建設省住指発第四〇七号
平成元年一〇月二五日

特定行政庁建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通知


有効な防せい処理のなされた鉄筋の使用による防せい対策について


離島等で海砂以外の骨材の入手及び除塩用水の確保が著しく困難であり、使用するコンクリート一立方メートル中に含まれる塩化物(塩素イオン換算)の含有量が〇・六〇キログラムを超える場合に講ずべき防せい対策の具体的な仕様等については、昭和六一年六月二日付け建設省住指発第一四二号建設省住宅局建築指導課長通知「コンクリートの耐久性確保に係る措置について」(以下「昭和六一年通知」という。)において、小職から別途通知することとしていたが、今般、別紙「エポキシ樹脂塗装鉄筋の防せい処理の有効性判定基準」(以下「判定基準」という。)に適合するエポキシ樹脂塗装鉄筋を昭和六一年通知にいう「有効な防せい処理のなされた鉄筋」と認めることとしたので通知する。ついては、昭和六一年通知と同様に、設計者、工事監理者、工事施工者等関係者に対し、周知徹底を図られたい。
また、本通知の施行に当たっては、建築基準法第一二条第三項の規定を活用するなどにより、エポキシ樹脂塗装鉄筋が使用されることを確認するとともに、設計者等から判定基準第3の設計施行上の留意事項に係る書面、第4の品質管理に係る書面、第5のマニュアル等の提出を求め、計画との整合性を確認することとするなど防せい対策上遺憾のないよう措置されたい。
さらに、エポキシ樹脂塗装鉄筋については、できるだけ(財)日本建築センターにおける判定基準への適合性についての評定を受けたものが使用されるよう指導されたい。性能判定試験の詳細については、近く(財)日本建築センターより「コンクリートの塩化物総量規制とアルカリ骨材反応対策」の改訂版が出され、その中に示される予定である。
なお、コンクリート一立方メートル中に含まれる塩化物の含有量が〇・六〇キログラム以下の場合であっても、海浜付近、海上、海中等の建築物で塩分の影響を受けるおそれがある場合等において、より高い耐久性を確保するため、エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用することには差し支えないので、念のため申し添える。
あわせて、昭和六一年通知において通知していた「塩化物総量規制」についても、より一層の周知徹底を図られたい。



別紙

エポキシ樹脂塗装鉄筋の防せい処理の有効性判定基準

第1 適用範囲

この判定基準は、昭和五五年建設省告示第一七九四号の規定により使用が認められている異形鉄筋にエポキシ樹脂を被覆塗装したもの(以下「エポキシ樹脂塗装鉄筋」という。)について適用する。

第2 性能

1 耐久性

次の(1)から(7)までに定める項目の試験を行い、耐久性を有することが確認されていること。
(1) 外観

塗膜がほぼ均一で、われ、はがれ又は著しいたれが認められないこと。

(2) 塗膜厚

鉄筋全長にわたり、節と節の間の鉄筋表面において、測定値の九〇%が一八〇±五〇ミクロンの間に入っていること。

(3) ピンホール

鉄筋の単位長さ当りのピンホール個数が、D一九注)以下の径の鉄筋にあっては五個/m以下、D一九を超える径の鉄筋にあっては八個/m以下であること。
注) D一九は、日本工業規格(以下「JIS」という。)G三一一二で使用されている鉄筋の呼名

(4) 曲げ加工性

1) 曲げ加工後、塗膜の著しいわれ、はがれ、うきなどの塗膜損傷の発生頻度が二〇%以下であること

この場合において、曲げ加工は、次表によるものとする。

2) 1)の性能の判定については、一本の鉄筋より切り出した五本の供試体において曲げ試験を行い、塗膜損傷の発生した供試体数が、一本以下であることとする。

鉄筋温度
種類注1)
 
折曲げ内のり直径注2)
曲げ角度
20±3℃
SD30A、SD30B
SD35
D16以下
3d
180゜
 
 
D19以上
4d
180°
 
SD40
 
5d
180°
0〜5℃
SD30A、SD30B
SD35、SD40
 
5d
180°

注1)SD30A、SD30B、SD35及びSD40は、JISG3112で使用されている鉄筋の記号
注2)dは、JIS G3112で規定されている鉄筋の公称直径

(5) 塗膜の耐衝撃性

1) 三〇kg・cmの衝撃エネルギーを塗膜に与えた結果、小孔が開かない割合が八〇%以上であること。
2) 1)の性能の判定において小孔が開かない割合とは、一本の鉄筋から切り出した三本の供試体に、先端が直径一六mmの半円球状の二kgのおもりを一五cmの高さからそれぞれ二〇回ずつ位置を変えて落下させ、合計六〇回のうち小孔が開かない割合とする。

(6) コンクリートとの付着力

1) 付着力が無塗装鉄筋(黒皮付きのものをいう。2)において同じ。)の場合と比較して八〇%以上であること。
2) 1)の性能の判定については、コンクリートから鉄筋を引き抜く試験を行い、エポキシ樹脂塗装鉄筋の最大荷重が、無塗装鉄筋の最大荷重に比較して八〇%以上であることとする。この場合において、供試体数は三本とし、すべてについて八〇%を上回ることとする。

(7) 塗膜の耐アルカリ性

五〇±二℃の飽和水酸化カルシウム水溶液に三〇〇時間浸漬した場合において、塗膜にふくれ又ははがれが生じないものであること。

2 防せい性能

1) 細骨材に対する塩化ナトリウム含有量が一%に相当する塩化物を含むコンクリート中にかぶり厚さ二〇mmで鉄筋を埋め込み、温度八〇±二℃、湿度(相対湿度)九五〜一〇〇%に一日間、温度八〇±二℃、湿度(相対湿度)五〇±五%に二日間を一サイクルとするサイクルを二〇サイクル与えた場合において、塗膜のふくれ若しくははがれ又は平均腐食面積率一%を超える腐食がないこと。
2) 1)の平均腐食面積率については、コンクリート中のエポキシ樹脂塗装鉄筋の腐食面積の全塗膜面積に対する割合の平均とする。この場合において、供試体数は六本とする。

第3 設計施工上の留意事項

1 設計上の留意事項

エポキシ樹脂塗装鉄筋は、建築物の設計に当たって鉄筋とコンクリートとの付着力、鉄筋と鉄筋との継手の方法、鉄筋端部の定着の方法等に特別の配慮を必要とするので、別途実験等の結果に基づき、適切な設計方法及び仕様が定められていること。

2 施工上の留意事項

エポキシ樹脂塗装鉄筋は、施工作業中、防せい上有害なきず、うき、はがれ等が発生した場合には、必要な補修により、有効に第2に示す性能と同等の性能を回復すること。また、エポキシ樹脂塗装鉄筋は、その保管、運搬、切断、折曲げ、組立て等に当たって特別の配慮を必要とするので、第2に示す性能を損なわないために必要な施工仕様が定められていること。

第4 品質管理

エポキシ樹脂塗装鉄筋は、第2に示す性能が安定して発揮でき、かつ、第3に示す設計施工上の留意事項を満足するように、適切な品質管理が行われるものであること。

第5 その他

エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用した設計方法、施工方法及び管理方法について、マニュアル等を完備し、適正な普及が図られていること。


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