラッシュ・オーバー現象を遅らせるため最も効果的な天井の仕上げ材料について、その不燃性能を高めることとした。すなわち、従来、天井の室内の仕上げ材料として認められていた難燃材料を排除し、準不燃材料以上を使用しなければならないこととした。

6 建築物の容積及び高さの制限の緩和要件の改正

第一種住居専用地域におけるいわゆる「総合設計」の要件のうち、敷地規模の要件を三、〇〇〇平方メートルとし、特定行政庁が別に規則で定めることができる数値の範囲を一、五〇〇平方メートル以上三、〇〇〇平方メートル未満とした。

7 その他

防火区画に用いる防火戸の規定を改正したことに伴い令第一一三条第一項第四号、令第一二六条の二第二項、令第一二八条の三第二項及び第三項及び令第一二九条の一三の二第三号の防火戸に関する規定を令第一一二条第一四項の改正趣旨に従って、それぞれ改正し、また、二以上の直通階段を設ける場合の規定を改正したことに伴い令第一二三条の二の規定について所要の整理を行った。

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