建築基準法の一部を改正する法律(昭和六二年六月五日法律第六六号。以下「改正法」という。)、建築基準法施行令の一部を改正する政令(昭和六二年一〇月六日政令第三四八号)及び建築基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和六二年一一月六日建設省令第二五号)によりそれぞれ改正された後の建築基準法(以下「法」という。)、建築基準法施行令(以下「令」という。)及び建築基準法施行規則(以下「規則」という。)については、昭和六二年一二月三日付け建設省住指発第三九四号をもつて建設事務次官から通達されたところであるが、その細目は左記のとおりであるので、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知されるとともに、今後の運用に遺憾のないよう措置されたい。
第一 木造建築物等に係る制限の合理化
一 大断面の集成材等を用いて建築される木造建築物等の特例
(一) 構造耐力上必要な軸組(令第四六条第二項関係)
構造耐力上主要な部分である柱及び横架材に大断面の集成材等を使用する建築物又は建築物の構造部分(以下「大断面木造建築物等」という。)については、柱、はり等を一体化し、又は金物等を介して剛に接合することにより、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等と同様の剛節架構として建築物全体を構成することが可能であることにかんがみ、安全上必要な技術的基準に適合する大断面の集成材等を用いて建築される木造建築物等について、壁を設け又は筋かいを入れた軸組を配置することを要しないこととした。
壁を設け又は筋かいを入れた軸組を配置することを要しない木造建築物等の技術的基準は、次のとおりである。
イ 構造耐力上主要な部分である柱及び横架材に使用する集成材その他の木材の品質が、強度及び耐久性に関し建設大臣の定める基準に適合していること。
ロ 構造耐力上主要な部分である柱の脚部が、一体の鉄筋コンクリート造の布基礎に緊結している土台又は鉄筋コンクリート造の基礎に緊結していること。
ハ 構造耐力上主要な部分である柱及び横架材が、原則として小径一五センチメートル以上、かつ、断面積三〇〇平方センチメートル以上であること。
ニ 構造耐力上主要な部分である継手又は仕口が、構造計算又は実験によつてその部分の存在応力を伝えるように緊結していることが確かめられたものであること。
ホ 建設大臣の定める基準に従つた構造計算によつて、構造耐力上安全であることが確かめられた構造であること。
(二) 構造耐力上主要な部分である継手又は仕口(令第四七条第一項関係)
かすがい打、込み栓打等の伝統的で実績のある継手又は仕口のほかに、令第四六条第二項第一号ニの規定に適合する新しい継手又は仕口を本規定に適合するものとして位置付けることとした。
(三) 学校の木造の校舎(令第四八条第二項関係)
令第四六条第二項第一号イからホまでに掲げる基準に適合する大断面木造建築物等とした学校の木造の校舎については、(一)と同様の理由から、外壁に一定の筋かいを使用すること等の従来の規定を適用しないこととした。
(四) 地震力(令第八八条第二項関係)
地盤が著しく軟弱な区域として特定行政庁が指定し、木造建築物について地震力の割増しを義務付けている場合にあつても、令第四六条第二項第一号イからホまでに掲げる基準に適合している木造建築物については、地震力の割増しを行う必要がないこととした。
(五) 広告塔又は高架水槽等(令第一四一条第二項関係)
大断面木造建築物等に係る令第四六条第二項の規定を広告塔又は高架水槽等にも準用することとした。なお、これらの工作物については、従来より令第三章第八節の構造計算の規定は準用していないため、令第四六条第二項第一号ホは準用しないこととした。
二 防火壁設置義務の合理化
(一) 大断面の構造用集成材等を用いる場合の特例(法第二六条第二号ロ及び令第一一五条の二第一項関係)
火災の発生のおそれの少ない用途に供する建築物で、防火上必要な技術的基準に適合するものについては、防火壁の設置を要しないこととした。
防火壁の設置を要しない木造建築物等の技術的基準は、次のとおりである。
イ 一の(一)のイからニまでに掲げる基準に適合していること。
ロ 地階を除く階数が二以下であること。
ハ 二階の床面積が原則として一階の床面積の八分の一以下であること。
ニ 外壁、軒裏及び床が原則として防火構造であること。
ホ 地階の主要構造部が耐火構造等であること。
ヘ 火気使用室が耐火構造の床若しくは壁又は甲種防火戸で区画されていること。
ト 各室及び各通路について、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げが不燃材料、準不燃材料若しくは難燃材料でされ、又はスプリンクラー設備等が設けられていること。
チ 主要構造部である柱又ははりを接合する継手又は仕口が、通常の火災時の加熱に対して耐力の低下を有効に防止することができる構造であること。
リ 建設大臣の定める基準に従つた構造計算によつて、通常の火災により建築物全体が容易に倒壊するおそれのないことが確かめられた構造であること。
(二) 周辺状況等により判断する場合の特例(法第二六条第三号及び令第一一五条の二第二項関係)
周辺地域が農地等であり、特定行政庁が避難上及び延焼防止上支障がないと認めることにより防火壁の設置を要しない建築物は、畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場の上家(以下「畜舎等」という。)とした。
三 木造建築物に係る高さ制限の合理化等
(一) 木造建築物に係る高さ制限の合理化(法第二一条第一項及び令第一二九条の二関係)
近年における木造建築物の構造耐力性能及び防火性能に関する実験研究の成果等により、高さの制限を超える大規模木造建築物にあつても火災、地震等に対して安全な設計を行うことが可能となつたことを踏まえ、安全上及び防火上必要な技術的基準に適合し、かつ、一定の用途に供する大規模木造建築物については、高さが一三メートル又は軒の高さが九メートルを超えて建築することができることとした。
高さが一三メートル又は軒の高さが九メートルを超えて建築することができる木造建築物の技術的基準及び用途は、次のとおりである。
イ 一のイからニまで並びに二の(一)のロ及びニからリまでに掲げる基準に適合していること。
ロ 倉庫及び自動車車庫以外の用途に供するものであること。
(二) 建築確認(法第六条第一項関係)
改正法によつて建築することが可能となつた高さが一三メートル又は軒の高さが九メートルを超える大規模木造建築物については、その建築計画を建築確認にかからしめることとした。
(三) 構造計算(令第八二条の二から第八二条の四まで関係)
改正法によつて建築することが可能となつた高さが一三メートル又は軒の高さが九メートルを超える大規模木造建築物については、一定規模以上の鉄骨造、鉄筋コンクリート造等と同様に、層間変形角、剛性率、偏心率、保有水平耐力等の構造計算を行うこととした。
なお、従来は令第八二条の二から第八二条の四までに規定する構造計算を必要としない建築物を「木造建築物等」と定義していたが、改正法により、当該構造計算を必要とする建築物を「特定建築物」と定義した。
(四) 仮囲い(令第一三六条の二の五関係)
改正法によつて建築することが可能となつた高さが一三メートル又は軒の高さが九メートルを超える大規模木造建築物については、工事現場の周辺に仮囲いを設けなければならないこととした。
四 準防火地域内の建築物の防火制限の合理化(法第六二条第一項及び令第一三六条の二関係)
近年の火災に関する研究の進展並びに木造建築物の防火性能の向上に関する構法及び計画技術の確立、普及等を踏まえ、防火上必要な技術的基準に適合する三階建て木造建築物については、準防火地域内で建築することができることとした。
準防火地域内で建築することができる三階建て木造建築物の技術的基準は、次のとおりである。
イ 外壁の開口部の構造及び面積が、隣地境界線等からの距離に応じて、延焼防止上必要な基準に適合していること。
ロ 外壁が、防火構造であり、かつ、その屋内側からの通常の火災時における炎及び火熱を有効に遮ることができる構造であること。
ハ 軒裏が防火構造であること。
ニ 主要構造部である柱、はり等が、通常の火災により建築物全体が容易に倒壊するおそれのない構造であること。
ホ 床又はその直下の天井が、それらの下方からの通常の火災時の加熱に対してそれらの上方への延焼を有効に防止することができる構造であること。
ヘ 屋根又はその直下の天井が、それらの屋内側からの通常の火災時における炎及び火熱を有効に遮ることができる構造であること。
ト 三階の室の部分とそれ以外の部分とが間仕切壁又は戸で区画されていること。
なお、準防火地域内における三階建て木造建築物については、規則第一条第一項の表(ほ)項に掲げる二以上の立面図に縮尺、開口部の位置及び構造並びに外壁及び軒裏の構造を明示することとしたので、本改正の趣旨を踏まえ適切な運用を行うこと。
五 軟弱地盤区域における木造建築物等の布基礎の構造の合理化(令第四二条及び第五三条関係)
木造及び組積造の建築物の不同沈下防止を図るため、特定行政庁が指定する軟弱地盤区域においては、木造及び組積造の建築物の布基礎は、一体の鉄筋コンクリート造とすることとした。また、この措置は、地震時における木造建築物の共振対策を目的とするものではないので地震力の割増しは行わないこととした。
なお、従来から令第八八条第二項の規定に基づき地盤が著しく軟弱な区域として特定行政庁が指定した区域内においては、木造及び組積造の建築物の基礎を鉄筋コンクリート造とするとともに、木造建築物については、地震力を割増することとしているが、当該区域は今回の改正に係る軟弱地盤区域に含まれるものである。
六 三階建て木造建築物の柱の小径の基準の合理化(令第四三条第二項関係)
近年、柱やはりの仕口を有効に補強する金物が開発されてきたこと等を踏まえ、三階建て木造建築物の一階の構造耐力上主要な部分である柱の小径について、柱と土台、はり等とをボルト締等により緊結し、かつ、構造計算等により構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、一三・五センチメートルを下回ることができることとした。
七 木材の許容応力度及び材料強度の合理化(令第八九条第一項及び第九五条第一項関係)
実大材の試験データの蓄積等を踏まえ、引張りに対する木材の許容応力度及び材料強度について見直しを行つた。
八 小屋裏隔壁の設置義務の合理化(令第一一四条第三項関係)
小屋組が木造である建築物のうち、初期火災の拡大防止のための二の(1)のトの基準に適合するもの並びに特定行政庁が避難上及び延焼防止上支障がないと認める畜舎等について、小屋裏隔壁の設置を必要としないこととした。
第二 建築物の形態制限の合理化
一 道路幅員による容積率制限の合理化
(一) 特定道路からの前面道路の延長による合理化(法第五二条第三項、令第一三五条の四の四及び規則第一条第一項関係)
本改正は、道路幅員による容積率制限について、敷地の近傍に広幅員の道路があることなどの敷地周囲の道路の状況を総合的に評価することとしたものである。
特定道路からの前面道路の延長については、建築確認申請書中の添付図書に新たに道路の配置図を加え、その中で明示させることとしたので、建築確認の審査等に当たつては、当該延長を正確に把握し、その的確な運用を図られたい。
なお、規則第一条第一項の表(ほ)項の道路の配置図の添付は、法第五二条第三項の規定の適用によりその延べ面積の敷地面積に対する割合が同項の規定の適用がないとした場合における同条第一項及び第二項の規定による限度を超えるものである建築物にのみ義務付けられたものであることに留意されたい。
(二) 壁面線の指定がある場合の合理化(法第五二条第五項関係)
本改正は、幅員が狭い道路の沿道の地域で壁面線の指定がある場合において、特定行政庁が敷地内に道路と一体的かつ連続的に有効な空地が確保されていること等の基準に適合すると認めて許可した建築物については、道路の境界線が当該壁面線にあるものとみなして道路幅員による容積率制限の規定を適用することにより、道路に沿つた有効な空地の確保と併せて土地の適切な高度利用を促進することとしたものである。
従つて、このような地域においては、法第四六条の規定に基づく壁面線の指定を機動的に行うとともに、本許可制度の積極的な活用に努められたい。なお、法第五二条第五項第一号の基準に適合する建築物としては、土地利用の状況からみて、前面道路と壁面線との間の敷地の部分に門又は塀が設置されず、当該部分が道路と一体的かつ連続的に有効な空地として確保されることが期待しうる商店街及び建築協定により同様の状態が期待しうる住宅街等における建築物が考えられるので、念のため申し添える。
また、本許可制度の適用に当たつては、優良再開発建築物整備促進事業等の補助制度や住宅金融公庫等による融資制度も併せて活用することが適当と考えられるので、担当部局との連携を図るとともに、本許可制度の活用について民間事業者等に対する周知に努められたい。
二 第一種住居専用地域内における建築物の高さの制限の合理化(法第五五条第一項関係)
近年の住宅形態の多様化と土地の高度利用の傾向等に伴う低層住宅地の土地利用の変化に対応するため、第一種住居専用地域内における建築物の高さの限度について、一〇メートル又は一二メートルのうちから都市計画で定めることとした。
高さの限度を一二メートルとした地区においては、日影規制の規定の適用について法別表第四(に)欄の(三)の日影時間の値を選択するなど建築基準法の他の規定についても地域の状況を踏まえた適切な運用を図られたい。
また、従来から設けられていた特定行政庁の認定による第一種住居専用地域内における建築物の高さの限度の一二メートルまでの緩和の規定は、都市計画により建築物の高さの限度を一〇メートルとした地区のみについて適用されることとなつたが、この規定についても、適切な住宅形態の確保及びオープンスペースの確保による良好な市街地環境の形成を図る観点から、引き続き積極的な活用に努められたい。
三 斜線制限の合理化(法第五六条、別表第三等関係)
道路斜線制限及び隣地斜線制限に関し、道路又は隣地の採光、通風等の環境の水準を維持しつつ、土地の適切な高度利用の促進及び良好な建築形態の確保を図ることを目的として、道路斜線制限については、その適用範囲の限定及び前面道路から後退した建築物に係る緩和を行い、隣地斜線制限については、一定の高さを超える部分が隣地境界線から後退した建築物に係る緩和を行うこととした。
本改正については、次のような関連規定にも留意の上、適切な運用を図られたい。
(一) 建築物の敷地が二以上の地域又は区域にわたる場合の道路斜線制限の適用(令第一三〇条の一一関係)
建築物の敷地が二以上の用途地域等にわたる場合には、当該建築物又は建築物の部分は、前面道路に面する方向で当該前面道路に接する敷地の部分の属する用途地域等内にあるものとして、道路斜線制限の適用範囲に係る距離を適用することとした。
(二) 道路斜線制限に係る建築物の後退距離の算定の特例(法第五六条第二項及び令第一三〇条の一二関係)
道路斜線制限に係る建築物の後退距離の算定上、次に掲げるものについては、建築物から除くこととした。
イ 建築物の地盤面下の部分
ロ 物置その他これに類する用途に供する建築物の部分で小規模なもの
ハ ポーチその他これに類する建築物の部分で小規模なもの
ニ 道路に沿つて設けられる高さが二メートル以下の門又は塀で一定の構造のもの
ホ 隣地境界線に沿つて設けられる門又は塀
ヘ 特定行政庁がその地方の気候風土の特殊性等を考慮して規則で定めた歩廊等
ト その他建築物の部分で高さが一・二メートルのもの
このうち、特定行政庁が規則で定めた歩廊等については、法第四四条第一項ただし書の許可を受けて設けられる渡り廊下、アーケード等に接続して敷地内に設けられる歩廊等の部分、多雪地域におけるいわゆる「がんぎ」等を想定したものであるので、適宜規則を定め、地域の気候・風土や土地の状況に即した適切な運用に努められたい。また、建築物の前面道路からの後退により確保される空間の維持が適切になされるよう建築物の設計者、施工者、所有者等に対し十分指導されたい。
(三) 前面道路の反対側に壁面線の指定等がある場合の道路斜線制限の緩和措置の廃止(令第一三五条関係)
前面道路の反対側に壁面線の指定等がある場合の道路斜線制限の緩和措置は、廃止することとした。
四 総合設計の許可に係る空地規模要件の引下げ(令第一三六条第二項関係)
高さ制限のみの緩和に係る総合設計の許可について、敷地内に確保しなければならない空地の面積の敷地面積に対する割合の最低限度を引き下げることとした。
総合設計制度については、従来よりその積極的活用に努めてきたところであるが、良好な建築計画の一層の推進を図るため、高さ制限のみの緩和に係る総合設計の許可については、空地の割合の要件の引下げを行つたものであるので、今後一層の活用が図られるよう努められたい。
五 総合的設計による一団地の建築物の取扱いの整備改善(法第八六条第二項から第五項まで並びに規則第一〇条の二及び第一〇条の三関係)
本改正は、総合的設計による一団地の建築物の取扱い(以下「総合的設計制度」という。)に係る規定について公告制度の整備及びその担保措置の明確化を行うことにより、その適用を受けた一団地内における建築物の建て替え等に適切に対応するとともに、既成市街地における協調的建築計画及びタウンハウス等についても本規定の円滑な活用を図ろうとするものであるので、次の諸点に留意し、本規定の積極的かつ的確な運用に努められたい。
(一) 法第八六条第三項の認定(以下「認定」という。)に際しては、規則第一〇条の三第二項により、認定の申請者より「公告区域内の土地の所有者その他の認定に利害関係を有する者に対する当該申請に係る建築物の計画に関する説明のために講じた措置を記載した書面」の提出を受けることとされたが、本書面の提出を受けた場合の認定に際しては、公告区域内での他の認定を受けるべき建築物の建築計画の有無を確認し、当該認定に係る建築物の建築計画との整合性が保たれることとなるよう可能な限り配慮されたい。
なお、本書面には、例えば、公告区域内の土地所有者等に対する説明会の開催、建築計画を記載した書面の回覧、掲示板への掲載等の措置を記載した書面が該当するので、念のため申し添える。
(二) 総合的設計制度の適用を受けた一団地の区域については、認定の円滑な実施及び状況の適確な把握が可能となるよう、台帳の整備等に努められたい。
(三) 改正法附則第二条により、改正法の施行以前に総合的設計制度の適用を受けた一団地の建築物については、改正法施行の日から六ケ月以内に特定行政庁が公告を行い、その公告をもつて新法第八六条第二項の公告とみなすこととしているので、公営住宅担当部局、住宅・都市整備公団等の事業者と連携して遺漏なきよう措置されたい。
(四) 総合的設計制度の適用に当たつては、建築協定の締結を指導する等により良好な市街地環境が形成されるよう努められたい。
第三 その他の改正
一 駐輪場の延べ面積への不算入(令第二条第一項第四号関係)
自転車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分(以下「駐輪場」という。)については、自動車の停留又は駐車のための施設の用途に供する部分と併せてその床面積の合計の五分の一までは容積率算定における延べ面積に算入しないこととしたが、この規定の適用により延べ面積から除外されることとなる駐輪場については、適切に維持・管理されるよう指導に努められたい。
二 間仕切壁の構造制限の合理化(令第一一四条第二項関係)
児童福祉施設等の防火上主要な間仕切壁を耐火構造等とすることとした。
本改正は、昭和六二年六月六日に発生した東京都東村山市の特別養護老人ホーム「松寿園」火災を契機として、児童、身体障害者、老人等の収容施設である児童福祉施設等についても、学校、病院、診療所等の施設と同様避難安全性を図る必要が高いと判断したので、所要の規定の整備を行つたものである。
三 排煙設備等の設置義務の合理化
(一) 排煙設備の設置義務の合理化(令第一二六条の二第一項関係)
高さが三一メートル以下の部分にある共同住宅の住戸で二〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は甲種防火戸若しくは乙種防火戸で区画されたもの及びスポーツ施設については、避難安全上有利な点を有していることにかんがみ、排煙設備の設置を必要としないこととした。
(二) 非常用の照明装置の設置義務の合理化(令第一二六条の四関係)
スポーツ施設については、学校及び体育館と同様に避難上の支障が極めて少ないので、非常用の照明装置の設置を必要としないこととした。
四 内装の制限の合理化
(一) 無窓の居室についての合理化(令第一二八条の三の二及び第一二九条第五項関係)
近年の火災に関する研究の進展により、窓その他の開口部を有しない居室のうち、天井の高さが六メートルを超えるものについては、火災によつて天井付近の温度が急上昇するおそれはなく、フラッシュオーバーの発生要因となる天井面の爆発的燃焼が起こりにくいことが明らかになつたため、内装の制限を行わないこととした。
(二) スポーツ施設についての合理化(令第一二八条の四第二項及び第三項並びに第一二九条第四項関係)
スポーツ施設については、その空間形態及び利用形態の特徴から、出火及び火災拡大の危険性が少なく、避難も容易であるため、内装の制限を行わないこととした。
(三) 共同住宅の住戸についての合理化(令第一二九条第一項関係)
耐火建築物である共同住宅の住戸で、床面積の合計二〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は甲種防火戸若しくは乙種防火戸で区画されたものについて、内装の制限を行わないこととした。
これは、共同住宅については、利用者が各住戸の構造を熟知している家族等に限定されていること、一住宅に一世帯が居住すると想定されるため、規模が大きくなつても利用者はそれほど増加しないこと及び建築計画上各住戸の独立性が高い構造を有しているため、各住戸について直接廊下に通ずる避難経路が確保されており、かつ、住戸外に延焼する危険性も少ないことにより、避難安全性が確保されるため、防火区画をすることにより内装制限の適用が除外される床面積の上限を一〇〇平方メートルから二〇〇平方メートルに引き上げたものである。
(四) 事務所等特殊建築物以外の建築物についての合理化(令第一二九条第四項関係)
耐火建築物の高さが三一メートル以下の部分にある居室で、床面積の合計一〇〇平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は甲種防火戸若しくは乙種防火戸で区画され、かつ、特殊建築物の用途に供しないものについて、内装の制限を行わないこととした。
小面積ごとに防火区画され、かつ、特殊建築物の用途に供しない部分の居室については、避難対象人員が少ないこと、火災の覚知が早期に行われること、区画外への避難経路が短いこと及び区画外に延焼するおそれが少ないことにより、内装制限を行わなくても避難安全が確保されることから合理化を行つたものである。
五 特殊な使用形態の昇降機の特例(令第一二九条の三第一項関係)
令第五章の三第二節の規定の適用を受けない昇降機として、特殊な使用形態の昇降機を追加することとした。
特殊な使用形態の昇降機として、一戸建ての住宅又は長屋建て若しくは共同住宅の住戸内に設置される小型、低速で昇降行程の短い、主として高齢者、身体障害者等の利用に供されるエレベーター(ホームエレベーター)を位置付けることを予定している。
六 非常用エレベーターの乗降ロビーの構造の合理化(令第一二九条の一三の三第三項関係)
従来、非常用エレベーターの乗降ロビーの出入口(昇降路の出入口を除く。)には甲種防火戸を設置することを義務付けていたが、この乗降ロビーが特別避難階段の附室等と兼用される場合には、当該ロビーから特別避難階段の階段室に通ずる出入口に甲種防火戸を設けることを義務付けないこととした。
これは、乗降ロビーと兼用される附室等の階段室に通ずる出入口に設けられる戸に対しては、特別避難階段の規定と同様に、火災に際して一定時間炎と煙を遮断することができる性能が期待できれば十分であることによるものである。
なお、令第一二三条第三項第九号の規定により、附室等から階段室に通ずる出入口には、甲種防火戸又は乙種防火戸を設けることが義務付けられていることに留意されたい。