建設省住街発第五号
昭和六〇年二月八日

特定行政庁あて

住宅局長通達


敷地共同利用の促進のための建築基準法第八六条第一項の規定の運用について


近年、三大都市圏の既成市街地等においては、人口の減少、職住の遠隔化、敷地の細分化、オープンスペースの不足等の問題が生じており、土地の適切な高度利用を促進しつつ市街地環境の整備改善を図ることが重要な課題となっている。このため、市街地住宅総合設計制度の新設、計画道路の沿道における土地利用の高度化のための措置等の対策を講じ、各特定行政庁においてもその活用に努めていただいているところであるが、今後、さらに土地の適切な高度利用と市街地環境の整備改善を有効に進めていくための施策の充実を図る必要がある。
特に、既成市街地においては、本来高度利用を図るべき地域内でありながら、前面道路の幅員が小さいことや敷地規模が小さいこと等のために適切な高度利用を図ることができない敷地が多く存在し、幅員の大きい道路に接する敷地と幅員の小さい道路に接する敷地における協調的建築計画の推進など適切な対応が求められているところである。
このため、複数の敷地における協調的な建築計画を助長し、通路等のオープンスペースの確保など市街地環境の改善と土地の適切な高度利用に資するため、建築基準法(以下「法」という。)第八六条第一項の規定に係る認定準則を別添のとおり定めたので通達する。本認定準則の適用に当たっては、左記の点に十分留意し、その積極的な活用を図るよう努められたい。
なお、本認定準則に関する技術基準については、別途通達する。

1 本認定準則による法第八六条第一項の規定の適用に当たり、建築計画の内容、敷地の位置、敷地の周囲の土地利用の状況、都市施設の整備の状況等から本認定準則によることが必ずしも適切でないと認められる場合にあっては、本認定準則の趣旨に従い、総合的な判断に基づいて運用すること。
2 本認定準則による法第八六条第一項の規定の適用は、一団地内の建築物が協調的な建築計画のもと、原則として同時期に建築されるものについて行うこと。
3 本認定準則による法第八六条第一項の規定の適用は、原則として一団地内の建築物の形態、通路及び空地の形状等に関する関係権利者による建築協定が締結されている場合について行うこととし、また、地区計画制度の適用及び壁面線の指定が有効と思われる場合には、その適切な活用を図ること。
4 本認定準則による法第八六条第一項の規定を適用した建築物については、台帳の整備等により建築後も引き続きその状態の把握に努めること。
5 本認定準則による法第八六条第一項の規定を適用した建築物については、その敷地内の空地について緑化等を行うことにより良好な市街地環境の形成に資するものとなるよう十分に指導を行うこと。
6 本認定準則による法第八六条第一項の規定の適用により建築される建築物は、ペンシルビル等周辺の市街地環境を害するおそれのあるものにならないよう指導すること。
7 本認定準則による法第八六条第一項の規定の適用に当たっては、優良再開発建築物整備促進事業、特定民間再開発事業等敷地の共同化を伴う事業に対する助成制度及び税制上の特例制度並びに住宅金融公庫等の再開発関係融資制度を併せて活用することが有効な場合があるので、民間の開発事業者等に対してこれらの諸制度についても併せて周知させるよう努めること。
8 本認定準則に係る事務の執行に当たっては、その迅速な処理に努めること。


別添

敷地共同利用に係る建築基準法第八六条第一項の認定準則

第1 適用範囲

本認定準則は、前面道路の幅員による容積率制限を受ける敷地等を含む複数の敷地における協調的な建築計画に関する建築基準法(以下「法」という。)第八六条第一項の規定に基づく認定について適用する。

第2 認定基準

1 敷地及び道路

(1) 一団地の区域が、指定容積率(当該一団地の区域内の各建築物の敷地に関する都市計画において定められた容積率(当該建築物の敷地が容積率の異なる地域又は区域の二以上にわたる場合においては、当該地域又は区域の容積率に、その敷地の当該地域又は区域内にある各部分の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計)をいう。以下同じ。)等からみて適切な幅員を有する道路に有効に接しているものであること。
(2) 一団地の区域の面積が、五〇〇平方メートル以上(第一種住居専用地域においては、一、〇〇〇平方メートル以上)であること。
(3) 一団地の形状が不整形なものでないこと。

2 建築計画

(1) 各建築物の主要構造部は、耐火構造であること。
(2) 原則として、一団地内の各敷地のうち、法第八六条第一項の規定を適用しないとした場合に、基準容積率(法第五二条第一項及び第二項の規定による容積率をいう。以下同じ。)が指定容積率に満たないこととなる敷地から第2の1の(1)に規定する道路に至る有効な幅員を有する公開された通路が設けてあること。
(3) 一団地の区域内に、原則として、法第五三条の規定による建ぺい率制限により確保される空地より一〇分の一・五ないし一〇分の二多い空地が設けてあること。
(4) 一団地内の各敷地のおける建築物の延べ面積の値と法第八六条第一項の規定を適用しないとした場合における当該敷地の基準容積率に基づく延べ面積の限度の値とのうち大きい方の値を一団地内の全敷地につき合計した値は、各敷地における指定容積率に基づく延べ面積の限度の値を一団地の全敷地につき合計した値を超えないこと。
(5) 建築物の容積率が指定容積率を超えることとなる場合は、原則として当該建築物の容積率に応じてその周囲に適切な空地が設けてあること。
(6) 一団地内の各建築物相互における採光、通風等について適切に配慮したものであること。


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