建築基準法の一部を改正する法律(昭和六二年六月五日法律第六六号)、建築基準法施行令の一部を改正する政令(昭和六二年一〇月六日政令第三四八号)及び建築基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和六二年一一月六日建設省令第二五号)によりそれぞれ改正された後の建築基準法(以下「法」という。)、建築基準法施行令(以下「令」という。)及び建築基準法施行規則(以下「規則」という。)については、昭和六二年一二月三日付け建設省住指発第三九五号をもって住宅局長から通達されたところであるが、その細目及び運用の方針は左記のとおりであるので、関係市町村に対してもこの趣旨を十分周知徹底されるとともに、今後の施行に遺憾のないよう措置されたい。
第一 大断面の集成材等を用いて建築される木造建築物等の特例(令第四六条第二項関係)
令第四六条第二項の運用に当たっては、次の諸点に留意されたい。
(一) 同項第一号イに規定する構造耐力上主要な部分である柱及び横架材(間柱、小ばりその他これらに類するものを除く。)に使用する集成材その他の木材の品質についての強度及び耐久性に関する基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一八九八号で定めている。
(二) 同項第一号に適合する建築物又は建築物の構造部分を含む建築物の確認申請に当たっては、規則第一条に定める図書のほか、同条第二項第一号ホに規定する構造計算に係る構造計算書を添付するよう、建築主等を指導されたい。
(三) 同項第一号ホに規定する構造耐力上安全であることを確かめるための構造計算に関して建設大臣が定める基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一八九九号で定めている。同告示第四号に規定する「地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれがない場合」とは、次のいずれかの場合とする。
イ 実験又は構造計算により安全が確かめられた場合
ロ 金属板、ボード類その他これに類する材料で仕上げられている場合
第二 防火壁設置義務の合理化(法第二六条及び令第一一五条の二関係)
一 卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途(法第二六条第二号ロ関係)
法第二六条第二号ロに規定する「卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途」とは、体育館、屋内テニスコート、水泳場等天井の高い単一の大空間を有し、収納可燃物も少ないものである。
二 (廃止)
三 外壁及び軒裏の取扱い(令第一一五条の二第一項第四号関係)
令第一一五条の二第一項第四号に規定する「周囲の状況により延焼防止上支障がない」場合とは、次の(一)及び(二)に適合する建築物を除き、当該建築物から発生した火災により延焼するおそれのある建築物が当該建築物からおおむね三〇mの範囲内に存しないこととする。
(一) 当該建築物と一体となって利用することがやむを得ない軽微な器具庫、管理所等であること。
(二) 当該建築物から一〇m以上離れていること。
今後の同号の運用に当たっては、あらかじめ所轄の消防機関と十分調整を図るとともに、当該建築物及びその周囲の状況についての現況及び将来動向を勘案し、適切な法の執行を期されたい。
四 耐火構造の床又は壁を貫通する給水管、配電管その他の管の部分及びその周囲の部分の構造(令第一一五条の二第一項第六号関係)
令第一一五条の二第六号に規定する耐火構造の床又は壁を貫通する給水管、配電管その他の管の部分及びその周囲の部分の構造の基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇〇号で定めている。
五 主要構造部である柱又ははりを接合する継手又は仕口の構造(令第一一五条の二第八号関係)
令第一一五条の二第八号に規定する主要構造部である柱又ははりを接合する継手又は仕口の構造の基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇一号で定めている。
六 構造計算(令第一一五条の二第九号関係)
令第一一五条の二第九号に規定する構造計算の基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇二号で定めている。当該構造計算が当該基準に適合していることは、附則第一条第一項(は)欄に規定する構造計算書において応力算定及び断面算定として明示すべき事項であるので留意されたい。
第三 木造建築物に係る高さ制限の合理化(法第二一条第一項及び令第一二九条の二関係)
令第一二九条の二第二項の規定により、高さが一三m又は軒の高さが九mを超えることができない木造建築物の用途として、倉庫及び自動車車庫を定めているが、これは、これらの建築物の性格上天井高が大きくなることにより多量の可燃物が集積することが予想されるからである。
第四 木造建築物に係る構造計算の規定の整備(令第三章第八節関係)
一 特定建築物の取扱い(令第八二条の二から第八二条の四まで関係)
令第八二条の二から第八二条の四までに規定する「特定建築物」については、昭和六二年一一月一三日建設省告示第一九一五号により昭和五五年一一月二七日建設省告示第一七九一号の一部を改正し、その具体的内容を定めたところである。この告示改正は、高さが一三m又は軒の高さが九mを超える木造建築物に層間変形角等の構造計算を義務付けるためのものであり、木造建築物以外の建築物に関する構造計算の取扱いを変更するものではないので、念のため申し添える。
二 剛性率、偏心率等(令第八二条の三関係)
令第八二条の三第三号の規定に基づき建設大臣が安全上必要があると認めて定める基準については、昭和五五年一一月二七日建設省告示第一七九一号により定めていたところであるが、昭和六二年一一月一三日建設省告示第一九一六号により同告示の一部を改正し、新たに木造の建築物及び建築物の構造部分に関する基準を追加したところである。なお、鉄骨造又は鉄筋コンクリート造若しくは鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物等に関する基準の運用は、従前のとおりとする。
三 保有水平耐力(令第八二条の四関係)
令第八二条の四の規定に基づき各階の必要保有水平耐力を算出するときに必要な構造特性係数Dsの算出方法については、昭和五五年一一月二七日建設省告示第一七九二号により定めていたところであるが、昭和六二年一一月一三日建設省告示第一九一七号により同告示の一部を改正し、新たに木造の建築物及び建築物の構造部分に係るDsの算出方法を追加し、当該木造の建築物及び建築物の構造部分についてのDsの判定基準を表一として定めたところである。なお、木造以外の建築物のDsの判定基準の運用は、従前のとおりとする。
四 地震力(令第八八条関係)
令第八八条に規定する地震力の算出に必要な振動特性係数Rtの算出方法については、昭和五五年一一月二七日建設省告示第一七九三号により定めていたところであるが、昭和六二年一一月一三日建設省告示第一九一八号により同告示の一部を改正し、木造建築物に係るRtの算出方法を改めたところである。
五 集成材の許容応力度及び材料強度の取扱い
集成材の許容応力度及び材料強度については、昭和五五年一二月一日建設省告示第一七九九号により定められていたが、昭和六二年一一月一三日建設省告示第一九一九号により同告示の一部を改正し、その取扱いについて見直しを行った。
第五 準防火地域内の建築物の防火制限の合理化(法第六二条及び令第一三六条の二関係)
一 外壁の開口部の構造及び面積(令第一三六条の二第一号及び第二号関係)
(一) 令第一三六条の二第一号に規定する「当該隣地境界線等」には、隣地境界線等のうち、同号に規定する開口部から建築物の部分等によって有効に遮られている部分は含まれないものとして取り扱われたい。また、同条第二号に規定する当該隣地境界線等及び道路中心線についても、これに準じて取り扱われたい。
(二) 開口部が隣地境界線等から水平距離一m以内の範囲の内外にわたる場合においては、当該範囲内にある開口部の部分を一の開口部とみなして同条第一号を適用されたい。
(三) 同条第二号の外壁の開口部の面積に関する基準は昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇三号で定めている。同告示の運用については別記を参照されたい。
二 外壁の構造(令第一三六条の二第三号関係)
令第一三六条の二第三号に規定する外壁の構造に関する基準は昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇五号で定めている。同告示の運用については別記を参照されたい。
三 主要構造部である柱及びはりその他建設大臣が指定する建築物の部分の構造(令第一三六条の二第五号関係)
建築物の部分が令第一三六条の二第五号に規定する主要構造部である柱又ははりに該当するか否かは、当該部分が火災時に建築物全体の倒壊を防止する上で重要な部分であるか否かを基準に判断されたい。例えば、一般的な在来軸組工法による木造建築物では、主要構造部であるはりには、小屋ばり、棟木及びもやが含まれるものとする。なお、建設大臣が指定する建築物の部分並びに主要構造部である柱及びはりその他建設大臣が指定する建築物の部分の構造に関する基準は、それぞれ昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇四号及び昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇五号で定めている。同告示の運用については別記を参照されたい。
四 床又はその直下の天井の構造(令第一三六条の二第六号関係)
令第一三六条の二第六号において、床の一部が建設大臣の定める基準に適合する構造であり、かつ、床のその他の部分の直下の天井が建設大臣の定める基準に適合する構造である建築物は、当該規定に適合するものとして取り扱って差し支えない。なお、床又はその直下の天井の構造に関する基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇五号で定めている。同告示の運用については別記を参照されたい。
五 屋根又はその直下の天井の構造(令第一三六条の二第七号関係)
令第一三六条の二第七号に規定する屋根又はその直下の天井の構造についても、上記四に準じて取り扱われたい。なお、屋根又はその直下の天井の構造に関する基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一九〇五号で定めている。同告示の運用については別記を参照されたい。
六 三階の部分の区画(令第一三六条の二第八号関係)
令第一三六条の二第七号に規定する「ふすま、障子その他これらに類するもの」とは、火災時の接炎により直ちに炎が貫通するおそれのある間仕切壁又は戸をいい、普通板ガラス、厚さが三mm程度の合板等で造られたものがこれに該当する。
第六 軟弱地盤区域における木造建築物等の布基礎の合理化(令第四二条及び第五三条関係)
地盤が軟弱な区域として特定行政庁が区域を指定する基準は、昭和六二年一一月一〇日建設省告示第一八九七号で定めている。
第七 道路幅員による容積率制限の合理化(法第五二条第三項及び令第一三五条の四の四関係)
一 敷地から法第五二条第三項の特定道路までの延長の測定は、前面道路が特定道路に接する部分の中心点を起点として、前面道路の中心線に対して敷地の前面道路に接する部分の特定道路に最も近い点から下ろした垂線の交点までの水平距離によることを基本とし、個別の事例については具体的状況に即して的確に運用されたい。
二 規則第一条第一項の表(ほ)項に掲げる道路の配置図は、当該建築計画の容積率が法第五二条第三項による容積率の限度以下であることを判断するために必要な精度を有する測量図、地図等によることとされたい。
第八 第一種住居専用地域内における建築物の高さの制限の合理化(法第五五条関係)
第一種住居専用地域内における建築物の高さの制限の合理化については、別添のとおり建設省都市局長から各都道府県知事あて通達されているところであるので、留意されたい。
また、改正法附則第七条により、施行日において第一種住居専用地域であった区域は、高さの限度が一〇mと定められているものとみなされることとなっているので、その区域の把握ができるよう都市計画図の保管等所要の措置を講じられたい。
第九 斜線制限の合理化(法第五六条関係)
一 前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定について(法第五六条第二項及び令第一三〇条の一二関係)
建築物の後退距離の算定に当たっては、次の諸点に留意されたい。
(一) 後退距離は、「建築物から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のもの」であり、地盤面下の部分その他政令で定める部分を除くほかは、軒、庇、バルコニー、出窓、屋外階段等も含めた建築物全体のうち道路に最も近い点で、前面道路ごとに敷地単位で算定すること。
(二) 後退距離の算定において建築物から除く部分の高さ(軒の高さを含む。)は、前面道路の路面の中心から算定すること。この場合、敷地の地盤面が前面道路より一m以上高い場合は、令第一三五条の二第一項の規定の適用があること。
(三) 「物置その他これに類する用途に供する建築物の部分」には、自転車置場、自動車車庫等が含まれること。また、「床面積の合計が五m2以内であること」とされているが、この床面積には地階の床面積は算入されないこと。
(四) 「ポーチその他これに類する用途に供する建築物の部分」とは、建築物の玄関等に設けられるもので壁等で囲まれていないものをいい、車寄せ等は含まれるが、玄関以外に設けられる通常の庇等は含まれないものであること。
(五) 「道路に沿って設けられる高さが二m以下の門又は塀(高さが一・二mを超えるものにあっては、当該一・二mを超える部分が網状その他これに類する形状であるものに限る。)」とは、高さが一・二mを超える部分が金網で造られているなど採光、通風等の道路上の環境に支障のないものをいうこと。
二 隣地との関係についての建築物の各部分の高さの制限に係る建築物の最小の水平距離の算定について(法第五六条第一項第二号関係)
法第五六条第一項第二号の最小の水平距離の算定については、建築物の一定の高さ(二〇m又は三〇m)を超えるすべての部分のうち隣地境界線に最も近い点で隣地境界線ごとに敷地単位で算定することとされたい。
第一〇 総合的設計による一団地内の建築物の取扱い(法第八六条関係)
一 総合的設計による同一敷地内建築物に関する法第八六条第二項の公告事項は、規則第一〇条の二により「一団地の区域」とされたが、これは一団地の区域が特定されるように地番をもって公告することとされたい。なお、公告の方法は、原則として公報に掲載することとされたい。
二 総合的設計による一団地内において、法第八六条第三項の認定を行うに際しては、防火上の観点に関し、あらかじめ所轄の消防機関と十分協議されたい。
第一一 間仕切壁の構造制限の合理化(令第一一四条第二項関係)
本改正により新たに制限の対象となる児童福祉施設等については、これらの施設の中に財政基盤の弱いものが多数存在している実態にかんがみ、施設の管理・運営の一環として行われる便所、浴室、食堂等の改修及び屋根、外壁等の部分的な補修については、法第三条第三項第三号の増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替に該当せず、当該施設が同条第二項の規定の適用を受けるものとして取り扱われたい。
第一二 小屋裏隔壁の設置義務の合理化(令第一一四条第三項関係)
令第一一四条第三項第二号に規定する「その周辺地域が農業上の利用に供され、又はこれと同様の状況にあって、特定行政庁が当該建築物の構造及び用途並びに周囲の状況により避難上及び延焼防止上支障がないと認める」場合の判断基準については、第二の二と同様の取扱いとされたい。
第一三 排煙設備の設置義務等の合理化(令第一二六条の二第一項第二号、第一二六条の四第三号、第一二八条の四第二項及び第三項並びに第一二九条第四項関係)
本改正により、スポーツ施設について新たに排煙設備の設置、非常用の照明装置の設置又は内装の制限が不要になったが、特に、ボーリング場については、この合理化の対象となるボーリング場としては、スポーツ施設として専らボーリングのみを行う施設が該当するものであり、現在一般的に営業の用に供しているボーリング場のように利用形態等から見て遊戯場等他の用途に供する部分と一体とした利用が予想されるものは該当しないものとして取り扱われたい。