建設省住宅局建築指導課長から各特定行政庁主務部長あて
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別記 一 事件 大阪地方裁判所昭和五一年(ワ)第一九八八号損害賠償請求事件
二 判決 昭和五二年七月一五日(原告控訴 係争中)
三 原告 豊中市庄内幸町三丁目一五番一二号 小西覚一
四 被告 豊中市
五 主文 原告の請求はいずれも棄却
訴訟費用は原告の負担
六 事実の概要
(一) 原告は、昭和四八年五月二〇日建築確認を受けないまま、本件建物の増築工事を完了した。本件建物は建築基準法所定の建ぺい率に適合しない物件である。
昭和四九年一二月九日被告市は原告からの給水装置工事の申込みを受けつけ、これを受理したこと、昭和五〇年一二月四日給水装置工事が完了したことはいずれも当事者間に争いがない。
(二) 原告は昭和四八年五月頃被告市水道工事公認業者である訴外会社に対し本件建物につき給水装置工事の申込みをなすこと及び同工事の施工一切を依頼した。訴外会社はこれをうけて同月ごろ原告のために被告市水道局に対し、給水装置工事の申込みを行つたが、その際、本件建物の建築確認書を添付していなかつた。
(三) 水道局給水課長は、同市建築指導課員の指示のもとに本件建物が無確認建築物であるとして申込みの受理を拒絶した。原告はその後も数回にわたり給水装置工事の申込みを行つたがその都度拒絶された。
七 判旨
(一) 被告市は昭和四一年四月一日不法建築規制強化のため同市給水条例施行規程の一部を改正し、「管理者が必要と認めるときは、工事申込者に対して当該工事の申込みにかかる建築物の確認通知書の提示を求めることがある」(一〇条二項)と定め、その実施要綱を作成した。
(二) ところで、水道法一五条一項は「水道事業者は、事業計画と定める給水区域内の需要者から給水契約の申込を受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない」と規定している。
ここに正当な理由とは、地理的要因により水道を敷設しえない場合、あるいは施設に要する費用に比べて料金収入が極めて水道事業者が著しく経済的負担を強いられるような場合等を意味するのであつて水道法固有の目的に即して解釈されるべきものである。従つて、たとえ建築基準法に違反する建物所有者からの給水申込みであつても、居住者の在否にかかわらず水道事業者はそのことを理由として右申込みを拒絶することは許されず、違法建築の規制は建築基準法に規定する手段によりこれを行うべきである。
(三) 被告市給水条例施行規程一〇条二項において工事申込者に対し確認通知書の提示を求め得るものとされているけれども、その文言ならびに先に説示したところから明らかなように工事申込者が確認通知書を提示しない場合には行政指導として申込者に対し確認手続をとるよう促しそれまでの間右申込みの撤回留保を求めることができるとの趣旨と解するのが相当であつて、確認通知書がないことを理由に工事申込者の意に反して右申込みを拒絶することは許されない。
(四) 損害の有無について
原告は、被告市が昭和四八年五月二〇日から昭和四九年一二月九日まで給水装置工事申込みを受理せず給水を停止したことにより生活上または店舗として当然存在すべき収益的財産価値が減殺されたと主張するけれども、原告本人尋問の結果によれば…(訴外某)にこれを賃貸し、同人がその家族とともに、昭和四八年六月一〇日から居住使用していたこと。同人は賃貸するに際して原告から本件建物に水道設備のないことの説明を受けており隣の居住者(某)から配水管の分割を受け、私設の水道設備により給水を受けていたことを認めることができる。右事実によると原告自身は本件建物の増築部分を使用していないのであるから何らの損害も受けていない。
また、本件建物に給水装置がなされなかつたことによつてこれが設置されるまでの間その敷地の取引価格が水道施設のある土地と比較して低額であつたとしても、原告は右敷地を取引の対象としてその差額について損害を被つた事実を認める証拠はなく、いずれにしても、右の期間本件建物の敷地価格が低額であつたことによつて原告にどれだけの損害が生じたのか……全証拠によつても明らかでない。
さらに、右事実によると原告において給水装置工事を始めるについて被告市と交渉を重ね手数を煩わせたことは認められるけれども、未だ金銭給付をもつて償うべき精神的損害を受けたものとはいえず他にこれを認定するに足る証拠はない。従つて、被告市職員らにつき不法行為責任が生じない以上右両名の使用者である被告市に対する使用者責任の主張も失当というべきである。
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別添 違反建築物に係る水道の取扱いについて
(昭和五二年八月三一日)
(厚生省環水第八〇号)
(厚生省環境衛生局水道環境部水道整備課長から各都道府県水道主管部(局)長あて通知)
標記に関連して去る七月一五日大阪地方裁判所において概要別記のとおり判決が行われ、これについて昭和五二年八月三一日付建設省住指発第六〇三号をもつて建設省住宅局建築指導課長より各特定行政庁主務部長あて別添〔省略〕のとおり通知されたところであるが、各水道事業者においても昭和四六年一月二九日環水第一二号厚生省環境衛生局長通知に従つて運用することとするよう貴管下水道事業者を指導されたく、念のため通知する。
〔別添二 参照〕
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