建設省経民発第五二号・建設省都計発第一四〇号・建設省都再発第一三一号・建設省住街発第一二四号
昭和六三年一二月二二日

建設省建設経済局長・建設省都市局長・建設省住宅局長から各都道府県知事・各指定都市の長あて

通達


都市再開発法及び建築基準法の一部改正について


標記については、昭和六三年一二月二二日付け建設省都再発第一二九号をもって建設事務次官から通達されたところであるが、さらに左記の事項に留意し、遺憾のないようにされたい。
なお、貴管下関係機関に対しても、この旨周知徹底方お願いする。

第1 市街地再開発事業の推進について

1 施行区域要件の緩和について

市街地再開発事業の施行区域要件については、耐火建築物に関する条件が緩和され(都市再開発法(昭和四四年法律第三八号)第三条)、これにより、市街地再開発促進区域の区域要件(都市再開発法第七条第一項)及び個人施行者の施行の認可の基準(都市再開発法第七条の一四)も緩和された。
本改正により、市街地再開発事業の施行区域内の耐火建築物の割合の算定に当たり耐火建築物に含めないこととされている建築面積の小さい耐火建築物の範囲が建築面積一〇〇m2未満のものから建築面積一五〇m2未満のものまで拡大されるとともに、新たに、容積率が当該区域に係る高度利用地区に関する都市計画において定められた容積率の最高限度の三分の一未満である耐火建築物は耐火建築物に含めないこととされ、これにより、小規模で利用効率の悪い耐火建築物が密集し、十分な公共施設が確保されていない地区、工場跡地、臨海部の倉庫群等土地の高度利用が図られないまま放置されている地区等における市街地再開発事業の促進が期待されるものであるので、この趣旨に留意して市街地再開発事業の一層の推進に努めること。

2 権利変換手続の特則の拡充等について

従来個人施行者又は市街地再開発組合の施行する第一種市街地再開発事業については施行区域内の土地又は物件に関し、権利を有する者のすべての同意を得た場合には権利変換手続に関する規定の一部によらないで権利変換手続を行うことができるとする特則が設けられているが、本改正により地方公共団体又は公団等の施行する第一種市街地再開発事業についてもこの権利変換手続の特則によることができることとされるとともに(都市再開発法第一一〇号)、第二種市街地再開発事業についても譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申し出をした者(既に他の工区において建築施設の部分若しくは施設建築物の一部についての借家権又は施設建築敷地若しくは施設建築物に関する権利を取得したため、当該申出に基づき権利を取得することのない者を除く。)のすべての同意を得た場合には管理処分手続に関する規定の一部によらないで管理処分手続を行うことができるとする特則が設けられた(都市再開発法第一一八条の二五の二)。
権利変換手続は管理処分手続においては、権利者のニーズ、施設建築物の利用形態等を勘案の上、必要に応じこれらの特則を適切に活用することにより、事業の円滑な実施に努めること。

第2 再開発地区計画制度の創設について

1 再開発地区計画制度の活用について

(1) 再開発地区計画制度は、相当規模の土地の区域における土地利用転換を円滑に推進するため、都市基盤施設と建築物等の一体的な整備に関する計画に基づき、事業の塾度に応じて市街地のきめ細かな整備を段階的に進めることにより、都市の良好な資産の形成に資するプロジェクトを誘導する手段として創設された制度であるので、その積極的な活用に努めること。特に、都市の枢要な位置における相当規模の低・未利用地について、必要な公共施設の整備を伴いつつ一体的に再開発することにより土地の高度利用を図る場合には、原則として本制度を活用すること。
(2) 本制度は、工場、倉庫、鉄道操車場又は港湾施設の跡地等の相当規模の低・未利用地における一体的な土地利用転換のほか、埋立地等における開発、老朽化した住宅団地の建替え、木造家屋が密集している市街地の再開発等の場合においても活用できるものであること。
(3) 本制度は、現況の土地利用から新たな土地利用への転換を計画的に誘導する観点から、都市機能の更新を図る上で必要な都市基盤施設の整備を伴いつつ、当該再開発地区計画に定められた内容に照らして特定行政庁が認定等を行うことにより用途地域による建築物の制限を緩和することができるものであり、用途地域の都市計画を存置しつつ、それと異なる内容の都市計画を定めることができる制度として構成されているものであること。

2 再開発地区計画の策定に当たっての基本的な考え方について

(1) 再開発地区計画制度は、相当規模の土地の区域における土地利用転換を円滑に推進するため、市街地環境の改善、都市における諸活動の効率化、美観の創出、良好なコミュニティの形成、地域の交通条件の改善、地域経済の活性化、文化の創造等に寄与する都市空間の設計による一体的かつ総合的な市街地の整備に資するプロジェクトを誘導する手段であるので、再開発地区計画の策定に当たっては、次の点に配慮すること。

1) プロジェクトの都市に対する貢献を総合的に評価し、その内容が的確に担保・誘導されるように定めること。
2) プロジェクトが交通等周辺環境に及ぼす影響を検討し、これに対する適切な対策が講ぜられるように定めること。

(2) 事業の実施が相当期間にわたる場合等においては、あらかじめ、再開発地区計画の目標並びに土地利用に関する基本方針その他の当該区域の整備及び開発に関する方針(以下「再開発地区計画の方針」という。)を定めた上、事業の熟度に対応して都市再開発法第七条の八の二第二項第二号に規定する施設(以下「二号施設」という。)の配置及び規模並びに再開発地区計画を必要に応じ順次段階的に定めること。
(3) 再開発地区計画に関する都市計画を定めるに当たっては、その対象となる区域及びその周辺において定められている他の都市計画と併せて当該区域における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新が図られるように定めること。この場合には、以下の点に留意すること。

1) 再開発地区計画を定めようとするときは、用途地域に関する都市計画は、原則として変更しないものとすること。ただし、プロジェクトが完成し、又は概成した時点において、当該再開発地区計画の区域において形成された良好な市街地環境の保全に配慮しつつ、当該区域についてその土地利用にふさわしい用途地域に関する都市計画に変更して差し支えないものであること。
2) 再開発地区計画の区域における土地利用転換に伴い、都市施設等に関する都市計画の見直しが必要となるときは、これを併せて行うこと。なお、土地利用転換による交通上の影響が広範に生ずると認められる場合においては、土地利用転換が適切になされるとともに効率的な都市活動が確保されるよう、都市交通に関する広域的な検討を行い、適宜都市計画道路の見直しを行うこと。

3 再開発地区計画の区域について

(1) 再開発地区計画の区域は、土地利用転換の動向の顕著な土地の区域及びその周辺の地域の状況を考慮し、都市機能の更新を一体的に行うべき土地の区域として適切なものとなるように定めること。

この場合において、当該区域の面積の下限は、おおむね一ヘクタールが基準として考えられるが、区域及びその周辺の地域における土地利用の状況、公共施設の配置等を考慮の上、必要な場合には、これを下回ることができるものであること。

(2) 再開発地区計画の区域は、これを段階的に定める場合にあっても、その各々が一以上の建築物を含む街区又はこれに準ずる区域で、一団の市街地環境の形成を行う単位として適切なものとなるように定めること。
(3) 再開発地区計画の区域の境界、段階的に再開発地区計画を定める場合の当該整備計画の区域の環境及び4(3)(ハ)3)に該当する場合における区域内の細区分の境界は、原則として道路その他の施設、河川その他の地形、地物等土地の範囲を明示するのに適当なものにより定めることとし、これにより難い場合には、土地所有の状況、土地利用の現況及び将来の見通し、用途地域の指定状況、再開発地区計画において定めることとなる道路等の施設の配置等を勘案して、敷地境界線等によりできる限り整形となるように定めること。

4 再開発地区計画の策定の基準について

(1) 再開発地区計画の方針

(イ) 再開発地区計画の内容は、再開発地区計画の方針、二号施設の配置及び規模並びに再開発地区整備計画により構成されるが、再開発地区計画の方針は、当該再開発地区計画の目標及び当該区域の土地利用転換の方向を示す総合的な指針として定められ、これに基づき再開発地区計画が定められ、また、これを踏まえて都市再開発法第七条の八の四の規定に基づく要請が行われることとなるので、誘導すべき市街地の態様等について関係権利者、住民等が容易に理解できるように定めること。
(ロ) 再開発地区計画の方針として定めるべき事項は、次のとおりであること。

1) 再開発地区計画の目標
2) 土地利用に関する基本方針
3) 都市基盤施設の整備の方針
4) 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の整備の方針
5) その他当該地区の整備及び開発に関する方針

(ハ) 都市再開発法第七条の八の二第五項の規定により、当面建築物若しくは建築敷地の整備又はこれらと併せて整備されるべき公共施設の整備に関する事業が行われる見込みがないときその他二号施設の配置及び規模又は再開発地区整備計画を定めることができない特別の事情があるときは、再開発地区計画の区域の全部又は一部について二号施設の配置及び規模又は再開発地区整備計画を定めることを要しないこととされているが、「特別の事情があるとき」とは、再開発地区計画の区域が広い範囲にわたり、土地の所有者その他の利害関係を有する者の意見調整に時間を要する等の場合であり、当該事情が解消した場合には、二号施設の配置及び規模又は再開発地区整備計画を定めること。この場合において、再開発地区整備計画を定める前に当該再開発地区計画の区域に必要な二号施設を適切な配置及び規模で定めること。ただし、幹線道路に接している土地の区域など土地利用転換に当たって必要な公共施設が整備されている区域に限って再開発地区整備計画を定める場合にはこの限りでないこと。
(ニ) 建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)第六八条の三第四項の規定により読み替えられた同法第四八条第二項から第八項ただし書に規定する用途の例外許可を行おうとする場合には、土地利用計画に関する基本方針に定める内容がその前提となるので、これに留意して土地利用に関する基本方針において土地利用転換の方向及び市街地の環境形成上の目的が明示されるように記述すること。
(ホ) 誘導すべき都市機能については、土地利用に関する基本方針において必要に応じ列挙又は例示する等の方法により、その具体的な内容を明らかにするように努めること。
(ヘ) 新たな土地利用への転換に伴い整備が必要となる都市計画施設については、都市基盤施設の整備の方針において、必要に応じ、地区外のものについても記述して差し支えないものであること。
(ト) 再開発地区計画を段階的に定めることが想定される場合には、建築物等の整備の方針において、必要に応じ就業人口、住宅の予定戸数等に関する事項を記述すること。

(2) 二号施設及び地区施設

(イ) 道路

1) 土地利用の転換に当たって基本となる道路については二号施設として定めることとし、区画街路等は原則として地区施設として定めること。なお、都市の主要な骨格をなす道路等については、幹線街路の都市計画を定めるように努めること。
2) 道路の配置及び規模は、土地利用転換により新たに形成される市街地における建築物の用途及び空間の構成等を考慮し、再開発地区計画の区域及びその周辺において都市計画に定められている道路等と併せて一体的な道路網を形成するとともに、安全、防災、衛生等に関する機能が十分に確保され、かつ、新たな土地利用により生ずる交通に対応してこれを適切に処理し得るように定めること。
3) 道路の幅員は、二号施設については原則として一二m以上(歩行者の通行を前提としないものについては原則として八m以上)、地区施設については原則として六m以上とすること。
4) 商業、業務系の土地利用又は大規模建築が予定される街区については、その周囲の道路は、ふくそうする交通が円滑に処理されるように適切に配置され、かつ、十分な幅員が確保されるように定めること。

(ロ) 公園、緑地、広場その他の公共空地

1) 土地利用の転換に当たって基本となる公園、緑地、広場その他の公共空地については二号施設として定めることとし、それ以外の、主として地区内の居住者等の利用に供される小公園等の公園、緑地、広場その他の公共空地は原則として地区施設として定めること。なお、都市における避難地、レクリエーション、交流の場等としての機能をもつ基幹公園、広場等については、公園、広場等の都市計画を定めるように努めること。
2) 公園、緑地、広場その他の公共空地の配置及び規模は、再開発地区計画の区域の規模及び形状、水面等との関係、土地利用転換により新たに形成される市街地における建築物の用途及び空地の構成等を考慮し、当該区域及びその周辺において都市計画に定められている公園、緑地、広場その他の公共空地等と併せて一体的なオープンスペース系統が適切に確保され、かつ、新たな土地利用に対応して良好な都市環境の形成が図られるように定めること。
3) 再開発地区計画で道路の配置及び規模が定められている場合には、建築基準法第六八条の四の規定に基づく道路の位置の指定は、当該道路の配置に即して行うこととされているが、歩行者用道路、緑道、駐車場の車路等でそれに即して道路の位置の指定が行われると再開発地区計画の目標を達成する上で支障が生ずると判断するものについては、再開発地区計画においては公共空地として定めておくこと。

(ハ) 二号施設及び地区施設には都市計画施設を含まないこととされているので、二号施設又は地区施設として定められている道路又は公園、緑地、広場その他の公共空地を都市施設として都市計画に定めようとするときは、併せて再開発地区計画に関する都市計画を変更すること。

(3) 再開発地区整備計画

(イ) 地区施設の配置及び規模

地区施設の配置及び規模については、(2)に従い定めるものであること。

(ロ) 建築物等の用途の制限

1) 建築物等の用途の制限は、再開発地区計画の目標を達成するため必要な都市機能が適切に配置されることにより、良好な居住環境の確保、商業その他の業務の利便の増進等に貢献するように定めること。この場合、用途の制限は、用途地域による制限を、緩和する内容は定めないこととされていること。
2) 複数の用途の複合した市街地の形成を図る必要がある場合には、諸機能がそれぞれ適切に更新されるとともに、各機能の効率的な連携が確保されつつ適切な用途構成が形成されるようにきめ細かく定めること。この場合においては、必要に応じ、街区を単位として用途制限を定める方法、階数又は高さにより立体的に用途の制限を定める方法を活用すること。

(ハ) 容積率の最高限度又は最低限度

1) 容積率の最高限度は、用途地域に関する都市計画に定められている容積率に関わりなく制限の緩和についても定められるものであること。
2) 容積率の最高限度は、以下により、都市環境に著しく支障をきたさず、かつ、優良なプロジェクトが誘導されるように適切に定めること。

(I) 区域の広域的な交通網を踏まえた都市構造上の位置関係を勘案すること。
(II) 交通施設及び供給処理施設の容量、周辺地域に対する環境上の影響等の検討及び当該プロジェクトの良好な地域社会の形成に対する寄与の程度等について総合的な評価を行い、これらの結果を踏まえること。

3) 当該区域における市街地空間の計画に当たって局所的に高い容積率の設定を必要とする場合、区域内の歴史的建造物等の保全を図る場合等においては、街区ごとに異なる容積率の最高限度を定める等、詳細な指定ができるものであること。この場合、局所的な公共施設に対する負荷の発生等によって、近隣の環境に著しい支障をきたすことのないように定めること。
4) 土地利用転換に当たって特定の用途を誘導することが望ましい場合には、必要に応じ、用途別に容積率の最高限度を定める等の方法を活用すること。

特に、大都市地域等住宅の確保が強く要請されている地域においては、再開発を通じて良好な都市型住宅の供給が積極的に行われるべきことを踏まえ、相当戸数の住宅の供給を図るプロジェクトについては、容積率の最高限度はこれに配慮して定めること。

5) 容積率の最高限度は、土地の高度利用を促進するため、高密度の利用を図るべき区域について定めること。この場合において、容積率の最低限度の数値は、用途地域に関する都市計画に定められている容積率の最高限度の数値の範囲内で適正な値を定めること。

(ニ) その他の建築物等に関する制限

1) 建築物等に関する制限は、一の計画事項を区域の一部について定め、又は街区ごとに定める等区域を区分してそれぞれ異なる計画内容を定めることができるものであること。
2) 市町村の条例による制限として定められることが見込まれる計画事項については、条例による制限にふさわしい内容となるように定めること。
3) 面積、高さ等の算定方法については、特段の定めをしない限り建築基準法の算定方法に関する一般的な原則によることとなるので、それと異なった算定方法を用いる特別の必要がある場合には、再開発地区計画に当該算定方法を明記すること。
4) 建ぺい率の最高限度は、敷地内に空地を適切に確保することにより、良好な環境を備えた各街区が形成されるように定めること。
5) 建築物の敷地面積の最低限度は、敷地の細分化を防止し、又は共同化を促進することにより、土地の健全な高度利用を図るべき区域について定めること。この場合において、建築物の敷地面積の最低限度の数値は、当該区域における敷地規模の現況及び誘導すべき容積率の程度等を勘案して、適切なものとなるように定めること。
6) 建築物の建築面積の最低限度は、狭小な建築物の建築を防止し、又は相当規模の建築物の建築を促進することにより、土地の健全な高度利用を促進すべき区域について定めること。この場合、良好な環境を備えた街区の形成を図るため、建築物の敷地面積の最低限度を併せて定めるように努めること。
7) 壁面の位置の制限は、道路に面して、若しくは他の建築物との間に有効な空地を確保し、又は区域内の建築物の位置を整えることにより、良好な環境を備えた各街区が形成されるように定めること。特に、高度利用を図る建築物の周囲の道路における歩行者交通の処理を適切に補完する必要がある場合には、これを積極的に活用すること。なお、壁面の位置の制限は、地盤面からの高さにより異なる内容とする等、立体的に定めることができるものであること。
8) 建築物等の高さの最高限度は、近隣に対する日照等の環境を保持すること又は区域内における建築物のスカイラインを整えることにより、良好な市街地空間が形成されるように定めること。この場合、高さの最高限度は用途地域による制限を緩和する内容は定めないこととされていること。
9) 建築物等の形態又は意匠の制限は、建築物等の外壁その他戸外から望見される部分の形状、材料、色彩等について、建築物等が当該地区の特性にふさわしい形態又は意匠を備えたものとなるように定めること。
10) 垣又はさくの構造の制限は、垣又はさくの高さ、材料、形状、色彩等について、その構造が当該地区の特性にふさわしいものとなるように定めること。

(ホ) 土地の利用に関する制限

現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境の確保に必要なものの保全に関する事項は、樹林地、草地のほか、水辺地、樹林や生け垣の存する土地等(これらの隣接している土地でこれらの土地と一体となって良好な環境を形成しているものを含む。)で良好な居住環境を確保するため必要なものについて、樹木等の全部又は特定の樹種、樹高等を限っての伐採の制限、池沼の埋立等土地の形質の変更の制限等を定めること。

5 再開発地区計画の策定手続について

(1) 利害関係を有する者の意見の反映について

(イ) 意見を求めるべき利害関係を有する者の範囲は、都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号)第一六条第二項及び都市計画法施行令(昭和四四年政令第一五八号)第一〇条の三に定められているが、再開発地区計画の区域内において現に商業その他の業務を行っている者や居住者等についても、その意見が十分反映されるよう配慮すること。
(ロ) 意見を求める手続については、地区計画等と同様のものであるので、地区計画等の手続条例を定めていない市町村は、できる限り速やかに条例の制定を行うこと。

(2) 都道府県知事の承認等について

(イ) 市町村が再開発地区計画に関する計画を決定しようとする場合は、その内容のすべてについて都道府県知事の承認を受けなければならないこととされており、特に、再開発地区計画に定める内容は、従来の地区計画の内容に加えて、用途地域の制限の緩和、基幹的な道路、公園等の決定を含むものであるので、市町村と都道府県知事との間の連絡調整を緊密に行い、都市計画の一体性を確保すること。
(ロ) 再開発地区計画を定めようとするときは、当分の間、あらかじめ、都道府県を通じ建設省都市局と適宜必要な連絡調整を行うこととすること。

(3) その他の留意事項

以上のほか、再開発地区計画に関する都市計画を定めるに当たっては、次の点に留意すること。
(イ) 再開発地区計画制度による土地利用転換には、必要な都市基盤施設の整備が不可欠なことから、再開発地区計画に関する都市計画の策定に当たっては、都市施設整備担当部局及び市街地開発事業担当部局と緊密な連絡調整を図ること。
(ロ) 市町村は、再開発地区整備計画に二号施設の配置及び規模を定めようとするときは、あらかじめ、当該再開発地区計画に定める二号施設を管理することとなる者と協議すること。
(ハ) 再開発地区計画を定めるに当たっては、それに即した市街地の形成が周辺の農業上の利用に支障を及ぼすおそれがないように定めるとともに、市街化区域及び市街化調整区域に関する都市計画が定められていない都市計画区域内の用途地域が定められている地域で再開発地区計画を定める場合において、当該再開発地区計画の区域内に農用地が含まれるときは、都道府県の都市計画担当部局があらかじめ都道府県の農林担当部局と協議を行い、調整を了した上で、都道府県知事は都市計画法第一九条第一項の承認を行うこと。この場合において、当該農用地が二haを超えるもの(農林水産大臣の転用許可権限の対象となりうるようなまとまったもの)であるときは、都道府県知事があらかじめ地方農政局長(北海道にあっては農林水産省構造改善局長とし、沖縄県にあっては沖縄総合事務局農林水産部長とする。)とも協議すること。
(ニ) 再開発地区計画の区域内に森林(森林法(昭和二六年法律第二四九号)第五条の地域森林計画対象民有林という。)、農林水産産業用施設又は農林水産関連企業用施設が含まれる場合には、市町村及び都道府県において、都市計画担当部局は、農林水産関連企業担当部局と十分調整を図ること。
(ホ) 市町村は、臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地において再開発地区計画を定め、又は変更しようとするときは、これらの地域を管理する港湾管理者と協議すること。

また、再開発地区計画に定める内容は、港湾計画に違背しないものとすること。
なお、港湾管理者が、臨港地区、港湾隣接地域、港湾施設が相当程度集積している港湾区域内の埋立地又は港湾施設用地の地域における再開発地区計画の策定について市町村に申し出た場合には、市町村はこれを十分に尊重すること。

(ヘ) 農村地域工業等導入促進法(昭和四六年法律第一一二号)に基づく工業等導入地区、工場立地法(昭和三四年法律第二四号)第二条第一項の規定に基づく工場適地並びに現に工場が立地し、又は立地することが確実なおおむね一ha以上の一団の土地の区域で今後相当期間にわたって工場として利用されることが見込まれるものについては、これらを再開発地区計画の区域に含めないものとすること。

なお、市町村は、工場適地を含む区域で再開発地区計画を策定しようとする際は、案の作成の段階で、工場適地の指定の取消しを都道府県の商工部局を通じて通商産業省に要請するものとすること。
また、工場立地法第六条第一項に規定する特定工場が再開発地区計画の区域に含まれる場合には、当該再開発地区計画に定める内容が同法第四条第一項の工場立地に関する準則との調和を保つように十分配慮すること。

(ト) 工業再配置計画、産炭地域新興基本計画、高度技術に立脚した工業開発に関する計画及び特定事業の集積の促進に関する計画に十分配慮すること。
(チ) 工業用水道事業法(昭和三三年法律第八四号)、電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)、ガス事業法(昭和二九年法律第五一号)、石油パイプライン事業法(昭和四七年法律第一〇五号)及び熱供給事業法(昭和四七年法律第八八号)による事業については、その事業の円滑な実施に支障を及ぼさないようにすること。
(リ) 高圧ガス取締法(昭和二六年法律第二〇四号)、火薬類取締法(昭和二五年法律第一四九号)、石油コンビナート等災害防止法(昭和五〇年法律第八四号)、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四二年法律第一四九号)及び鉱山保安法(昭和二四年法律第七〇号)の規制を尊重し、これらの規制との整合性を保つようにすること。
(ヌ) 再開発地区計画の区域内の商工業者の経済力、店舗等の新設及び改造計画に配慮するとともに、必要に応じ、この観点から建築物等の制限の内容について検討すること。また、当該区域内に商店街整備計画、店舗共同化計画等中小小売・サービス業振興のための諸施策その他中小企業の振興のための諸施策が講じられ、又は講じられようとしている場合は、これら諸施策との整合性を保つこと。なお、市町村の都市計画担当部局は、計画策定に当たっては、あらかじめ商工部局と協議することとし、また、都道府県の都市計画担当部局は、承認に当たっては、あらかじめ商工部局と協議すること。
(ル) ガソリンスタンド、LPGスタンド、軽油スタンド等のようにその事業場の配置、形状等が特殊なものについては、その建築等に支障をきたさないようにすること。
(ヲ) 再開発地区計画の区域内に学校が存し、又は存することが確実な場合には、その立地環境の維持向上についても勘案して定めること。
(ワ) 市町村は、再開発地区計画を定める場合には、史跡名勝天然記念物、伝統的建造物群、埋蔵文化財等の文化財の保護に配慮すること。

なお、都市再開発法第七条の八の三第三項の規定による勧告を行う場合も同様であること。

(カ) 河川周辺における再開発地区計画の策定に当たっては、河川と調和した良好な環境が形成されるよう緑地の配置等に配慮すること。
(ヨ) 都道府県知事は、再開発地区計画を承認するに当たっては、水道法(昭和三二年法律第一七七号)に基づく広域的水道整備計画、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号)に基づく一般廃棄物処理計画及び産業廃棄物処理計画並びに医療法(昭和二三年法律第二〇五号)に基づく医療計画の達成に支障がないように配慮するとともに、これらの計画の担当部局と調整すること。
(タ)再開発地区計画を承認しようとする場合において、当該計画の区域に係る良好な環境の保全又は形成の観点から必要があると認められるときは、都道府県において、都市計画担当部局は環境担当部局と連絡調整を図ること。
(レ) 都市再開発法第七条の八の二第二項第三号の「建築物」とは、建築基準法第二条第一号に定める「建築物」であること。
(ソ) 再開発地区計画に係る二号施設を当初の都市計画決定の段階で決定しない場合には、当該都市計画決定に当たって、都市計画担当部局は、その内容をあらかじめ道路担当部局に通知すること。

6 再開発地区整備計画を定めるべきことの要請について

(1) 再開発地区整備計画を定めるべきことを土地所有者等が要請する制度の創設は、再開発地区計画の方針等が定められた区域において、これに従った再開発に関して土地所有者等の間で一定の合意が成立した場合、このような合意を契機として再開発地区計画を策定する制度を確立することによって、事業の熟度を的確に見定めつつ土地利用転換を円滑に進めることを目的としたものであるので、この趣旨に留意して適切な運用に努めること。
(2) 要請制度の創設は、要請がない場合に再開発地区整備計画を定めることを妨げるものではないこと。また、要請を受理した場合には、再開発地区整備計画の決定の有無又はその内容について法的に拘束を受けるものではないが、当該要請の前提となった協定の内容を再開発地区計画の方針等に照らして支障のない限り尊重して、再開発地区整備計画の策定に努めること。
(3) 要請を踏まえて再開発地区計画が決定された後は再開発地区計画に定められた内容に従って建築物、公共施設等の整備が行われること等が必要であるので、要請に当たっては、少なくとも土地所有者等の間で事業を行うことについて一定の合意が存在していることが客観的に明らかである必要があり、このため要請に当たっては一定の内容を有することが締結されることを要件としたものであるので、この点に留意すること。
(4) 要請に必要な書類の作成は、次の要領によること。

(イ) 再開発地区整備計画要請書は、要請に係る土地の区域内に土地の所有者権又は借地権を有する者の住所、氏名及び押印並びに都市再開発法第七条の八の四の規定に基づき再開発地区計画に関する都市計画に再開発地区整備計画を定めるべきことを要請する旨を記載し、都市計画の決定権者である地方公共団体の長あてに作成すること。この場合、要請する者が法人である場合においては、氏名は、その法人の名称及び代表者の氏名を記載すること。
(ロ) 要請に係る土地の位置及び区域を表示した図面は、縮尺がおおむね三〇〇〇分の一程度以上の図面に区域の境界が明確に判断できるように表示したものとすること。
(ハ) 都市再開発法第七条の八の四の協定に定める内容は、建築物及び建築敷地の整備については、用途構成、概ねの延べ面積、高さ、外構等とし、公共施設の整備に関する事項については、対象事業、整備に要する費用の分担、実施時期等とすること。また、協定の有効期間、協定に違反した場合の措置等についても併せて定めることができるものであること。

7 届出・勧告制度について

(1) 再開発地区計画制度では地区施設のほかに二号施設を定めることとされたことに伴い、再開発地区計画の区域のうち再開発地区整備計画の定められていない区域についても、二号施設が定められていれば行為の届出が義務付けられるので留意すること。
(2) 開発許可を要する行為については届出を不要とし、開発許可基準の一として取扱うこととされているので、開発許可担当部局と緊密な連絡調整を図ること。
(3) 届出が義務付けられる行為のうち、建築物等の新築、改築若しくは増築又は用途の変更については、都市再開発法施行令(昭和四四年政令第二三二号)第一条の一四第二号の規定に該当する場合を除き、通常、届出と建築確認申請の両方の手続を要することとなるので、手続が煩雑にならないよう事務の簡素化及び迅速化に特に配慮すること。この場合、できるだけ建築確認申請に先だって届出を行うよう指導すること。

なお、再開発地区整備計画に定められている建築物等に関する事項で当該建築物等の建築等に係るものがすべて条例に定められている場合であっても、当該建築物等に係る敷地について、地区施設の配置及び規模又は現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境の確保に必要なものの保全に関する事項が定められているときは、都市再開発法施行令第一条の一四第二号に該当しないものであるので留意すること。

(4) 届出が義務付けられる行為は、土地の区画形質の変更又は建築物等の新築、改築若しくは増築のほか、再開発地区計画に定められた内容に応じて、建築物等の用途の変更、建築物等の形態若しくは意匠の変更又は木竹の伐採がその対象となるので、再開発地区計画の案の作成の段階からこの旨周知させること。

なお、店舗に取り付けられる看板等の設置は、工作物の新築、改築又は増築に該当しないものであること。

(5) 勧告制度の運用に当たっては、地域の実情、建築物等の利用上の必要性等をも総合的に勘案し、過大な負担を課することとならないよう配慮するとともに、当該届出に係る行為が他の法令による許可、認可等を必要とするものである場合には、これらの手続の進行状況に留意し、適切な時期に適切な内容で行うこと。
(6) 都市再開発法施行令第一条の一二第二号ハの「これらに類するもの」には、工業用水導管、ガス導管、熱供給事業の用に供する導管、石油管、地中電線路及び高圧ガス管が含まれること。
(7) 市町村長が都市再開発法第七条の八の三第三項の規定による勧告をした場合において、

1) 地域施設として定められた道路の位置の如何により通常利用が困難と認められる土地が生じた場合の当該土地の権利のあっせん
2) 道路の位置の指定の前提としての道の区域内の土地の権利のあっせん
3) 技術的指導及び助言

等再開発地区計画の内容を実現するため必要な範囲内の措置について特に必要があると認めた場合においては、市町村長は、同条第四項の規定に基づき、これらの措置を講ずるよう努めること。

8 開発許可について

(1) 開発許可の申請に係る土地について再開発地区計画(二号施設の配置及び規模又は当該土地についての再開発地区整備計画が定められているものに限る。)が定められているときは、予定建築物等の用途又は開発行為の設計が再開発地区計画に定められた内容に即して定められていることが開発許可の基準として加えられたが、ここでいう「即して定められている」とは、開発行為の設計等が再開発地区計画の内容に正確に一致している場合のほか、正確には一致しないが、再開発地区計画の内容に沿って、再開発地区計画の目的が達成できるよう定められている場合を含むものであること。
(2) 再開発地区計画が定められている土地の区域内における開発許可制度の運用は、届出・勧告、建築確認、道路の位置の指定及び予定道路の指定の各制度の運用と密接な関連を有しており、特に、開発許可を受けた土地の区域内において建築物の建築又は工作物の建設を行う場合には、別途届出・勧告制度及び建築確認制度の適用があるので、(1)の「即して定められている」ことの運用については、これらの関係部局とあらかじめ十分意見調整を行い、制度の運用に矛盾が生じないように配慮すること。

9 再開発地区計画の区域内において市町村が定める条例による制限について

(1) 建築基準法第六八条の二第一項の規定に基づく条例(以下「条例」という。)は、再開発地区計画の内容のうち特に重要なものについて、建築基準法施行令(昭和二五年政令第三三八号)第一三六条の二の二に規定する基準に従い、適正な都市機能と健全な都市環境を確保するため合理的に必要と認められる限度のものとするとともに、個別の建築物又はその計画が当該制限に適合するか否かが一義的に判断されるように明確なものとすること。なお、条例で制限として定められる事項は、再開発地区計画の内容として定められた事項のうち建築基準法上の一般的な制限の強化に係る事項に限られるものであり、緩和に係る事項は定めないものであること。すなわち、再開発地区計画において容積率の最高限度が定められた場合に、その限度が用途地域に関する都市計画において定められた数値((4)において「指定容積率」という。)以上の場合には、条例による制限として定めないものであること(用途の制限は、再開発地区計画において用途地域による制限を緩和する内容は定めないこととされているので、条例による制限として定めることもあり得ないので、念のため申し添える。)。また、建築物に関するものに限られるものであり、建築物以外の工作物に関する事項を条例で制限として定めることはできないものであること。ただし、同法第八八条第二項において同法第六八条の二第一項の規定が準用されているので、同法第八八条第二項に規定する工作物の用途に関する事項については、この限りではないこと。
(2) 条例による制限は、当該再開発地区計画の目的を達成する上で建築基準法上の一般的な制限の強化に係る事項で特に重要な制限につき、当該再開発地区計画の区域及びその周辺の地域における土地利用転換の方向、建築物の建築の状況、公園、広場、道路等の施設の整備の現状及び将来の見通しその他の土地利用の状況等から見て、当該再開発地区計画の区域における円滑な土地利用転換、良好な市街地の環境の形成又は維持を図るために合理的に必要な限度において行うものとすること。

なお、条例による制限は、再開発地区計画の内容として定められたもののうちから定められたものであるので、条例で制限として定められることが見込まれる計画事項については、その内容について都市計画担当部局と緊密な調整を図ること。

(3) 条例には、建築物に関する制限のほか、当該制限の適用の除外に関する規定、罰則その他の必要な規定を併せて定めること。
(4) 容積率の最高限度について、再開発地区整備計画において4(3)(ハ)3)に従い街区ごとに異なる数値が定められた場合において、特に、指定容積率未満の数値が定められた街区が存する場合は、良好な市街地環境の形成の観点から、条例の制定に当たり配慮すること。
(5) 再開発地区計画の区域内の事業の完成等により2(3)1)に従い用途地域等に関する都市計画が変更された場合においては、形成された良好な市街地環境の保全の観点から、必要に応じ、条例の見直しを行うこと。
(6) 建築物の建築面積の最低限度の制限、建築物の形態若しくは意匠の制限又はかき若しくはさくの構造の制限を条例で定める場合においては、以下の点に留意すること。

(イ) 建築物の敷地面積の最低限度の制限は、再開発地区計画区域内において建築物の敷地が細分化されることにより、又は建築物が密集することにより住宅等の敷地内に必要とされる空地の確保又は建築物の安全、防火又は衛生の目的を達成することが著しく困難となり、敷地の共同化による土地の健全な高度利用を促進し、良好な市街地環境の維持増進に必要な場合において行うこと。

なお、建築基準法第六八条二第三項の規定に基づき、条例に当該制限の適用の除外の規定を定めることとなる場合において、当該適用除外の規定の適正な運用を期するため市町村は当該条例の規定の施行又は適用に当たっては、現に建築物の敷地として使用されている土地及び現に存する所有権その他の権利に基づいて建築物の敷地として使用することとなる土地について、あらかじめ十分把握しておくこと。

(ロ) 建築物の形態又は意匠の制限及びかき又はさくの構造の制限は、周囲の環境と調和した優れた景観を有する街並みを形成する必要がある場合等において行うこと。建築物の形態又は意匠の制限の内容は、建築物の屋根又は外壁の形態又は意匠をその形状又は材料によって定めたものに限られていること。また、かき又はさくの構造の制限は、建築物に付属する門又はへいの構造を、その高さ、形状又は材料によって定めたものに限られていること。

(7) 条例の制限に関する面積、高さ等の算定方法については、建築基準法の算定方法に関する一般的な原則によることができる場合には、条例の制定に当たり、当該条例に延べ面積、建築物の高さに関し、それぞれ建築基準法施行令第二条第一項第四号ただし書、同項第六号イ及びロ並びに同条第三項の規定の例にならった必要な規定を設けること。

また、再開発地区計画に建築基準法の一般的原則と異なる算定方法が定められている場合においては、当該算定方法に係る制限事項を条例による制限とする場合には、条例において当該算定方法と同一の算定方法を定めること。

(8) 条例の制定に当たっては、建築基準法施行令第一三六条の二の二第八項の規定に基づき、条例に定める制限の適用の除外の規定を条例に定めるほか、再開発地区計画において定められた当該制限の趣旨に反しない限りにおいて、当該制限の内容に応じ、かつ、当該制限を適用しようとする区域の状況等に応じて個別に必要性を判断した上で、当該条例に建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合、建築物の高さその他の事項に関する条例の制限に関し、建築基準法の規定の例にならった適用の除外の規定を定め、同法第五九条の二第一項及び同法第六八条の三第二項の規定に基づき許可を受けた建築物又は同法第八六条の規定に基づく特列の適用を受けた建築物に関し、それぞれ同法の該当する条文の規定の例にならって条例の制限の適用の除外の規定を定めること。
(9) 建築基準法施行令第一三六条の二の二第七項の規定は、建築基準法第三条第二項の規定により条例による制限のうち一定のものの適用を受けない建築物を一定の範囲内で増築、改築、大規模な修繕又は大規模な模様替をする場合において、なおこれらの制限を適用しない旨の規定を当該条例に設けるべき旨規定しているものであり、同項中「法第八六条の二の規定の例により当該条例に定める制限の適用の除外に関する規定を定める」とは、建築物の用途の制限にあっては建築基準法施行令第一三七条の四各号、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最高限度にあっては同施行令第一三七条の五各号、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の最低限度及び建築物の建築面積の最低限度にあっては同施行令第一三七条の六各号の規定に相当する範囲内において増築若しくは改築をする場合又は同施行令第一三七条の九の規定に相当する範囲内において大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合(建築物の用途の制限に関する場合を除く。)におけるそれぞれの制限の適用の除外に関する規定を定めるべきものであること。この場合において同施行令第一三七条の「基準時」に関する規定と同様の規定を条例に定めることとし、それぞれの「基準時」は、建築基準法第三条第二項の規定により条例で定めるそれぞれの制限の適用を受けない建築物について、同法第三条第二項の規定により引き続き当該規定(当該規定が改正された場合において改正前の規定を含む。)の適用を受けない期間の始期をいうものであること。
(10) 学校、公民館、図書館、派出所、郵便局、第一種電気通信事業の用に供する建築物、電気事業法、ガス事業法又は熱供給事業法によって規制されている施設、駅舎等の鉄道・軌道施設、自動車ターミナルビル、流通機構上重要と認められる営業倉庫、上屋等の公益上必要な施設については、再開発地区計画の趣旨をも十分考慮しつつ、それぞれの業務に支障を生ずることがないよう、条例の制定に当たって制限の適用の対象外とすることを含め十分な配慮を行うとともに、また、これらの施設のうち用途上又は構造上やむを得ないと認められるものについては、建築基準法施行令第一三六条の二の二第八項に規定する例外許可による適用除外を行うことにより対処すること。
(11) 再開発地区計画の区域内において建築行為を行う場合には、都市再開発法施行令第一条の一四第二号の規定に該当する場合を除き、建築確認申請と届出を行わなければならないのが一般であり、特に条例で制限を定める場合には同一の事項について双方の手続で適合性を審査することとなるので、担当者間において密接な連絡をとりつつ、適切かつ迅速な事務処理が図られるよう特に留意すること。
(12) 条例の制定又は改正をしようとするときは、当分の間、あらかじめ、建築基準法第四条第一項又は第二項によって建築主事を置いた市町村は直接、それ以外の市町村は都道府県を通じ、建設省住宅局と適宜連絡調整を行うこととすること。

10 容積率制限、斜線制限及び用途制限の緩和措置について

(1) 建築基準法第六八条の三の規定に基づく容積率制限、斜線制限又は用途制限を緩和する特定行政庁の認定等の処分は、良好な建築計画を誘導し、再開発地区計画の内容に即した市街地形成を実現する上で、極めて重要な役割を果たすものであり、一方、これらの認定等制度の運用に当たっては、再開発地区計画の内容及びその実現の確実性等が極めて大きな影響を及ぼすことにかんがみ、再開発地区計画制度に係る計画策定に関し都市計画担当部局と緊密な連絡調整を図ること。
(2) 再開発地区整備計画が定められている区域のうち、容積率の最高限度が定められている区域においては、再開発地区計画の内容に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、容積率制限の緩和を行うことができることとされたので、この特例の適切な活用を図ること。

容積率制限を緩和する認定を行うに当たっては、具体の建築計画、周囲の状況、協定が定められている場合にはその内容、公共施設(主として、二号施設及び地区施設)の整備状況等を見定めつつ総合的な判断に基づいて行うこと。また、道路の整備を促進するため、認定と併せて予定道路の指定等を積極的に行うこと。
容積率制限の緩和は、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認める範囲内において行うこととし、その最高限度は、再開発地区整備計画に定められた容積率とすること。
なお、認定に当たってはあらかじめ所轄の消防担当部局に通知すること。

(3) 再開発地区整備計画が定められている区域においては、敷地内に有効な空地が確保されていること等により、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したものについては、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の緩和を行うことができることとされたので、この特例の適切な活用を図ること。

斜線制限を緩和する許可の要件である「敷地内に有効な空地が確保されていること等」とは、再開発地区整備計画において壁面の位置の制限が定められている場合は当該制限に適合し、その他有効な空地が確保されていること等をいうものであること。また、周囲の建築計画等をも十分勘案して運用を行うこと。

(4) 再開発地区整備計画の区域内においては、日影規制の規定の適用について、当該区域の将来の用途構成等土地利用転換の方向を見定めつつ適正な日影時間の値まで緩和するなど合理的な規制となるよう建築基準法第五六条の二第一項ただし書の許可の適切な運用を図ること。
(5) 再開発地区整備計画が定められている区域においては、再開発地区計画に関する都市計画において定められた土地利用に関する基本方針に適合し、かつ、再開発地区計画の区域における業務の利便の増進上やむを得ないと認める場合においても、特定行政庁の許可により用途制限の緩和が認められることとなったので、適切な土地利用転換が図られるようこの特例の適切な活用を図ること。なお、第一種住居専用地域では、この特例の適用はなく、建築基準法第四八条第一項ただし書の規定による緩和措置によること。また、住宅の用に供する建築物の建築は「業務の利便の増進上やむを得ない」場合に該当しないものであり、工業専用地域における住宅の用に供する建築物に係る規制の緩和は、同法第四八条第八項ただし書に規定する「公益上やむを得ないと認め」る場合に行うことができるものであること。
(6) 特定行政庁が、建築基準法第六八条の三の規定に基づく容積率制限等を緩和する処分を行おうとするときは、当分の間、あらかじめ、都道府県知事又は地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五二条の一九第一項に規定する指定都市の長たる特定行政庁は直接、それ以外の特定行政庁は都道府県を通じて建設省住宅局と適宜連絡調整を行うこととすること。

11 道路の位置の指定に関する特例について

(1) 道路の位置の指定の特例により、土地利用転換により新たに形成される市街地の特性に応じた合理的な道路網の形成が推進されることとなったので都市計画部局との密接な連携の下に本制度の適切な運用に努めること。
(2) 道路の位置の指定に関する特例は、地区施設のみならず二号施設にも適用されるものであること。
(3) 道路の配置及び規模を定めた再開発地区計画の区域内においては、道路の位置の指定は、再開発地区計画に定められた道の配置に即し、かつ、建築基準法第四二条第一項及び同法施行令第一四四条の四の規定に適合する場合について行うこと。
(4) 建築基準法第六八条の四本文でいう「道の配置に即して」とは、指定に係る道路が再開発地区計画で定められた道の配置に正確に一致している場合のほか、正確には一致しないが再開発地区計画に定められた道との接続状況、位置関係等から見て再開発地区計画で定められた道の機能が確保されると認められる場合を含むものであること。また、同条本文の規定は、必ずしも再開発地区計画に定められた道の規模に即する必要はない旨の規定であること。
(5) 建築基準法第六八条の四ただし書の規定は、現に存する道路が建築物の敷地として利用しようとする土地に著しく近接しており、計画に即して道路を築造する場合の負担が現に存する道路に至る道路を築造する場合に比して著しく大きくなるとき、再開発地区計画に定められた道の区域内に建築物が存する場合、計画に即して指定を行う場合にはその計画に定められた道を含む土地についてその権利を有する者が当該土地をその権利に基づいて利用することが著しく妨げられることとなるとき等同条本文の規定により難い場合において適用すること。

12 予定道路の指定について

(1) 予定道路の指定は、再開発地区計画で定められた道の実現を図るため、特定行政庁が能動的に予定道路として指定するものであり、容積率制限を緩和する認定等を行う際に二号施設又は地区施設の整備を担保する上でも重要な処分であるので、指定に当たってはあらかじめ予定道路の指定に関する基本的な方針等について十分な検討を行った上、積極的に指定を行うこと。
(2) 予定道路の指定は、地区施設のみならず二号施設にも適用されるものであること。
(3) 予定道路の指定は、再開発地区計画の区域及びその周辺の地域における土地利用の動向、道路の整備の現状及び将来の見通し、建築物の敷地境界線、筆界等の土地に関する権利の状況等を考慮し、建築物の建築等を禁止することにより再開発地区計画で定められた道の予定地を確保することが必要な範囲において、その幅員、道路境界等を明確にして行うこと。
(4) 建築基準法第六八条の五第一項第二号に該当する場合には、できるだけ細街路網を一体的に指定することにより、土地区画整理事業等により整備された区画道路と一体となった道路網の形成が効率的に図られるよう努めること。
(5) 建築基準法第六八条の五第一項第三号の規定に基づく指定は、再開発地区計画で定められた道の相当部分が道路の位置の指定又は開発許可を通じて実現されている場合において、当該道路と既に整備された他の道路(再開発地区計画で定められた道に即して近い将来確実に整備されると見込まれる道路を含む。)との連続性を確保することが必要なとき等において積極的に行うこと。
(6) 建築基準法第六八条の五第一項第二号又は第三号に該当しない場合であっても、再開発地区計画で定められた道の予定地を確保することが必要であるときは、特定行政庁は、同項第一号の規定に基づき、利害関係を有する者の同意を得て指定を行うよう努めること。
(7) 予定道路の土地の区域内における建築物の建築等の制限が適切に行われるよう予定道路の指定に係る台帳の整備等の措置を講ずること。
(8) 予定道路が指定された場合には建築基準法第四四条の規定が適用され建築物の建築等が制限されるが、それ以外の道路に関する規定は適用されず、道路の位置の指定等により同法第四二条の道路になってはじめて同法第四三条等の規定が適用されることとなることに留意すること。
(9) 建築基準法第六八条の五の規定中「即して」の意味については、道路の位置の指定に関する特例において述べたところと同様であるが、「計画に定められた道の配置及び規模に即して、指定を行うこと」とされているので、道路の幅員その他の規模についても計画に即していることが必要であることに留意すること。

13 建築行政の一貫性の確保

再開発地区計画制度においては、建築基準法上の一般的な制限を強化する場合は条例により、緩和する場合は特定行政庁の認定等により行うこととされている。条例の制定は市町村が行い、その運用には建築主事及び特定行政庁も当たり、また、制限の緩和については特定行政庁が行うことにかんがみ、当該市町村において建築主事を設置するよう努めるものとし、これにより難い場合においては、当該市町村は条例の制定、運用等について当該市町村を管轄する都道府県の建築担当部局と緊密な連絡調整を図ることにより建築行政の一貫性が図られるよう配慮すること。

14 再開発地区計画による市街地整備の推進について

(1) 各種事業制度の活用について

本制度においては、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業、新都市拠点整備事業、定住拠点緊急整備事業、都市活性化地区総合整備事業、特定住宅市街地総合整備促進事業、木造賃貸住宅地区総合整備事業、都市居住更新事業、優良再開発建築物整備促進事業、地区再開発促進事業、都市再開発関連公共施設整備促進事業、都市拠点開発緊急促進事業、住宅宅地関連公共施設整備促進事業等の各種事業制度を併せて活用することが可能であるので、再開発地区計画の区域の特性、周辺市街地の状況等を勘案して、必要に応じその積極的な活用に努めること。また、プロジェクトによる都市環境の整備・改善、良好な地域社会の形成等を勘案して、必要に応じ、街路事業、公園事業、下水道事業等の関連公共施設の整備事業の推進に努めること。

(2) 再開発地区計画に関する税制上の特別措置について

再開発地区計画制度の活用を図り、民間による優良なプロジェクトを誘導するため、次のとおり税制上の特別措置が講じられているので、積極的に活用されるよう努めること。
(イ) 再開発地区整備計画(容積率の最低限度又は高さの最低限度が定められているものに限る。)の区域内に建築される建築物については、一〇〇分の二四の割増償却が五年間認められること(租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)第一四条第三項、第四七条第三項)。
(ロ) 再開発地区整備計画(建築物の用途の制限及び容積率の最低限度又は高さの最低限度が定められているものに限る。)の区域内に建築される建築物に係る敷地の区域のうち都市計画施設、二号施設又は地区施設の用に供される区域への資産の買換えの場合の所得税又は法人税の課税については、事業用資産の買換特例が認められること(租税特別措置法第三七条第一項、第六五条の七第一項)。
(ハ) 再開発地区整備計画(地区施設の配置及び規模並びに建築物の用途の制限及び容積率の最低限度が定められているものに限る。)の区域内に建築される建築物に係る敷地の用に供される土地で再開発地区整備計画が定められた後に取得されたものに係る特別土地保有税は非課税とされること(地方税法(昭和二五年法律第二二六号)第五八六条第二項)。
(ニ) 再開発地区整備計画(地区施設の配置及び規模並びに建築物の用途の制限及び容積率の最低限度が定められているものに限る。)の区域内に建築される建築物に対して課する新増築に係る事業所税については二分の一を減額されること(地方税法第七〇一条の四一第五項)。

なお、(イ)から(ニ)までについては、いずれも、当該再開発地区整備計画に係る再開発地区計画の区域は、東京都の特別区の存する区域、大阪市の区域又は名古屋市の区域以外の区域内にあり、かつ、面積が五ヘクタール以上であることを要すること。また、特別措置の対象となる建築物については、再開発地区計画に関し定められた建築基準法第六八条の二第一項に規定する条例の制限に適合しているものに限るとともに、敷地面積及び床面積がいずれも二〇〇〇平方メートル以上((ニ)については敷地面積のみ二〇〇〇平方メートル以上)であること。さらに、(イ)、(ハ)及び(ニ)については、当該建築物の敷地内に都市計画施設、二号施設若しくは地区施設の用に供される土地又は一定の空地((ニ)については都市計画施設、二号施設又は地区施設の用に供される土地)が確保されていることを要すること。

(3) 建築協定制度及び緑化協定制度の活用について

再開発地区計画の区域内において、再開発地区計画に定めることのできない事項又は再開発地区計画に定める必要のない事項若しくは内容について、市街地環境のより高度な維持・増進等を図るため、土地所有者等による自主的な規制が行われることが適当である場合には、建築協定制度又は緑化協定制度の積極的な活用について指導すること。

(4) 建築基準法の特例制度等の活用について

建築基準法第八六条第一項に規定する一団地認定制度についてはその適切な活用に努めること。特に、一団地認定制度とは、同法第六八条の三第一項に規定する容積率制限の緩和の認定は併用することができることとされ、一団地内に二以上の構えをなす建築物を総合的設計により建築する場合において、特定行政庁が支障がないと認めるものについては、一団地単位で容積率制限を緩和する認定を行うことが可能であるので、必要に応じ適切な活用を図ること。
なお、総合設計制度、壁面線の指定の制度についても、再開発地区計画の趣旨に適合する場合においては併用することも可能であること。

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