建設省住指発第八〇五号
昭和五三年一一月七日

特定行政庁建築主事あて

住宅局建築指導課長通達


工事中の建築物の安全確保について


工事中の建築物の安全確保については、昨年一一月一日から施行した建築基準法の一部を改正する法律(昭和五一年法律第八三号)等により一層の強化が図られているところであるが、今般、建築基準法(以下「法」という。)第七条の二の規定の運用に関して仮使用承認準則を別添1のとおり定めるとともに、法第九〇条の三の規定の運用に関して工事計画書及び安全計画書において明示させる事項の具体的な記載例を別添2のとおり作成したので通知する。貴職におかれては、これらを参考にしつつ左記の点に留意して、工事中の建築物の安全確保の一層の推進を図られたい。

第1 法第七条の二の規定の運用について

1 建築物の使用制限を受ける工事中の期間

法第七条の二第一項の規定により建築物の使用制限を受ける期間は、工事の着手から法第七条第三項の検査済証の交付を受けるまでのすべての期間(同条第一項の規定による届出をした日から七日を経過した後を除く。)であるが、増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事の場合には、建築物を使用しない日のみ工事を行い、かつ、建築物を使用しようとする日において、建築基準法施行令(以下「令」という。)第一三条の二に規定する避難施設等の機能が当該工事により支障を受けないといった形態のときは、当該工事を行う日のみを建築物の使用制限を受ける日として取り扱うこと。

2 建築物の使用

建築物の使用とは、人が相当時間継続して建築物に立ち入ることをいうが、現場管理者、工事従事者、管理人、監視員等当該建築物の工事、保守管理等の業務に直接従事する者が当該業務を遂行するために立ち入る場合は、法第七条の二第一項の規定により制限を受ける建築物の使用とは取り扱わないこと。

3 使用制限の対象となる建築物

(1) 使用制限の対象となる建築物の判定は、建築物の棟別に行うこと。

したがって、同一の敷地内に多数の棟がある場合においても法第七条の二に係る工事を行っていない棟は、使用制限の対象とはならないこと。

(2) 法第七条の二第一項の「これらの建築物」には増築等の工事の後において法第六条第一項第一号から第三号までの建築物となるものを含み、「共同住宅以外の住宅及び居室を有しない建築物」とは増築等の工事の前においても増築等の工事の後においても共同住宅以外の住宅又は居室を有しない建築物であるものをいうこと。

4 使用制限の対象となる建築物の部分

法第七条の二の「「避難施設等に関する工事に係る建築物の部分」とは、工事に係る令第一三条の二に規定する避難施設等が機能的に関与している建築物の部分をいい、例えば、避難施設等に関する工事の対象が階段である場合において、建築物が当該階段を含む部分と他の部分とに令第一一七条第二項の区画によって区画されているときは、当該階段を含む部分のみが「避難施設等に関する工事に係る建築物の部分」に該当するものであること。

5 その他

店舗用貸ビル等において、テナントの決定までは内装仕上げ工事に着手しない例がみられるが、法第三五条の二の規定による内装制限の対象となる建築物においては、内装仕上げ工事が完了しない限り、工事が完了したとはいえないこと。
したがって、このような建築物を使用し、又は使用させようとする場合は、法第七条の二第一項第一号の規定による特定行政庁の仮使用の承認を受けなければならないこと。

第2 法第九〇条の三の規定の運用について

法第九〇条の三の規定により届出のあった安全計画書に記載された安全上、防火上又は避難上講ずる措置が当該工事中の建築物の使用の安全を確保するため十分でないと認められる場合は、積極的に改善を指導するとともに、必要に応じて、法第九〇条の二の規定に基づき、当該工事中の建築物の使用禁止、使用制限その他安全上、防火上又は避難上必要な措置を採ることを命ずること。


別添1

仮使用承認準則

第1 審査方針等

(1) 仮使用の承認の審査に当たっては、第二の承認基準に従い、対象となる工事中の建築物について想定される危険要因を具体的に検討し、個々の危険要因に対応した安全対策が適切に講ぜられているか否かを建築物の使用状況等を勘案して総合的な見地から判断すること。
(2) 仮使用の承認の申請の際に提出を求める安全計画書は別記1の様式によるものとし、工事の内容、建築物の用途、構造、規模等により、別記1の様式に記載されている事項では十分でないと認められる場合においては、必要に応じて、報告を求める等所要の措置を講ずること。
(3) 仮使用期間が著しく長くなることは、その期間中に工事の状況が変化することが予想され、工事中の建築物の安全の確保が図れないおそれがある。したがって、仮使用を承認する期間は、原則として、二年以内とすること。

第2 承認基準

1 特定行政庁が承認を行う場合

(1) 新築の建築物等

仮使用の対象が、新築の建築物又は増築工事における増築部分である場合には、次の1)から3)までによるものとする。
1) 仮使用部分は、左記項目について、建築基準法の規定及び消防法の規定にそれぞれ適合していること。

イ 建築基準法施行令(以下「令」という。)第一一二条の防火区画
ロ 令第五章第二節の廊下、避難階段及び出入口
ハ 令第五章第三節の排煙設備
ニ 令第五章第四節の非常用の照明装置
ホ 令第五章第五節の非常用の進入口
ヘ 令第五章の二の特殊建築物等の内装
ト 令第一二九条の一三の三の非常用の昇降機
チ 消防法第一七条の消防用設備等

2) 仮使用部分とその他の部分とは、建築物の構造、用途又は工事内容等に応じて、耐火構造の壁、不燃材料で造られた間仕切り等により、防火上有効に区画されていること。
3) 工事計画に応じて、工事に使用する火気、資材等の管理の方法、防火管理の体制等が適切に計画されていること。

(2) 既存の建築物

仮使用の対象が、増築、改築、移転、大規模な修繕又は大規模な模様替の工事を行う既存の建築物である場合には、次の1)から3)までによるものとする。
1) 仮使用部分は、次のイからホまでに定めるところによること。

イ 令第一一二条第九項および同条第一四項(第九項に係る部分に限る。)の規定に適合していること。ただし、この場合において、防火区画に用いられる防火戸は、同条第一四項第四号に規定する遮煙性能を有さないものであってもよい。
ロ 仮設屋外階段、仮設梯子等が、建築物の形態、使用状況等に応じて適切に設置されている場合を除き、令第一二〇条、第一二一条及び第一二五条第一項の規定に適合していること。
ハ 物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあっては、各階における直通段階の幅員の合計が、その直上階以上の階のうち床面積が最大の階における床面積100m2につき30cmの割合で計算した数値以上確保されていること。
ニ 小規模な居室、バッテリー内蔵型の非常用照明等の設置により床面においておおむね一ルックス程度の明るさが確保されている建築物の部分又は夜間使用がない建築物で十分の明るさを確保できる窓等の開口部が設けられている建築物の部分を除き、令第一二六条の四及び令第一二六条の五の規定に適合していること。
ホ 消防機関において、消防活動上支障がないと認める措置が講ぜられている場合を除き、令第一二六条の六及び令第一二六条の七の規定に適合していること。

2)イ 使用部分とその他の部分とは、建築物の構造、用途又は工事内容等に応じて、耐火構造の壁、不燃材料で造られた間仕切り等により、防火上有効に区画されていること。

ロ 工事施工部分に面する換気、暖房、冷房及び排煙の設備の風道の吹出口等が、鉄板その他の不燃材料で塞がれていること。

3) 工事計画に応じた避難施設等に係る代替措置、工事に使用する火気、資材等の管理の方法、防火管理の体制等が適切に計画されていること。

2 建築主事が承認を行う場合

仮使用部分は、左記項目について現行の建築基準法の規定及び消防法の規定にそれぞれ適合しており、かつ、手直し工事等がある場合は、当該工事が避難施設等の機能に支障を及ぼさないものであること。
イ 令第一一二条の防火区画
ロ 令第五章第二節の廊下、避難階段及び出入口
ハ 令第五章第三節の排煙設備
ニ 令第五章第四節の非常用の照明装置
ホ 令第五章第五節の非常用の進入口
ヘ 令第五章の二の特殊建築物等の内装
ト 令第一二九条の一三の三の非常用の昇降機
チ 消防法第一七条の消防用設備等



別記 〔略〕


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