住防発第一七号
昭和六〇年四月一一日

特定行政庁建築主務部長あて

住宅局建築指導課長通達


建築物の適正な維持保全の推進について


昭和六〇年三月一九日付け建設省告示第六〇六号「建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な方針を定める件」が定められたことに伴う今後の建築物の適正な維持保全の推進については、昭和六〇年四月一一日付け建設省住防発第一五号で住宅局長より通知したところであるが、指導にあたつては左記事項に留意のうえ行われたい。

記

一 維持保全に関する準則又は計画の作成について指針

(一) 告示の目的について

昭和六〇年三月一九日付け建設省告示第六〇六号「建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針を定める件」は、維持保全に関する準則(以下「準則」という。)又は維持保全に関する計画(以下「計画」という。)に定めるべき事項を具体的に示したものである。
準則又は計画(以下「維持保全計画」と総称する。)を作成する目的は、建築物の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)が維持保全計画に基づいて、計画的にその建築物の維持保全を行い、その結果として建築物が常時適法な状態に維持されることにある。なお、本維持保全計画は建築基準法に基づいているものであり、例えば、消防法による消防設備等に関する維持管理、同法に係る避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理等他法令の定めによるものは、建築基準法による維持保全計画の対象ではないものである。

(二) 「準則」について

区分所有、複数の者への賃貸等により、計画を作成すべき者が複数になる場合、それらの者がそれぞれ独自に維持保全を行うと、建築物全体としての維持保全の一貫性を保つことができないおそれがある。したがつて、計画を作成すべき者が複数の場合には、建築物の維持保全が全体として適正に行われるよう、必要に応じてそれぞれに作成する計画が準拠すべき事項を、予めそれらの者の合意によつて準則として作成しておく必要がある。なお、準則は、それぞれの計画内容相互の整合性を図ることが建築物全体としての維持保全に必要な事項について定めれば、足りるものである。

(三) 「計画」について

計画は、建築物の適正な維持保全を計画的に実施するため、定めるものである。したがつて、項目ごとの内容は、それぞれ次のようなことに留意して定めるものとする。
ア 建築物の利用計画

維持保全は、建築物の利用の実態に対応したものでなければならない。したがつて、適正な維持保全を実施するための前提として、建築物の実質的な利用計画を明確にしておくことが必要である。利用計画としては、以下のようなものがある。
(ア) 現在の利用計画

建築物の各部分の用途、利用方法等現在の利用についての計画

(イ) 将来の利用計画

用途等の変更計画、増改築等の予定とこれらの実施後の利用計画

イ 維持保全の実施体制

維持保全の実施体制については、維持保全が円滑かつ的確に実施されるよう、実質的な維持保全業務に関して、具体的業務と担当部署及び担当者との関係、情報伝達方法、意思決定方法等を明確にして、建築物及び管理体制の実情に即したものとする必要がある。なお、適正な維持保全の実施には一般的に、専門的な知識、能力等が要求されるので、専門技術者の関与について予め考慮する必要がある。実施体制の内容としては以下のようなものがある。
(ア) 維持保全を実施するための組織

保守管理部門、営繕部門、資金計画の決定部門等、維持保全を実施する各部署及び各担当者の役割分担

(イ) 維持保全業務の委託

維持保全を委託している場合の委託先、委託の業務内容等

(ウ) 建築士その他専門技術者の関与

維持保全計画の作成等における建築士その他の専門技術者の関与の方法とその範囲

ウ 維持保全の責任範囲

複数の計画が定められる場合においては、維持保全の対象が重複する部分等における適正な維持保全の確保を図る必要があり、利用計画、維持保全の実施体制等を十分勘案し、所有者等の責任範囲を明確にして全体として一体的な対応が図られるようにする必要がある。また、所有者と管理者が異なる場合等においては、計画作成者の立場を明確にしておく必要がある。

エ 占有者に対する指導等

建築物の所有者又は管理者と占有者との関係及び占有者の態様は、賃貸借の方式等により多様であるが、建築物の適正な維持保全を図るためには、占有者の積極的な協力を得ることが不可欠である。したがつて、占有者の態様等、個々の建築物における条件、利用計画、維持保全の実施体制等に応じて占有者において行うべき維持保全に関する措置等について、具体的に指導等を行う必要があり、その内容について予め維持保全計画において明確にしておく必要がある。占有者に対する指導等の内容としては次のようなものがある。
(ア) 設備等の故障時、事故時における措置に関すること。
(イ) 重量物の設置、改装工事等に関すること。
(ウ) 設備機器における日常利用上の点検等に関すること。

オ 点検

適正な維持保全を図るためには、点検によつて建築物の状況を常に的確に把握しておく必要がある。また、その結果に基づいて維持保全の実施方法の改善、修繕、改修等必要な措置が適切に行われる必要がある。維持保全において点検は最も重要であるので、的確に点検が実施されるよう、予め次のような事項について明確に定めておく必要がある。なお、点検に関する計画を定めるにあたつては、建築基準法第一二条第一項及び第二項に基づく定期報告制度による調査、検査等法令に基づくものについて充分考慮する必要がある。
(ア) 点検箇所、点検項目、点検時期、点検担当者等の実施方法に関すること。
(イ) 点検方法、判断基準等の点検内容に関すること。
(ウ) 点検結果の記録及び報告その他点検結果に伴う必要な措置方法に関すること。

カ 修繕

各部材、設備等の経年劣化、模様替え等に伴う修繕については、予め、全体的な維持保全との関連、工事中の安全対策等を考慮し、修繕計画及び修繕工事に関してできるだけ明確にしておく必要がある。

キ 図書の作成、保管等

適正な維持保全は、予め作成した計画にそつて実施される必要があるとともに、その建築物に関する具体的な資料に基づいて行われる必要がある。
したがつて、竣工図、設備仕様書等については、維持保全計画書に付随する資料として整備するとともに、点検結果等についても一連の資料として整理し、常時維持保全業務に利用できるよう保管する必要がある。

ク 資金計画

適正な維持保全に必要な点検、修繕等を的確に実施するためには、これらに要する費用について、資金調達の方法、経理方法等の資金計画を予め明確にして、これらに基づいて修繕費の積立、必要な保険の付保等を計画的に行うことが必要である。

ケ 計画の変更

計画については、実施方法を勘案して定期的に見直しをする必要があり、また、利用面、性能面における条件の変化が生じた場合に、それらに的確に対応するため、随時計画の適切な変更が必要である。維持保全には多数の人が関与することも考慮して、計画の見直し、計画変更の手続及び計画を変更した場合の周知徹底の方法等を予め明確にしておく必要がある。

コ その他

箇別建築物の条件に応じて、適正な維持保全を実施するために必要と考えられる事項については、できるだけ予め明確にしておく必要がある。

二 指導方針

(一) 指導方法

ア 用途別業界団体、地域別業界団体等の積極的な協力を得て、適正な維持保全の必要性及び実施方法に関する啓蒙を積極的に実施すること。なお、全国的な業界団体等に対しても建設省より別途協力方依頼すると共に、具体的な推進方策についても協議する予定である。
イ 適正な維持保全の実施の指導にあたつては、現状の性能水準の保持にとどまらず、できるだけ省エネルギー対策、設備の改善、内外装の改修、機能の更新等に関する積極的な対策と関連づけたものとなるように配慮をして、所有者における対応が当該建築物及び維持保全体制の状況に即して実効性のあるものとなるよう留意すること。
ウ 維持保全計画書の作成指導については、別途通知する総合的な防災対策の推進と関連させ、建築確認、防災査察等の実施と調整し、特定行政庁の実情に応じて、対象建築物の用途、規模、地域等により順次実施すること。

この場合においても、できるだけ関係団体と連絡を密接にして円滑に実施するよう留意すること。

(二) 当面の指導内容

ア 個別建築物ごとの現状の維持保全対策の水準を十分勘案し、段階的に充実したものとなるよう指導すること。このため、一般的な第一段階の指導としては、常時建築物の性能等の的確な把握を行うよう、定期報告制度の運用と関連した計画的な点検の実施を重点とすることとし、この場合の計画書の内容に関する指導にあたつての一般的な留意事項は、以下とすること。

(ア) 定期的な調査、検査等の点検実施計画
(イ) 建築物の状況を把握するための必要な図書の整備
(ウ) 維持保全担当者の明確化

イ 所有者等に対する維持保全計画書の作成指導は所有者等の意識、能力に応じて弾力的に行い、維持保全計画が形式化したものとならないよう留意すること。なお、用途、規模等に応じた計画書のモデルについては別途調査しており、順次参考に供する予定である。
ウ 新築建築物については、維持保全に必要な図面が確実に所有者等に引渡されるよう指導すること。また、できるだけ設計上計画された計画説明書、各部仕様書、設備仕様書その他の維持保全上必要な使用上の留意事項に関する説明書を添付させるよう指導すること。

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