建設省住指発第五一〇号
昭和六〇年九月五日

建設省住宅局建築指導課長から特定行政庁建築主務部長あて

通達


耐火構造の外壁に施す外断熱工法の取扱いについて


近年、外壁の室内側の表面結露、内部結露を防止できること、既存の建築物の断熱改修に適していること等の理由で、鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造等の耐火構造の外壁の外側に断熱層を設け、不燃材料の外装材で断熱層を覆う工法が普及しつつある。
外断熱工法(外壁の外側に断熱層を設け、不燃材料の外装材で断熱層を覆う工法、以下同じ。)は、断熱層を外壁の外側に設けているため、地震、風等に対する構造上の安全性、耐久性等を確保するために十分な対策が必要であり、また、断熱材に有機系発泡材料を用いるものが多く、特に火災時においては、発炎、発煙、外装材の脱落等の問題を生じる恐れがあることから、当職において、その取扱いについて検討を行ってきたところである。
耐火構造の外壁に施す外断熱工法については、左記により取扱って、防火上、構造上支障ないと判断されるので、今後これにより指導されたい。
なお、今回の取扱いは耐火構造の外壁に施す外断熱工法について定めたものであるが、耐火構造の屋根に施すものにあっても、当面、本取扱いに準じて指導されたい。
おって、今後の運用については、建設省建築研究所(建築試験室)の発行した試験成績書又は「建築基準法に基づく防火材料の指定等又は建築基準法において予想されていない特殊の構造方法等の認定に係る試験結果取扱要領」(平成六年一〇月二一日付け建設省住指発第四三三号)第三の基準に適合する試験機関の発行した試験成績書をもとに、当職において、防火上支障のない外断熱工法を逐次判定し、貴職あて通知することとするので申し添える。

1 適用範囲

本通達は、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に基づき耐火構造としなければならない建築物の外壁のうち、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造又は鉄材で補強されたコンクリートブロック造、れんが造若しくは石造のもの(昭和三九年七月一〇日建設省告示第一六七五号第二の一のイ若しくはハ又は第三の一のイ若しくはハに該当するものに限る。)に施す外断熱工法に適用する。

2 防火性能

外断熱工法は、別記に規定する試験方法により、外壁のうち延焼のおそれのある部分に施すもの及び防火地域に建つ建築物の外壁に施すものにあっては一時間加熱試験、それ以外のものにあっては三〇分加熱試験に合格するものとする。

3 開口部等の周囲及び外装材の目地の処理

(1) 開口部の周囲の部分は、モルタルその他の不燃材料で造ること。
(2) 給水管、配電管その他の管又は換気、暖房若しくは冷房の設備の風道その他これらに類するものが貫通する場合においては、その周囲の部分をモルタルその他の不燃材料で造り、かつ、すき間が生じないようにすること。
(3) 外装材の目地が防火上著しい弱点となる場合には、その部分に不燃材料を用いて防火上有効に措置すること。

4 断熱層及び外装材の緊結

断熱層及び外装材は、建築基準法施行令第三九条の規定に基づき、脱落しないように措置すること。


別記

外断熱工法に係る防火性能試験方法
1 総則

防火性能試験は、2に規定する試験体に、3に規定する加熱炉によって、4に規定する加熱温度を与えて、5に規定する加熱試験を行う。

2 試験体

(1) 試験体の材料及び構成は実際のものと同一とする。
(2) 試験体は矩形状の版とし、各辺の長さは二四〇cm以上、厚さは実際のものと同一とする。ただし、実際と同一の大きさのものによる試験が極めて困難な場合においては、試験体の防火性能を増大しない範囲内でその形状及び大きさを変更することができる。
(3) 試験体は、その構成材の含水率が、外断熱工法を施した耐火構造の版にあっては五%以下、外装材及び断熱層にあっては一〇%以下となるように乾燥したものとする。
(4) 試験体の中央部に概ね幅四〇cm、高さ六五cmの開口部を設け、当該開口部にアルミニウム製網入ガラス入りの乙種防火戸を設けること。ただし、一時間加熱試験に供する試験体に設けるものにあっては、網入ガラスを二重にすること。
(5) 建築物に施工する場合において継目その他の防火上の弱点があらわれるときは、それらの弱点を試験体に設けること。

3 加熱炉

加熱炉は、日本工業規格A一三〇四(建築構造部分の耐火試験方法)の三に規定するものとする。

4 加熱等級

(1) 加熱等級は、加熱時間に応じて、三〇分加熱及び一時間加熱に区分するものとする。
(2) 加熱は、試験面の加熱温度が時間の経過に伴って次の表に示す温度となるようにするものとする。

経過時間(単位分)
加熱温度(単位摂氏度)
経過時間(単位分)
加熱温度(単位摂氏度)
五四〇
三五
八六〇
一〇
七〇五
四〇
八八〇
一五
七六〇
四五
八九五
二〇
七九五
五〇
九〇五
二五
八二〇
五五
九一五
三〇
八四〇
六〇
九二五
5 加熱試験

(1) 加熱試験は、(2)及び(3)に定めるところにより外表面を加熱面として行い、(4)に定めるところにより結果の判定を行う。
(2) 加熱温度、外断熱工法を施した耐火構造の版の鋼材温度及び裏面温度の測定は、イからハまでに定めるところにより行う。

イ 加熱温度を測定する熱電対の熱接点は、加熱面に均等に配置するものとし、五箇所以上設置する。加熱温度の測定は、三〇分までは二分以内ごとに、三〇分以後は五分以内ごとに行う。
ロ 外断熱工法を施した耐火構造の版の鋼材温度を測定する熱電対の熱接点は、構造耐力上主要な鋼材に均等に配置するものとし、三箇所以上設置する。鋼材温度の測定は、五分以内ごとに行う。
ハ 裏面温度を測定する熱電対の熱接点は、加熱面の反対面に均等に配置するものとし、五箇所以上設置する。裏面温度の測定は、五分以内ごとに行う。

(3) 加熱試験は、申請に係る防火性能に相応する加熱等級以上の加熱により、二回以上行い、各回とも合格しなければならない。
(4) 試験結果の判定は、試験体がイからトまでに適合するものを合格とする。

イ 加熱中、外装材又は断熱層に防火上有害な爆裂、剥離、脱落等の変化を生じないこと。
ロ 加熱中、外断熱工法を施した耐火構造の版に耐火上及び構造耐力上有害な変形、破壊、脱落等の変化を生じないこと。
ハ 加熱中、裏面まで火炎が通る割れ目を生じないこと。
ニ 加熱中、防火上有害な発炎等を生じないこと。
ホ 外断熱工法を施した耐火構造の版の鋼材温度が五五〇度をこえないこと。
ヘ 裏面温度が二六〇度をこえないこと。
ト 構成材料の一部が不燃材料でないものにあっては、加熱終了後一〇分間以上、火気が残存しないこと。ただし、外装材裏面における火気であって燃焼を促進する恐れのない火気にあってはこの限りでない。


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