建設省住街発第九三号
昭和六一年一二月二七日

建設省住宅局長通達



総合設計に係る許可準則について


建設基準法第五九条の二の規定に基づく敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例制度(以下「総合設計制度」という。)は、昭和四六年の制度創設以来、土地の適切な高度利用、敷地内空地の確保等による市街地環境の整備改善及びこれらと併せた市街地住宅の供給の促進等に積極的に活用されてきたところであるが、近年、大都市の既成市街地等において総合設計制度の活用により土地の適切な高度利用及び市街地環境の整備改善をさらに積極的に推進することが要請されている。このため、総合設計制度における容積率に係る許可の基準等を見直し、「総合設計許可準則」(昭和四六年九月一日付け建設省住街発第四八号建設省住宅局長通達「総合設計に係る許可準則について」別添)を別添のとおり改めたので通達する。今後の総合設計制度の運用に当たっては、左記の点に十分留意し、その積極的な活用を図るよう努められたい。
なお、改正後の同許可準則に関する改たな技術基準については別途通達する。
また、市街地住宅総合設計に係る許可準則についても、今回の改正においてこれに係る許可基準を一部見直した上で総合設計許可準則に総合することとした。したがって今後は改正後の同許可準則により運用するものとし、これに伴い、「市街地住宅総合設計許可準則」(昭和五八年二月七日付け建設省住街発第一一号建設省住宅局長通達「市街地住宅総合設計制度の新設について」別添)は廃止する。


(1) 本許可準則は総合設計制度に係る許可に関する一般的な考え方を示すものであるので、建築計画の内容、敷地の位置、敷地の周囲の土地利用の状況、都市施設の整備の状況等からこれによることが必ずしも適当でないと認められる場合においては、総合的な判断に基づいて適切に運用すること。
(2) 総合設計制度による建築物が良好な建築・住宅ストックの形成に資するものとなるよう十分に指導を行うこと。
(3) 総合設計制度により創出される敷地内空地については、緑化等を行うことにより良好な市街地環境の形成に資するものとなるよう十分に指導を行うこと。
(4) 総合設計制度の活用のためには、民間の開発事業者、建築技術者等の理解を得ることが不可欠であるので、この制度について周知に努められたい。また、優良再開発建築物整備促進事業等敷地の共同化を伴う事業に対する助成制度及び住宅金融公庫、日本開発銀行等の再開発融資制度との併用が有効であると考えられるので、これらの諸制度も併せて周知に努めること。
(5) 総合設計制度に係る許可の事務の執行に当たっては、今後ともその迅速化に努めること。


(別添)

総合設計許可準則

第1 許可方針

総合設計制度は、適切な規模の敷地における土地の有効利用を推進し、併せて敷地内に日常一般に開放された空地(以下「公開空地」という。)を確保させるとともに、良好な市街地住宅の供給の促進等良好な建築物の誘導を図り、もって市街地環境の整備改善に資することを目的とするものである。
建築基準法(以下「法」という。)第五九条の二第一項の許可(以下「許可」という。)は、第2の許可基準に従い、敷地周辺の都市施設の状況、土地の状況、建築群としての防災性、地域の特殊性等を勘案し、総合的判断に基づいて運用するものとする。

第2 許可基準

1 法第五二条第一項から第六項までの規定による容積率(以下「基準容積率」という。)に係る許可(容積率の割増し)は、次に掲げるところによるものとする。

(1) 接道

建築物の敷地が、原則として幅員六メートル以上(商業地域、近隣商業地域、工業地域又は工業専用地域においては八メートル以上)の道路に接しているものであること。

(2) 容積率の割増し等

容積率の割増しは、公開空地の面積の敷地面積に対する割合及び建築物の敷地面積に応じて行うものとし、割増し後の容積率の限度は、基準容積率の一・五倍と基準容積率に一〇分の二〇を加えたもののうちいずれか小さいものとする。
ただし、市街地住宅総合設計又は再開発方針等適合型総合設計(それぞれ左表の(い)欄に掲げる地域又は区域で同表(ろ)欄に掲げる建築物を対象とするものをいう。)にあっては、同表の区分に従い、同表(は)欄に掲げるものを限度とする。

 
(い)
(ろ)
(は)
 
地域又は区域
対象建築物
割増し後の容積率の限度
市街地住宅総合設計
市街地住宅の供給の促進が必要な三大都市圏等の既成市街地等における第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域又は準工業地域
延べ面積の四分の一以上を住宅の用に供する建築物
基準容積率の一・七五倍と基準容積率に住宅の用に供する部分の延べ面積に対する割合に応じて一〇分の二三・七五から一〇分の三〇までの範囲内の値を加えたもののうちいずれか小さいもの
再開発方針等適合型総合設計
都市再開発法第二条の三第一項に規定する都市再開発の方針(この表において「再開発方針」という。)において定められた同項第二号に規定する地区等内で地区計画等により高度利用を図るべきとされた区域
再開発方針、地区計画等に適合する建築物
基準容積率の一・五倍と基準容積率に一〇分の二五を加えたもののうちいずれか小さいもの

なお、特別に高度利用を図る必要があるとされた区域における再開発方針等適合型総合設計については、前表(は)欄に掲げる限度について、再開発方針の内容に即して、特別な容積率の割増しを行うことができるものとする。

(3) 都心居住型総合設計

本制度については(1)及び(2)によらずに、次の1)から4)までによるものとする。
1) 対象区域

次に掲げる基準に該当する区域であること
イ 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法第三条の六第一項に規定する住宅市街地の開発整備の方針において、都心居住の回復を図るため、土地の高度利用により住宅供給を促進することとされた地区等であること。
ロ 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域又は準工業地域内であること。

2) 対象建築物

延べ面積の四分の三以上を住宅の用に供する建築物であること。ただし、延べ面積の三分の二以上を住宅の用に供する建築物にあっては、地域の状況に応じ、日常生活を支える施設の用に供する部分を住宅とみなすことができる。

3) 接道等

建築物の敷地が、原則として幅員八メートル以上の道路に接し、かつ当該道路に沿って設けられた歩道状空地と当該道路とを併せた空地の幅員が、原則として一二メートル以上であること。

4) 割増し後の容積率の限度

割増し後の容積率の限度は、基準容積率の二倍と基準容積率に一〇分の四〇を加えたもののうちいずれか小さいものとする。

(4) 保育所等に関する容積率の割増し

都市の適切かつ合理的な複合高度利用を図るため、駅、駅近傍等の建築物に保育所その他の生活支援施設(以下「保育所等」という。)が設けられる場合にあっては、当該建築物に対して、公開空地の面積の敷地面積に対する割合に応じて行う容積率の割増しと併せ、基準容積率の一・五倍と基準容積率に一〇分の二〇を加えたもののうちいずれか小さいもの(市街地住宅総合設計又は再開発方針等適合型総合設計にあっては(2)の表(は)欄に掲げる限度、都心居住型総合設計にあっては(3)4)に規定する限度)の範囲内で、当該保育所等の部分((3)2)に規定する日常生活を支える施設の用に供する部分を除く。)の床面積の合計に相当する特別の容積率の割増しを行うことができるものとする。ただし、この割増しは、保育所等の数が不足している又は不足するおそれがあることから、保育所等の確保が必要であると認められる場合に実施するものとする。

(5) 自動車車庫に関する容積率の割増し

1) 都市の適切な高度利用及び敷地内空地の確保と併せて、周辺の路上駐車を解消し、市街地環境の整備改善と道路交通の改善を図るため、まとまった規模の一般公共の用に供される自動車車庫を設置する建築物を建築する場合にあっては、この自動車車庫の部分に対して、公開空地の面積の敷地面積に対する割合に応じて行う容積率の割増しと併せ、基準容積率の一・五倍と基準容積率に一〇分の二〇を加えたもののうちいずれか小さいもの(市街地住宅総合設計又は再開発方針等適合型総合設計にあっては、(2)の表(は)欄に掲げる限度)の範囲内で、特別な容積率の割増しを行うことができるものとする。ただし、この割増しは、商業地域若しくは近隣商業地域又はこれらの周辺の地域のうち自動車の路上駐車により交通上の支障が生じていることから、駐車施設の確保が必要であると認められる区域内に限って実施するものとする。
2) 共同住宅については、必要な自動車車庫を確保し、併せて敷地内空地を居住者のコミュニティー形成の場として活用される等により質の高いものとするため、地下に設ける附属自動車車庫の部分に対して、基準容積率の一・五倍と基準容積率に一〇分の二〇を加えたもののうちいずれか小さいもの(市街地住宅総合設計又は再開発方針等適合型総合設計にあっては、(2)の表(は)欄に掲げる限度、都心居住型総合設計にあっては(3)4)に規定する限度)の範囲内で特別の容積率の割増しを行うことができるものとする。

2 法第五五条第一項の規定に係る許可(絶対高さ制限の緩和)を受けることのできる建築物は、同項の規定の適用により確保される天空光と同量以上の天空光を確保しうるものであること。
3 法第五六条第一項の規定に係る許可(斜線制限の緩和)は次に掲げるところによるものとする。

(1) 道路斜線制限又は隣地斜線制限の緩和を受けることのできる建築物は、同項の規定の適用により道路又は隣地に対して確保されている天空光と同量以上の天空光を確保しうるものであること。
(2) 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域においては、原則として、北側斜線制限を緩和しないものとする。ただし、塔状建築物等で隣地に対する日照条件を十分考慮したものについては、この限りでないものとする。


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