住指発第九六号
昭和五六年五月一日

建設省住宅局建築指導課長から各特定行政庁建築主務部長あて

通達


建築基準法施行令の一部改正(構造計算関係)について


標記については、昭和五五年九月一八日付け建設省住指発第二三一号をもって住宅局長から各都道府県知事あて通知したところであるが、改正後の建築基準法施行令(以下「令」という。)中第三章第八節構造計算に関する規定についての細目及び運用の方針は左記のとおりであるので、今後の施行に遺憾のないよう措置されたい。

第一 総則関係(第一款)

一 適用(第八一条)

(一) 高さの取扱い

今回の改正に伴い、建築物の高さにより、適用される構造計算の原則についての規定が異なることとなったが、これらの規定の適用にあたっての建築物の高さは、令第二条第一項第六号に定めるところによるものとする。

(二) 各規定の適用の選択

高さが三一m以下のものについては、令第八二条の三に替えて令第八二条の四の規定によることは差支えない。同様に「木造建築物等」の対象となる規模等の建築物で、令第八二条の二及び令第八二条の三又は令第八二条の二及び令第八二条の四の各規定によったものは、「木造建築物等」としての基準を満たすことは要しないので留意されたい。
また、構造計算を張り間方向及びけた行方向のように二方向以上について行う場合、それぞれの方向について異なる規定を適用することも妨げないものとする。

(三) 適用の範囲

本節の規定は、令第三九条の二の規定の適用対象である屋上から突出する水槽等については適用されない。また、建築基準法(以下「法」という。)第八八条の規定により、法第二〇条の規定を準用する工作物についても、一律に適用されるべきものではないので留意されたい。

(四) 適用の特例

本条第二項の規定により、エキスパンションジョイントその他の構造方法のみで接している部分相互は、本節の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなすこととしているが、エキスパンションジョイントを用いる場合以外には、それぞれの部分相互の挙動に及ぼす影響が全体からみて無視しうる場合に、本規定の適用があるものとする。
また、増築等に際し、既存の部分と接する部分が前記に該当する場合にも本規定を適用し、別棟扱いして差支えないものとする。

二 高さが六〇mを超える建築物の特例(第八一条の二)

高さが六〇mを超える建築物については、建設大臣の認める構造計算によることとしているが、この認定は個別に、建設省令に定める手続により行うものとする。詳細については、別途通知するが、従来の取扱いとの差異に留意されたい。

第二 構造計算の原則関係(第一款の二)

一 応力度等(第八二条)

本規定については、従来の取扱いと格段の変更はない。ただし、剛性等については十分に留意することとし、特に令第八二条の二から令第八二条の四までの規定との整合性の確保を期することとされたい。

二 木造建築物等の取扱い

令第八二条の二から令第八二条の四までの規定の適用を除外される「木造建築物等」のうち木造以外の構造の建築物については、昭和五五年建設省告示第一七九〇号をもって定めているところである。同告示の運用については別記一を参照されたい。

三 層間変形角(第八二条の二)

(一) 適用

本規定の適用にあたっての層間変位は、階全体として算出して差支えないものとする。

(二) 緩和の取扱い

二〇〇分の一の規制値をかっこ書により緩和するにあたっては、次の点に留意されたい。
1) 緩和は原則として実験又は計算により安全が確かめられた数値までとする。
2) 金属板、ボード類その他これに類する材料で仕上げられているものについては、前記にかかわらず、一二〇分の一まで緩和して差支えない。

四 剛性率、偏心率等(第八二条の三)

(一) 剛性率及び偏心率の算出にあたっては、特に各部材の剛性を適切に評価すること。
(二) その他建設大臣が必要があると認めて定める基準については、昭和五五年建設省告示第一七九一号によって定めているところである。同告示の運用については、別記二を参照されたい。

五 保有水平耐力(第八二条の四)

(一) 定義

建築物の各階における保有水平耐力は、当該建築物の一部又は全体が地震力の作用によって崩壊メカニズムを形成する場合(特定の部材の破壊により鉛直荷重によって局部的な崩壊を生ずる場合を含む。)において、各階の柱、耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和として求められる値とする。

(二) 保有水平耐力の計算の原則

1) 保有水平耐力の算定にあたっては、極限解析法等の精算によるほか、算定対象構造に応じて節点振り分け法や仮想仕事の原理を用いた方法等を採用してよい。
2) 一部の階が先行して崩壊メカニズムを形成するような場合、外力の分布に応じてその時点で他の階に生じている地震層せん断力をもって、当該階の保有水平耐力とすることとなるが、このような場合に想定する外力の分布は、原則として令第八八条の規定によるものとする。保有水平耐力算定時に想定する外力の分布についても同様とするが、この場合には解析方法の特性等により適宜修正して差支えない。
3) 崩壊メカニズムの形成時において、建築物の各部に生ずる応力は、いずれの部分においても当該部材の終局耐力を超えないものとする。ただし、接合部については、崩壊メカニズムの形成条件等により接合部以外の部分の塑性化が接合部の破断に先行することが明らかな場合においてはこの限りでない。この場合における各材料の終局耐力は原則として当該部材を構成する材料について、令第三章第八節第四款に規定する材料強度に基づいて算出する。
4) 3)に掲げる場合のほか、耐力壁等については基礎の浮上り終局耐力についての検討を要するものとする。この場合において、浮上り終局耐力は、くいの引抜耐力等実況に応じて算出するものとする。ただし、張り間方向の短い壁式構造等の建築物で、建築物全体の転倒モーメントによる浮上りによって終局耐力が支配される場合には、その浮上りがないものとして崩壊メカニズムの形成を想定して差支えないものとする。

(三) 必要保有水平耐力

各階の必要保有水平耐力はQun=Ds Fes Qudで算出することとしているが、このうちDs及びFesについては、算出方法を昭和五五年建設省告示第一七九二号に規定している。同告示の運用については別記三を参照されたい。

第三 荷重及び外力関係(第二款)

一 風圧力(第八七条)

風圧力については、速度圧の算定式及び風力係数の一部を変更しているが、その他の事項については従来どおり取扱われたい。

二 地震力(第八八条)

(一) 地上部分の地震力

地上部分の地震力については、地震層せん断力係数により地震層せん断力(当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力)を求めるよう変更を行っている。この地震層せん断力係数はCi=ZRtAiCoで算出することとしているが、このうちZの数値Rt及びAiを算出する方法並びに地盤が著しく軟弱な区域を指定する基準は昭和五五年建設省告示第一七九三号で定めている。同告示の運用については別記四を参照されたい。
なお、屋上から突出する水槽、煙突その他これらに類するものについては、令第三九条の二の規定に基づく告示によって地震等に対する安全性を確保することとなるが、この場合に想定する地震力と本規定による地震力とは別個のものであるので留意すること。

(二) 地下部分の地震力

地下部分に作用する地震力は、水平震度を用いて算出することとしたが、地下部分の地震層せん断力は、原則として水平震度により計算した地震力によるものと、地上部分から伝わる地震層せん断力とを加えて求めることとなるので留意されたい。また、地下部分とは、地階であるか否かにかかわらず、計算にあたって振動性状等を勘案して地下部分とみなすことができる部分とすることとする。

第四 許容応力度及び材料強度関係(第三款及び第四款)

一 許容応力度

これまで令及び法第三八条の規定に基づく告示で規定していたものを、今回の改正によって令及び令に基づく告示という形に変更している。関連する告示は、昭和五五年建設省告示第一七九四号(鋼材料の基準強度)、同第一七九五号(高力ボルト接合)及び同第一七九九号(特殊な許容応力度)である。令第九二条の規定に基づく告示(溶接の作業条件を定める件)については、制定次第通知するのであわせて留意の上運用されたい。

二 材料強度

新設の規定であるが、基本的な構成は許容応力度に関する規定と同一である。なお、鋼材及び溶接部の基準強度については、それぞれ鋼材の日本工業規格に適合する場合は、告示に掲げる数値の一・一倍まで等の数値とすることができることとしているが、この規定の適用にあたっては、実験資料、ミルシート等の提出を求める等必要な措置を講ずることとされたい。

第五 その他

一 従来、法第三八条に基づく建設大臣の認定の対象として取扱いを行ってきた高層建築物については、今回の改正に伴い、高さが六〇mを超えるものを除いて建設大臣の認定を要しないこととなったが、構造計画について慎重に配慮しなければならないことはもちろんであるので、(財)日本建築センターの「高層建築耐震計算指針(案)」(昭和五二年六月)等を参考として指導を進めるほか、高さがおおむね四五mを超えるものについては、いまだ十分な実績もないことから、建築物の構造審査にあたっての判定が困難なものについては、(財)日本建築センター等の審査機関を利用すること等についても考慮されたい。
二 第一から第四までに掲げる事項については、各規定の運用等に関し、更に具体的な判断を要する場合が考えられるが、このような判断の目安として適当と思われる「構造計算指針・同解説」が、(財)日本建築センターから発刊されているので、行政上の参考とされたい。なお、同指針中、数式、数値等の取扱いについては、各規定の趣旨を踏まえ、弾力的に運用するものとされたい。


別記1 木造建築物等の取扱いについて

〔1〕 第3号への取扱い

筋かいの端部及び接合部は、下記1)〜5)の破断形式について原則として当該筋かい軸部の全断面が降伏するまで破断しないことを、次の式により確認するものとする。
Aj・σu≧1.2Ag・F
ここに、Aj:接合部の破断形式に応じた接合部の有効断面積(cm2)

σu接合部の破断形式に応じた接合部の材料の破断応力度(kg/cm2)
Ag:筋かい材の全断面積(cm2)
F:筋かい材の基準強度(kg/cm2)

上式における破断応力度σuは各破断形式に対応する接合要素の引張り強さの下限の値を用いるものとする。(例 SS41のσuは4100kg/cm2)
また、Aj・σuは、以下に掲げる破断形式に応じて計算される数値のうち、最も小さくなる場合の数値を採るものとする。
1) 筋かい軸部で破断する場合
2) 接合ファスナーで破断する場合
3) ファスナーのはしあき部分で破断する場合
4) カセットプレートで破断する場合
5) 溶接部で破断する場合

〔2〕 第4号ロの取扱い

Aw・Acの算定基準
(1) 耐力壁の断面積(Aw)のとり方

1) 計算に算入する耐力壁は、令第78条の2第1項又は同第2項の規定を満たす構造でなければならない。
2) Awとしては、壁式及び壁式プレキャスト構造の場合を除き柱、はりから成る架構の内に、一体として打設された壁の内法部分の水平断面積をとる。
3) 耐力壁に開口がある場合にはその開口が次式を満たす程度の場合には、その壁面を耐力壁と見なすことができるものとする。もちろんこの場合、必要な開口補強がなされていなければならない。この場合Awは開口部がある高さにおける水平断面積とする。

Max(√((ho×lo)/(h×l)),lo/l)≦0.4

ここで、ho:開口部の高さ

lo:開口部の長さ
h:壁板周辺のはり中心間の距離
l:壁板周辺の柱中心間の距離

図1―1 開口のある耐力壁

4) 上記2)及び3)にかかわらず、長さが45cm以上で、かつ、その長さがその部分の接する開口部の高さの30%以上であるそで壁付き柱のそで壁部分については耐力壁の水平断面積に算入してよい。
5) 計算しようとする方向からθ傾いた架構の中に含まれる壁については、上記2)から4)によって得られる値に対しては便宜的にCOS2θを乗じた値をAwとしてよい。

(2) 柱の水平断面積(Ac)のとり方

1) 柱の水平断面積は仕上げの厚さを含まず、構造躯体そのものの水平断面積をとる。
2) 耐力壁の周辺柱や耐力壁の中にくみこまれて一体となっている柱についても、それらを柱として扱う。
3) 斜柱の場合は、その傾いた軸に直角に測った断面積をとる。
4) 1本の柱の水平断面積が1つの階で高さにより異なる場合は、最小となる水平断面積をとる。
5) 計算しようとする方向から傾いた架構の中に含まれる柱についても、上記1)〜4)によってよい。

(3) その他の壁について

(1)の3)及び4)に該当しない架構内のその他の壁部分及び架構外の厚さ10cm程度以上で、かつ、長さ100cm程度以上の鉄筋コンクリート造の壁(いずれも上端及び下端が構造耐力上主要な部分に緊結されたものに限る。)については、Acに導入してもよい。ただし、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合でも、これらの壁の水平断面積に乗じる数値は7とする。

〔3〕 その他

木造建築物等としての取扱いをうける建築物は、剛性率、偏心率等の検討を義務づけられてはいないが、応力度等の計算において柱、壁等の配置のつり合いについて十分に配慮するものとする。特に併用構造については、それらの剛性等の性状を十分に考慮すること。



別記2 昭和55年建設省告示第1791号の取扱いについて

〔1〕 全般的事項

(1) 併用構造の取扱い

階ごとに構造種別が異なる場合には、各階がそれぞれ該当する第1又は第2の規定を適用してもよい。

(2) 第2各号の取扱いについて

同一建築物について、第2第1号から第3号までの規定のうち複数の規定を各階それぞれに適用することは、原則として好ましくない。やむを得ず併用する場合にあっては、相互の影響、性状の差異等に十分留意すること。

〔2〕 第1(鉄骨造の建築物等に関する基準)関係

(1) 第1号の運用(応力割増しの取扱い)

応力の割増しを行う場合にあっては、原則として当該階に含まれるすべての部材を対象とするものとする。なお、必要に応じて当該割増しの下階等への影響を考慮するものとする。

(2) 第2号の運用(筋かい端部)

筋かいの端部及び接合部の取扱いは、昭和55年建設省告示第1790号の運用に準ずる。

(3) 第3号の運用

1) 措置の対象

本号の規定により構ずべき措置は、剛接架構の柱及びはりの仕口についてはその仕口の接合部の強度の検討、曲げを受ける柱及びはりについては局部座屈に対する検討とする。
((イ)) 柱及びはりの仕口の接合部強度の確保

剛性架構の柱及びはりの仕口の接合部は、当該柱又ははりが必要に応じた塑性変形を生ずるまで破断しないよう十分な強度を確保すること。

((ロ)) 局部座屈防止の検討

曲げを受ける柱及びはりの局部座屈の検討は部材の塑性化が想定される領域(材端からl/10又は2d以上までの部分程度)について行うものとし、部材が必要に応じた塑性変形を生ずるまで当該部分に局部座屈が生じないことを確かめること。このため部材断面を構成する板要素の幅厚比が、当面原則として表2―1の数値を満たす必要があるものとする。
ただし、リブ等の補剛によってこれと同等以上の性能を有することが確かめられた場合にはこの限りでない。
(ここでl:柱又ははりの長さ、d:部材の最大せい)

表2―1

部材
断面
部位
 
鋼種(注)
幅厚比
 
 
 
 
 
 
標準値
当面の緩和値
H形鋼
フランジ
 
400級
9.5
12
 
 
 
 
490級
8
10
 
 
ウェブ
 
400級
43
45
 
 
 
 
490級
37
39
 
角形鋼管
 
 
400級
33
37
 
 
 
 
490級
27
32
 
円形鋼管
 
 
400級
50
70
 
 
 
 
490級
36
50
はり
H型鋼
フランジ
 
400級
9
11
 
 
 
 
490級
7.5
9.5
 
 
ウェブ
 
400級
60
65
 
 
 
 
490級
51
55
(注)

400級:SS400、SM400A、SM400B、SM400C、SMA400AW、SMA400AP、SMA400BW、SMA400BP、SMA400CW、SMA400CP、SN400B、SN400C、STK400、STKR400
490級:SM490A、SM490B、SM490C、SMA490AW、SMA490AP、SMA490BW、SMA490BP、SMA490CW、SMA490CP、SM490YA、SM490YB、SN490B、SN490C、STK490、STKR490
SS490、SS540、SM520B、SM520Cにあっては、H形鋼及び角形鋼管では√(2400/F)を、円形鋼管では2400/Fを、400級の幅厚比に乗じた値とする。
ただし、Fは当該鋼種の基準強度(単位1cm2につきキログラム)である。

 
 
 
 
 
 

2) その他の措置

1)に定めるもののほか、必要に応じて急激な耐力低下の防止に留意すること。

3) 適用の除外

令第82条の規定による計算で、風圧力による層せん断力が地震による層せん断力に対して十分に大きい場合は、1)による措置については検討しなくてもよいものとする。

〔3〕 第2(鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物等に関する基準)関係

(1) 第1号及び第2号の運用

1) Aw及びAcのとり方は、昭和55年建設省告示第1790号第4号ロの運用に準ずる。
2) 各部材は、必要に応じて十分な靭性を有するよう留意すること。

(2) 第3号の運用

1) 柱及びはりの設計用せん断力を求める場合には下記による。

i)柱の設計用せん断力QDCは、原則として柱頭、柱脚における横架材の縁部において柱が曲げ耐力に達した時のせん断力Qucとする。
ii)はりの設計用せん断力QDGは原則として構造耐力上有効な鉛直材の両端において、はりが曲げ耐力に達する時のせん断力(QuG)に長期荷重によるせん断力QDLを加えた値とする。

2) 1)で求めた設計用せん断力に対して、柱及びはりの設計を行う場合には、十分ゆとりを確保すべきものとし、その計算は、適切な算定式を用いるものとする。
3) その他の留意事項

その他の部材についても必要に応じて十分な靭性を有するよう留意すること。



別記3 昭和55年建設省告示第1792号第1(Dsの算出方法)の取扱いについて

〔1〕 Dsの適用

Dsは、階、計算方向等によってそれぞれ異なる数値を採用しても差支えない。

〔2〕 Dsの判定方法

(1) Dsの判定は、特別な実験・解析等によって適切に定める場合のほか昭和55年建設省告示第1792号第1の表1及び表2により、架構の形式及び架構の性状に応じて、当該表に掲げる数値以上の数値として定めるものとする。
(2) 前記の架構の形式の区分は壁、筋かい等によって分担される耐力の比率、筋かいの挙動性状等を、架構の性状の区分は部材の靭性及びそれらの耐力分担比等をそれぞれ適切に評価して定めるものとする。
(3) 前記のそれぞれの性状の判定は、当面下記の付則に示す判定基準に基づいて行うことを原則とする。

〔付 則〕 Dsの判定基準

(1) 総則

1) Dsを実験・解析等によらず昭和55年建設省告示第1792号(以下「告示」という。)の第1の表によって定める場合は本基準による。ただし、本基準の一部分について、実験・解析等により本規定と同等以上にその性状を評価できる場合には、当該評価によることができる。
2) 本基準の各規定は、階全体を対象として適用することとする。ただし、当該階を適切に分割して評価しうる場合は、その評価によることを妨げない。

(2) 表1及び表2の適用

1) 告示の表1及び表2の適用は本項による。
2) 表1(鉄骨造の階に適用)の適用は、次に掲げるところによる。

i)表1の適用の原則は表3―1による。

表3―1

 
(い)
○剛節架構
○種別BAの筋かい架構
○上記以外でβu≦0.3の筋かい架構
(ろ)
筋かいの種別がBBで0.3<βu≦0.7又はBCで0.3<βu≦0.5の筋かい架構
(は)
筋かいの種別がBBでβu>0.7又はBCでβu>0.5の筋かい架構
 
 
 
 
(1) 表3―2でランクIの構造
 
0.25
0.3
0.35
(2) 表3―2でランクIIの構造
 
0.3
0.35
0.4
(3) 表3―2でランクIIIの構造
 
0.35
0.4
0.45
(4) 表3―2でランクIVの構造
 
0.4
0.45
0.5
※ この表においてβuは、筋かいが分担する保有水平耐力の階全体の保有水平耐力に対する比をいう。以下同じ。
 
 
 
 

ii)表3―1中、構造のランク(I〜IV)は、表3―2による。なお、参考のため( )内に表3―1によるDsの値を示している。

表3―2

 
筋かい群の種別及びβu
 
BA又は
βu=0
BB
 
 
BC
 
 
 
 
 
 
Bu≦0.3
0.3<βu≦0.7
βu>0.7
βu≦0.3
0.3<βu≦0.5
βu>0.5
柱・はり群の種別等
 
 
 
 
 
 
 
 
 
柱・はり群の種別FA
 
○はり条件※3
○柱・はり仕口条件※2
○筋かい端部条件※1
I
(0.25)
I
(0.25)
I
(0.3)
I
(0.35)
II
(0.3)
II
(0.35)
II
(0.4)
柱・はり群の種別FB
 
 
II
(0.3)
II
(0.3)
I
(0.3)
I
(0.35)
II
(0.3)
II
(0.35)
II
(0.4)
柱・はり群の種別FC
 
 
III
(0.35)
III
(0.35)
II
(0.35)
II
(0.4)
III
(0.35)
III
(0.4)
III
(0.45)
上記以外(FD)
 
 
IV
(0.4)
IV
(0.4)
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.4)
IV
(0.45)
IV
(0.5)
※1 筋かい端部接合部が別記2〔2〕(2)に示す措置を満足すること。
※2 仕口接合部が別記2〔2〕(3)1)に示す措置を満足すること。
※3 はりの横補剛が十分で急激な耐力の低下のおそれがないこと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

iii)表3―1及び表3―2中、筋かい材の種別(BA〜BC)の分類は、表3―3による。

表3―3

BA
BB
 
BC
λe≦50/√F
50/√F<λe≦90/√F
λe≦200/√F
90/√F<λe<200/√F
λe:筋かい材の有効細長比
F:筋かい材の基準強度(t/cm2)
 
 
 

iv)表3―2中、柱・はりの種別(FA〜FD)は表3―4による。

表3―4

柱・はりの種別
 
 
 
 
FA
FB
FC
FD
部材
断面
部位
 
鋼種
幅厚比
幅厚比
幅厚比
左記以外
H型鋼
フランジ
 
400級
9.5
12
15.5
 
 
 
 
 
490級
8
10
13.2
 
 
 
ウェブ
 
400級
43
45
48
 
 
 
 
 
490級
37
39
41
 
 
角形鋼管
 
 
400級
33
37
48
 
 
 
 
 
490級
27
32
41
 
 
円形鋼管
 
 
400級
50
70
100
 
 
 
 
 
490級
36
50
73
 
はり
H型鋼
フランジ
 
400級
9
11
15.5
 
 
 
 
 
490級
7.5
9.5
13.2
 
 
 
ウェブ
 
400級
60
65
71
 
 
 
 
 
490級
51
55
61
 
*1 400級:SS400、SM400A、SM400B、SM400C、SMA400AW、SMA400AP、SMA400BW、SMA400BP、SMA400CW、SMA400CP、SN400B、SN400C、STK400、STKR400

490級:SM490A、SM490B、SM490C、SMA490AW、SMA490AP、SMA490BW、SMA490BP、SMA490CW、SMA490CP、SM490YA、SM490YB、SN490B、SN490C、STK490、STKR490
SS490、SS540、SM520B、SM520Cにあっては、H型鋼、角型鋼管では√(2400/F)を、円形鋼管では2400/Fを、400級の幅厚比に乗じた値とする。
ただし、Fは当該鋼種の基準強度(単位1cm2につきキログラム)である。

*2 柱とそれに接着するはりの種別が異なる場合には、いずれか最下位のものによる。なお、崩壊メカニズムの明確の場合には、塑性ヒンジの生ずる部材の種別のうちの最下位のものによってよい。
 
 
 
 
 
 
 
 

v)種別の異なる部材の併用の取扱い

各部材毎の種別と、階全体又は当該部材群の種別との関係は、下記による。
イ)本項は、対象となる部材群に種別Dの部材が存在しないか、またはその存在を無視しうる場合、次の判定に適用する。

(a) iii)において階全体の筋かい群の種別(BA〜BC)を判定する場合
(b) iv)において柱・はり群の種別(FA〜FC)を判定する場合

ロ)それぞれの種別で、種別Dの部材が存在する場合には、それが脆性的な挙動を示すおそれがあるため、局部的な崩壊等に対する影響と程度を考慮し、適切に階全体の種別を評価するものとする。

ハ)イ)の適用は、表3―5による。

表3―5

部材群としての種別
種別Aの部材の耐力の和の部材群※の耐力和に対する比
種別Bの部材の耐力の和の部材群※の耐力和に対する比
種別Cの部材の耐力の和の部材群※の耐力和に対する比
A
50%以上
20%以下
B
50%未満
C
50%以上
※種別Dの部材が存在する場合には、それを除く。
 
 
 

3) 表2(鉄骨造以外の階に適用)の適用は、次に掲げるところによる。

i)表2の適用の原則は表3―6による。

表3―6

 
(い)
イ)剛接架構
ロ)βuが0.3以下
(ろ)
(い)欄及び(は)欄に掲げるもの以外のもの
(は)
βuが0.7を超えるもの
 
 
 
 
(1) 表3―7
ランクIの構造
 
0.3
(0.25)
0.35
(0.3)
0.4
(0.35)
(2) 表3―7
ランクIIの構造
 
0.35
(0.3)
0.4
(0.35)
0.45
(0.4)
(3) 表3―7
ランクIIIの構造
 
0.4
(0.35)
0.45
(0.4)
0.5
(0.45)
(4) 表3―7
ランクIVの構造
 
0.45
(0.4)
0.5
(0.45)
0.55
(0.5)
※1 この表においてβuは耐力壁又は筋かいが分担する保有水平耐力の階全体の保有水平耐力に対する比をいう。以下同じ。
※2 鉄骨鉄筋コンクリート造については、( )内の数値を適用してよい。
 
 
 
 

ii)表3―6中、構造のランク(I〜IV)は表3―7による。なお、参考のため( )内に表3―6による鉄筋コンクリート造のDs数値を示している。

表3―7

 
耐力壁の種別及びβu
WA
 
 
WB
 
 
 
 
βu≦0.3
0.3<βu≦0.7
βu>0.7
βu≦0.3
0.3<βu≦0.7
βu>0.7
柱・はりの種別
 
 
 
 
 
 
 
FA
 
I
(0.3)
I
(0.35)
I
(0.4)
II
(0.35)
II
(0.4)
II
(0.45)
FB
 
II
(0.35)
II
(0.4)
II
(0.45)
II
(0.35)
II
(0.4)
II
(0.45)
FC
 
III
(0.4)
III
(0.45)
II
(0.45)
III
(0.4)
III
(0.45)
III
(0.5)
FD
 
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
壁式構造(βu=1)
 
II
(0.45)
III
(0.5)
 
耐力壁の種別及びβu
WC
 
 
WD
 
 
 
 
βu≦0.3
0.3<βu≦0.7
βu>0.7
βu≦0.3
0.3<βu≦0.7
βu>0.7
柱・はりの種別
 
 
 
 
 
 
 
FA
 
II
(0.35)
II
(0.4)
III
(0.5)
III
(0.4)
III
(0.45)
IV
(0.55)
FB
 
II
(0.35)
III
(0.45)
III
(0.5)
III
(0.4)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
FC
 
III
(0.4)
III
(0.45)
III
(0.5)
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
FD
 
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
IV
(0.45)
IV
(0.5)
IV
(0.55)
壁式構造(βn=1)
 
IV
(0.55)
IV
(0.55)

iii)鉄筋コンクリート造部材の種別の分類は表3―8及び表3―9による。

表3―8

柱・はりの種別
 
FA
FB
FC
FD
共通条件
 
想定される破壊モードが、曲げ破壊であること。
 
 
左記以外
柱の条件
ho/Dの下限※※
2.5
2.0
 
 
σo/Fcの上限
0.35
0.45
0.55
 
 
Ptの上限
0.8%
1.0%
 
 
τu/Fcの上限
0.1
0.125
0.15
 
はりの条件
τu/Fcの上限
0.15
0.20
 
ここに(ho:柱の内のり高さ(cm)/D:柱のせい(cm)/σo:崩壊メカニズム時の軸方向応力度(kg/cm2)/Fc:コンクリートの材料強度(kg/cm2)/Pt:引張鉄筋比/τu:崩壊メカニズム時の平均せん断応力度(kg/cm2))
※ 柱とそれに接着するはりの種別が異なる場合には、いずれか最下位のものによる。なお、崩壊メカニズムの明確な場合には、塑性ヒンジの生ずる部材の種別のうちの最下位のものによってよい。
※※ 柱の上端あるいは下端において、接着するはりに塑性ヒンジが生ずることが明らかな場合には、ho/Dのかわりに2M/Q・Dを用してよい。(M・Qはそれぞれ崩壊メカニズム時の柱の最大曲げモーメント及びせん断力)
 
 
 
 
 

表3―9

耐力壁の種別
 
WA
WB
WC
WD
共通条件
 
せん断破壊をするおそれがないこと
 
 
左記以外
τu/Fcの上限
一般
0.2
0.25
 
 
壁式構造の耐力壁
0.1
0.125
0.15
 
この表において、τu及びFcは表3―8に規定するところによる。
 
 
 
 
 

iv)鉄骨鉄筋コンクリート造部材の種別の分類は、表3―10及び表3―11による。
イ)柱の種別

表3―10

想定される破壊モード
N/NO≦0.3
 
N/NO≦0.4
 
N/NO>0.4
 
sMO/MO≧0.4
sMO/MO<0.4
sMO/MO≧0.4
sMO/MO<0.4
FD
曲げ破壊
FA
FB
FB
FC
 
せん断破壊
FB
FC
FC
FD
 
ここで、N:メカニズム時の軸方向荷重(t)

NO:鉄骨鉄筋コンクリート断面としての最大圧縮耐力(t)
sMO:鉄骨断面の曲げ耐力(t・m)
MO:鉄骨鉄筋コンクリート断面としての曲げ耐力(t・m)(N=O)

 
 
 
 
 

ロ)耐力壁の種別

表3―11

耐力壁の種別
WA
WC
想定される破壊モード
せん断破壊以外
せん断破壊

v)種別の異なる部材の併用の取扱い

各部材毎の種別と、階全体の種別との関係は下記による。
イ)本項は、対象となる部材群に種別Dの部材が存在しないか、またはその存在が無視しうる場合に、次の判定に適用する。

(a) iii)、iv)において階全体の壁群の種別(WA〜WC)を判定する場合
(b) iii)、iv)において柱・はり群の種別(FA〜FC)を判定する場合

ロ)部材群の中に種別Dの部材が存在する場合は、それが脆性的な挙動を示すおそれがあるため、局部的な崩壊等に対する影響と程度を考慮し適切に階全体の種別を評価するものとする。

ハ)イ)の適用は表3―5による。



別記4 昭和55年建設省告示第1793号の取扱いについて

〔1〕 第1(Zの数値)関係

Zの数値は、地域に応じて告示の表に掲げる数値とするが、当該数値以上の数値としても差支えないものとする。

〔2〕 第2(Rtを算出する方法)関係

(1) Tの精算の取扱い

Rtの算出において、ただし書の適用にあたっては設計用1次固有周期を特別な調査又は研究の結果に基づいて計算し、その値をTの数値とすることができるものとする。

(2) 地盤種別の判定

1) 剛強な支持ぐいとは、長さ径比の小さい場所打ち鉄筋コンクリートぐいその他の建築物本体と一体となって挙動し得るとみなせるものをいう。
2) 地盤種別を地盤周期によって判定する場合の基準は付則による。

〔付 則〕 地盤周期による判定の方法

地盤種別の判定を地盤周期についての特別な調査又は研究に基づいて行う場合の方法は、原則として次に掲げるところによる。

1) 地盤周期と地盤種別との対応は、次の表によるものとする。

地盤周期Tg(秒)
地盤種別
Tg≦0.2
第1種
0.2<Tg≦0.75
第2種
0.75<Tg
第3種

2) 地盤周期の測定は、常時微動測定、せん断波速度測定等適切な方法によって行うものとする。

〔3〕 第3(Aiを算出する方法)関係

(1) Tの取扱い

Tの数値は、Rtを求めた場合に用いたTと同一の数値とする。

(2) Aiの精算の取扱い

建築物の振動特性をモーダルアナリシス、時刻歴解析等により適切に評価して地震層せん断力の分布を算出した場合にあっては、本規定の式によらないことができる。

〔4〕 第4(地震が著しく軟弱な区域を定める基準)関係

本基準を適用するにあたっては、第3種地盤の条件にいう「地盤周期等についての調査若しくは研究の結果」を積極的に活用されたい。


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