特定行政庁建築主務部長あて
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資料一 コンピュータシステム・情報通信システムを設置する建築物に係る安全対策基準
(昭和六一年五月)
(建設省住宅局建築指導課)
目次
1 総則
1―1 目的
1―2 適用対象
2 基本事項
2―1 基準の性格
2―2 基準の表現
2―3 用語の定義
3 安全対策基準
3―1 建築物
3―2 コンピュータ室・データ保管室
3―3 設備機械室・シャフト
3―4 電源設備・空気調和設備・集中監視制御設備等
4 安全対策基準項目一覧表
1 総則
1―1 目的
本基準は、社会的に重要なコンピュータシステム及び情報通信システム(以下「コンピュータシステム等」という。)が安全に稼動するために、それらを設置する建築物に講ずべき安全対策の基準を定めたものであり、これを公表することにより、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
1―2 適用対象
本基準は、オンラインリアルタイムで公共用途又は第三者に対する営業の用途に供するコンピュータシステム等で、その不稼動が社会生活上大きな影響を及ぼすものを、主として設置する建築物を対象としている。
これらのコンピュータシステム等を建築物の一部に設置する場合又はこれらに準ずるコンピュータシステム等を設置する場合についても、当該建築物の用途・特性を考慮し、本基準を参考にして対策を講ずることが望ましい。
2 基本事項
2―1 基準の性格
本基準は、コンピュータシステム等の安全稼動を支援するため、コンピュータシステム等を設置する建築物について、火災、地震、水害、風害、落雷等の天災、部外者の侵入による障害及び設備機器の一部の故障等による障害に対して講ずべき安全対策を示すものである。また、コンピュータセンター等は防犯上の理由から閉鎖的になりやすいものであることから、本基準においては、火災時の安全な避難にも特に配慮している。
なお、本基準が対象とする建築物は、建築基準法令及び関係法令(以下「法令」という。)を遵守して建築され、適切に維持保全がなされていることが前提である。
2―2 基準の表現
本基準では、コンピュータシステム等を設置する建築物(建築設備を含む。以下同じ。)が、基本的に取り入れる必要のある事項については、「………こと。」と表現し、選択的に取り入れることが望ましい事項については、「………望ましい。」と表現している。
2―3 用語の定義
本基準において次の各号に掲げる用語の定義は、以下のとおりとする。
(1) コンピュータ…コンピュータの本体装置、周辺装置及び通信系装置の総称
(2) コンピュータシステム…コンピュータ、端末装置及び回線により構成されるデータを処理するためのシステム
(3) 情報通信システム…電気通信設備を用いて情報通信を行うためのシステム
(4) コンピュータセンター…コンピュータを設置し、コンピュータシステムを稼動させるための専用建築物
(5) コンピュータ室…コンピュータを設置する室(これに附属する設備機械室を含む。)
(6) データ保管室…データ・プログラムの記録媒体及びドキュメントを保管する室
(7) 電源設備…コンピュータシステム等を作動させるための受電設備、定電圧定周波電源装置等の設備
(8) 空気調和設備…コンピュータシステム等の空気調和を行う空気調和設備
(9) 設備機械室…電源設備・空気調和設備を設置する室
3 安全対策基準
3―1 建築物
3―1―1 立地・配置
(火災対策)
(1) 敷地は、延焼のおそれの少ない場所及び危険物貯蔵施設に隣接していない場所に選定することが望ましい。
(2) 建築物は、周囲に消防活動上有効な空間を有するよう、敷地に配置することが望ましい。
(地震対策)
(3) 敷地の選定に当たっては、大地震(関東大地震級のものをいう。以下同じ。)時に想定される地盤災害(山崩れ、地すべり、擁壁の崩壊等)を事前に調査し、そのような災害が生ずるおそれのある敷地を避けることが望ましい。
(4) 地震対策は、敷地周辺の都市施設(電気、ガス、水道、通信、交通等)の地震時災害を予測し、それらを考慮に入れて行うことが望ましい。
(5) 建築物は、地震時に隣接する建築物と接触することがないよう、隣接する建築物から十分な距離をとること。
(6) 敷地地盤に液状化の可能性がある場合には、液状化防止のための地盤改良、液状化を考慮した基礎構造の設計等の対策を講ずること。
(水害対策)
(7) 敷地の選定に当たっては、敷地地盤が大雨、高潮等により冠水するおそれがないことを確認すること。やむを得ず冠水のおそれがある敷地を選定する場合には、建築物への浸水を生じないよう、対策を講ずること。
(その他の対策)
(8) コンピュータセンター等の所在を明示した表示板、看板等は、設けないことが望ましい。
(9) 敷地の外周には、防犯上有効な塀又は柵を設けることが望ましい。
(10) 建築物の周囲には、不法な侵入者を発見できる程度の照明設備を設けること。
(11) 通信回線、電力回線、オイルタンク等の敷地内の施設には、部外者の侵入による障害を防ぐよう、保護対策を講ずること。
(12) ドライエリアは、容易に侵入できないよう、対策を講ずること。
(13) 敷地において、強電界、強磁界、塩分、有毒ガス等による障害が予測される場合には、有効な保護対策を講ずることが望ましい。
(14) 建築物には、法令に定めのない場合であっても避雷設備を設けることが望ましい。
(15) 敷地が埋立地、造成地等の軟弱地盤であり、地盤沈下のおそれがある場合には、建築物並びに敷地内の施設及び埋設物に対して不同沈下対策を講ずること。
3―1―2 外壁・開口部
(火災対策)
(1) 他の建築物に近接する外壁には、開口部を設けないことが望ましい。
(2) 延焼のおそれのある部分に設ける開口部には、外部の火災による危険に対して有効な防護措置を講ずること。
(水害対策)
(3) 外壁及び屋根は、消火活動による放水に対して有効な防水性能を保持すること。
(4) 地下には、外壁からの漏水に対して有効な排水措置を講ずること。
(5) 外部に面する出入口及び開口部は、浸水により障害が生ずるおそれのある場合には、浸水防止対策を講ずること。
(その他の対策)
(6) 外部から容易に接近できる開口部及び出入口は、容易に侵入できない構造とし、又は侵入等を感知して警報を発する装置を設けること。
(7) 常時使用する出入口は、入退館を監視・管理できる構造とすること。
3―1―3 構造・内装
(火災対策)
(1) 建築物は、法令に定めのない場合であっても耐火建築物とし、用途上の必要に応じて防火区画を設けることが望ましい。防火区画を貫通する予備配管等は、所要の防火・防煙性能を有するよう、対策を講ずること。
(2) 建築物の内装材料等には、火災時にコンピュータシステム等に障害を及ぼすおそれのあるガスの発生が少ないものを使用することが望ましい。
(3) 建築物の内部にあっては、火災時の避難を考慮して二方向に避難経路が確保されていることが望ましい。
(地震対策)
(4) 建築物の構造計画に当たっては、単純明快な計画とすることが望ましい。
(5) 本基準が対象とする建築物の構造く体は、大地震に対しても、構造耐力上の支障を生ずることが少なく、地震後に軽微な補修を行うことにより建築物を使用できるよう、耐震設計を行うこと。
具体的には、保有水平耐力の検討又は動的解析により必要な耐震性を確認する方法、耐震設計に用いる標準せん断力係数の値を割り増す方法等がある。
また、大スパン構造の建築物等では、地震の上下動の影響を考慮することが望ましい。
(6) 建築物の変形は、大地震時においても扉、内装材料、設備配管等に被害を起こさないようにすること。
大地震時に扉、内装材料、設備配管等の機能に支障をきたさないような層間変角形の検討目標値は、1/120以下とすることが望ましい。
(7) 建築物は、浸水・漏水対策、防火・防煙区画形成等の観点から、エキスパンションジョイントを設けず一体の建築物として設計することが望ましい。やむを得ずエキスパンションジョイントを設ける場合には、浸水・漏水の生じないように設け、かつ防火・防煙区画の形成に支障のないような箇所に設ける等の配慮をすること。
また、構造く体の接触を避けるため、その間の距離をく体変形量の和以上とし、エキスパンションジョイント部を通過する設備配管、ダクト等は、地震時の変形に追従できるようにすること。
3―2 コンピュータ室・データ保管室
3―2―1 位置・配置
(火災対策)
(1) コンピュータ室は、室外から延焼を受け難い位置に設けることが望ましい。
(地震対策)
(2) 中低層の建築物においては、地震時における床位置での加速度は上層階ほど大きくなるため、コンピュータ室は、下層階に設置することが望ましい。
上層階に設置する場合には、地震時の加速度値が大きくなることを想定して対策を講ずること。
(その他の対策)
(3) コンピュータ室・データ保管室の所在を明示した表示板、看板等は、設けないことが望ましい。
3―2―2 構造・内装・開口部
(火災対策)
(1) 法令に定めのない場合であっても、コンピュータ室・データ保管室は独立した防火・防煙区画とすることが望ましい。
(2) (1)の防火・防煙区画を貫通するダクト部に設けるダンパーは、法令に定める防火性能を有するとともに、防煙性能を有するものとすることが望ましい。
(3) コンピュータ室・データ保管室の内装は、法令に定めのない場合であっても、不燃材料・準不燃材料・難燃材料を使用することが望ましい。
(4) コンピュータ室・データ保管室内の家具、什器等は、不燃材料・準不燃材料・難燃材料を用いて作られたものを使用することが望ましい。
(5) 火災時の避難のため、防犯上・管理上施錠してある出入口扉等は、避難経路の方向に開放できる構造とすること。
(6) 一箇所で出入口管理を行っているコンピュータ室・データ保管室は、火災時に内部から容易に避難することができるような経路を確保し、また必要に応じて避難用の扉を設けることが望ましい。
(地震対策)
(7) コンピュータ室・データ保管室内の内装部材は、大地震時においても破壊、脱落等を生ずることなく、部材、接合部等の局部的な破損程度にとどまるようにすること。
(8) コンピュータ室のフリーアクセス床は、大地震時においても破壊、脱落等を生ずることのないよう、対策を講ずること。
(9) コンピュータの機器、備品等は、大地震時においても破壊、転倒、脱落等を生じないよう、対策を講ずること。
(水害対策)
(10) 室外から浸水のおそれのある出入口には、浸水防止対策を講ずること。
(11) 床・間仕切壁下部で、コンピュータ室・データ保管室に接するものにあっては、防水措置を講ずることが望ましい。
また、コンピュータ室・データ保管室の上階には、水を使用する施設を設けないことが望ましい。
(その他の対策)
(12) 常時使用する出入口は一箇所とし、入退室者を監視・管理できる構造とすることが望ましい。
(13) 出入口の扉は、施錠できるものとすること。
(14) コンピュータ室・データ保管室の床仕上は、帯電防止対策を講ずること。
(15) 外部に面する開口部には、必要に応じて、強風時の飛来物に対する防護措置を講ずることが望ましい。
3―2―3 設備
(火災対策)
(1) 無人の状態で使用される機会の多いコンピュータ室・データ保管室には、火災感知器の作動が外部から容易に把握できるよう、室外表示の可能なものを設けることが望ましい。
(2) 火災による停電時に備えて、コンピュータ室・データ保管室内のわかりやすい場所に携帯用の照明器具を設けること。
(3) コンピュータ室・データ保管室内には、非常用の放送が聞こえるようにすること。
(4) コンピュータ室・データ保管室用にハロゲン化物消火設備、二酸化炭素消火設備、スプリンクラー設備等を設ける場合には、フリーアクセス床内、天井裏等にも放出口を設けることが望ましい。
スプリンクラー設備を設ける場合には、配管からの漏水及び誤発水に備え乾式ダブルアクションタイプの設備とすることが望ましい。
(5) コンピュータ室・データ保管室のフリーアクセス床内及び天井裏には、法令に定めのない場合であっても、煙感知器を設けることが望ましい。
(地震対策)
(6) コンピュータ室・データ保管室の設備機器・配管・配線・ダクトは、大地震時においても破壊、転倒、脱落等を生じないよう、適切な耐震措置を講ずること。
具体的には、(財)日本建築センター「建築設備耐震設計・施工指針」(一九八四年版)に基づき、重要性の高い設備機器として耐震措置を講ずる等の方法がある。
(水害対策)
(7) 設備機器・配管から漏水が発生した際、コンピュータシステム等に障害を与えないよう、対策を講ずること。
(8) コンピュータ室内のフリーアクセス床内には、漏水感知装置を設けることが望ましい。
(その他の対策)
(9) 常時使用する出入口には、入退室者を監視・識別し、不法な侵入を感知し、警報を発する装置を設けることが望ましい。
(10) コンピュータ室・データ保管室内で使用する分電盤、端子盤、シャフト改め口等は施錠できるものとすること。
(11) コンピュータ室内で使用する諸電源は、専用の分電盤から供給することが望ましい。また、専用の分電盤の位置は、コンピュータ室又は付属の電源室内であることが望ましい。
(12) 停電時のコンピュータシステム等の保全等のために、保安照明を設けることが望ましい。
3―3 設備機械室・シャフト
3―3―1 位置・配置
(火災対策)
(1) 設備機械室・シャフトは、室外から延焼を受け難い位置に設けることが望ましい。
(2) 設備機械室・シャフトは、防災上の保守・点検が容易に行えるよう、十分なスペースを確保すること。
(その他の対策)
(3) 重要な用途に供する室の所在を明示した表示板、看板等は、設けないことが望ましい。
(4) 屋上等外部に設けられた設備機器は、防犯上有効に保護すること。
(5) 電源・熱源供給系統等が予備系統を有する場合には、異なる二つの経路となるようにシャフトを設けることが望ましい。
3―3―2 区画・開口部・構造
(火災対策)
(1) 設備機械室は、独立した防火区画とすることが望ましい。
(2) シャフトは、独立した防火・防煙区画とし、さらに層間区画を行うことが望ましい。
(3) シャフト内に設置する配線材料、保温材料等は、不燃化・難燃化することが望ましい。
(4) 危険物を使用する設備機械室は、専用室とすること。
(水害対策)
(5) 設備機械室は、浸水を生ずるおそれの少ない構造とし、設備機械、配管等からの漏水に対して有効な排水措置を講ずること。
(6) 階段、シャフト等が階を貫通する部分には、上階から下階に漏水しないよう、有効な対策を講ずること。
(その他の対策)
(7) 出入口の扉は、施錠できるものとすること。
3―3―3 設備
(火災対策)
(1) 設備機械室・シャフトには、法令に定めのない場合であっても、火災感知器を設けることが望ましい。
(2) 大規模な設備機械室内には、非常用の放送が聞こえるようにすることが望ましい。
(地震対策)
(3) 設備機械室・シャフトの設備機器・配管・配線・ダクトに対する耐震措置は、3―2―3(6))によること。
(その他の対策)
(4) 設備機械室には、停電時の保全、災害復旧等のために、保安照明を設けることが望ましい。
(5) 電気設備の機械室は、ねずみによる絶縁物の破壊、感電による短絡等が生じないよう、対策を講ずること。
3―4 電源設備・空気調和設備・集中監視制御設備等
3―4―1 電源設備
(1) 電源設備の機器・材料は、不燃化・難燃化を図ることが望ましい。
(2) 配線材料は、難燃性のものを使用することが望ましい。
(3) 配電盤・分電盤等は火災による被害のおそれの少ない場所を選んで設けることが望ましい。やむを得ない場合には、必要な耐熱措置を施すこと。
(4) 電源設備に対する消火設備は、ハロゲン化物消火設備又は二酸化炭素消火設備とすることが望ましい。
(地震対策)
(5) 電源設備に対する耐震措置は、3―2―3(6)によること。
(6) 建築物への電源引込ケーブルは、大地震時において地盤と建築物の間に生じる変位に追従できるよう、対策を講ずること。
(水害対策)
(7) 電源引込ケーブル引込箇所からの浸水・漏水に対して有効な対策を講ずること。
(その他の対策)
(8) 電源は、系統の二重化を行い、主要な機器には予備機を設けることが望ましい。
(9) 事故時の保護協調を十分検討し、事故区間を容易に除去できるようにすること。
(10) 停電に備えて予備電源を設け、法令によって設置を義務付けられた設備に電力を供給するほか、コンピュータシステム等の必要最小限の運転を確保できる設備容量(発電機、冷却水、燃料タンク等)とすることが望ましい。
3―4―2 空気調和設備
(火災対策)
(1) 断熱材、保温材、吸音材等は、不燃材料・準不燃材料・難燃材料を使用すること。
(地震対策)
(2) 空気調和設備に対する耐震措置は、3―2―3(6)によること。
(水害対策)
(3) 機器・配管からの漏水が生じた際、コンピュータ、電源設備等に重大な影響が生じないよう、漏水範囲を局所化する等の対策を講ずること。
(その他の対策)
(4) 空気調和設備を構成する機器の故障時に、コンピュータシステム等の正常な稼働が確保されるよう、予備系統を設けることが望ましい。
3―4―3 集中監視制御装置・防犯設備
(火災対策)
(1) 法令に定めがない場合であっても、防災センター・中央管理室の機能が確保できるよう、集中監視制御装置を設けることが望ましい。
(地震対策)
(2) 集中監視制御装置に対する耐震措置は、3―2―3(6)によること。
(3) 地震時及び地震直後の建築物・コンピュータ機器の管理・制御のために、地震計を設置し、必要に応じて警報・管制運転指示が出せるようにすることが望ましい。
(水害対策)
(4) 各所に設けた漏水検知機の警報は、集中監視制御装置に警報することが望ましい。
(その他の対策)
(5) 防犯上の監視・識別・感知・警報は、集中監視することが望ましい。
(6) 電源設備・空気調和設備の正常運転を確保し、異常運転・事故等の状況を把握するため、これらを可能とする集中監視装置を設置することが望ましい。
(7) 防犯設備には、予備電源を設けること。
4 安全対策基準項目一覧表
3で記述した安全対策の各項目を一覧表にして以下に示す。
表中の符号は以下による。
★印は、本文中に「………こと。」と表現されていることを示す。
☆印は、本文中に「………望ましい。」と表現されていることを示す。
FA床は、フリーアクセスフロアーを示す。
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