建設省住指発第六一号
昭和五四年三月三〇日

特定行政庁あて

住宅局建築指導課長通達


建築物の防災対策の推進について

標記については、昭和五四年三月二七日付け建設省住指発第五九号で住宅局長から通知したところであるが、建築物防災対策要綱に基づく措置のうち特定の既存建築物に対する措置の実施に当たっては、更に、左記の事項に留意され、円滑な実施に努められたい。

第1 一般的事項

特定の既存建築物に対する措置の実施に当たっては、著しく保安上危険であると認められる建築物に対しては建築基準法第一〇条第一項の規定を活用するよう住宅局長から通知しているところであるが、同項の措置を講じようとする場合は、事前に勧告を行う等によりその努力を促し、建築物の所有者等が自主的に措置するよう指導に努めること。

第2 対象建築物

特定の既存建築物に対する措置に係る対象建築物の用途、階数及び規模は、建築基準法施行令第一四七条の二に規定する建築物と同様であること。
したがって、対象建築物に該当するかどうかの判断に当たっては、同条の考え方によること。

第3 講ずべき措置

I 措置を講ずべき部分

建築物防災対策要綱は、建築物の火災時における特定の用途に供する部分の利用者等の避難の安全を確保しようとするものであることから、当該利用者等の避難に影響を及ぼすおそれのない部分は措置を講ずべき部分から除かれるものであること。

II 技術的基準の適用

1 基本方針

特定の既存建築物の防災対策に係る技術的基準(以下「技術的基準」という。)の適用に当たっては、既存の建築物に対する措置であることを考慮し、次の点に留意すること。
(1) 建築物防災対策要綱は、建築物の所有者等の自主性に期待しつつ、人命の安全確保に関して最小限必要な措置を講じさせるものであるので、技術的基準の適用に当たっては、みだりに緩和し、又は強化しないこと。
(2) 対象建築物が既存のものであることから、技術的基準の内容によっては、必ずしも技術的基準どおりの措置を講ずることが困難な場合が生ずることが考えられるので、弾力的な運用を図ることが必要であること。

例えば、非常用の開口部が柱及びはりの位置、形状等により技術的基準に定める寸法にわずかに満たない場合に直ちにこれを不適合とするといったような機械的な適用は避けるべきであり、その他技術的基準により難いものについて技術的基準と同等程度の効果を有する方法がある場合には、当該代替方法によることが望ましいこと。

2 技術的基準の解釈等

技術的基準の適用に当たっての解釈等については、次のとおりとする。
(1) 地下街以外の対象建築物の場合

1) 非常時照明対策(技術的基準第一のI関係)

イ 非常時照明対策は、火災が発生した場合に、何らかの明るさを確保することによりパニック状態になることを防ぐとともに円滑な避難ができることを目的としており、照度については規定していないこと。
ロ 技術的基準第1のIの1に規定する措置は、次の(イ)及び(ロ)に規定する措置又はこれらと同等以上の効力を有すると認められる措置であること。

(イ) 照明設備の分電盤を設ける場合にあっては、これを鋼板製(分電盤に計器用窓等を設ける場合は当該部分は網入ガラスとすること。)とし、その内面又は外面に厚さ八mm以上の石綿パーライト板、石綿けい酸カルシウム板又は石こうボードを貼り付けること。ただし、内装仕上げが不燃材料又は準不燃材料でされた廊下等に設ける分電盤にあっては、当該分電盤の内面又は外面に係る措置についてはこの限りでないこと。
(ロ) 照明設備の幹線部分には、次の((イ))、((ロ))又は((ハ))に掲げる措置を講ずること。

((イ)) 昭和四五年建設省告示第一八三〇号第二の第三号及び第四号に規定する防火措置
((ロ)) 下地を不燃材料で造り、かつ、仕上げを不燃材料でした天井の裏面に発泡性防火塗料を塗った鋼製電線管を用いて配線すること。
((ハ)) 厚さ二五mm以上のロックウール保温筒又は厚さ五〇mm以上のグラスウール保温筒で被覆した鋼製電線管を用いて配線すること。

ハ 技術的基準第一のIの三に規定する措置については、非常時照明対策を講ずべき各室において、一方の配線系統が火災により支障が生じても他方の配線系統による照明設備により何らかの明るさが確保されるものであること。

2) たて穴対策(技術的基準第一のII関係)

イ 技術的基準第1のIIの1の(1)(前提条件)の3)の避難誘導措置については、避難誘導体制の確立、消火、通報及び避難の訓練の実施、避難施設等の適切な維持管理、収容人員の管理等についての具体的な措置を記載した避難誘導計画書を提出させ、それによって判断すること。
ロ 技術的基準第1のIIの1の(2)(避難計算の方法)については、次のとおりとすること。

(イ) 避難階が二以上ある建築物については、原則として、各避難者は下方の最寄りの避難階を使用するものとして避難計算を行うこと。(図―1参照)

図―1

(ロ) 避難階又は地上に通ずる直通階段以外の部分階段は、避難計算における階段とは取り扱わないこと。
(ハ) 避難計算においてTo、N、N′、k、Ts、Ni、Ni′、k′及びaは、それぞれ、次の数値を用いること。

To: ホテル又は旅館の用途に供する建築物――300秒

(ただし、宴会場等の用途に供する部分については180秒)

その他の用途に供する建築物――180秒

N: 消防法施行規則第1条に規定する収容人員の算定方法により算定した数値。ただし、物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあっては、延べ面積に0.23(人/m2)を乗じて得た値を収容人員とすることができる。

また、ホテル又は旅館の用途に供する建築物にあっては、通常の使用状態において宴会場等の用途に供する部分を使用する者が宿泊客に限られる場合は当該部分の収容人員を算入しないこととするほか、従業員の交替制がある場合は業務に従事する従業員が最も多いときの従業員数を収容人員に算入される従業員数とすることができる。

N′: 屋上広場については、最上階(物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあっては屋上階及びその直下階)の収容人員数。上空通路、地下連絡路等については、当該上空通路等が設置されている階の収容人員数
k: /n/n−1(nは避難階における階段の本数)
Ts: スプリンクラー設備等の自動消火設備がある場合――540秒

スプリンクラー設備等の自動消火設備が無く、内装が不燃材料、準不燃材料又は難燃材料の場合――360秒
スプリンクラー設備等の自動消火設備が無く、内装が不燃材料、準不燃材料又は難燃材料以外の場合――180秒

Ni: その階についてNと同様の基準により得た収容人員数
Ni′: その階についてN′と同様の基準により得た収容人員数
k′: /n′/n′−1(n′はその階から避難階又は地上に通ずる直通階段の本数)
a: 0.3m2/人

ハ 技術的基準第1のIIの1の(3)(措置の具体的内容)については、次のとおりとすること。

(イ) 1)又は2)で講ずべき措置は、それぞれ1)の(イ)から(ニ)まで又は2)の(イ)から(ニ)までに掲げる措置のいずれかであれば足りること。
(ロ) 1)及び3)中「スプリンクラー設備等の自動消火設備が設置されている場合」には、次の((イ))、((ロ))又は((ハ))に掲げる場合が含まれるものであること。技術的基準第1のIIの2(病院の場合)の(1)及び(2)についても、同様であること。

((イ)) 消防法に規定するスプリンクラー設備等の自動消火設備が任意に設置されているとき
((ロ)) 消防法施行規則第一三条の規定に適合する区画がされているとき
((ハ)) 昭和五〇年七月一〇日付け消防安第七七号消防庁安全救急課長通達「既存防火対象物に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について」、昭和五一年九月二七日付け消防予第七三号消防庁予防救急課長通達「既存の卸売専業店舗に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について」及び昭和五二年一月一〇日付け消防予第五号消防庁予防救急課長通達「既存の病院、診療所等の病室等に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について」によりスプリンクラー設備の代替措置が講じられているとき

(ハ) 1)の(イ)並びに2)の(イ)及び(ロ)の間仕切りに設ける出入口には、これらに規定する防火性能を有する材料で造られた常時閉鎖式又は煙感知器連動閉鎖式の戸を設けたものであること。
(ニ) 1)の(ロ)及び4)の「非常時において人力で閉鎖できるような体制」とは、各防火戸毎に必要に応じて直ちに閉鎖することができる複数の訓練された閉鎖担当者が避難誘導計画書において定められていることであること。

3) 最終避難経路の確保(技術的基準第1のIII関係)

イ 最終避難経路は、避難階以外の各階においてその階の各部分から他の室(通路としての機能を十分果たせるものを除く。)を通過せずに到達することができるように設けること。
ロ 各階の平面形状が著しく長いため又は大きいために一の最終避難経路では安全を確保することが困難である建築物については、個別に検討して必要な措置を講じさせること。
ハ 技術的基準第1のIIIの1(最終避難経路の設置)の(四)中「倉庫、機械室等」とは、倉庫、機械室のほか、ボイラー室、電気室、洗濯室、従業員控室、更衣室、宿直室、リネン室等を含むものであり、「上空通路等」とは、上空通路のほか、地下通路、地下駅のコンコース等安全に他の場所に避難できる通路等で不燃材料で造られているものを含むものであること。
ニ 技術的基準第1のIIIの2(A種階段の構造)中「不燃材料で囲まれた避難上有効な前室」とは、次の(イ)及び(ロ)に適合する構造のもので足りること。なお、A種階段の構造の例は図―2のとおりであること。

(イ) 壁は、耐火構造又は不燃材料(ガラスである場合は網入ガラスに限る。)で造られ、天井の下地及び仕上げが不燃材料で造られていること。ただし、耐火構造又は不燃材料(ガラスである場合は、網入りガラスに限る。)で造られた壁が天井裏まで達している場合にあっては、天井の下地及び仕上げはこの限りでないこと。
(ロ) 出入口には、常時閉鎖式又は煙感知器連動閉鎖式の甲種防火戸若しくは乙種防火戸が設けられていること。

ホ 技術的基準第1のIIIの3(B種階段の構造)のかっこ書中「避難上有効なバルコニー」とは、バルコニーの設置されている各居室の収容人員からみて安全に避難できると考えられるバルコニーをいうこと。なお、B種階段の構造は図―3のとおりであること。

4) 非常用の開口部の確保(技術的基準第1のIV関係)

非常用の開口部の構造は、格子その他の屋外からの進入を妨げるものを有しないものであること。

(2) 地下街の場合

1) 地下道の内装制限(技術的基準第2のI関係)

地下道の壁又は天井の表面に設ける照明器具のカバー等で不燃材料以外のものは、天井面に占める表面積の合計を天井面積の一〇分の一以下とすること。

2) 地下道の末端の階段の幅員の確保(技術的基準第2のIII関係)

技術的基準第二のIII中「その他十分に安全な場所」とは、地下鉄のコンコース等当該場所から地上に安全に避難できる場所をいうこと。

3) 地下道の非常時照明対策(技術的基準第2のIV関係)

四に規定する配線の防火措置は、昭和四四年建設省告示第一七三〇号第一の第五号に規定するものであること。

A種階段の構造

図―2

B種階段の構造

図―3
第4 実施手順

特定の既存建築物に対する措置の実施に当たっては、概ね次の手順によること。
I 対象建築物の有無を調査し、対象建築物について技術的基準に適合するかどうかを検証すること。

また、所管地域における関係行政機関及び関係業界団体に対しても協力を依頼すること。

II 技術的基準に適合しないと認められる対象建築物の所有者等に対し、防災上必要な措置を講ずべき旨を通知すること。
III IIにより通知した所有者等と講ずべき措置の内容について打ち合せること。

講ずべき措置の内容が決定したときは、当該措置に関する計画書を提出させる等によりこれを了知すること。
なお、講ずべき措置の実施に当たって、補助又は融資が必要と認められるものについては、所要の手続きを講ずること。

IV IIIの打合せに当たって、技術的基準の適用が著しく困難である場合、技術的基準以外の措置を講ずることにより技術的基準を適用する場合と同等以上の防災性が確保できると考えられる場合等にあっては、建設省において学識経験者等から成る「建築物防災対策推進懇談会」(仮称)により検討することとしているので、その都度、本職に連絡すること。
V 対象建築物の所有者等が講ずべき措置を実施した場合には、直ちに、その旨を報告させること。

この場合には、速やかに措置が講じられたことを確認すること。

第5 報告

I 対象建築物の概要報告

対象建築物の概要について、別記様式第1により昭和五四年五月末までに本職あて報告すること。

II 措置状況報告

毎年三月末又は九月末における建築物防災対策要綱による措置の実施状況について、別記様式第2によりそれぞれ翌月末までに本職あて報告すること。

第6 その他

建築物防災対策要綱の実施に当たっては、消防機関等関係行政機関との連けいを密にし、十分な協力を得るよう努めること。


様式第1
<別添資料>



様式第2
<別添資料>



〔参考〕

既存防火対象物に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について(抄)

(昭和五〇年七月一〇日)
(消防安第七七号)
(各都道府県消防主管部長あて消防庁安全救急課長通達)
改正 昭和五二年 三月二五日消防予第五一号
火災時における人命の安全を確保するため、昨年六月消防法の一部が改正され、続いて七月には消防法施行令が、一二月には消防法施行規則がそれぞれ改正された。これら消防法令の一連の改正のうち、特に百貨店、地下街、複合用途防火対象物、旅館、病院等不特定多数の者が出入する防火対象物については、消防法第一七条の二第二項第四号、第一七条の三第二項第四号及び改正消防法附則第四項の規定に基づき、既存のものについてもスプリンクラー設備その他の消防用設備等の設置が義務づけられた。すなわち、これら既存の特定防火対象物については、昭和五二年三月又は昭和五四年三月までに、現行の基準に従って設置しなければならないこととなるが、これら既存の特定防火対象物のなかには、スプリンクラー設備等を現行の基準に従って設置することが構造上困難であるものが見受けられること等特殊な状況があること等を勘案して、この際、既存防火対象物に対し、消防法施行令第三二条の規定を適用する場合の特例基準を左記のとおり定めたので、この旨管下市町村に対しても示達され、よろしく御指導願いたい。
第1 防火対象物の用途別による特例措置

1 旅館、ホテル等(消防法施行令(以下「令」という。)別表第一(五)項イに掲げる防火対象物)

(1) 主要構造部が耐火構造である旅館、ホテル等においてバルコニー等(異なる防火区画相互を連結しているもの又は避難階若しくは地上に通ずる階段若しくは避難器具が設けられているものに限る。)に直接面している居室(地階、無窓階及び一一階以上の階に存するものを除く。)で、次のアからウまでに該当する場合、当該居室及びこれに面する廊下(壁及び天井(天井のない場合にあっては、屋根。以下同じ。)の仕上げが不燃材料又は準不燃材料でしたものに限る。)の部分については、スプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。

ア 四〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の壁、床又は防火戸で区画されていること。
イ 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは、消防法施行規則(以下「規則」という。)第一三条第一項第一号イの規定に適合するもの(防炎液、防炎壁紙等で表面処理する等の難燃措置を施したものを含む。以下(2)及び(3)において同じ。)であること。ただし、アの区画面積を一〇〇平方メートル以内とした場合の当該部分にあっては、この限りでない。
ウ アの防火戸は、規則第十三条第一項第一号ハの規定に適合するものであること。

(2) 旅館、ホテル等(主要構造部が耐火構造でないもの並びに地階、無窓階及び一一階以上の階の部分を除く。)の宿泊室、会議室その他これらに類する室及びこれらに面した廊下の部分で、次のアからエまでに該当するものについては、スプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。

ア 四〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の床、壁又は防火戸で区画されていること。
イ 壁及び天井の仕上げは、規則第一三条第一項第一号イの規定に適合するものであること。

ただし、アの区画面積を一〇〇平方メートル以内とした場合の当該部分にあっては、この限りでない。

ウ 区画する壁及び床の開口部は、規則第一三条第一項第一号ロに適合するものであり、当該開口部には、規則第一三条第一項第一号ハの規定に適合する甲種防火戸又は乙種防火戸が設けられていること。ただし、廊下の避難経路となる部分の開口部にあっては、当該開口部に規則第一三条第一項第一号ハに適合する甲種防火戸(防火シャッターを除く。)が設けられる場合に限り、当該開口部の面積の合計を一〇平方メートル以下とし、かつ、一の開口部の面積を五平方メートル以下とすることができる。
エ 建築基準法施行令第一一二条第九項及び第一五項の規定による区画がなされていること。

(3) 旅館、ホテル等(主要構造部が耐火構造でないもの並びに地階、無窓階及び一一階以上の階の部分を除く。)の広間、(宴会場、舞台等を含む。)ロビー、食堂(厨房、配膳室等を除く。)及びこれらに面した廊下の部分(以下「広間等」という。)で、次のアからケまでに該当するものについては、スプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。

ア 耐火構造の壁、床又は防火戸で区画されていること。
イ 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは、規則第一三条第一項第一号イの規定に適合するものであること。
ウ 区画する壁及び床の開口部には、規則第一三条第一項第一号ハの規定に適合する防火戸(廊下の避難経路となる部分の開口部に設けるものにあっては、防火シャッターを除く。)が設けられていること。
エ 広間等から二以上の異った経路により避難することができるものであること。
オ 広間等に設ける自動火災報知設備の感知器は、規則第二三条第四項第一号ニに掲げる場所を除き、煙感知器であること。
カ 建築基準法施行令第一一二条第九項及び第一五項の規定による区画がなされていること。
キ 露出配線は、不燃材料で被覆されていること等延焼防止上有効な措置が講じられていること。
ク 広間等に使用されているカーテン、幕等の防炎対象物品の防炎性能及び防炎表示は適正であること。
ケ 広間等には、プロパンガスボンベの持ち込みが禁止されていること、夜間の見廻りが十分行われていること等防火管理体制が徹底していること。

(4) 旅館、ホテル等の居室で、当該居室の壁の一辺の長さが七・二メートル以下であるものにおいて、次のアからエまでに定めるところにより側壁型の閉鎖型スプリンクラーヘッド(以下「側壁型ヘッド」という。)を用いるスプリンクラー設備を設置したときは、当該側壁型へッドの有効範囲内の部分にあっては、令第十二条の技術上の基準に従ってスプリンクラー設備を設置したものとみなしてさしつかえないものであること。

ア 側壁型ヘッドは、その相互の設置間隔を、水平距離で三・六メートル以下とし、かつ、当該側壁型ヘッドを取り付ける壁と交わる両側の壁の接続部分から当該側壁型ヘッドまでの水平距離が一・八メートル以下となるように設けること。
イ 側壁型ヘッドは、当該側壁型ヘッドを取付ける壁面から一五センチメートル以内に設けること。
ウ 側壁型ヘッドのデフレクターは、天井面から一五センチメートル以内に設けること。
エ その他規則第一四条第一項の規定に準じて設けること。

2 病院、診療所等(令別表第一(六)項イに掲げる防火対象物)

(1) 病室及びこれに準ずる室並びにこれらに面する廊下の部分(以下「病室等」という。)については、スプリンクラー設備等を設けないことができるものとすること。

なお、スプリンクラー設備等を設けない場合における防火対策については、今後当庁と厚生省及び文部省とが協議するものとしていること。

(2) (1)の病室等以外の部分(主要構造部が耐火構造でないもの並びに地階、無窓階及び一一階以上の階に存するものを除く。)については、一(1)又は(2)の例によるほか、一(4)アからエまでに定めるところにより側壁型ヘッドを用いるスプリンクラー設備を設置したときは、当該側壁ヘッドの有効範囲内の部分にあっては、令第一二条の技術上の基準に従ってスプリンクラー設備を設置したものとみなしてさしつかえないものであること。
(3) 精神病院のうち重症患者を収容する病棟又は病室については(1)又は(2)の例によるほか、当該部分における消防用設備等に関する基準の特例について、別途通達する予定であること。

3 複合用途防火対象物(令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物)

(1) 複合用途防火対象物のうち、令第八条の規定により区画された部分で、当該部分に消防法(以下「法」という。)第一七条の二第二項第四号に規定する特定防火対象物(以下「特定防火対象物」という。)の用途に供されているものが存しない場合、当該部分(地階、無窓階及び一一階以上の階の部分を除く。)については、消防用設備等(法第一七条の二第一項中かっこ内に定める消防用設備等を除く。)に関する基準を適用しないものとしてさしつかえないものであること。
(2) 令第一二条第一項第二号の複合用途防火対象物(非特定用途部分の床面積の合計(廊下等の共用部分は按分による。)が当該防火対象物の延べ面積の八〇パーセント以上のものに限る。)で特定防火対象物の用途に供される部分が存しない階(地階、無窓階及び一一階以上の階の部分を除く。)について、規則第一三条第二項第一一号の規定を適用する場合、同号中「四〇〇平方メートル」とあるのを次のアに該当するものにあっては「八〇〇平方メートル」と、ア及びイに該当するものにあっては「一五〇〇平方メートル」と読み替えて適用してさしつかえないものであること。


(ア) 当該防火対象物には、避難階段又は特別避難階段が二以上存する等(一(1)のバルコニー等を含む。)各階から地上又は避難階への避難経路が二以上であること。
(イ) 避難階から出火した場合に(ア)の避難階段等から屋外への出口までの経路が避難上著しく支障となる恐れのあるものについては、当該避難階にスプリンクラー設備が設けられていること。
(ウ) 建築基準法施行令第一一二条第九項及び第一五項の規定による区画がなされていること。


(ア) 当該防火対象物(床面積一〇〇平方メートル以内毎に耐火構造の床、壁、甲種防火戸又は乙種防火戸で区画されている部分を除く。)の壁及び天井の仕上げは、規則第一三条第一項第一号イの規定に適合するものであること。
(イ) 特定防火対象物の用途に供される部分が存する階と存しない階とは、耐火構造の床、壁又は規則第一三条第一項第一号ハに規定する甲種防火戸で区画されていること。

4 地下街(令別表第一(一六の一)項に掲げる防火対象物)等

(1) 令第九条の二の規定により地下街と一体をなすものとみなされる防火対象物の地階に対して適用されるスプリンクラー設備、自動火災報知設備及び非常警報設備に関する基準のうち音響警報装置に係る部分については、当該地階及び地下街の受信部若しくは受信機又は増幅器及び操作部が設置されている場所に常時人がおり、相互に同時に通話することができる設備を設けた場合は、相互で音響警報装置を連動しないものでもさしつかえないものであること。
(2) 壁及び天井の仕上げを不燃材料で造っている部分(厨房等火気を使用する設備又は器具を設置する部分にあっては、壁及び天井の仕上げを不燃材料で造っており、かつ、当該火気使用設備、器具の排気用ダクト(当該厨房等の専用とされ、他への影響の恐れのないものを除く。)部分に有効な自動消火装置を設けた部分)におけるスプリンクラーヘッドの間隔は、改正前の基準に適合している場合は、規則第一四条第三項第二号の規定に適合しているものとみなしてさしつかえないものであること。
(3) 地下道部分が建築基準法施行令第一二八条の三第一項各号に適合し、かつ、当該地下道部分に商品等を存置することがないよう管理されている場合は、当該部分にスプリンクラーヘッドを設置しないことができるものであること。

第2 消防用設備等の種類に応じた特例措置

2 スプリンクラー設備

(1) 令第一二条第一項各号に該当する防火対象物又はその部分で主要構造部が木造であるものは、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、非常警報設備、避難器具及び誘導灯が令第一一条第二一条及び第二四条から第二六条までの基準に従って設置され、当該防火対象物の居室の部分から二以上の異った経路により有効に避難できると認められ、かつ、当該木造部分と木造以外の部分とが延焼防止上有効に区画されている場合は、当該木造部分にスプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。
(2) 加圧送水装置及び配管

加圧送水装置及び配管は、スプリンクラーヘッドの先端における放水圧力及び放水量をそれぞれ一キログラム毎平方センチメートル以上で、八〇リットル毎分以上とする性能を有するものであり、かつ、規則第一四条第一項第一一号(規則第一二条第七号イ(ロ)、ロ(ハ)又はハ(ホ)の規定の例による部分に限る。)に適合する場合は、規則第一四条第一項第一〇号及び第一一号の規定に適合するものとみなしてさしつかえないものであること。

(3) 水源水量

水源水量は、昭和四九年一二月三一日現在の規則第一四条第三項第一号の規定に適合している場合で、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に双口形の送水口が附置されているときは、規則第一四条第四項第一号の規定に適合しているものとみなしてさしつかえないものであること。

(4) 流水検知装置

流水検知装置は、末端試験弁を操作し試験用放水口より放水したときに、警報を発するか又は警報を発するとともに加圧送水装置を正常に起動させることができる場合は、規則第一四条第一項第四号ロの規定にかかわらず流水検知装置の規格(昭和四八年消防庁告示第五号)に適合するものとみなしてさしつかえないものであること。

(5) 制御弁

制御弁は、配管の系統ごとに設置されている場合は、規則第一四条第一項第三号イの規定に適合しているとみなしてさしつかえないものであること。

(6) 呼水装置、非常電源及び操作回路の配線スプリンクラー設備の呼水装置、非常電源及び操作回路の配線(注参照)は、屋内消火栓設備における規定と同様に取り扱ってさしつかえないものであること。なお、水噴霧消火設備及び泡消火設備についても同様とする。

既存の卸売専業店舗に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について

(昭和五一年九月二七日)
(消防予第七三号)
(各都道府県消防主管部長あて消防庁予防救急課長通達)
昭和四九年六月の消防法の一部改正に伴い昭和五二年三月三一日又は昭和五四年三月三一日までに現行の基準に従って消防用設備等の設置を義務づけられた既存の特定防火対象物については「既存防火対象物に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について」(昭和五〇年七月一〇日付消防安第七七号)等で取扱いの基準を定め、全国においてはこれらに基づき既に改善指導されているところであるが、消防法施行令(以下「令」という。)別表第一(四)項に掲げる既存の防火対象物で百貨店(延べ面積が一、〇〇〇平方メートル以上の小売店舗を含む。)以外の物品販売業を営む店舗のうち物品の卸販売を専業とする店舗(以下「卸売専業店舗」という。)については、防火対象物の利用形態その他が一般の店舗と異なる特殊な状況にあること、スプリンクラー設備等を現行の基準に従って設置することが構造上困難となるものが見受けられること等を勘案して令第三二条の運用基準を左記のとおり定めたので、その運用について格段の配慮をされるとともに管下市町村にもこの旨示達のうえよろしくご指導願いたい。
第1 特例基準の適用範囲

1 卸売専業店舗とは、利用者が卸売業、小売業等を営む特定の者に限られ、かつ、取扱い商品が限定されているものでもっぱら商品の卸販売のみを営む店舗をいい、一般消費者を対象とした販売を兼ねているものは含まないものであること。
2 卸売専業店舗の主たる用途に供される部分としては、「令別表第一に掲げる防火対象物の取り扱いについて」(昭和五〇年四月一五日付消防予第四一号、消防安第四一号各都道府県消防主管部長あて消防庁予防課長、消防庁安全救急課長通達)(以下「令別表第一通達」という。)の別表中(四)項の(イ)欄に掲げられる用途の部分その他これらに類するものが該当し、一般的には売場、商品陳列場、荷さばき場、検品場、商品堆積場、商談室、事務室等がこれに含まれる。防火対象物内に存するこれらの部分がもっぱら卸売専業店舗の主たる用途に供される部分として使用される場合については、当該防火対象物は令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物としてではなく令別表第一(四)項に掲げる防火対象物(商談室及び事務室のみによって構成される場合等、令別表第一(十五)項に掲げる防火対象物等に該当するものは除く。)として取り扱うものであること。
3 「令別表第一通達」により令別表第一(四)項に掲げる防火対象物(卸売専業店舗に限る。)に該当するものと判定されたものに存する卸売専業店舗の主たる用途に供される部分以外の部分についても本通達を適用してさしつかえないものであること。

第2 特例基準

令第一二条第一項第二号、第三号又は第八号の規定に基づきスプリンクラー設備を設置しなければならない卸売専業店舗(主要構造部が耐火構造でないもの及び一一階以上の階の部分を除く。)については、次の各号に該当する場合は当該部分にスプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。
1 八〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の壁、床又は防火戸で区画されていること。
2 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは、消防法施行規則(以下「規則」という。)第一三条第一項第一号イの規定に適合するもの(防炎液、防炎壁紙等で表面処理する等の難燃措置を施したものを含む。)であること。ただし、一の区画面積を二〇〇平方メートル以内とした場合にあってはこの限りでない。
3 区画する壁及び床の開口部は、規則第一三条第一項第一号ロの規定に適合するものであり、当該開口部には規則第一三条第一項第一号ハの規定に適合する甲種防火戸(廊下と階段とを区画する部分以外の部分の開口部についても当該規定にかかわらず防火シャッターを除かないものとする。)又は乙種防火戸が設けられていること。ただし、避難経路となる部分の開口部に上記の甲種防火戸(防火シャッターにあっては、当該シャッターに近接して規則第一三条第一項第一号ハ(ロ)の規定に適合する甲種防火戸を付置しているものに限る。)が設けられる場合にあっては、当該開口部の面積の合計を二〇平方メートル以下とし、かつ、一の開口部の面積を一〇平方メートル以下とすることができる。
4 建築基準法施行令第一二〇条及び第一二一条の規定に適合する避難階段等が設けられていること。
5 避難階における屋外への出入口については建築基準法施行令第一二五条の規定に適合するものであること。
6 売場又は商品陳列場が存する階のうち、当該売場又は商品陳列場の床面積が一五〇平方メートル以上のものにあっては、一、二メートル(売場又は商品陳列場の床面積が六〇〇平方メートル以上のものにあっては一・八メートル)以上の幅員の主要避難通路が屋外へ通ずる避難口又は階段に直通して避難上有効に一以上確保されていること。
7 当該部分の存する階における廊下、階段その他避難上有効な通路の床面積の合計が、地階又は無窓階にあっては当該階の床面積の五〇パーセント以上、その他の階にあっては四〇パーセント以上であること。
8 当該卸売専業店舗に設ける消火器の能力単位の数値は、規則第六条に定める数値の一・五倍とするほか各階に設ける消火器の能力単位の数値の合計数の二分の一以上は水系の消火器(水消火器、酸アルカリ消火器、強化液消火器又は泡消火器)とすること。
9 建築基準法施行令第一一二条第九項及び第一五項の規定による区画がなされていること。
10 露出配線は、不燃材料で被覆されていること等延焼防止上有効な措置が講じられていること。
11 当該卸売専業店舗内に使用されているカーテン、幕、展示用合板等の防炎対象物品の防炎性能及び防炎表示は適正であること。
12 当該卸売専業店舗内には、プロパンガスボンベや裸火の持込み及び使用が禁止されている等防火管理体制が徹底していること。

既存の病院、診療所等の病室等に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について

(昭和五二年一月一〇日)
(消防予第五号)
(各都道府県消防主管部長あて消防庁予防救急課長通達)
「既存防火対象物に対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について」(昭和五〇年七月一〇日付消防安第七七号)第12(1)に定める特例基準を適用する場合必要とされる防火対策を左記のように定めたので、その運用について格段の配慮をされるとともに管下市町村にもこの旨示達のうえよろしくご指導願いたい。
なお、本件は関係各省と調整済みであることを念のため申し添える。
病院、診療所等(主要構造部が木造であるものを除く。以下同じ。)の病室等で、消防法施行令(以下「令」という。)第一一条及び第一二条の規定に基づき屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備を設置しなければならない防火対象物又はその部分については、次の1から10までに該当する場合には当該部分に屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備を、1から5まで及び7から10までに該当する場合には当該部分にスプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。
また、病院、診療所等の病室等で、スプリンクラー設備の設置は義務づけられていないが、令第一一条の規定に基づき屋内消火栓設備を設置しなければならない防火対象物又は、その部分については、1、4、6、7、9及び10に該当する場合は当該部分に屋内消火栓設備を設置しないことができるものであること。
1 一、五〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の壁、床又は防火戸で区画されていること。
2 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げは、消防法施行規則(以下「規則」という。)第一三条第一項第一号イの規定に適合するもの(防火薬液、防炎壁紙等で表面処理する等の難燃措置を施したもの(「内装材の難燃措置に関する取扱いについて」(昭和五一年九月三日付け消防予第六三号)に定める基準に適合するものをいう。)を含む。)であること。

ただし、1の区画面積を四〇〇平方メートル以内とした場合又は煙感知器を設置した場合の当該部分にあっては、この限りでない。

3 区画する壁及び床の開口部には、規則第一三条第一項第一号ハの規定に適合する防火戸(廊下の避難経路となる部分の開口部に設けるものにあっては、防火シャッターを除く。)が設けられていること。
4 建築基準法施行令(以下「建基令」という。)第一二〇条及び第一二一条の規定に適合する避難階段等が設けられていること。
5 病室等に設ける自動火災報知設備の感知器は、規則第二三条第四項第一号ニに掲げる場所を除き煙感知器又は規則第二三条第六項第一号に定める熱感知器であること。
6 病室等に設ける消火器の能力単位の数値は、規則第六条に定める数値の一・五倍とするほか、各階に設ける消火器の能力単位の数値の合計数の二分の一以上は水系の消火器(水消火器、酸アルカリ消火器、強化液消火器又は泡消火器)とすること。
7 建基令第一一二条第九項及び第一五項の規定による区画がなされていること。
8 露出配線は、不燃材料で被覆されていること等延焼防止上有効な措置が講じられていること。
9 病室等に使用されているカーテン等の防炎対象物品の防炎性能及び防炎表示は適正であること。
10 夜間の見廻りが十分行われていること等防火管理体制が徹底していること。


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