住指発第七七八号
昭和五二年一〇月三一日

特定行政庁あて

建設省住宅局建築指導課長・市街地建築課長通達


建築基準法の一部を改正する法律等の施行について


建築基準法の一部を改正する法律(昭和五一年法律第八三号)、建築基準法施行令の一部を改正する政令(昭和五二年政令第二六六号)及び建築基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和五二年政令第九号)によりそれぞれ改正された後の建築基準法(以下「法」という。)、建築基準法施行令(以下「令」という。)及び建築基準法施行規則(以下「規則」という。)については、昭和五二年一〇月二八日付け建設省住指発第七七一号をもつて住宅局長から通達されたところであるが、更に、左記事項に留意して適正な運用を図られたい。

第一 建築物に関する防災対策の強化

一 検査済証の交付前の建築物の使用制限(法第七条の二、令第一三条の二、第一三条の三、規則第四条の二)

(一) 法第七条の二の運用に当たつては、次の諸点に留意されたい。

(イ) 建設省住宅局長通達(昭和五二年一〇月二八日建設省住指発第七七一号。以下「局長通達」という。)第一の二の(五)のほか、仮使用の承認を行う場合において、他の法令により建築物を対象として使用停止等の措置をとり得る行政機関があるときは、必要に応じて当該行政機関と連絡調整を図ること。

特に、労働基準監督機関については、当該機関が使用停止等の措置をとつた場合においては、その旨を特定行政庁に対して通報することとなつているので、適切に措置されたい。

(ロ) 公共、公益性の強い用途に供される部分を有する建築物にあつては、当該部分の公共、公益性を十分に尊重すること。
(ハ) 局長通達第一の二の(二)の「消防法施行令第八条の区画に準ずる防火上有効な区画」とは消防法施行規則第一三条による区画として取り扱われる区画をいうものとすること。

(二) 規則第四条の二の運用に当たつては、同条第一項に掲げる安全計画書に明示すべき事項は、規則第一一条の二第一項の表に掲げる安全計画書において明示すべき事項に準じて記入させるように指導されたい。

二 報告、検査等(法第一二条)

法第六条第一項第一号の改正に伴い、法第一二条の維持保全の状況について定期に調査又は検査を要する特殊建築物の範囲が拡大されることとなつたが、調査又は検査の対象として特定行政庁が指定すべき特殊建築物の範囲等の案については、別途通知する。

三 用途の変更に対する法の準用(法第八七条、令第一三七条の九の二、第一三七条の一〇)

法第八七条の改正に伴い、類似の用途として令第一三七条の九の二の規定を新たに設けたが、これと併せて令第一三七条の一〇第一項についても類似の用途の範囲を改めたので、念のため申し添える。

四 工事中の特殊建築物等に対する措置(法第九〇条の二)

法第九〇条の二の規定の運用に当たつては、使用制限等の措置をとる場合において、他の法令により建築物を対象として使用停止等をとり得る行政機関があるときは、必要に応じて当該行政機関と連絡をとることとされたい。

五 工事中における安全上の措置等に関する計画の届出(法第九〇条の三、令第一四七条の二、規則第一一条の二)

(一) 法第九〇条の三の規定の運用に当たつては、次の諸点に留意されたい。

(イ) 令第一四七条の二各号に掲げられている用途(以下「対象用途」という。)と対象用途以外の他の用途(以下「他の用途」という。)とが兼用される建築物で、対象用途が他の用途に付属するとみなし得るものは、同条の建築物として取扱わないこと。この取扱いに関する具体的基準については、別途通知する。
(ロ) 令第一四七条の二第四号の「居室の床面積の合計」とは、店舗、事務所等が連続的に設けられ、かつ、これらが建築物として一体性を有すると認められる構造である居室の床面積の合計をいうので、地下の工作物内に点在する建築物に対する同号の規定の運用に当たつては、この要件に該当する部分ごとに居室の床面積の合計を算定し、判断すること。
(ハ) 工事の内容が複雑である場合等規則第一一条の二に規定されている図書のみでは工事中の安全が確認し得ない場合は、法第一二条第三項の規定に基づく報告を求め必要な図書を提出させること。
(ニ) 工事中における安全上の措置等に関する計画の立案は、できるだけ特殊建築物調査資格者、建築設備検査資格者、防火管理者等建築物の防災に関して資格を有する者に行わせるよう指導すること。

(二) 規則第一一条の二第一項の表に掲げる図書を届出書に添付させる趣旨は、工事着手前、工事施工中及び工事完了後の状況を明示させ、工事の一連の状態を把握しようとするものであるので、明示すべき事項の具体的内容についてはこの趣旨に即したものとするよう指導されたい。

なお、明示すべき事項の具体的な記載例については、別途通知する。

第二 日影規制(法第五六条の二、別表第三、令第一三五条の四の二、第一三五条の四の三、規則第一条第一項)

中高層建築物の日影規制に関する審査等については、次の諸点に留意されたい。

(一) 方位

従来、北側斜線制限においては、磁北によらず真北方向に距離を測定することとしているところであるが、日影規制においても真北方向の審査等方位については十分注意すること。

(二) 日影図

(イ) 規制第一条第一項の表(ほ)項の日影図は真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては午前九時から午後三時まで)の間において対象区域内の土地に日影を生じさせる中高層建築物にのみ義務付けられたものであること。
(ロ) 測定線上の主要な点における日影時間を記入する場合には、日影時間の長くなると想定される部分について主に記入させる等適切な運用を行うこと。
(ハ) 等時間日影線の記入については、法別表第三の(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体の条例で指定された号に掲げる時間の等時間日影線等当該建築計画が規制基準に適合するか否かの判断をするため必要な最少限の等時間日影線の記入で可とすること。
(ニ) 中高層建築物の複雑な形態の凹部を埋めて単純な形態に包絡したものによる日影が規制に適合していれば、当該計画は当然に日影規制に適合しているものであるので、このような場合には日影図も包絡されたものによる記載で可とする等効率的な運用を図ること。ただし、この場合は包絡の内容を示す図面を添付させる必要があること。

第三 第二種住居専用地域における用途規制の強化(法第四八条、別表第二(ろ)項第八号、同項第九号、令第一三〇条の七の二、第一三〇条の七の三)

令第一三〇条の七の二及び第一三〇条の七の三の規定の運用に当たつては、次の諸点に留意されたい。

(一) 大学、高等専門学校、専修学校その他これらに類するもの

「その他これらに類するもの」は、教育施設、研究施設その他の教育文化施設で第二種住居専用地域の居住環境を害するおそれが少ないものであり、これに該当するか否かは名称等による形式的な判断ではなく、設立目的、建築物の設計、利用形態等により実質的に判断すること。具体的には各種学校、職業訓練校、研修所、学術の研究所等が含まれるが、騒音の発生等により近隣の居住環境を害するおそれのある用途が主である建築物は除かれること。

(二) 老人福祉センター、児童厚生施設、精神薄弱児通園施設その他これらに類するもの

「その他これらに類するもの」は、令第一三〇条の四第二号に規定するものと同様、社会福祉事業法第二条に定義されている社会福祉事業の用に供する施設のうち、集会施設及び通園施設の類に限られるものであるが、宿泊施設の類については養老院に類するものとして第一種住居専用地域において建築できるものであること。

(三) 税務署、郵便局、警察署、保健所、消防署その他これらに類するもの

「その他これらに類するもの」は、公共性を有する建築物のうち近隣住民のサービスのため必要な建築物であること。したがつて、管理機能が中心である都道府県の本庁等は、これに含まれないが、近隣住民へのサービス機能が中心であるもの、例えば町村の庁舎又はこれに準ずる市の庁舎でサービス範囲の小さなものはこれに含まれること。
なお、今回の改正により店舗が規制の対象となり、共同店舗についても建築物全体として規制されることとなつたが、中小小売商業振興法の認定を受けた共同店舗又は中小企業振興事業団法の高度化資金の助成に係る共同店舗で法別表第二(ろ)項第八号又は第九号による制限を受けるものについては、これらが原則として同一地域内の既存店舗の集約によるものであり、かつ、事前に土木建築部局と協議がなされ、第二種住居専用地域に係る居住環境保護の観点から配慮がなされているものであるので、法第四八条第二項ただし書の規定による許可の対象として運用を行われたい。

第四 その他

一 火を使用する室に設ける換気設備(令第二〇条の四)

令第二〇条の四の規定の運用に当たつては、次の諸点に留意されたい。
(一) 令第二〇条の四第一項第三号の「換気上有効な開口部」とは、建設大臣認定優良住宅部品、公共住宅用規格部品等のサツシに設けられた換気用の小窓、住宅の外壁に設けられた換気用の小孔等の換気専用に設けられた開口部で、容易に開閉することのできるものである。
(二) 令第二〇条の四第二項第五号のただし書の規定は、発熱量が一時間につき一万キロカロリーを超える設備又は器具であつても直接裸火を使用する厨房等のガスコンロ等については、当該設備又は器具に煙突を設けることが用途上又は構造上著しく困難であるので、排気フードを有する排気筒を設けることにより、煙突の設置を免除しうるものとしたものであること。
(三) 換気設備を設けるべき調理室等が居室である場合には、当然法第二八条第二項の適用があること。
(四) 令第二〇条の四の規定に基づくガス器具の使用に対する改善命令の発動等に当たつては、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律及びガス事業法に基づきガス器具について規制を行つている部局と十分な連けい協力を図ること。

二 第一種住居専用地域内に建築することができる停車場又は停留場(令第一三〇条の四第四号)

令第一三〇条の四第四号の規定に基づき、昭和五二年一〇月三一日建設省告示第一四二一号により指定された都市高速鉄道の用に供する停車場又は停留場は、執務の用に供する部分の床面積の合計が二〇〇平方メートル以内のものに限定されているが、この「執務の用に供する部分」とは、駅事務室、出札所、改札所等駅業務を直接行うための部分をいい、旅客便所、コンコース、旅客通路及び旅客階段並びに直接の駅業務に付随して必要となる寝室、休養室、食堂、厨房室、浴室、更衣室、通路等は含まないものであること。

三 第一種住居専用地域内における建築物の高さ制限の緩和の技術基準(法第五五条第二項、令第一三〇条の一〇)

法第五五条第二項第三号の規定に基づき特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるに当たつては、原則として、建築物の各部分の高さは当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に〇・五を乗じて得たものに四メートルを加えたもの以下であることを基準とすることとする。ただし、隣地に対して冬至日における日照時間を適切に確保させ得るものについては、この限りでないものとする。

四 法第九一条の規定の改正等により建築物又はその敷地が区域又は地域の内外にわたる場合の取扱いを改めたが、建築物が法第二二条第一項に規定されている区域の内外にわたる場合の措置について、新たに法第二四条の二を設けたので留意されたい。

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